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埋没少女、火のない所になんとやらその3

「それはあんたの好きな人、て話?」


「え?」


意味わからん、と呟く菜々美。

こちらも理解ができません。


「あのさ、あんた堂々と告白されたわけでしょ。結婚を前提に」


「最後のが少し余計だけどね」


「じゃ、問題ないじゃん」


「え、ありまくりでは」


「そこまで言われたなら一生養ってもらえばいいじゃないの」


「は」


いやいや、そんな無謀な。

ぶんぶんと首を横に振り、ついでに手まで付ける。

にやにやと頬杖をつく菜々美におそらく真っ青な私。

あれ、これは一見したらいじめの場面とも取れるのではなかろうか。


「むりむりむり、絶対からかわれてるだけだってば」


「なんで。本気かもよ?」


かもよ、てそんな不確かな!!


「いいですか菜々美さん。このご時世石橋はたたいて割る勢いでなければ!」


「それもう渡れないけどね」


シャラップ!!!


「ていうかゆな、結局そのあとなんて言ってきたの?」


「え、無理ですって言ってきた」


「もったいない…」


心底残念そうにため息をつく菜々美に、代われるものなら…いや、隆也くんに泣きつかれそうだな。


「私だったら即OKしちゃうのに」


茶目っ気たっぷりにウィンクしてくる菜々美に脱力する。

どうして私が思ったことをそのままなぞるように言うのか。

こんな以心伝心は嫌だ。


「隆也くんがかわいそう」


「ふふ、冗談よー」


…本当に隆也くんが不憫だ。


「でも、なんでそこまで信じられないの?ちょっと頑なすぎない?」


「うーん…だって怖いくらいのイケメンだし」


「素敵じゃない」


「遠くから眺めてる分にはね。隣には立ちたくない」


「あんた…全校女子に八つ裂きにされてもおかしくないわよ」


なにそれコワイ。


「じゃあ仮に平々凡々な平均が服着てるような男子だったらよかった?」


そう聞かれて、ふむ、と考え込む。


「…少なくとも、告白されたって事を信じられはしたかな…」


「そっか、じゃあ僕はどうすれば信じてもらえるのかな」


「そうだなぁ…問題は華がありすぎることか、…な………?」


「あら」


にこにこと二人が座る机の傍らで微笑む王子様。

ぽかんと思考が停止したままの私の手を取りささっと立ち上がらせる。

なんていう早業。

でも、あれ、どうしてこの人がここにいるのだ?

状況が掴めずぐるぐる思考の渦にはまった私を置いて、王子はやっとその場にいたもう一人に目を向けた。


「おや菜々美さん、この子のお友達だったのですか」


すっと表情を消した深洋に、冷たい表情にさらされた当の本人はにっこりと頷く。

ゆなと違って菜々美は最初からこの男の本性を知っているのだ。

さっきまで根掘り葉掘り洗いざらい吐かせたので通常と違う深洋からゆなへの態度にも驚かなければ、自分への豹変にも動揺はしない。

ただ、ゆなは。


「そうですか。それでは申し訳ないんですが、彼女を貰って行っても大丈夫ですか?何か約束していたら申し訳ないのですけれど」


これをわかりやすく噛み砕くと「まあ約束していても連れて行くんだけどね」だ。

まったく何度目にしても変わらない強引さだと内心舌を巻く。


「ええ、約束もしてないですし」


おとなしく頷けばふわりと微笑まれる。

好きな人の友達だからサービスってところ?


ふしゅうと口から何か出ているゆなが少し哀れになってきた。

…ま、本心から言うと私もこんな煮て焼いた後揚げてその上蒸してもなお食中毒になりそうな男は絶対嫌だけど。


遠ざかる二人の背中を見つめる。

「…がんばれ!」


死に水は取ってやろう、と不吉極まりないことを一人誓った。

視点を分かり易くするため加筆修正を行いました(11/1)

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