冒険者ギルド
なぜ現魔王がいるのに最高神は俺を魔王にしたのか。
なぜ人間の街に俺を降ろしたのか。
ユリオに聞いてみたが、返事は芳しくなかった。
『さぁ?』
「使えないな」
『ひっどwww
その性格、流石最高神が魔王に任命するだけあるわwww』
「冗談だよ。
じゃ、お城に入るからこれで失礼するよ」
『はいはーい。またねー』
電話を切って守衛さんに話しかける。
「すみません、街に入れてもらえますか?」
「身分証明書はお持ちですか?」
お、思いのほか丁寧な対応。
「……いえ、持ってないです。」
持ち物欄を調べてみたがそれらしき物は見当たらない。
「では、簡易のものを発行致しますので、これを持って商人ギルド、職人ギルド、冒険者ギルドのいずれかに行って下さい。
特にどれにも当てはまらない職業の場合は商人ギルドがおすすめです。
簡易版の有効期限は24時間となっておりますので、24時間以内に手続きをお願いします。
期限が切れますと、不法滞在扱いとなりますのでお早めにお願いします。
では、そちらで簡素なアンケートをご記入下さい。」
慣れた対応だ。
俺のような人間がよく来るのかもしれない。
規約同意書のようなアンケートを終えると、守衛さんが街に入れてくれる。
「ようこそ、ルファーナ王国へ!」
俺はありがとうと言って入国する。
街並みは思った通り中世ヨーロッパのようだ。
まずはギルドに行こう。
現魔王を倒すためにはやはり冒険者ギルドに行く必要があるだろう。
レベルとか上げなきゃいけないし。
レベルとかあるのか知らんけど。
冒険者ギルドはすぐに見つかった。
門の近くにあり、目立つレンガ造りだった。
入ってみるといかにも冒険者という風体のおっさんや、魔法使いのようにローブを纏った人などで溢れかえっていた。
受付は全員綺麗なお姉ちゃんだった。
分かってらっしゃる。
みんな可愛かったので俺は一番空いている列に並んだ。
しばらく待つとすぐ俺の番が来た。
ホントにこの列だけ凄く空いている気がする。
「ほっ、本日のご用件はなんでしょうか」
俺を認めると、栗毛がふわふわのお姉ちゃんが慌てたように対応してくれる。
メガネっ娘だ。
「えっと、身分証明書を発行したいんですが…」
俺はそう言って簡易身分証明書を出す。
「ん?身分証明書…?
し、少々お待ち下さい!」
お姉ちゃんは机の中から分厚い冊子を取り出すと、ペラペラとページをめくり始めた。
冊子を見ながらうーんと唸っている。
マニュアルだ。
こいつはマニュアルを呼んでいる。
なんかここだけ空いている理由が分かった気がする。
5分後。
「分かりました!
こちらの人物鑑定器に手を翳して下さい。
それでは行きます」
お姉ちゃんが人物鑑定器とやらのスイッチを押した瞬間、身体の中を不思議な感覚か通り抜ける。
「はい、出来ました。
間違いがないかお確かめ下さい」
お姉ちゃんは人物鑑定器からカードを一枚取り出し、こちらに渡そうとして、止まる。
そして怪訝な表情になり、呟く。
「………魔王?」
そして冒頭に戻る。