第十八話 過去からの来訪者
謁見の間に現れたティタニアルと名乗った女性は、穏やかに話し始めた。
「私は、あなたが龍神を駆るに相応しいかどうか。それを確かめに来たのです」
「相応しい?」
「あなたが龍神を駆るに相応しい人物ならば、龍神の半身を託す、それが我らの使命」
「かつて千年前龍族がこの世界を去るとき、あまりに大きな力が禍根となることを恐れた龍族は、その力を二つに分け、片方を魔族に、片方を我々エルフに託したのです、もっとも、魔族のほうは長い歴史の中でその事実を忘れてしまったようですが」
とういうことは、今のドラギルスはあれで半分の力しか持ってないってことなのか?
「なんで片方をエルフに?」
「我々は寿命の非常に長い種族であり、また争いを好まず、自分達の領域から滅多に出る事はない、だから信用できる、彼らはそう言っていました」
「実際エルフ族はこの戦争でも中立を保ち、自分達の隠れ里から出てくる事はなかった」
魔王が説明してくれた、つまりエルフは千年前から今までずっと表舞台には出てこずに、龍神の半身を守っていたってことなのか。
「私は実際に龍族と会い、彼らと話をし、そして託されたのです、龍神の半身を、そして彼らはこうも言っていました、もし龍神を再び駆る事が出来る者が現れ、そしてその者が龍神を駆るに相応しい者ならば、その者に力を貸してやって欲しいと」
「それって……」
この人もしかして千歳以上とか?そんな風にはぜんぜん見えないけど……
「あなたが龍神を駆るに相応しい者であれば、我々エルフ族は千年前の戦いと同様に、あなたや魔族と共に戦いましょう」
「俺があなた方に認められることで、エルフ族が魔族と騎士団の戦いに手を貸してくれるようになる、そういうことですか」
「その通りです」
「私からも頼む、実際エルフ族の魔力、魔法技術は郡を抜いている、彼らが我らに協力してくれれば、魔界奪還に大きな助けになるだろう」
「具体的に、どうやったら認めてもらえるんでしょうか?」
「それは私たちの里へ行ってから話しましょう、あなたの都合が宜しければ、私の方は明日にでもすぐに発てます」
「俺としては、魔王やみんなが助かるし、龍神機も強くなるっていうのなら、断る理由は無いです」
正直不安もあるけれど、これから他の十騎士と戦うのに、ドラギルスがパワーアップしてたほうが良いだろうし、リーゼ達の助けにもなるのなら、行ってみるしかないよな。
「礼を言うぞ、ヒロ殿」
「では明日」
そう告げると、ティタニアルさんは優雅に去っていった。
謁見の間から出て、自分の部屋に帰ろうと歩いていたとき、俺はある意味一番会いたかった人物と出くわした。
「チェルシーさん!」
「ヒロ……様!?」
「「この前は「ごめん!」「申し訳ありませんでした!」
「「えっ!?」」
まったく同時に頭を下げた形になった、俺はともかく、チェルシーさんはなんで?
「いや俺がいきなりあんな事をしたのが悪かったんだし……」
「私のほうこそ、いきなり逃げ出してしまって、実はその、そんなに嫌でもなかったんですよ、いきなりで驚いてしまって」
「いやいや俺が」
「いえいえ私が」
そのまま少し静止して、互いに顔を見合わせる。
「ぷっ」
「ふふっ」
「ははははは」「あははははは」
俺と彼女は、どちらとも無く笑い出していた、なんてことはない、どちらも謝る機会を探していただけだったのだ。
「なんだかお互いに謝ってばっかりで、変な感じになっちゃいましたね」
「そうですね……」
「あの!」
「はい?」
「改めてよろしくって事でどうですか?」
「ええ、ヒロ様がそれで宜しければ」
そう言って俺は彼女に右手を差し出した。
「俺はヒロ、ヒロ・シラカゼです」
「私はチェルシー・レミュラムと申します」
「じゃあ、改めて」
「はい、よろしくお願いします」
俺が差し出した手を、彼女が握り返す、これで取り合えずは一件落着……かな?
「そうだ、これを」
俺はポケットに入れていたペンダントを取り出す、今日リーゼ達と買ってきたものだ、魔除けや無病息災のお守りとして売ってあった宝石を、ペンダントとして加工してもらった、値段はそこそこしたが、ガブリエルとの戦いのお礼ということで魔王から結構なお金を貰っていたから、問題なく買うことが出来た。
「これは?」
「お詫びにって今日買ってきたんです、俺は正直女の子の好みとか分からないから、お守りってことなんですけど」
「そんな、頂けませんよこんな高価そうな物、お詫びとかそういうのはもういいじゃないですか」
困ったな、これで受け取ってもらえないと何の為に買ってきたのか分からなくなっちゃうし……
俺は無い知恵をひねり出して。無理やり理由を考え出す。
「うーん、じゃあ、お近づきの印ってことで」
「でも……」
「貰ってください、これは貴方の為に選んだものなんですから、俺が困ります」
ちょっと押し付けがましい言い方になったかも……
「そう言われると、断りきれませんね……分かりました、ありがたく頂きます」
そう言うと、少し照れくさそうにペンダントを付けてくれた。
「こういう物はあまり身に着けないので、少し恥ずかしいですね……」
「良く似合ってると思いますよ」
実際、彼女の褐色肌に赤いペンダントは良く映えていた、まるであっちの世界の女優さんか何かのようだ、そんな風に思った。
「それは……ありがとうございます……」
それから俺達は、少し雑談をして、別れた、エルフの里に行く前に、肩の荷が下りた、そんな気がしていた。
次の日、出かける準備をしていた俺をリーゼが尋ねてきた、俺がエルフの里に行く事を知って、見送りに着てくれたらしい。
「エルフ族の里へ行かれるのですか?」
「リーゼは知ってるの?」
「実際に行った事はありませんが、話だけなら、そこはまるで理想郷のようなとても素晴らしいところだそうです」
「へー、そんな所なんだ、ちょっと楽しみになってきたかも」
「お土産、期待していますね!」
「……それは確約できないけど、出来るだけ善処するね」
そんな事を話していると、エリィさんが小包のような物を渡してきた。
「ご主人様、これを」
「これは?」
「お弁当です、と言っても一食だけですが」
「わざわざ作ってくれたんだ、ありがとう、大事に食べるよ」
そして、伝令の兵士が俺を呼びにやって来た。
「ヒロ様、ティタニアル様がお呼びです」
「じゃあ、行ってくるね」
「行ってらっしゃいませ」
「ご無事で帰ってきてくださいね」
二人に見送られ、魔王城の正門へ向かうと、そこには既にティタニアルさんが待っていた。
「待たせてしまいましたか?」
「いえ、大丈夫ですよ、それでは行きましょうか」
「行くって、ドラギルスに乗ってですか」
「いえ、この杖を使うんです」
「杖を?」
「転移の魔法です」
彼女が杖を構え何事か詠唱した後、彼女の足元に半径40m程の巨大な魔方陣が浮かび上がった。
「この魔方陣の範囲に機体を動かして来て貰えますか?」
ドラギルスごと魔法で転移なんて出来るんだろうか、半信半疑だったが、言われるままに機体を動かす、機体を動かし終わり。
「では行きましょう」
彼女がそう言った瞬間、魔方陣が眩しく光り輝き、俺達はその光の中へと消えたのだった。




