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No.1 SCREAM

第四次世界大戦が始まった。

第三次大戦を越える核・化学戦争になることは間違いなかった。

日本を含む東西の陣営が支援する国籍不明の武装集団の存在も明らかとなった。

人々の間でも、ヘイトクライムや虐待が起こっていると言う。

日本月領を防衛する空自宇宙群S901飛行団の鷹野は、

それでも人々を守ろうと必死に指揮を取るが、

自分の属するものに疑いを持ちはじめていた。

鎮圧軍より、『停戦命令を受諾し指揮に従え。さもなければ攻撃する』

と命令が入った。鷹野は困惑するが、事態を解決させるために、命令を受諾する。


同じく『停戦命令』に従ったトウ大尉指揮下の東側の中国軍部隊が、

S901の飛行隊とともに基地に着陸する。

(My stories are fiction. 私の物語は架空の世界を描いた創作作品であり、

いかなる国家、組織、企業、団体、個人と関係は全くない。)


焦りと不安が心身を支配している。

航空自衛隊宇宙群の月防衛隊飛行集団S901飛行団基地司令部で、

司令官鷹野一等空佐は、司令部に続々と送られてくる状況報告や要請や命令を

要員らとさばきながら、悶々としていた。

地下に潜っていた自走坑道核爆弾により、日本や他の国々の月領都市が壊滅した。

「国籍不明の違法兵器」の存在や、それらが東西両陣営から密かに支援を受けた

民間軍事企業により使用されていることが明らかになった。

第四次世界大戦が始まった。地球上や、地球の国々の領域のある太陽系全域でも、

戦闘が始まっている。多くの人々が殺傷され、病院も機能不全に陥っている。

核攻撃や化学攻撃も行われた。

多くの地域が破壊され、汚染されたまま、人々を押し潰している。

多くの人々が、動けず、助けられず、苦しみながら倒れている。

そんな中でも、東西同士の武力侵攻が始まっている。

そうした断片的な情報が彼を不安にさせていたし、

飛ばした部下たちが戦闘状態に入り、

損害まで出ていることに苦痛を感じていた。

撃墜された機体の搭乗員たちの状況も全くわからない。

政府の命令で、『自衛のための核迎撃を行う』ことになったのも、苦痛だった。

だが覚悟はしていたつもりだ。それに、背くこともできない。

だが、彼の指揮下にある部隊の機体は、大型のFAR-77重戦闘攻撃噴進機が主力であり、

それは重武装でありながら長期間の作戦行動も可能で、

長い連続噴射時間による加速も可能な、強力な機体だった。

強硬化し防衛のための戦争を推す政府は何を言ってくるかわからない。

自分の部隊が、敵基地に、敵の領土に核攻撃することになるかもしれない。

そんなことは、させたくなかった。だが、戦争が始まってしまった。

これから何が起こるか、何が始められるか、わからない。


彼が飛ばした哨戒噴進機の部隊からは

『爆撃により地表の商用物資集積拡散場が破壊されている』

『地下国道に通じる道路が入口ごと破壊されている』

『崩壊した都市に閉じ込められたと無線傍受した』

『地中貫通爆弾により、上層の地下国土が曝露されている。』

『地下国土内で大火災が発生して、避難場所もないと緊急通信が来た。』

『不審船舶が漂流してくる』

と言う情報が仕切りに入ってくる。

救難部隊に連絡しているし、部隊は向かっているが、その後が一切不明だった。

彼らも攻撃されたのか?

『不審船舶』は敵の攻撃噴進艦艇ではないか?

