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第五話 舞い上がる翼(後編)

「物凄い数です、確認できただけでも、およそ五十機!」


 その言葉を聴いたとき、俺は反射的に走り出していた、ここが夢じゃないってことは、途中からなんとなく気付いていたし、ロボットに乗れたのは嬉しいけど、いきなりこんな訳の分からない所に来て、正直もう逃げ出したい気持ちも少なからずあった。

 でも、真剣な眼差しで俺を頼ってくれたリーゼを、死なせたくないと思ってしまったのだ。

 会ってまだ数時間なのに、こんな気持ちになるなんて、我ながら単純だとちょっと呆れてしまうが……

 ウジウジ考えるのは性に合わない、悩むのは、今のこの状況をなんとかしてからでも遅くない、そう考えを纏め、俺は砦に向かっている大軍と戦うことを決めた。

 砦の片隅に置いてあった機体に乗り込んだとき、機体のモニターに文字が表示されていた、見たことの無い文字だったが、読めるようになっているのは多分翻訳魔法とやらのお陰だろう。


 "条件がクリアされたため、一部の武装のセーフティが解除されました"


 セーフティーの解除?疑問に思う俺の前に、武装の発動方法やその効果が次々と映し出されていく。


 「考えてる暇は無いか……」


 渡りに船と言えるタイミングに、少々薄気味悪い物を感じないでもなかったが、迷っている場合ではない、俺は武装について把握すると、敵に向かって走り出していた。

 その時、丁度砦に向かって多数の火球が放たれたていた


 「危ない!」


 先程見た説明を思い出す


 「えーっと、"グレートウォール"左手からバリアを発生させ、機体への攻撃を防ぐ、発生させる場所などを調整することが可能……だったよな!」


 火球の前に滑り込み、襲い掛かってくる火球に対して左手を突き出し、バリアを発生させた

 機体前面おそよ20m四方に半透明の光の壁が出現し、攻撃を全て防ぎきった


 「間に合ったか!」


 バリアを停止し、改めて目の前の敵を確認する、火球攻撃があっさり防がれたことに動揺しているのが目に見えて分かった。それにしても数が多い、 五十機と聞いていたが、それ以上は余裕でいるように見える。

 だが怯んではいられない

 

 「あんたたちは下がってくれ、ここは俺がなんとかする!」 


 門番の2機にそう告げると、返事を待たずにトリガーを引く


 「先手必勝、まずは射撃兵装で!」


 立ち並ぶ大軍に対して、人の顔を模した頭部、その目に当たる部分からレーザーを横一線に薙ぎ払うように発射する。


 「プロミネンス・アイ!」


 正面の敵がたちまち炎に包まれ、崩れ落ちる。


 「もう一撃!デストロイ・ナックル!」


 両手の手首から先が高速回転し、分離して敵集団に突っ込んでいく、装甲に大穴を明けながら多数の敵を貫通し飛んでいき、撃破された敵が次々と爆発していく。

 半数ほどの敵機は撃破出来た、このまま敵が動揺しているうちに、勝負を決めたいところだが……

 と、豪華な装飾に身を包んだ一機(この部隊の指揮官だろうか)が大声で指令を出し始めた。


 「たった一機に何をやっている、数ではこちらが圧倒的に有利なのだ、包囲して撃破しろ!」


 バラバラだった敵の動きに統制が戻るのが分かり、陣形を組んで攻撃してきた、腰の双剣を抜き、近接戦で対処しようとするものの、数が多すぎて対応が追いつかない。

 何機かの敵機を切り裂いたところで四方から押し寄せてくる敵機に押し潰され、全く身動きがとれなくなってしまった。


 「練習してから使いたかったけど……」


状況を打破するためには、アレを使うしかない、覚悟を決めると俺は、その機能を発動させた。


 「この羽が飾りじゃないってことを、見せてやるよ!」


 背中の真紅の羽、その中に内蔵されたブースターから青い炎が吹き上がり、機体が宙に舞う。

 味わったことの無い浮遊感と圧し掛かるGに耐えながら、機体をなんとか安定させ、地上の敵を見ると、空中の俺を見つめたまま驚いたように静止していた。

 

 「飛行する機体だと!?そんなもの魔王軍にあるはずが……」


 指揮官機も動きが止まっている、このチャンスを逃すわけにはいかない、右手を指揮官機に向け、トリガーを引くと、掌に光の粒が集まっていく

 

 「これで……終わりだ!」


 それが限界まで高まったところで、トリガーを離す


 「インフィニティ・ブラスト!」


 右の掌から放たれた巨大な光線が多数の敵を巻き込み、爆炎を上げながら、指揮官機へ向かっていく


 「馬鹿な、十騎士直属の私が、こんな所で、こんな所で!」


 断末魔を上げながら、それは一瞬で消滅した。

 機体を着地させ、辺りを確認すると、残った敵が一目散に退散して行く様が見えた。  

  

 「勝った……のか?」

 

 辺りを見渡しても敵は残っていない、それを確認すると、一気に達成感と疲労感が襲ってきた、俺は心地よい疲れに身を任し、暫くそこに佇んでいたのであった。


_______________________________


 砦の戦闘から暫く後、騎士団の兵舎にて……


 慌てて駆け込んできた伝令の兵士が伝えた言葉に、私は驚愕を隠しきれなかった


 「ベルナルドが死んだだと!?」


 ありえない、奴は性格こそ問題があったが、腕は確かだったはず、それに、あれだけの大軍を任せたのだぞ……!?


 「魔王軍の新型と思われる機体が、たった一機で我らを蹂躙し、ベルナルド様も撃破されたと……」

 「新型?」

 「ハッ、魔力障壁で攻撃を防ぎ、怪光線を発し何機もの機体を同時に撃破し、空を自由自在に飛び回ることが出来たと」

 「馬鹿を言え!そんな出鱈目な機体が存在するものか!?」

 「しかし、生き残った者から複数の証言が……」

 「ぬぅ……」 


 もしたった一機に私の軍勢が一掃され、副隊長まで撃破されたことを皆が知れば、私の信頼と威厳は地に落ちる、私は即座に決断した。

 

 「私が出よう、そしてその機体を私が葬る!そうでもしなければ、今回の失態は償えんだろう……」

 「メタトロン様が直接!?」

 「ああ、セフィロトの十騎士が一人、光神騎士団第六騎士隊長、"獄炎"のメタトロンの力、奴らに見せる時が来たようだな……!」



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