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第八話 善意と悪意は紙一重?

 俺が驚いている最中に、騎士は次々と男達を制圧していく、一瞬で六人ほどいた暴漢を一気に倒していた。

 おじいさんが騎士に少し怯えながら、お礼を言った


「あ、ありがとう御座いますじゃ……」

「お気になさらず、騎士として当然のことをしたまでですから」


 なんだか男前なことを言っている騎士にその場を任せ、俺は立ち去ろうとした、が


「よ……よくもやりやがったなぁ……コイツでも食らいやがれ!」


 まだ気絶していなかったようで、倒れていた男が、騎士に向かって、背後から瓶のようなものを投げる、もしかして火炎瓶か?


「危ない!」


 俺は思わず叫ぶ、すると気付いてくれたのか、騎士は素早い動きで振り返り、一瞬で剣を抜いて瓶を真っ二つにし、瓶を投げた男の喉に剣先を突きつけた。


「これ以上戦うというのなら、命のやり取りになるが、貴様はそれを望むのか?」


 男の顔がたちまち青ざめていき、仲間と一緒に一目散に逃げ出していった。

 

 それを確認すると騎士は、俺に向かって歩いてきた


「貴殿には助けられたな、礼を言う」

「はぁ、どういたしまして」


 俺の助けなんて要らなかったような気もするが…


「助けられたついでに一つ尋ねたいのだが、宜しいか?」


 まったく表情の読み取れない兜を付けたままで話しかけられる

少し、いやかなり恐い


「え、ええ……」

「恥ずかしながら道に迷ってしまっていてな、タールズ通りはどちらだろうか?」

「……はい?」


 予想外の申し出に、少し拍子抜けしてしまったが、幸い場所を知っていたので、そこまでの道を教え、念のため簡単な地図を書いて渡してあげた。


「丁寧に地図まで書いて頂けるとは」

「いえ、困ったときおは互い様ですから」

「ほう、初めて聞くが良い言葉だな」

「俺の故郷の言葉なんですよ」


 そんな会話をしてから、騎士と別れた、悠然と去っていく背中を見つめながら俺は、しっかり物に見えて意外にうっかりな人なのかな、などと失礼なことを考えていた。


 それから俺は、屋台で昼食(龍神焼きという龍を型どったたい焼きのような物、こっちの世界でも便乗商法はあるらしい)を取り、チェルシーへの侘びの品をいろいろな店で探してみた、が、女の子に何をあげれば喜ばれるのかなど、元の世界でも分からなかったのにこの世界で分かるはずも無く、途方に暮れながら魔王城へと帰るのだった。


「ヒロ様、いらっしゃいませ!」

「五分遅刻ですよ、ヒロ様」

「お帰りなさいませ、ご主人様」


 丁度お茶会の時間だったので、城に着いてすぐにリーゼの部屋を訪ねた俺は、リーゼとオルガさんとエリィさんに迎えられた。

 ちなみにこのお茶会にただのメイドでしかないエリィさんが参加しているのは、お茶会のマナーなど分からない俺がそのフォローを頼んだのが始まりである、もっともリーゼはそんな細かいことは気にしない性格だったのだが

 

 エリィさんが紅茶の準備をしながら嬉しそうに言う

 

「今日は新しい茶葉が手に入ったんですよ」

「それはとても楽しみです、ヒロ様もたっぷり飲んでいってくださいね」

「あ、うん」


 はっきり言って紅茶の味などまったく分からない俺は、何を飲んでも美味しいとかしか言えないのだが……

 

 ここで俺は、思い切って詫びの品の件に着いてみんなに相談してみることにした、女の子なら女の子が欲しがる物が分かるだろう、という安易な考えである。


「そうだ、参考までに聞きたいんだけど、みんなはプレゼントって何を貰らったら嬉しい?」


 その瞬間、時間が止まった、気がした。


「えっ」

「……」

「まあ」


 何故か三人とも動きを止めじぃーっと俺を見つめてくる、なんだこれ? 空気が重いんだけど……

 そのプレッシャーに耐えかねて、俺は口を開いた

 

「俺、何か不味い事でも言ったかな?」


 オルガさんが表情を変えずに聞いてくる


「いえいえ、参考までに聞きたいのですが、それはどなたへのプレゼントでしょうか」

「!!」

「!」


 俺の返答を待たずに、リーゼが顔を真っ赤にしてオルガさんに話しかける


「ああああの!そそそそういうのは、あああんまり詮索しないほうががが」

「そそそそうですよ、ヒロ様もおおおお恥ずかしいでしょうししし」


 何故か何時も冷静なエリィさんまで慌てているが、俺は別に隠すことでもないので今朝のチェルシーの事について正直に話した


「ヒロ様の馬鹿……」

「……はぁ」

「まあ、なんとなく予想は付いていましたけどね……」


 三人のテンションが目に見えて最低値まで下がった、まあ確かにいきなり耳を揉んだ俺が悪いんだけど、そこまであからさまに態度に出さなくても……


「ふむ、それならヒロ様、お暇な日に私達の誰かと、詫びの品を一緒に城下町で選んでみてはどうでしょうか?」


 オルガさんのその提案に、沈んでいた二人の目に輝きが一瞬で戻る


「わ、私なら何時でも宜しいですよ!それに私、贈り物とかにはとっても詳しいんですよ、本当です!」

「私も……その、頑張ってお休み作りますから!それにそれに、お、お弁当も作りますし!」

「ちなみに私も、一日くらいなら空けられますよ」


 なんだか今日の二人はテンションがおかしいような…、オルガさんも何時もより楽しそうだし、もしかして、新しい紅茶のせいだろうか?


「ご主人様は、誰とプレゼントを選びたいんです?」

「早く決めてください!」

「なるべく早く選んだほうが、禍根を残しませんよ」


 なんだかオルガさんが不穏な事を言っているが、聞かなかった事にして、俺は結論を出した、そんなにみんな買い物に行きたいんだったら……うん、答えは一つだ


「買い物なら大人数で行った方が楽しいし、みんなで行こうよ!」

「え」

「え」

「え」

「…え?」

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