その後も、入ってくる情報は全て恐ろしいものばかりで、

救難部隊が対処に当たっているという情報はなかった。

爆撃は続いているようだった。

幕僚たちにも、人々の救難も徹底するように再度伝え、

他の部隊への連絡も行わせた。

自らの部隊にある機体で使えそうな機体は飛ばそうとしたが、

それでも敵は攻撃してきており、人々を見捨てて敵を倒さねばならなかった。

政府は『迎撃を徹底せよ』と言ってきている。


開戦直後、『日本領に接近するあらゆる脅威を排除』すると言う命令があったが、

その脅威が、一切わからない。誰が脅威なのかわからない。

明らかに東の敵とわかるのもあるが、戦闘に巻き込まれた民間噴進船舶なのか、

それとも、国籍も所属も不明な民間軍事企業の「違法兵器」なのか、

判断がつかなかったりした。「国籍不明船舶」と遭遇した自分の部下たちが、

拿捕するための呼びかけ通信の途中で撃墜されたりするのをもう5度も聞いた。

猛烈な怒りが湧いてくる。

国籍不明だろうが、明らかになったように敵国に違いない。

撃墜してやると言う気持ちを振り払いながら、開戦から3日が経過した。

みだりに撃墜したりすれば、敵国は戦争犯罪の証拠として取り上げるはずだ。

それに、自分の部隊に命令された『外国船籍の民間船の安全区域への護送』に、

鷹野は疑いを持っていた。もしかすると、自分もまた、

その違法兵器である「国籍不明船舶」の行動を幇助したのではないかと苦しんだ。

だが幕僚や部下たちには絶対に言わなかった。


彼の部隊は核爆装して飛び立っていた。戦略兵器を迎撃するためだ。

敵軍に与えた損害は甚大だった。多くの戦力を倒した。

だが、壊滅した都市や撃破された友軍の数も同時に増えていった。

中には、自爆して迎撃を達成した者もいた。

しかし、状況は一切良くならないどころか、さらに酷くなっている。

S901基地も、もう防空戦を戦っていた。手に負えない負傷兵と、

近隣の、多くの民間人のいる地下多層国土を抱えて。

地下多層国土が心配だった。その都市からは、『警備部隊を増派してほしい』

と連絡が来ており、『ヘイトクライムが起こっている』とも頻繁に通報があった。

『警察や消防も被害を受けている。排外主義的な集団が犯罪を煽っている。』

警備隊は増派した、もしもの時は非致死性制圧ガスの使用も許した。

いったい、なぜこんな酷いことばかり起こるのだろう。

もしS901が壊滅すれば、彼らもまた壊滅する。

核兵器や化学兵器による攻撃とともに、

状況を考えれば、人々の間でも、恐ろしい虐殺が起こるはずだ。

生き残ることは難しいだろう。


他国との戦闘も、国籍不明との戦闘も続いていた。

重要な情報もいまだ断片的であった。

基地の観測隊が、

「地震計が異常な数値を示している。」

「近隣の地下国土周辺の地中で、大きなものが崩れる音が聞こえる。」

「光学観測で、核爆発らしきものを捉えた。」

と言ってきている。

また、民間船舶や民間の病院噴進船、地上に展開した救難部隊などが

誤射されているという情報も入ってきた。こちらが誤射した場合もあるらしい。

鷹野は怒りとともに疲労していた。喉の渇きが絶えない。

手汗が滲み出てくる。

それでも、司令官としての職務を全うしなくてはならない。

幕僚たちや基地に所属する部隊とともに、

必死に冷静になって、少ない情報を見て指示を出していた。


電子戦機が『東の敵も国籍不明と戦っているらしい』と言う情報を傍受した。

敵の通信を見ると、『誰が敵なんだ』と言う声があったと言う。

敵軍も自分達も、皆、誰かの汚らわしい欲で殺されている。そんな思いが浮かんだ。

自分たちの属しているものは一体なんなのか?


