第四十八話 野望の行方
魔王城の謁見の間、そこでは魔王が報告を受けていた。
「ふむ、騎士団はサンダルフォンが撃破されたことを知り総崩れ……か」
あの一騎打ちの後、サンダルフォンが撃破されたことを知った騎士団は統制を失って散り散りに撤退した。
「はい、現在我らは順調に進軍を進めており、あと一週間も掛からずに奴等の本拠地へ到達できるかと」
完全に戦意を失った騎士団相手にもはやほぼ戦闘と呼べるようなものすら起こらず、魔王軍は急速に各地の制圧を進めていた、
「そうか……」
「何か、ご納得行かない事でも?」
これだけ有利な状況でも、魔王はどこか不安げであった。
「いや、順調に行き過ぎているのではないかとな」
「確かに、あのサンダルフォンが、全くの無策で龍神と戦い敗れるというのは」
これまで魔王軍を苦しめていた騎士団の長であり、優秀な人物であるはずのサンダルフォンが、こうもあっさり撃破され、なんの事後策も無く騎士団が総崩れになる状況に、魔王は違和感を感じていたのだ。
「龍神の力が奴の予想以上だった、と言う事であればよいのだが……」
魔王は怪訝そうに呟いたが、その場ではどうすることも出来ずにそのまま議題は他の物へと移っていったのだった。
魔王城のヒロの部屋では、ベッドに寝たままのヒロの脇で、リーゼが不安げにヒロを見つめていた。
「ヒロ様……」
あの一騎打ちから一週間経つが、ヒロにまるで目覚める気配はなく、こうしてただ眠っているだけだったのだ。
高名な医師を何人も招き診察させたが、原因は全く分からず、以前ヒロが倒れた時のこともあり、結局こうして寝かせておくことになったのだ。
だが、いずれ目覚めるという保証は無く、リーゼ達は不安を抱えたまま、交代で看病をしていたのだった。
その時、部屋の扉が静かにノックされた。
「はい?」
「失礼致します、お久しぶりですね、リーゼ姫」
扉をゆっくり開けて入ってきたのは、エルフ族の長、ティタニアルだった。
「ティタニアル様もヒロ様のお見舞い……ですか?」
「……やはり、こうなってしまいましたか」
部屋に入ってきたティタニアルは、眠っているヒロを見つめ、悲しそうに言葉をゆっくり吐き出した。
「やはり……とは?」
「リーゼ様、ヒロ様が目覚めた際に、伝えて欲しい事があります」
リーゼの問いに、ティタニアルは意を決した様子で話し始めたのだった。
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騎士団本拠地セイントクロス地下、ハニエルの研究所。
その一角ではラツィオンとハニエルが、恐るべきある計画を始動させようとしていた。
豪華な椅子に座ったラツィオンに、ハニエルが話し掛ける。
「ラツィオン様、遂に表舞台に立たれるのですな」
「ハニエル、貴公にも苦労をかけたな」
「いえ、ラツィオン様のお力になれるのであれば」
ハニエルは何時もの飄々とした態度ではなく、頭を深々と垂れ、礼儀正しい口調でラツィオンと会話していた。
実はハニエルは最初からラツィオンの命を受け動いており、サンダルフォンには全く従っていなかったのだ。
「それで、計画はどこまで?」
「はっ、ラツィオン様がその気になれば、何時でも」
ラツィオンはそのハニエルの答えに満足そうに頷き。
「そうか……ここは放棄しろ」
「それでは」
椅子から立ち上がり高らかに宣言した、彼らの野望、その始まりを。
「ああ、赴こうではないか、神の居城へな」




