第三十一話 目覚めるは「禁断」
突如として現れた巨大な白い球体、その無機質だが不気味な外観、そして何よりその大きさに圧倒される。
と、操縦桿を動かしていないにも関わらず、機体が武者震いしているように振動しているのに気が付いた。
「ドラギルスが……震えてる?」
そして、サブモニターに白い球体の画像が映し出され、その画像と共に「バアル」と文字が表示されていた。
「これって、あいつを知ってるのか?」
もしかして、俺の乗る前のドラギルスが戦った事のある奴なのか……?
何にせよ、あいつは他の奴とは明らかに違う、俺の直感が告げていた。
「チェルシーは艦を守ってくれ!」
空を飛べないジルドリンが奴と戦うのは無理がある、それなら不測の事態に備えて母艦を守ってもらったほうが良いだろう。
「隊長は!?」
「あいつを止める!」
チェルシーの返事を待たずに速攻で球体まで飛び上がり、両腕のアルティメット・ナックルを発射した、敵の体制が整う前に、一気に勝負を付けようとしたのだが……
「何っ!」
球体の中心に真っ直ぐ向かっていた拳が、球体に到達する前に球体を覆った透明の膜のようなものに軌道を逸らされた。
バリアか……? そう思案する暇も無く、球体の上部と下部が展開し、そこから小型の球体(と言っても10mくらいはあるが)が無数に飛び出してきた。
そしてその小型の球体達が、レーザーによる射撃や、球体の周りを包むように出現した歯車のような刃による格闘戦を一斉に仕掛けてきた。
「アルティメット・ブラスト!」
咄嗟にトリガーを引き、小型の球体を数十個消滅させる……が。
「数が多すぎる……!」
数百個規模で出現した小型の球体に、こちらの手数が追いつかない。
幸い敵の攻撃の威力はそれ程でもないので耐えられていたが、大型球体への攻め手を見つけられずに膠着状態になっていた、そして。
「開いた?」
大型球体が中心から横一文字に開き始め、そこからアルティメット・ドラギルスの三、四倍程の口径を持つ巨大な砲身がゆっくりと展開し始めた。
その照準は考えるまでも無く俺の機体を正確に捉えている。
「流石にあれに当たる訳には…」
機体を砲身から逃れさせようとするが、小型球体が次々と機体の四肢に動きを封じるように纏わり付いて来て、思うように動けない。
「ぐっ……!?」
そして展開を終えた砲身から、凄まじい大きさの光の砲撃が発射されたのだった。
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シルフィを医務室に運んだ後、レンカは艦の護衛に付いていた。
そのレンカが突如要塞方向から上空に向かって伸びた巨大な光の柱に目を奪われる。
「あの光は……?」
ヒロ殿に何かあったのだろうか……そう思い援護に向かおうとしたその時、艦の後方から急速に緑色の機体が接近して来た。
「ザフィエルか!」
その機体は十騎士のザフィエルが駆る、旋昂機トラファスフィアであった。
「今度は勝たせてもらうぞメタトロン!」
そう言い放ち風の刃で攻撃してくる敵機を、火球を飛ばし迎撃する。
「その名は捨てたと言ったはず!」
接近して放たれた槍による鋭い突きを盾で受け流し、体制を崩した敵機を長剣で斜めに切り裂く、その斬撃は敵機の右肩を削り取った。
「何故裏切った! 貴様ほど高潔な騎士が!」
両腕をこちらに向け放って来た竜巻を。
「貴様こそ、騎士団の腐敗を知らぬとは言わせぬぞ!」
「それは……」
竜巻ごと敵機の頭上を宙返りの要領で飛び越え回避し。
「獄炎連舞!」
無防備な背後から火球を連続で放つ、風の障壁によって幾分か威力を相殺されるものの、まともに食らった敵機が数十メートル吹き飛ばされた。
「やはり強い……だが、私とてこれ以上負けられんのだ!」
相当損傷を受けたはずだが、まだ立ち上がれるのか……!
と立ち上がろうとした敵機に構え直すが。
「レンカ!」
要塞の方角から駆けつけたチェルシー機が散弾を放ち、敵機は回避しきれなかったようで両足を粉砕される。
「チェルシーか!」
「増援だと!? ぐっ、この私が二度までも……」
そう言って敵機は自身の周りに竜巻を起こすと、背部の羽を羽ばたかせ。
「待て!」
「この借りは必ず返させてもらうぞ! メタトロン!」
そう言いながら一目散に撤退していった。
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「危……なかった」
光の柱はドラギルスの頭上スレスレを通過していた、あのままでは光の奔流に飲み込まれる所だったが、咄嗟に機体の合体を解除して分離し、その勢いで小型球体を弾き飛ばし、砲撃を回避する事にも成功したのだ。
機体を建て直し状況を確認すると、大型球体の砲撃に巻き込まれ、小型球体も相当数撃破されている、今が好機だ。
「今の内に!」
機体を再合体させ、大型球体に接近するが、小型球体が再び纏わり付いてくる。ここで時間を取られていては、先程の繰り返しだ。
「アルティメット・ウォール最大出力!」
機体の周囲にバリアを最大範囲で展開し、小型球体を弾き飛ばす、その隙に一気に閉じられようとしていた砲身展開部に取り付き、その両端を両手と両足で支える。
「この距離なら、あのバリアも……!」
あまりの重量に両手両足から火花が散り、押し潰されそうになるが。
「アルティメット・ストリーム・バースト!」
潰される前に胸部の龍が咆哮し、球体内部に必殺技を叩き込んだ、反動で吹き飛ばされ落下していく機体のモニターに、巨大な球体が爆炎に包まれゆっくり崩壊していく様子が映っていたのだった。




