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第二十二話 蘇る紅蓮の業火

魔王軍が魔界奪還作戦へ向かってから数日後、私は魔王城の中を当てもなく歩いていた、虜囚の身であるが、魔王城の中だけならば、ある程度の自由は保障されていた。


「ヒロ殿は、今頃戦っているのだろうか」


中庭の椅子に腰を降ろし、戦で人が出払っており、いつもより静かな魔王城で、一人考えに耽る。


「ふう……」

「私には……何が出来るのだろうか」


 ヒロ殿の役に立ちたいという気持ちはあった、だが、具体的に何をすれば良いのか、そもそもこの状況で何が出来るのか、考えれば考えるほど、私の思考は迷路に迷い込み、暗く沈んでいくのだった。

 

「この気配は……!?」


 不意に、いつか感じたような、ごく小さいがそれでいて鋭い、鋭利な刃物のような殺気を感じ取る。もしやと思ったが、間違いない、これは奴の物だ、そう確信し、殺気を感じた地点、魔王城の外れの工房に辿り着くと、そこには、見知った者の姿があった。


「ほう……生きていたとは」

「ラツィオン!貴様何故ここに!」


そこに居たのは、十騎士の一人、"無影"のラツィオンであった。


「答える必要は無い!」


 素早い廻し蹴りを、咄嗟に腕を交差させて防ぐ、が衝撃を殺しきれずに、壁に激突する。


「ぐぅっ!」

「"獄炎"といえど丸腰ではな!」

「舐めるなっ!」


 突進しての追撃を、先程の衝撃で足元に落ちた工具で迎撃する、反撃を予想していなかったのか、その一撃は奴の腹にまともに食い込み、苦痛に奴の顔が歪む。


「ぐっ……やむおえん」


 不利を悟ったのか、目にも留まらぬ速さで、奴が工房の外へと逃げていく。


「待て!」


 工房の外に出ると、そこには奴の機体、無影機フォビドゥン・イレイザーの姿があった。


「貴様ごとここを破壊して、サンダルフォン様へのせめてもの手土産とさせてもらう!」


 工房ごと私を狙う無影機から、工房の中へ逃げこむ、そこに


「なんか煩ぇと思ったら、なんだありゃ!」


騒ぎを聞きつけたのか、髭面の職人のような男が、工房にやって来ていた。


「逃げてくれ、奴の狙いは……」

「うん?その髪、もしかしてお嬢ちゃん、あんた、レンカって子か?」

「ああ……そうだが」

「そうか! 丁度坊主に頼まれてた物が完成したところだったんだよ!」


 この男は何故面識の無い私を知っているのか? そう思う暇も無く、その男に強引に工房のある場所へ案内される。男に案内された先には、失われたはずの、私の愛機、獄炎機インフェルノ・クリムゾンの姿があった。


「これは……獄炎機!? どうして……?」

「坊主に頼まれてたんだよ、これが必要になるってさ」

「だがヒロ殿は私に何も……」

「坊主は言ってたぜ、俺は一人の女の子としてレンカにもう戦って欲しくないと思ってる、だけど、レンカが共に戦ってくれるなら、どれだけ戦いの助けになるだろう、そうも思ってるってさ」


 そんな事を、ヒロ殿は考えていたのか…… 私を一人の女として見てくれる事、また、戦士としての私も必要としてくれている事が、嬉しかった。


「だから、俺からは何も言えない、もしレンカが自分から戦いたい、その力が欲しいって言ってきた時にだけ、これを渡して欲しい、もしレンカがそう言わなかったのなら、魔王軍の誰かに渡して欲しいってさ、魔王様に頼み込んであんたが乗る許可も取ってきてたんだぜあいつ、それなのに別にあんたが乗らなくても良いなんてよ、まったく、気障な野郎だぜ」

「ヒロ殿……」


 私が悩み、道に迷っている間に、ヒロ殿は、私のことを考え、私がどんな選択をしても良いように、こうやって手を回して置いてくれたのだな、それも、私にそうとは言わずに、直接言えば、私への重圧になってしまう、そんなことを考えていてくれたのだろうか。


「で、どうなんだ、アンタはこいつが欲しいか?」

「ああ、私は欲しい、この力が、この力で、私はヒロ殿の、そして、この魔王城の人々の助けになりたい! 一人のレンカとして、そして……騎士として!」


 それは私の偽らざる気持ちであった、もし許されるのなら、私はもう一度騎士として、今度こそ誇り高く戦いたい、そうこの瞬間、私は決意したのだ。


「よっしゃ!もう動かせるようになってるはずだぜ」

「感謝する……ええと」

「親方でいいぜ」

「感謝する、親方殿!」


既に開いていた操縦席に乗り込み、かつてのように機体を起動させる。


「久しぶりだな、獄炎機よ、休んでいたところ悪いが、また付き合ってもらうぞ!」


 鋼の巨体に、力が漲っていくのが分かる、私の意志を受け取った機体は、ゆっくりとその巨体を軋ませながら立ち上がり、そのまま工房を襲っていた敵機へと、体当たりを掛ける。

 敵機は真後ろからの不意の攻撃を避け切れずに、そのまま吹き飛ばされる、工房から敵機を引き離そうとした行動だったが、どうやら成功したようだ。


「獄炎機だと!?」


 機体を立て直して奴が叫ぶ、突如現れた獄炎機に、奴は驚いているようだった、それもそのはずだ、奴はこの機体がすでに壊れているものだと思っていただろうからな。


「馬鹿な、貴様はもう、神霊力を使えないはず!?」

「確かにそうだ、私にはもう、神への信仰は無い」


 私の獄炎機を含め、騎士団の機体は、全て神霊力という力で動いていた、詳しい原理は分からないが、その力は操縦者の神への信仰心で変化するらしく、かつての私のような、強い信仰を持つ物ならば、強大な力を出す事が出来たが、魔王軍や今の私のように、神へ全く信仰を持っていない者は、機体を起動する事すら出来ないはずであった。


「ならば何故!」

「答える必要は……無い!」


 操縦席に置いてあったメモによれば、この機体は動力源を魔王軍の精霊機と同じ、搭乗者の魔力を変換する物に置き換えたらしい、だがそれでは私のような魔力を持っていない普通の人間は操縦できないはず、それについて親方殿に聞いたところ、魔力貯蔵機なるものを追加したという事を言っていたが、素人の私にはよく分からなかった。

 どうやら、機体正面の画面に表示されている数字が無くなるまでしか、機体を動かせないらしいが……

 なんにせよ、こうしてもう一度獄炎機を動かせているのだ、その幸運に感謝しよう。


「くっ、獄炎機相手に白兵戦では分が悪いか、ここは退かせて貰おう」

「待て!」

「さらばだ、無影転身!」


 奴が身を翻したと思ったその時、その姿は一瞬で消えていた、敵ながら鮮やかな引き際、さすがは"無影"とでも言ったところだろうか。


「逃げられたか……」


 機体から降りた私に、親方が話しかけてくる。


「助かったぜ、お嬢ちゃん、それでアンタ、これからどうすんだ?」

「ヒロ殿と合流できれば良いのだが」

「そういうことなら丁度良いぜ、俺もあっちへ行くとこだったんだ」

「しかし、あちらはもうカレキュラス平原に……」


 もう魔王軍が出立してから数日は発っている、今から獄炎機で追いかけたとしても、戦が終わるまでに駆けつけられるかどうか…


「まあ、普通なら追いつけねぇ、だけどな……こいつを使えば、どうかな?」


 その視線の先には、工房の地下からせり出してくる、巨大な鉄の塊の姿があった。



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