第七話 出会いは日常の中で
「私、砦の戦いでヒロ様の腕前に感服いたしました、私に、精霊機の操縦を教えていただきたいのです!」
「あ、言い忘れてました、私はあの戦いの時砦の門番をしていた内の一人でして、ヒロ様の戦いを後方から眺めていたんです!」
そういえば、門番をしていた黒い機体が2機くらい居たような居なかったような……
弟子にしてくれと言われても正直困る、砦で見せてもらったが、どうやら龍神と精霊機は操縦方法がまるで違うのだ、精霊機はレバーやペダルではなく、操縦席の丁度両手の位置に置かれた2つの水晶球のようなものに手を置くことで、直接思考を機体に伝えて操縦するようであった。
「急な申し出であることは分かっているのですが、私、どうしても強くなりたいんです!」
それにしても……気になる……
「あのぅ?もしかして気分を害されてしまいましたか?」
ずっと黙っていた俺にチェルシーが話しかけてくる、が、俺は怒ってしまった訳ではなく、彼女のある部分が、物凄く気になっていたのだった。
さっきから目の前で揺れたり垂れたり……もう我慢できない!
「ちょっとごめん、動かないで!」
「はぃっ!?」
モフモフモフモフモフ……
「凄い、本物の猫耳だ……!」
始めて見る直に生えた本物の猫耳に俺は、すっかり我を忘れていた
「にゃああああああ!?」
俺は彼女の猫耳を撫で回す、ねっとりと、じっくりと、心地良い手触りが伝わってくる。
こんな風に耳を触っていると、あっちの家で飼っていたニャルセス三世を思い出すなぁ……
「にゃぁぁ!?いきなり何するんだにゃぁ!って故郷の言葉が思わず出てしまってるにゃあ!ヤバイにゃあ!?」
抗議の声も聞かず、更に全体を揉みに揉みまくる、プニプニしてて気持ち良い。
三世元気かなぁ、ちゃんとご飯食べてるかなぁ、勝手に家出とかしてないかなぁ……
「ちょ、裏は、駄目にゃ……にゃぁふぅ……!そんな、そこは……もう……許してにゃあ……」
三分ほど経った頃だろうか
「はっ、俺は何を」
俺が正気に戻り耳から手を離すと、彼女は真っ赤な顔で耳を押さえたまま、猛ダッシュで逃げ出していった
「もうお嫁にいけないにゃあああぁぁぁぁぁ……!」
呼び止める暇も無い程の物凄い早さであった。
猫耳の魔力恐るべし!って感心してる場合じゃない、今度会ったらちゃんと謝ろう……
「はぁ……」
気を取り直して工房に行くと、入り口で巨大なハンマーを持った作業着姿の厳つい壮年の老人が、俺に話しかけてきた
「よう坊主!どうした?辛気臭い顔してよぉ!」
「若さゆえの過ちって奴ですかね、親方……」
「?」
この人は、この工房の総責任者で、皆から親方と呼ばれている、職人肌のドワーフ族で、初めはいきなり見学しに来た俺を警戒していたが、話してみるとかなりのロボ好きであるらしく、ロボ談義で盛り上がりすぐに仲良くなることが出来た。
「で、今日も見てくんだろ?」
「はい!」
俺はもう半ば定位置になっている工房の隅で、空いている椅子に座り、精霊機が組み上がっていく様子を観察していた
「やっぱりいいよなぁロボって、組み立ててる様子を見てるだけでも楽しいもん」
「しっかしおめぇも、良く飽きねぇよなぁ……まあ、俺が言えた義理じゃねぇけど」
そこで俺は、親方に呼ばれていたことを思い出す
「そう言えば俺に何か用事じゃ?」
「おお、そうだったな、おめぇが言ってたアレ、もうすぐ完成できると思うぜ」
「本当ですか!?」
アレとは俺が知っているロボ知識の中から、この世界の科学力でも再現できそうなロボ技術を親方に伝えた内の一つで、もっとも実現性が高いといわれた物だ。
「完成したらおめぇにも見せてやるからよぉ、まあ、期待して待ってな」
「はい!」
そんなこんなで昼過ぎまで工房で過ごしてから、俺は城下町へ向かった、チェルシーへのお詫びの品を買う為と、昼食を取る為である。
城下町は何時も通りにぎやかで、活気に溢れていた、リーゼ曰く魔王軍が負け越していた頃は皆沈んだ様子だったそうだが、砦の戦いで勝利を収めたこと、龍神が再び魔族に味方してくれたことを知り、再び町に活気が戻った、ということらしい。
「何か渡したほうが良いよなぁ……」
あんな失礼なことを初対面でやらかしてしまったのだ、侘びの品の一つでもあったほうが良いだろう。
そう思いながら大通りを歩いていると、重そうな荷物を持った老人が、柄の悪そうな男達に囲まれているのが目に入った
どうやら、言いがかりを付けられているらしい
「どうしてくれるんだよ!おめぇがぶつけてきたせいで俺の腕が折れちまったじゃねーかよ!」
「そうだそうだ、慰謝料と治療費を払いやがれ!」
「そ、そんなぁ……」
ベタベタだなおい……、いや、もしかすると、あれがこの世界の最先端なのか?
見ていられなくなった俺が止めに入ろうとしたその時
「ああ、んだテmグハッ!」
「あにkグヘェ!」
俺が驚く暇も無く、銀の太い腕が男たちを吹き飛ばす、暴漢をいきなり殴り飛ばしたのは、フルフェイスの騎士兜を被り、全身を重騎士鎧に身を包んだ、異形の騎士だった。