第四十六話 変転
コンテストも終わり、皆の料理が集まっていた観客や食堂のスタッフなどにも配られ、宴会のような騒がしい状況になった食堂の中。
俺はコンテストの事を思い返しながら、只ぼんやりと食堂の壁に寄りかかっていた。
「ヒロ様」
そんな俺に、リーゼが呼びかけてきた、さっきのこともあり、なんとなく気恥ずかしい。
「ごめん、さっきはみっとも無い所見せちゃったかな」
「いえ、そんな」
気弱な俺の返答に、リーゼは少し不安そうな顔で首を振った。
「私のほうこそ、差し出がましい真似では無かったでしょうか」
「そんな事無いよ、むしろ……嬉しかった」
皆の前で泣き出してしまったのは恥ずかしかったが、リーゼが俺のことを思って俺の故郷の料理を作ってくれたのは、単純に嬉しかった。
「ヒロ様……」
そんな俺の答えに、何故か心配そうな顔で俺を見つめるリーゼ、なんだか見透かされているようで照れくさい。
そんな雰囲気を切り替えようと、あの優勝商品について話題を振ってみた。
「それより、あれ、貰ったの?」
「これですか?」
リーゼが手に持っていたのは、一枚の小さな長方形の紙だった。
そこには大きな字で、「ヒロ様一日自由券」とだけ書かれていた。
「本当に貰ったんだ……」
「ご安心ください、ヒロ様の意思を無理矢理踏みにじるような事は致しません……多分」
「多分!?」
予想外の答えに、思いっきり動揺する俺。
「ふふっ、冗談ですよ」
そう言って悪戯をした子供の様に笑うリーゼに、俺は少し見惚れてしまった。
そんな事を話しながら暫く経ったころ。
「っ……!」
「ヒロ様?」
前触れも無く一瞬目の前が真っ白になり、激しい眩暈と疲労感にそのまま倒れそうになる。
「ごめん、今日はもう寝るから……」
「そうですか、名残惜しいですが、また明日」
「うん、また明日」
リーゼと別れた後、誰も居ない廊下で壁に枝垂れかかる、さっきから俺は、リーゼに心配を掛けまいとかなり無理をしていた。
「またこの感覚か……」
その眩暈と疲労感は、初めてオーバードライブを使ってから度々訪れるようになっていた、しかも間隔が段々短くなってきている気がする。
もしかしなくても、オーバードライブの副作用だろう、今のところ戦闘中に起こらないのは助かっていたが、原因が原因なだけに医者に相談しても恐らく無駄だろうし、どうしたものか……
そんな事を考えながら、どうする事も出来ずにこの日は眠りについたのだった。
次の日の朝、俺は部屋に駆け込んできたレンカの声に起こされた。
「ヒロ殿! 騎士団が王都へ!」
「何だって!」
騎士団がもう攻めてきたのか? そう考えるよりも早く、俺は魔王に会いに走り出していた。
駆け込んだ謁見の間では、すでに魔王とオルガさん以下幹部が、今後の対応について話し合っているようだった。
「おお、ヒロ殿か」
「騎士団が来てるのは本当なんですか?」
「ああ、奴等暫くは様子見をする物だと思っていたが……」
俺の問いに、魔王も戸惑った様子で答えた。
「賞賛も無く龍神に挑むとは思えません、恐らく何らかの打開策を見出したのでは」
確かに、こっちにドラギルスが居るのにただ突っ込んでくるほど、相手も馬鹿じゃないよな。
「もしかして、また古代兵器とか?」
あのギガンティスくらい強力な古代兵器がまた復元させられているとしたら、かなりの脅威だけど……
「それは分かりません、ですが、十分に用心をした方が宜しいかと」
「分かりました」
そう頷き、俺達はすぐに出撃したのだった。
王都近郊の荒野まで進んだ時、王都へ向かって進軍中の多数の騎士団の軍勢を発見した、その軍勢の先頭に、見慣れない白い派手な機体の姿があった。
今まで見てきた機体と明らかに違う雰囲気を放つそれは、先頭に立って軍勢の指揮を取っているように見える。
「あの奴等の先頭に居る機体、見たこと無い奴だけど……」
「あれは……いや、まさか」
「レンカ?」
俺が呟いた言葉に、レンカが意味ありげに答える、知っている奴なのか?
そう問いかけようとしたその時。
「我こそは光神騎士団団長! "全能"のサンダルフォン!」
先頭の白い機体がこちらを確認したのか、進軍を止め、こちらに名乗りを挙げて来た。
「団長だって……!」
いきなりの敵の総大将の出現に、思わず身構える。
「敵の大ボスにゃあ?」
「じゃあ……あいつを……倒せば……」
「とうとう自らが出てきたか、サンダルフォン!」
そのサンダルフォンは、様子を伺っている俺の方に向き直り、右手に持った長剣を天高く掲げると、高らかに宣言した。
「私の騎士団長の名と、騎士の誇りに掛けて、龍神に一騎打ちを申し込む!」




