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第三十三話 岐路

 かつて十騎士が集まっていた大広間で、サンダルフォンがザフィエルの報告を受けていた。


「ガルガムント要塞までも……」

「はっ……」


 ガルガムント要塞は南部の要所、であればこそ、騎士団は万全の守りを期していたはずだったのだが……


「ガルガムントには「バアル」を投入してあった筈だが、それも撃破されたと?」

「龍神の力、あまりに凄まじく……」


 相当の労力を払って修復に成功し、対龍神用の虎の子として投入したバアルまでも撃破されたことに、サンダルフォン他はかなりの衝撃を受けていたのだった。


「誠に、誠に申し訳ありません! ここまでの失態、我が命を持って償う他……」


 二度目の失態にザフィエルはもはや合わせる顔が無かった。


「無駄に命を散らすより、それを役立てる事を考えるべきでは?」


 ラツィエルは、この状況でもその冷静さを崩さずに冷酷に言い放つ。


「今更命など惜しくは無い、しかし、認めたくは無いが私の力では……」

「フォッフォッフォッ、それならば、ワシに考えがある」

「何?」


 訝しげに振り向いたザフィエルに、ハニエルは確認するように問いかけた。


「お主、先程の言葉に偽りは無いか?」

「ああ、奴らを倒せるのであれば、この命など……」


 その言葉に、ハニエルは愉快そうにゆっくりと頷いたのだった。

__________________________


 魔王城の謁見の間、そこでティタニアルと魔王が会見していた。


「ティタニアル殿、態々足を運んでいただき、感謝する」

「いえ、ヒロ様に頼まれた事でもありますから」

「ヒロ殿が?」

「はい、自分達が旧王都へ向かう事と、首無しの騎士の対処法を伝えて欲しいと」


 転移魔法を使えるティタニアルであれば、一瞬で魔王城まで行く事が出来、伝言役として最適だろうという判断であった。

 もちろんそんな失礼な頼み方をヒロはしていないが。


「そうか……旧王都へ」

「千年前の戦いで滅んだ都市があるとは聞いていましたが、かつての魔界王都だったとは」


 魔王の傍に居たオルガが、驚いたように話す。


「封印を守る為、魔王軍でも知る者は限られていたからな」

「援軍を送りたいが、恐らくあの船には……」


 現在地上戦艦はドゥーズミーユ一隻しか存在しておらず、たとえ最速で増援を送ったとしても、ヒロ達に追いつく頃には既に戦闘が終わっているであろう。


「ええ、ヒロ様を信じるしかありませんね」


 魔王城の廊下で、ティタニアルはリーゼに呼びかけた。


「リーゼ様」

「ティタニアル様! お久しぶりで御座います!」


 第一公女であるリーゼは、エルフ族族長であるティタニアルとは公式の行事などで面識があったのだ。


「これを、ヒロ様からです」

「これは……」


 ティタニアルが手渡したのは、二通の手紙で、一通はリーゼ宛、もう一通はエリィ宛だった。


「ヒロ様……」


 エリィに一通を渡してから自室に戻り、手紙を開封すると、飾り気の無い字体で簡潔に、『ちょっと遠くまで行くので帰りが遅くなるかも、まあ心配しなくても大丈夫、出来ればお土産持って帰るから』 要約するとこんな感じの内容が書かれていた。


「心配するなと言われても、無理に決まってますのに」


 手紙を置き、リーゼは心配そうに夜空の月を見上げた、龍神の強さは知っているがそれでも絶対ではない、戦場ではあっけなく命が失われることもある。

 それをリーゼは、龍神が現れるまでの魔王軍の苦しい戦いで、嫌と言うほど知っていた。

 彼女自身も彼に出会わなければ、今頃はあの炎に燃える街で……


「必ず、生きて帰って来てくださいね……」


 祈りが戦っている彼らの助けになるかは分からない、だが遠く離れた地に居るリーゼに祈る意外に出来る事はなかったのだった。

_________________


 俺は艦の自室で体を休めながら、旧王都に封印された兵器について考えを巡らせていた、龍神に匹敵するという実力、果たしてどれ程の…

 そこまで考えて、どこかその兵器と戦うことに期待している自分に気付き。


「やっぱり馬鹿だな……」


 と自嘲気味に呟いた。

 俺はドラギルスに乗って戦うことを心から楽しんでいた、この前の「バアル」との戦いで苦戦しながらも、その奇想天外な戦い方を面白く思う程に。

 封印されている兵器が解き放たれれば、どれほどの脅威となるかが分からない訳ではなかった、だがそれでも全力を出して強敵と戦ってみたい、そう思う気持ちは抑えきれなかった。


 「って、いけないいけない」


 不味い方向に行った考えを振り払うように頭を振って、夜も遅いしそろそろ寝よう、と思い直した時。


 けたたましい足音と共に、この艦の艦長……確かセグエントさん、が訪ねてきた。


「隊長~」

「セグエントさん?」

「ノーグスでいいですよ~」

「はあ、じゃあノーグスさん」

「ノーグスでいいですのに~」


 そう言って何故か照れるように体を振るノーグスさん、その度に胸が揺れて目の毒だ。


「えーっと、それで何か?」

「そうでした~! 隊長っ~! かくまってくださ~い!」

「へぇっ!?」


 そう言うが早いか、ノーグスさんはいきなり俺に抱きついてきた、丁度俺の頭が大きな胸に抱きかかえられる格好になって、気持ち良いやら苦しいやら……


「船長! 仕事放ったらかしてどこに行っ……」


 とそこに、副長のイルミさんが怒鳴り込んで来た、匿ってって、単に仕事サボってるだけだったのか……


「あら~?」

「お……お邪魔しました!」


 一瞬その場の時間が止まり、抱き合ってる俺たちを見てイルミさんは顔を真っ赤にして凄まじい速さで逃げ出していってしまった。

 もしかしなくても、変な風に思われた……?


「ちょっ! 誤解だって!」


 イルミさんを追いかけたり、変な風に話が伝わってしまったレンカやチェルシーやシルフィーさんに問い詰められたり、色々あった末、なんとか誤解を解いた頃には、すっかり夜が明けていたのだった。


 それから少しして、要塞から暫く移動を続けた俺達は騎士団の勢力圏内へ入る一歩手前まで到達していた。


「ヒラエス砂漠?」


 艦橋で俺と艦長と副長と親方は、これからの進路について話し合っていた。


「はい~ガリス海に行くには~そこを通るのが最短距離なんです~ここなら~騎士団の攻撃も~受けにくいでしょうし~」

「地元民も避けるほど危険な死の砂漠なのですが、この舟であれば可能かと」


 確かにこの船なら多少の砂嵐でも耐えられるだろうけど、死の砂漠ってのは少し心配だな……


「親方はどう思います?」

「こいつは防塵性能にも拘ってるからな、多分大丈夫だと思うぜ」


 暫く思案した後、考えを決めた、ティタニアルさんの話だと時間がもう残されていないかもしれないし、ここは多少危険でも最短距離を行くべき……だよな。


「行きましょう、ヒラエス砂漠へ!」


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