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第五十二話 砕け散る生命

「この凶竜機ジルヴェインの力、見るがいい!」


 凶竜機と名乗ったその機体の圧倒的な威圧感に、こちらも出し惜しみをしている場合ではないと判断し。


「創龍合体! アルティメット・ドラギルス!」


 ドラギルスを合体させ、一気に敵機へ攻撃を仕掛ける。


「アルティメット・ブラスト!」

「ジェノサイドスパイラル!」


 機体の両掌から放たれた光線は、敵機の口から放たれた青白い熱線と空中で衝突し、大きく火花を散らす。


「互角か! いや……これは!?」


 敵機の熱線の勢いが思いの他強く、こちらの光線が押し負けると直感し、射撃を中断して熱線を回避し。  


「ちぃっ! アルティメット・ナックル!」

「フッ、セイクリッドバスター!」


 右腕を高速回転させながら発射、だがその攻撃も、敵機の両眼から放たれた光線に防がれる。


「なっ!?」

「どうした、この程度か?」


 双剣を抜き、一気に接近して格闘戦を挑もうとするが、敵機の巨大な爪に阻まれ攻撃が届かない。

 その時、旋回してきた長い尾に強襲され、空中へと弾き飛ばされる。


「この力は……!」


 衝撃でふらつく機体を建て直しながら、俺は敵機の今までに無い性能に驚いていた。 

 

「フフ、驚くのも無理は無い、この機体は龍神を倒す為、千年の時を掛けて作られた天界の最終兵器なのだからな」


 俺の驚愕を感じ取ったのか、ゼオルは不敵な態度で話し掛ける。


「そしてこれはまた、この世界に渦巻く死者の怨念をその糧として、更に力を増しているのだ!」


 その言葉と共に敵機を中心として、暗い怨念の塊のようなオーラが渦を巻くのが見えた。

 もしかして、このために魔界に戦争を仕掛けてきたのか……? 