副官が驚きに満ちた顔で、鷹野の前にやってきて言った。

「宙義、宙縁の両国軍が委員会から鎮圧旗を拝領して、

国家間の戦闘中止を勧告し、その受諾を示す信号を全周波数の通信、

発光信号で流し白旗を掲げろと言っています。

また、国籍不明の存在は撃破せよとのことです」と告げた。

突然のその情報に、しばらく何も答えは出なかった。

鷹野は噴き出しそうになる苛立ちを副官に浴びせまいと抑えながら、

「だが国家間の戦闘もいまだに続いているじゃないか」となんとか言った。

ブザーと共に『敵発見』を告げる飛行隊の通信が、鷹野の言葉を強くした。

戦術攻撃噴進機が五機、S901基地に接近していると言う。

それでも副官は言葉を継いで、

「国家間の戦闘を中止しない限り、核兵器を含む全戦力を持って攻撃すると言っています。

もし中止しても攻撃されている場合は、自衛戦闘のみ正当とし、援軍を送るとのことです」

疲労した彼の脳はその言葉が理解しかねた。

こちらはずっと、自衛戦闘だけ必死にやってきているのに。

どうすればいいと言うのだ。

言うとおりにして自衛戦闘をすれば、本当に助けてくれるのか。

それに、核攻撃まで辞さないなどとは、破滅的にも程がある。

もうすでに核爆撃を受けたところはたくさんある。

地球内の国同士で撃ち合ったのだ。

我々だって撃った。

助けようがないほどの被害が出ている。

それなのに、彼らは、核を使うという。

地球の国々も、日本も、戦争をやめたりしないだろう。

むしろ、逆撫でするようなものだ。

こんな状況でそんな宣戦布告は、虐殺に等しい。.....自分が言えることではないが。

だが、彼は宙義と宙縁の軍事力と、彼らのその使い方を思い出した。

共同演習や、宇宙交通線の防衛についての情報交換も行ったことがある。

表に出している軍事力も強力で、技量も充分とわかっていたし、

潜在的な能力も大きいだろうと予測がついていた。

そんな彼らが地球の国々と争わず、国籍不明の敵と、自分達と同じく

平時から戦っていたことも知っている。...彼らは誰が敵か知っている。

そう、敵とは、地球の国々の政府や陣営に入り込んだ、悪虐で欲深い連中ではないか。

もう迷うことはない。どうせなら、本当の敵を知っていて、

それを倒そうとする者たちと戦うべきだ。

立ち上がってすぐ、

「わかった。鎮圧軍の言うとおりにせよ。すぐに戦闘停止命令を全周波数で流せ。

接近している相手にも伝わるように。自衛戦以外は禁じる。基地内放送もする。

我々も、相手も、国籍不明の敵に惑わされていると言うことも伝える。」

放送とともに、迎撃に飛び立っていた飛行隊にも緊急命令を出した。

飛行隊からは困惑混じりの応答があり、寸前で戦闘は回避された。

飛行隊はもう少しで機対高速目標ミサイルを発射するところだった。

敵東側部隊からの声も聞こえてきた。

『S901の指揮に従う』と彼らは言ってきた。


東側中国軍機がS901の飛行隊と共に着陸する。

S901の飛行隊が例を示すように着陸し、

待機していた中国軍機はそれに倣う様に着陸した。

着陸場や駐機場は破損しており、修復も完全ではなかったが、

どちらもうまく着陸することができた。

中国軍部隊は、トウ大尉指揮の戦術攻撃大隊所属の5機で、

威78Aという複座型戦闘攻撃噴進機を装備していた。

鷹野は、機体は一時的に預かることになると伝えた。

トウ大尉たちは、警務隊員に拳銃やナイフや装備品を渡して自ら武装解除をし、

警務隊からの脅威探知スキャンを受け、何もないことを示した。

鷹野たちは日本政府や西側陣営の判断によらず、

トウ大尉たちを捕虜ではなく保護した軍人として迎え入れた。

そして、互いの情報を交換しあった。

トウ大尉を含む搭乗員9名が、鷹野に招かれた部屋に整列していた。

S901基地を爆撃するために来たが、

鎮圧軍の通信と鷹野の通信を聞いて、戦闘をやめたと言う。

鷹野と中国軍搭乗員たちが話をすると、

「自分たちも、あなた方の言うような、『不明な敵』と戦ってきました。」

と、指揮官のトウ大尉が言った。

自分達が、誤った方向に進んでいたことを確認しあった。

トウ大尉も鷹野の考えに同情し互いに苦渋の味を噛み締めていた。

トウ大尉たちは、「絶対にあなた方に迷惑をかけたり、卑怯な真似はしない」と誓った。



「鷹野司令、何をするかわからない敵国の軍人ですよ」と他の隊員たちから指摘されたが、

鷹野はトウ大尉たちを信頼していた。

彼らは自ら、固まって行動し、警務隊員の監視を受けるようにしていた。

常に決まった、許された位置にいた。

基地の中では、トウ大尉たちは元々敵であったこともあって、奇妙な存在だった。

