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第二十一話 決戦への前奏曲(後編)

「はい!?」


 いきなり結婚を申し出た彼女の言葉に、一瞬思考が停止する


「貴方の事……近くで観察してみたくなった……大丈夫……家事には自身ある…………」


彼女は俺をじっと見つめたまま無感情な口調で話し掛ける、相変わらず長い前髪に隠れて表情は読めない。


「いや結婚とかそういうのはお互いを良く知ってからじゃないと!」


 好意を持たれるのは嬉しいが、話が突然すぎるし、観察とか不穏な言葉も聞こえたし、ここは断っておかないと


「そういう……もの……?」


心底不思議そうな口調で返される、もしかして、結婚について良く分かってないのか?


「そもそも、結婚って何をするかか分かってますか?」

「男と女が……一緒に住む…………」

「いやそれはそうなんですけど、普通結婚って言うのは、お互いを好きあってる男女がするもので……まあ俺も経験無いから良く分からないですけど」


そもそもいわゆるお付き合いをした事すら無いのだが……


「……そう…………分かった……」


 彼女が頷く、どうやら分かってくれたようだ。


「なら……遠くから観察させてもらう…………」


 観察って何を!? と思う暇も無く


「……また…………合いましょう……」


別れの言葉を告げ、彼女は早足で去って行ってしまった。

 後には呆然とした表情の俺が一人残された、観察って具体的に何をされるのか少し気になったが、今度会った時にでも聞けば良いや、とあまり気にしないことにして、また歩き出した、考えても仕方ないことは考えない。それが俺の信条だった。


「レンカ、入るよ」

「ああ」


 軽くノックをして、レンカの部屋に入る、そして何時ものように部屋の中央のテーブルに座って向かい合う。


「ここの暮らしにももう慣れた?」

「そうだな、大分慣れた……と思う」


確かに以前よりは表情から固さが消えたような気がする、このままここに慣れていってくれたら良いんだけど。

 

 雑談をしていると、話題は自然に魔界奪還作戦のことになった。


「ヒロ殿も今回の作戦に参加されるのか……」

「大丈夫、レンカもドラギルスの強さは知ってるでしょ?」


 その言葉に、レンカは頷いては見せたものの、不安は隠せないようだった。


「私にも、何か出来る事があれば良いのだがな……」


 そんな事を話していて、ふと時計を見ると、いつのまにか時間が結構経っていた、もうすぐ寝る時間だ。

 

「じゃあそろそろ……」

「ヒロ殿! あっ、いや……」


 レンカが慌てたように帰りかけた俺に呼びかけた、何だろう?


「何? もしかして何か言い忘れた?」

「いや、そうではなく……もう少し……その、ここに居てくれないだろうか!」

「えっ……」


顔を赤らめたレンカは、懇願するような口調で告げる、いつも冷静なレンカからは想像できない様な表情だったが、正直そんなレンカはとても可愛かった。


「あ、いや、べ別に嫌なら構わないのだが」


 慌てて付け足したレンカの言葉が言い終わるのを待たずに


「別に嫌じゃないよ、俺もレンカと一緒に居ると落ち着くし」


ありったけの勇気で平静を装って答える、正直、心臓の鼓動が聞こえるくらい緊張していた。


「~~~~~~~!」


レンカはますます顔を赤らめ、そのまま座り込んでしまった。そういうリアクションを返されると、こっちも更に照れてしまう。

 結局それから俺たちは、しばらくそのまま無言でテーブルに座っていたのだった。


 そして、それから一週間と少し後、新型精霊機の量産が予定通り終わった魔王軍は、魔界奪還作戦を開始したのだった。

 

「これだけ並ぶと圧巻だな……」


 王都正門前には、ズラリと並んだ精霊機の姿があった、ここに並んでいるのは五十機程だが、進軍中に各地の軍勢と合流して、先端を開く頃には百五十機程の大軍勢になるらしい、俺はドラギルスに乗り、他の機体と少し離れた所からその隊列を見ていた。

 王都の城壁の上から、魔王が全軍に呼びかける


「勇敢なる魔王軍の兵士たちよ、時は来た! 今こそ横暴なる光神騎士団を打ち払い、我らの魔界を取り戻すときが来たのだ!」

「兵士達よ! 恐れるな、我らには、千年前の友誼に答え、我らに手を貸す龍神が居るのだ!」


魔王がドラギルスを手振りで指し示すと、立ち並んだ精霊機が、一斉に俺に視線を向けてくる。

 公の場で、沢山の人に注目された経験が無い俺は、緊張で何をしていいか分からなくなってしまった。一応オルガさんからは適当に立ってるだけでいいと言われているのだが。


(カッコいいポーズでも決めたほうが良いのかな……)


「いざ行かん、決戦の地、カレキュラス平原へ!」


 魔王が拳を掲げると、精霊機も一斉に拳を振り上げ、兵士達は歓声を上げたのだった。大勢の巨大な鎧たちが鳴り響かせる地響きと鬨の声の中、魔王軍は進軍を開始した、魔界を取り戻すために。




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