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第四十三話 幻影の騎士

 転送装置によって王都近郊まで帰還した俺たちは、龍神の神殿からすぐ近くの砦へ移動していた。

 そこは俺にとっては馴染み深い場所であり、今はまた対騎士団の前線基地となっているようだった。


「ガッハッハ、まさか龍神殿が掛け付けて下さるとは」


 砦に入った俺たちは、これもまた懐かしい顔の老騎士ガルザスに迎えられた、何でも俺達が居ない間、騎士団の進行を最前線で食い止めていたらしい。


「いや、狙ってここに来た訳じゃないんですけどね……」


 偶然の幸運でここに来られた様なものなので、少し照れくさくなってしまった。


「それで、騎士団はもう?」

「砦の兵の話によれば、すぐそこまで来ているそうだのう」


 俺の問いに緊張した面持ちでガルザスは答える、ここまで侵攻されているなんて、どうやら騎士団の進軍速度は思ったよりもかなり速いようだ。


「では、丁度良い時分に到着出来たと言う訳だな」


 レンカの言葉に頷く、確かにここしかないってタイミングで駆けつけられたみたいだ、このチャンスを活かさないと。

 その後は簡単にお互いの報告をして、旅の疲れもあるだろうということで、本格的な軍議は明日行うということになり、取り合えず俺たちは砦で一泊する事になった。


 何時ものように艦の自室で眠っていると、妙な気配を感じて目が覚めた。  


「うん……?」


 何だか胸騒ぎがし、思わず廊下に出てみると、そこには人の気配が全く無かった。


「皆は……寝てるのか?」


 その後も艦内を回ってみるが、誰にも会わない、普通なら夜でも交代要員で一人か二人は居るはずなのに……


「おーい! 誰かー!」


 大声で叫んでみても何の反応も返ってこない。


「見張りも居ないなんて……」


 誰も居ない見張り台の上に立ち、辺りを見回すとそこには。


「首無し!?」


 砦の周りをズラリとあの首無しの機体が取り囲んでいるのが見えた。


「一体どうなって……!」


 混乱する頭のまま格納庫に走り、ドラギルスへ乗り込む、ここにも誰も居なかったので無理矢理格納庫の扉をこじ開けて出撃し。


「インフィニティ・ブラスト!」


 砦を囲んでいる敵機へ向け攻撃を開始した。

 弱点をシルフィさんに既に教えてもらっていたので苦戦する事も無く。


「デストロイ・ナックル!」


 五分も経たずに半数ほどの敵機を撃破していた。


「ゲホッ、ゲホッ、そう楽には行かないと思ってたが、やっぱりこうなったか……」


 と、破壊された敵機の残骸の中から、見慣れない機体がゆっくりとこちらに歩いて来るのが見えた。

 その機体は極端に細身のシルエットに折れそうなほど細い手足で、霞んだ灰色のカラーリングをしており、首無しとは別の意味での不気味さを持っていた。


「誰だ!?」

「そうカリカリするなよ、俺は十騎士のカミエル、まあ……"幻葬"なんて大層な呼び名も持ってるがな」


 不健康そうな声で搭乗者が答える、十騎士ってことは、恐らく…… 


「皆が居なかったのはお前の……!」

「おお、察しが良いな、ゲホッ、そうだよ、俺がやったんだ、ラツィオンの奴からは楽な仕事だって言われてたのに、俺の術が効かないとは、さすがは龍神様ってか」


 俺の予想通り、皆が居なかったのはこいつの仕業らしい、奴の術が俺に効かなかった理由は分からないが、今はそれを考えている場合ではない。

 そう判断し、敵機に向けトリガーを引く。


「じゃあお前を倒せば! プロミネンス・アイ!」

「おおっと、いきなり危ねぇなおい……」


 敵機が素早く身を交わして光線を避ける。


「お返しだ、幻葬夢現殺……!」

「ぐっ!?」


 腰に装備された日本刀の様な刀を鞘から一気に抜き放った。

 居合い抜きか……!?

