第二十四話 龍神VS龍神
突如現れ魔王軍を蹂躙する巨大な飛龍、その圧倒的な力に、魔王軍はされるがままであった。
「龍神は我らの味方ではなかったのか!」「無理だ……あんなの、勝てるわけが無い……」
そして、飛龍の獰猛な爪が、新たな獲物へ襲いかかろうとした、その時
「グレートウォール!」
もう一体の龍が、その左手を、立ちはだかる様に飛龍へ向けていたのであった。
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「ここは俺に任せて、貴方達は逃げて!」
「龍神機だ!」「助かった……」
俺が到着したとき、既に飛龍によって魔王軍は相当な被害を受け、破壊された精霊機の残骸があちこちに転がっていた、俺は残っていた魔王軍を撤退させると、飛龍に向き直る。改めて見ると、かなりの大きさだ、ドラギルスより一回りは大きいだろうか、ドラギルスが人と龍が混ざったような形なのに対して、飛龍の方は完全な龍型で、巨大な爪と凶悪な面構え、獰猛そうな牙が見るものに威圧感を与える造形をしていた。
その鋼の巨体が、大地を震わせながら新たな標的である俺目掛け襲いかかってきた。
「なんで襲ってくるのかは分からないけど、とにかく止めないと!」
インフィニティブラストを発射しようとするが、その時、周りでまだ戦闘している魔王軍の姿が目に入った、ここで戦えば彼らを巻き添えにしてしまうかもしれない。
「ここじゃ被害が大きくなりすぎる……」
「付いて来い!」
そう判断した俺は、機体を上空へ飛び上がらせた、空の上ならば、周りを気にする必要も無いだろう。
「よし、ここなら!」
俺を追って来た飛龍に向かって構えなおす、ここからが本番だ
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突如として現れた獄炎機に、十騎士の三人は動揺を隠せない様子であった、無理も無い、恐らく私はもう死んだ者だと思っていただろうからな。
「その姿、貴様"獄炎"か!?」
「死んだって聞いてたが、はっ、生きてやがったか」
「……」
「そうだ……いや、違うか」
「何?」
そう答えると、私は宣言するように高らかに、三人に向き直って言い放つ。
「十騎士の私はもう死んだ、今の私は"獄炎"のメタトロンでは無い、私は、ただのレンカだ!」
「何を言って……もしや、貴様裏切ったのか? 何故だ!」
ザフィエルは私が騎士団を裏切った事を理解し、困惑しているようだ。あの様子では、私がガブリエルに嵌められたことも知らないのだろうな。
「私は、私の心に従ったまでだ」
「あの堅物がねぇ、まあ、なんで裏切ったかなんてのはどうでも良い、これでお前と、本気で殺し合えるって訳だからな!」
「ザドキエル、貴様!」
ザドキエルは私と戦う事に全く躊躇いが無い様子だった、まあ奴らしいと言えば奴らしいが。
「さあ、楽しもうぜ!」
「……!」
ミカエルも無言で殺気を私に向けてくる、こちらも、既に迷いは無いようだ。
「レンカ……さんでしたっけ」
背後から魔王軍らしき機体に話しかけられる、この特殊な機体に乗った女騎士は、もしやヒロ殿の言っていたチェルシー殿だろうか?
「ああ、私は敵では無い、と言ってもすぐには信じてもらえないだろうが……」
「いえ、信じますよ」
「……何故?」
あまりにあっけなく即答され、私の方が戸惑ってしまった。
「ヒロさんから、貴方の事を聞いていたんです、貴方は不器用だけど真っ直ぐで、素晴らしい騎士だって、私はヒロさんを信じています、だから、ヒロさんが信じている貴方を……信じます」
「そうか、感謝する」
「感謝するのはヒロさんにですよ」
「フッ、そうだな」
もう一度ヒロ殿に会ったら……いや、今からそんな事を考えるのは、よした方が良いな。
「私……忘れられてる……」
「あ、いえ、忘れてませんよ!」
「す、すまない」
私の頭に直接、か細い声が届けられる、声がした方を振り向くとそこには、弓を持った機体が、若干所在無さげに座り込んでいた。
「……私……シルフィ……宜しく……」
「あ、ああ」
そんな会話をしていると、ザドキエルが拳を振りかざして突っ込んできた。どうやら戦闘再開らしい……!
