埋没少女とお友達(仮)その1
いい忘れましたが堅実な文章をお好みの方はバックをお願いします…って遅すぎましたね。
東に向いている私の部屋は朝から日がしっかり入る。
もともと寝付きも寝起きも良い私は、目覚ましをかけなくても日がカーテン越しに入るだけで毎日自然に起きることが出来るのでこの部屋を与えてくれた両親には感謝していた。
もちろん部屋に限らずなんの不自由もなくここまで育ててきてくれた両親には感謝している。
「…」
だがそれとこれとは別問題な案件もあるのだ。
「おはよー」
「おはよう、お母さん」
「あら、今日もお弁当?」
「うん、学食は邪魔が入るかも知れないしね…」
「殺伐としてるわねえ」
ははは。
「さーて、ママもご飯ご飯…」
「ああ、ご飯はお弁当に使い切っちゃった」
「?!」
何を言っているのかわからなかったのか一瞬間を開け、ざああっと目に見えて血の気が引いていくのが面白い。
直後台所に猛進して炊飯器の蓋を勢いよくあける母に人前では見せられない笑顔が浮かんだ。
わなわなとしゃもじを片手に打ち震えている背中に最後通牒を叩きつける。
「あと、食パンも昨日の朝食で無くなったよ」
「そんなっ」
勢いよく振り向かないでもらいたかった。
涙がマンガのように遠心力で飛び散りましたよ。
「なんの恨みがあってこんなことっ…それとママって呼びなさいって何度も言ってるでしょう?!」
「昨日娘に確認もせずにどこぞの素性もよく分からない男子と独断で夕食を許可した事を私はまだ許してませんが、冴子さん」
「うう…私のブドウ糖…娘はついに名前呼び…」
「そののほほんとした頭コーヒーでも叩き込んで少しはましになればいいのに」
ひどいひどい、とカーデガンのすそを引っ張り続ける母。
ひどいのはどっちだ。
昨日のあの後を思い出してこっちが血の気が引く。
自分の手で稼いでいないのにあんな高級な…
「…ちょっと、ゆなちゃん顔色悪いわよ?」
「ふ…誰のせいですか…」
「ママのせいだというの?!」
それ以外に無いと言っているのに。
「いまどき夜遅くまで出かける女子高生は幾分珍しくないでしょうが、仮にも男と二人きり!どうして私に一言も確認せずにゴーサイン出すのっ」
「だって、ずいぶんと礼儀正しい方だったわよ?」
「良いですか、この世の中いい人の皮をかぶった恐ろしい人たちもわんさかいるのですよ」
「あらやだ、ゆなちゃんったら深洋君とお友達なんでしょう?まだ」
…今凄く不穏な言葉が語尾に付着していたような。
渦中の虫も殺せませんというきらきらしい顔を思い浮かべぞっとする。
何を言ったあの王子。
「…まだって、なに」
「ええ、やだあ、うふふ」
…首をくくりたい。
「パパもねえ、電話口でがっしゃあんって音がしてね、ホテルのテーブル倒しちゃったんですって」
くすくすと無邪気に笑う母親にめまいがする。
いや、このまま倒れて夢オチにしてくれればどんなにいいことか。
「お父さんにも言ったの…」
「もうすごい剣幕だったわあ、『出張から帰ったら殴ってやる!!!』って、その言葉の間にイスもひっくりかえしてるのよ」
お父さんのあわてぶりが目に浮かぶようだ。
私が言うのもアレだが親バカがスーツ着てるような人だし、帰ってきたときの騒動が今から恐ろしい。
「あの、何言われたか知らないけど、そんな話じゃないから、向こうが私に何を血迷ったかちょっとした興味を持ったらしくて、えっと、」
「モテモテじゃない!」
そうじゃなくて。
「声も聞き惚れるくらいの美声だったわぁ…きっと美人さんでしょうね」
「あー、それは、まあ…」
あれ…ガツンと言ってやるつもりがどうして気おされているのだろう。
当の本人は会いたいの連呼でばしばしと私の背中をたたいて興奮状態だし。
よく見ればそろそろ家を出る時間だし。
(なんか、どうしてこうなったんだろう…)
答えてくれるまともな人がいないので、心の中でつぶやいた。