 そのスピードと予想外のリーチに避けきれず、胴体に斬撃がまともに当たり、機体から火花が散る。


「ゲホッ、ちっ、もうガタが来やがるか」

「待て!」


 そのまま追撃に入るかと考え機体を身構えさせるが、敵機は身を翻して逃げ去ろうとしていた。


「そう焦るなって、お前の相手は、こいつ等にして貰うからよ」


 俺が慌てて追撃しようとしたその時、背後から幾つもの攻撃が放たれ、何発かのそれが機体に直撃する。


「この攻撃は……!?」


 急いで背後を振り返ると、そこには……


「レンカ、チェルシー、シルフィさん!? それにガルザスさんや砦の皆も……!」


 俺の味方である筈の機体たちが、武器を構え戦闘態勢でそこに居た。

 一瞬俺への増援かと思ったが、その銃口は明らかに俺の方を向いている。


「ま、暫くそいつらと遊んでてくれや」


 そう敵機が告げると共に、俺に向け一斉に攻撃が開始された。


「どうして俺を攻撃するんだ! 俺が分からないのか!」


 バリアを展開させながら射撃を避け接近し、皆に呼びかけるものの、全く反応が無い。

 全機黙々とこちらに向かって攻撃を繰り出してくる、どうやら完全に操られてしまっているようだ。


「後で文句言わないでくれよ……!」


 ここは多少手荒な真似をしても止めるしかない、そう考え。


「創龍合体! アルティメット・ドラギルス!」


 アルティメット・ドラギルスへ機体を合体させた。 


「アルティメット・クエイク!」


 そして、踏みしめた両足からエネルギーを地面に注ぎ込み、地が割れる程の大地震で周りの機体の動きを止め。


「アルティメット・マルチプルブラスト!」

 

 付き出した両手から幾つもの細い光線を放つ、それは狙いすましたように機体の関節や武装を貫き、俺を囲んでいた機体達は一斉にその動きを止めた、


「よし、これで……」

「その隙、貰ったぁ!」


 一息ついた俺の隙を待っていたのか、背後からさっきの十騎士が凄まじいスピードで攻撃を繰り出す。


「なっ!?」

「幻葬心縛淵!」


 一斉に抜かれた両腰の刀が、目にも留まらぬスピードでドラギルスを両断……


「させるか! 獄炎乱舞!」


 はしなかった、更にその機体の背後から、幾つもの火球が襲いかかり、その動きを止めたのだ。


「いっ……!?」

「ふぅっ、ありがとレンカ」

「この位、容易い事だ」


 ドラギルスと敵機を挟むように機体を移動させたレンカに礼を告げる。

 正直今のが当たっていれば危なかったかもしれない。 


「お前、俺に操られてたんじゃ……!」

「貴様のやり口は知っていたのでな、わざと術に掛かる振りをしていたのだ」


 後で聞いた話だが、レンカはカミエルの術に掛りそうになったことに気付き、自分の腹を短刀で刺してその痛みで正気を保っていたらしい。

 傷口はすぐに自分の炎で焼いて塞いだから問題はなかったと本人は言っていたが、かなり無茶な事を……


「そして俺もそれに気付いていたから、レンカにだけは攻撃を当ててなかったのさ」


 他の機体と違って、レンカは俺に攻撃を一回も当てなかった、それだけでなく、俺の機体に当たりそうな弾を火球で掻き消すような動作もしていたのだった。


「ゲホッ、成程、全てお見通しと言う事か……」

「それなら、せめて派手に散るとするかね!」


 そう言い放つと、敵機が一瞬消えたかと錯覚するかのスピードで俺の背後に移動し。


「奥義・幻葬送奏斬!」


 オーラを纏った居合い斬りを俺に抜き放つ……が。


「ヒロ殿!」

「消え……!」


 それを予想していた俺は、一瞬だけオーバードライブを発動させ、逆に攻撃を外し動きの止まった敵機の背後に回りこむと。


「アルティメット・ストリーム・バースト!」


 胸部の龍を咆哮させ、光の奔流を放った。 


「ははっ、こんな終わり方なら、悪くねぇ……さ」


 その光の渦に包まれ、敵機は跡形もなく消滅していったのだった。 

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