第十七話 交錯する思い
魔王城の謁見の間、そこでは魔王が居並ぶ重臣から報告を聞いていた。
「では、銃とやらの配備は、もう可能であると?」
「はっ、工房によると魔王様の許可さえあれば、一週間も経たずに全精霊機へ行き渡らせることが出来ると」
「わかった、許可しよう」
また別の家臣が報告する。
「精霊機の量産の方も、既に予定通り進んでおります」
「そうか、いよいよ魔界奪還の時期が来たのかも知れぬな」
その言葉に、謁見の間の重臣達が色めき立つ。
「遂に、ですな」
「奴らに借りを返すときが来た!」
「そうだ!我らの魔界を取り戻すのだ!」
熱量を増していく謁見の間の中で、魔王は唯一人冷静な顔を崩さずにいたのだった。
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リーゼ達との買い物を終えた俺は、魔王城のある一室を訪ねていた、扉の両端で見張りをしている兵に軽く礼をしてから、部屋に入る。
「レンカ、今大丈夫?」
「ああ」
あの戦いの後、魔王軍の捕虜になったレンカは、扱いが決まるまでこの部屋にしばらく幽閉されることになっていた。
レンカと部屋の中央のテーブルに向き合う形で椅子に腰掛ける。
「ここでの暮らしに何か不満とかは無い?」
「ああ、大丈夫だ、ヒロ殿には感謝している、私の待遇について、魔王に頼み込んでくれたのだろう?」
「……誰からそれを」
「オルガと名乗っていた女性から教えてもらった」
レンカに知られるとなんか照れるから黙っててって言ってたのに……
「騎士団について私が知るかぎりのことは既に話した、これからどうなるかは分からないが、出来れば……」
「出来れば?」
そこでレンカは、俺の方をじっと見つめて。
「何か……ヒロ殿の役に立ちたい、そう思っている」
真顔で恥ずかしい事を言われてしまった、むちゃくちゃ照れる、顔を正視できない。
「ヒロ殿?どうかしたのか?」
「い、いや……」
そんなことを話していると、突然扉がノックされた。
「ヒロ様、魔王さまがお呼びです」
「魔王が?」
このタイミングは、正直渡りに船だった。
「行ってくるといい、私のことは心配しなくても大丈夫だ」
レンカは顔には出さないが途中で話を中断されて不満そうだ、また改めて話す機会を作らないとな。
「何かあったらいつでも言ってくれていいから」
そう言い残すと俺は、魔王の元へと向かったのだった。
謁見の間に着くと、そこには魔王が一人で待っていた。
「来てくれたかヒロ殿、早速本題に入ってよろしいか?」
「ええ」
そこで魔王は一旦姿勢を正すと、俺に向き直って話し始めた。
「魔王軍は本格的に魔界奪還に向け動き出すことになった」
「魔界奪還、ですか」
そういえば魔界の八割を占領されてるんだっけ。
「ああ、そこでヒロ殿に頼みたいことがあるのだ」
「頼みたいこと……」
なんだろう、改まって頼むってことは、ただその魔王軍に協力する訳じゃ無さそうだけど。
「そこから先は、私に話させて頂けないでしょか?」
声のした方を振り向くと、そこには神秘的な雰囲気に包まれた美女の姿があった。
服装は白のノースリーブのドレス姿で膝まで届く長い髪と大きな胸が目を引く、それ以上に特徴的だったのは、明らかに普通の人間とは違う尖った長い耳だった。
「あなたは…?」
「私はエルフ族の族長、ティタニアル・エルバースと申します、初めましてですね、龍神様」