「更に貴様を絶望させてやろう、この光景を見ろ!」


 そうゼオルが告げると、王都やポルトルイスなど、魔界全土の映像が一斉に俺の周りに映し出された。

 その中には、あの白い機体によって攻撃される村や町の姿があった。


「これは……!?」

「再び我が配下により魔界は蹂躙されている、貴様がどう足掻いても無駄だ!」


 この映像を見る限り、魔界側がかなり不利なようだ、だが、ティタニアルさんの言葉通りならばここでこいつを倒せば……  

「そして貴様が無様に敗北する様も、逆に魔界全土に映し出してやろう!」

___________


 その映像は、魔界全土に映し出された。

 例えば、魔王城でヒロの帰りを待つリーゼの前に。


「これは……ヒロ様!?」


 王都近郊で激戦を繰り広げていたガルザス隊の前に。


「龍神殿が戦っているのか!」


 ドゥーズミーユを守る為に戦っていたチェルシー達の前に。


「隊長!?」


 ザフィエルと戦っていたレンカの前に。


「ヒロ殿!」


 同時に映し出されたのだった。

____________


「こうなったら……! システム起動! オーバードライ……ぐっ!?」


 敵機の強大な実力を前に、一気にオーバードライブで決着を付けようとしたその時。

 突如全身が激しい痛みに襲われ、思わず動きが止まる。


「どうした、動きが鈍いぞ!」


 その隙を逃さず、敵機が両手でドラギルスを掴み、羽交い絞めにする。


「こんな時に!」


 必死に振りほどこうとするが、敵機のあまりの力に全く身動きが取れない。


「サウザンドディスアピア!」


 そして、敵機胸部の光線が至近距離から放たれ、ドラギルスがその光に飲み込まれた。

_____________


 その光景を目にした各々が、今まで無敵を誇ってきた龍神が圧倒される姿に衝撃を受けていた。


「そんな……龍神が……負ける……!?」


 シルフィの顔が絶望に染まり。 


「ヒロ殿!? くっ! 邪魔をするなぁっ!」


 駆けつけようと焦るレンカも、ザフィエルによって動きを封じられていた。


「私が……私がヒロ様に伝えなかったから……!」


 そんな中、リーゼは激しい後悔と共に、その場で泣き崩れていた。

 龍神が、ヒロがこうなってしまったのは、自分に原因があるとリーゼは思っていた。


 それは、倒れたヒロの前でティタニアルと会った時の出来事だった。


「もう戦えない?」


 ティタニアルから告げられたのは、ヒロの体はもう戦える状態では無いということだった。


「ええ、ヒロ様の体は恐らくもう……」


 何時もは冷静なティタニアルの表情が心労からか大きく曇っており、それが事態の深刻さを物語っていた。


「何故……?」


 あまりに急に告げられた宣告に、リーゼは思わず理由を尋ねた。


「ヒロ様は今まで、龍神の力を凄まじい適応力で存分に引き出して戦ってこられました、ですが、その速度があまりにも速すぎたのです」


 そしてティタニアルは、その右手で慈しむようにヒロの頭を撫でる。


「半年も経たずに龍神の真の力を解放し、そしてその先までも…… ヒロ様の高すぎる適正が、逆に仇になってしまっているのです」

「そんな……」


 ヒロは、圧倒的な力を持つ龍神を完全に使いこなしていた、ヒロはそれをあまりに自然な事のようにやってのけていたので、リーゼ達はそれが異常だと言う事に全く気付いていなかったのだ。


「恐らくこのまま乗り続ければ、命も危ういかと……」


 ヒロの頭から手を離し、リーゼに向き直ってティタニアルは真剣な表情で告げた。


「リーゼ姫、ヒロ様に伝えてください、戦いを止めるようにと」

「分かり……ました」


 その心からヒロを思いやった言葉に、リーゼは頷くしかなかった。

 

「でも私は、私は……!」


 だがリーゼは、その事をヒロに告げていなかった。

 

 ヒロが目覚める前にゼオルが現れ、魔界全土へ降伏を迫ったのが原因だった。

 リーゼは考えた、ここでヒロが戦いを止めれば、ようやく終わろうとしていた戦いがまた始まり、再び多くの悲劇が繰り返されてしまうだろうと。

 また、目覚めたヒロがまるで何事も無かったように振舞うのを見て、リーゼの心に甘えが生まれ、もう一度だけならば大丈夫かもしれない、とも思ってしまった。  

 そんな思いからリーゼは、ヒロにティタニアルの言葉を伝える事が出来なかったのだ。

______________


「伝説の龍神も、こうなれば無様だな」


 攻撃をまともに食らい、地面に倒れ付すドラギルスに、頭上からゼオルの勝ち誇ったような声が響く。


「まだまだ!」


 全身の激痛に耐え、俺は機体を急速に起き上がらせ、そのまま敵機の背後へ回りこんだ。


「フッ、往生際の悪い!」

「アルティメット・ストリーム・バースト!」


 胸部の龍が咆哮し、光の奔流が敵機を包む。

 間違いなく直撃だった、これならば。  


「やった……!?」


 煙がゆっくり晴れると、そこには全くの無傷で敵機が悠然と立っていた。


「無駄だ! アストラルリフレクション!」


 驚く俺に、敵機は先程俺が放ったのと全く同一の攻撃を、そのまま俺に向かって放つ。 


「反射して……!? っ!」


 その射撃がドラギルスを貫き、右腕が完全に消滅した。

 俺はなんとか機体を立て直そうとするが、ドラギルスは全く反応しない。 


「これで我が千年の復讐は達成される! さらばだ龍神よ! エンドオブイレイザー!」


 その情念を吐き出すような叫びと共に、敵機の兵装が一斉に俺に放たれ、俺の視界は真っ白に染まる。


「ハハハハ! やった! 遂にやり遂げた! やったぞ!」


 そして、ゼオルの歓喜の声が響く中、龍神は、完全に消滅した。


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