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第三十八話 天地を貫く黄金の刃

「敵ヲ殲滅スル」


 アトモスフィア両脚部の推進器から旋風が巻き起こり、凄まじい速度で突進攻撃が繰り出される。


「くっ、速い!?」


 それを紙一重で避け、火球で反撃しようとするも、既に敵機は射程外に逃げ去っていた。


「攻撃が当たらないにゃあ」


 ジルドリンの機動力でも追いつけない程の速度で暴れまわるアトモスフィアに、攻め手を見出せずにいたその時。

 町から遠く離れた海上で、そこからでも確認できるほどの大きさの巨大な何かがゆっくりと出現するのが見えた。

 

「……あれは……!」

「あれが、封印された兵器なのか!?」

「デカすぎるにゃあ!?」


 その機体の出現に、一瞬戦場の時が止まる、そして。

 

「目標達成ヲ確認、撤退スル」

「待て!」


 呆気に取られるレンカ達に目もくれずに、アトモスフィアはまた一瞬でその姿を消したのだった。


「逃げられたにゃあ……」

「ああ、だがそれよりも」

「……隊長……」


 三機が見つめる先、そこにはドラギルスと戦闘を繰り広げる巨人の姿があった。

__________________


 海中から出現した全長1.5km程の鋼の巨人、その大きさに圧倒されていた俺だったが、サブモニターに表示された「ギガンティス」の文字とその全身像を見て我に返る。

 やはりこの巨人がかつて龍神と戦い、龍神に匹敵するとまで言われた強大な兵器であるらしい。 

 その巨人が俺の乗るドラギルスを認識したのか、ゴーグルの様な目が一瞬赤く光り輝くと、全身に装備されたレーザー砲やミサイルランチャーで攻撃を始めた。

 

「図体が大きいからって!」


 その苛烈な攻撃を避けながら敵の背後に回り、右手を無防備な背中に向け攻撃。


「アルティメット・ブラスト!」


 だがその光線は、敵に着弾することなくその手前で霧散して消えた。


「バリアか!?」


 一瞬だが敵機を覆う透明のバリアが着弾時に見えた、どうやらこの巨体を完全にカバーしているらしい。

 敵機の右腕が側面から動きの止まっているドラギルスに向け振り払われ、それは回避したが、すぐさま左足が回し蹴りの要領で飛んで来た、避け切れずに巨大な足がドラギルスの側面を掠る。 


「チィッ、アルティメット・ウォール!」


 掠っただけでも致命傷になりかねない衝撃をこちらのバリアで何とか逸らし、体勢を立て直す。

 吹き飛ばされた地点から一瞬動きの止まった敵に向け。


「アルティメット・クロー!」


 猛スピードで接近し両腕の爪を展開、振るわれた獰猛な爪がバリアを切り裂いた。

 一瞬開いた穴からそのままの勢いで敵機頭部へ向け突進、至近距離から胸部の龍を咆哮させ、光の奔流を放つ。

 

「アルティメット・ストリーム・バースト!」


 如何に強力な兵器と言えど、頭脳を潰されれば止まるはず、そう考えての作戦だった。


「やったか!」


 光が収まった後、狙い通りに頭部が丸ごと消滅していた。

 が……


「再生能力!?」


 頭部を消滅させられ、一瞬動きの止まった敵機だったが、まるで映像を巻き戻すように損傷が一瞬で再生し、こちらに向き直って再び射撃を始める。

 あの大きさに加え、再生能力まであるとは、生半可な攻撃を加えていたのでは、ジリ貧になってこちらが敗北するだろう。

 そう考え、敵機の射撃を回避しながら、俺はあのシステムを発動させた。 

「システム起動! オーバードライブ!」


 発動と共に周りの景色がスローモーションになり、メインモニターの右上にカウントが表示された。

 30、29、28……

 そのカウントを見やりながら、機体を敵機の真下に一瞬で移動させた。


「ただ攻撃したんじゃ駄目だ、一気に決める!」


 25、24、23……

 敵機が反応する前に腰部の双剣を合体させ、一振りの大剣となったそれに、機体のエネルギーを注ぎ込んでいく。


「この一撃に、賭ける……!」


 13、12、11……

 機体の全エネルギーを注ぎ込まれ、巨大な黄金に輝く光の剣となったそれを、一気に振り下ろした。


「アルティメット!」


 9、8、7……

 反動で機体が吹き飛びそうになるが、それを何とか安定させ、敵機の頭上から真っ二つにその巨体を両断していく。


「シャイニング・ソード・ブレイカー!」


 5、4、3……

 光の剣が通り過ぎた後、丁度中央から分割された敵機が、凄まじい爆発と共に消滅したのだった。

 

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