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第三十九話 仕掛けられた罠

 ギガンティスやアトモスフィアとの戦いから三日後、ポルトルイスでは、破壊された町の復旧作業が行われていた。

 その中には、復旧と共に艦の補給なども並行して行っているグランセイバー隊の姿もあった。


「これはここに置けばいいのか?」

「倒壊した建物の撤去、終わったにゃあ」

「……資材の積み込み……完了」


 レンカ達三人は、精霊機に乗り、人の手では手間が掛かりすぎる作業を手伝っていた。


「はい、ええ、それは格納庫に、あ、それはそっちじゃないですよ!」


 副官のイルミは、搬入口付近で世話しなく指示を出していた。


「なんだか~忙しそうですね~」


 そんな風に忙しく働く隊員たちを感心した様子で見ていたノーグスだったが。


「艦長も働いてください!」


 自身が全く働いていない事に気付かれて叱られていた。


 作業も一段落し、食堂で夕食を取ることにしたレンカ達だったが、皆どことなく不安そうで、何時もより元気が無い様子だった。

 何故なら、いつも彼らの中心にいるヒロが、ギガンティスとの戦いが終わってから眠り続けていたからである。


「それにしても、ヒロ殿はまだ?」

「まだ~眠ったままですね~」


 心配そうに問いかけるレンカに、ノーグスも不安げに答える。


「龍神もあれから全く反応が無いらしいです」


 イルミもそれに続いた、実際ギガンティスとの戦いで力を使いすぎたのか、ドラギルスもガルバーンもヒロと同じく眠り続けていたのだった。


「流石に二回目だからそこまで慌てはしにゃいけど……心配だにゃあ」


 レンカ達はアーマゲドンとの戦いで、オーバードライブの副作用によりヒロが暫く目覚めなかったことを経験しており、その時より動揺は少なかったが……


「……今は……信じて待つ」

「シルフィ殿の言う通りだな」

「ええ、隊長の分まで頑張りましょう」


 シルフィの言葉にレンカやイルミが同意し、この場は皆納得したものの、ヒロが目覚めるのは何時になるのか、それは誰にも分からず、レンカ達は言いようの無い不安に囚われたまま、食堂を後にしたのだった。

_____________


 十騎士達が集まる大広間で、サンダルフォンはラツィオンの報告を受けていた。


「むう、ギガンティスまでも」

「恐らく、千年の封印の内に力を失っていたのでしょう、でなければ」

「いや、龍神の力、我らの想像を超ているやもしれん……」

 

 かつて龍神に匹敵するとまで言われ、手間をかけて復活させた天界の古代兵器を、こうもあっさりと撃破されたことに、サンダルフォン達は動揺を隠せない様子であった。


「まあよい、本来の目的は達したのだ」

「本来の目的とな?」


 動揺はしている物の、そこまで衝撃を受けていない様子のサンダルフォンに、ハニエルが問いかける。


「ああ、龍神は暫く動けぬのだろう?」

「ハッ、例え目覚めたとしても、奴らは南の果てにおります故」


 ラツィオンは龍神がギガンティスを撃破した後眠りに着いている事も報告していた、凄まじい威力の攻撃を放った反動で、流石の龍神も暫くは目覚めないであろうというのがラツィオンの見立てであった。


「なるほど、目障りな龍神を遠くへ押しやり、その隙に王都を陥落させる、ということじゃな?」


 騎士団の現在地、魔界における本拠地である城塞都市セイントクロスは、現王都を中心と置いた地図では北東方向の端に位置し、丁度ヒロ達が居る魔界南西部のガリス海旧王都からは対角線上に位置していた。

 つまりヒロ達は、まんまと騎士団の本拠地から最も遠い地域まで誘導された形になっていたのだ。


「その通り、貴公に頼んでおいた「デュラハン」の量産も、既に済んでいるのだろう?」

「フォフォフォ、予定通り順調に進んでおる」


 不死の騎士であるデュラハンの性能を持ってすれば、如何に新型の機体を魔王軍が量産していたとしても、互角以上に渡り合える。

 龍神の居ない魔王軍なればそこまでの脅威ではない、騎士団はそう判断していた。


「と、言う訳だ、カミエル、そろそろ貴公にも働いてもらうぞ」

「ゲホッ、ゲホッ……私で宜しければ、ゲホッ」


 サンダルフォンに呼ばれ、ゆっくりと椅子から立ち上がったのは、漆黒のコートを羽織った長身痩躯の男で、窪んだ目や痩せこけた頬が特徴的な顔をしており、まるで墓から這い出てきたかのような不気味な外見をしていた

 彼は十騎士の一人、幻葬のカミエル、実力だけで言えば十騎士中最強とも言われた男であったが、死病を患っておりその実力を発揮できずに居た。


「例え龍神といえど、帰る家を失えばもはや戦い続ける事は叶わぬであろう、この戦い、今度こそ我らの勝利だ!」

「ゲホッ……伝説の龍神相手か、どうせ長くない命だ、派手に散ったほうが良い……」


 気勢を上げるサンダルフォンの傍らで、カミエルは陰鬱な表情のまま、暗い決意を固めていたのだった。


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