「重爆拳!」
「相変わらず、突撃するしか脳の無い!」
「難しい事は苦手なんでなぁ!」
一直線に突っ込んできた拳を紙一重で避け、カウンターで剣閃を奴の機体の肩口に切り込ませる、訓練で何度も戦った相手だ、その動きは既に読みきれていた。
「チィッ!」
「……!」
「地中から貴様が出てくる際には、必ず前兆がある、それを見極めれば!」
地中から奇襲を仕掛けようとしてきたミカエルだったが、仕掛けてくる直前に土が不自然に盛り上がる事を私は忘れていなかった、それに合わせて機体を跳躍させ、付き出された腕を避けながら、蹴りで相手を地上に引きずり出す。
「援護します!」
「……私も……」
その隙に、背後の二人が散弾と矢の雨を降らせた
「……!!」
「ミカエルの旦那!」
ミカエル機がザドキエル機を庇うように身を乗り出し、集中砲火を一身に受け爆散する。これで残りは二機……!
「くっ!手の内を知られている相手と戦うとはな!」
「旋昂風牙!」
ザフィエル機が飛行しながら風の刃を繰り出すが
「獄炎連舞!」
その刃は私の炎にかき消されていた。
「以前より力を増している……? 何故!」
「お前たちには分かるまい!」
騎士団として戦っていた時とは感覚が全て違ったように思える、まるで負ける気がしない、これほど清清しい気分で戦うのは初めてだった。
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空中で戦いを繰り広げていた俺と飛龍だったが、実力は互角らしく、まるで勝負の付く気配が無かった。
俺のプロミネンスアイやインフィニティブラストでの射撃を、奴はその巨体に似合わぬ素早さで避け続け、近接戦に持ち込もうとしても、双剣による斬撃などでは、奴の固い装甲に傷一つ付けることは出来なかったのだ。
こちらも奴の爪や牙、吐き出されるブレス攻撃を避け続けていて被害は無いものの、いつまでも続けていればこちらの気力が尽きるのは時間の問題であった。
そんな膠着状態の最中、上部のサブモニターに、突然あの武装の説明が表示された。
「ドラギルス?お前……」
「そうか、分かった、出し惜しみは無しだ!」
俺は意を決すると、一旦飛龍から距離を離し、双剣を合体させる、そして双剣は一本の巨大な光の剣に変化する
「一発強烈なのをお見舞いして、目を覚まさせてやる!」
その光の剣を、飛龍に向け思いっきり振り下ろす!
「シャイニング・ソード・ブレイカー!」
当たり一面を光の奔流が包む、その光が消え、正面を確認すると黒焦げになった飛龍がまだ闘志を失っていない様子で悠然と佇んでいた。ダメージは確かに入っていたようだが、ダウンさせるには足りなかったらしい、恐ろしい頑丈さである。
「何ぃ!」
飛龍が呆然としている俺に向け、一直線に襲い掛かってくる、反動で動きが停止している隙を付かれ、まともに体当たりを食らい、組み付かれる。装甲のひしゃげる嫌な音と共に、激しい振動が俺を襲う。
「お前、悔しくないのか! お前も、千年前は一緒に戦ってたんじゃないのか!」
ドラギルスに食らいつく飛龍をレバーを必死に動かして振りほどきながら、呼びかけるように叫ぶ、無駄かもしれないけど、何か言わずにはいられなかったのだ。
「くっそぉ!」
なんとか自由になった右腕の拳を、首筋に噛み付いている飛龍の頭部に向け発射する、その拳が命中すると同時に
「そ…こ…だぁぁぁぁ!!!!」
掌からインフィニティブラストを最大威力で放つ、こちらにもダメージが入るが、躊躇っていられない。限界を超えた照射で右手が自壊するまで放ったその一撃で、飛龍が観念したようにその動きを止めた。
「やった!、うん……?」
勝利の喜びもつかの間、モニターがブラックアウトし、レバーにもペダルにも全く反応が帰ってこなくなった、機体全体のシステムが停止したようだ。
「落ち……!?」
上空から為す術も無く数百メートル下の地上へ落ちていく、これで俺も終わりなのか…… そう思ったその時、突如として視界が一面真っ白に包まれた。あまりの眩しさに、思わず目を瞑る。
「ここは……?」
目を開けると、そこは当たり一面真っ白な空間で、俺の正面に一人の美しい少女が立っているのが見えた。真っ白な髪に神秘的な雰囲気を纏った美少女で、格好は何かの神官のようであった、凛とした瞳で真っ直ぐに俺を見つめている。
「私は、リュミル……今私は、貴方の心に直接呼びかけています」