だが、一切不審なことはしない。

もし不審ならば、脅威探知スキャンでわかっているはずだし、

いまでもすぐに警報が鳴っているはずだ。

鷹野は隊員たちに、「彼らは軍人であって、卑劣な不明の敵ではない。」と諭した。

「もし卑劣な敵ならば、彼らの電子戦兵器で飛行隊は全滅していたろうし、

そうでなくても、着陸寸前で上昇して、この基地を爆撃していただろう。」


トウ大尉たちは、鷹野から遠慮せずにくつろいでほしいと言われていたが、

食事の時になっても、トウ大尉たちは遠慮していた。

自分たちの装備品から非常食を取り出して隅の床に座っている。

確かに重い空気が間にあるようだったが、

ある一等空曹が「席は空いてます。遠慮しないでください。

皆さん、お疲れになってるようですから…..」と中国語で話しかけた。

他の隊員にも緊張の色を出しながらも、手招きしたり頭を下げている者がいる。

なんとか、彼らは一緒になれた。自分たちが殺し合いをしていた事や、

元は敵と味方という関係だった事から、ぎこちなさや気まずさはあったし、

終始口を聞かないものも顔をあまり見ないようにする者もいたが、

目立った対立は起こらなかった。

鷹野が事前に行った放送が功を奏したのかもしれない。

「君らも、不明の敵と戦っていたのか.....」


だが他の戦域では、勧告を無視して戦闘を続ける

『暴走部隊』が敵味方問わずあり、混沌を極めていた。

鎮圧軍は彼らのことをそう呼んでいた。

『暴走部隊に従ってはならない。すぐに戦闘を停止して鎮圧軍の指示に従え。』

と鎮圧軍は放送しているのだ。

その暴走部隊の一部が、S901にやってきた。

上空に残って警戒を続けていた哨戒噴進機スクリーム5からの緊急情報が入り、

東側の大型の攻撃噴進機3機と無人攻撃噴進機9機が迫り、

彼らを迎撃しようとする、西側の強力な核ミサイルを搭載した

戦闘攻撃噴進機10機と、S901を通過しようとする核攻撃部隊も、

こちらに迫っている事がわかった。

空襲警報が鳴り響いた。

司令区画には、鷹野たちのほかに、トウ大尉もいた。

それぞれの暴走部隊は、鷹野たちの呼びかけにも、

中国軍部隊指揮官トウ大尉の声にも耳を貸さない。

西側の部隊から『支援命令』が繰り返し発せられていた。

このS901は鎮圧軍の指揮下に入ろうとしている。

その情報は鎮圧軍には届いていないらしいが、鎮圧軍に従うのだ。

『支援命令』は無視しなくてはならない。

そうしなければ、基地も地下多層国土も全て破壊される。

何度も双方の部隊に呼びかけたが、相手は言うことを聞かない。

鷹野は基地を放棄し、全員を直ちに避難させることにした。

彼らの戦闘で、基地はもはや耐えられないだろう。

近隣の地下多層国土には、もうすでに避難命令を出していたが、

核攻撃に備えてさらに厳重に防護するように厳命した。

基地の防空兵力は消耗しているし、それらを使っても損害が出ることは確かだからだ。

地下多層国土より上層にある基地が盾になっても、それは変わらないはずだ。

どちらが勝っても、大変な被害が出ることは、絶対に間違いがない。

基地内のすべての人員の避難が間に合うかはわからない。

だがすべての人員に避難を呼びかける放送を行おうとした。

その時、基地から緊急発進しようとする噴進機があった。

S901の飛行隊残存機の一部と、基地に収容していた中国軍部隊だった。

中国軍部隊の機体は、地下でも上層の区画にあり、

そこは与圧されておらず、すぐに発進できる場所だった。

考える暇も止める暇もなかった。

警務隊からは、『基地飛行隊員とともに中国軍パイロットが機体に乗り込んでいった』

と通報があった。

S901の機体は地下発射場からすぐに飛び出していく。

それを追うように、中国軍部隊機が離陸し上昇していく。

それぞれ傷ついて完全とは言い切れない状態だった。

差し違えるつもりか。

制止も聞かず、少ない燃料で飛び上がっていく。

暴走部隊に向け、『鎮圧軍の勧告に従わないなら撃墜する』と発信して彼らは飛んでいく。

敵がS901基地にたどり着くまでまだ時間はある。

だが飛び立った飛行隊と暴走部隊の距離は縮まっていく。

『打ち合わせ通り、飛び込んで自爆するんだ。そうするしかない。』

という飛行隊の通信が聞こえてきて、

鷹野とトウは震えた。すぐ戻るように伝えたが

『こうするしかありません。ミサイルを撃ったところで終わりそうにない。間に入って道連れに…』

ここでものすごい音量で割り込み通信が入った。

『日本国空自宇宙群S901に告ぐ。こちらは宙義・宙鎮軍軍艦、DR-519である。

戦闘を中止せよ。さもなければ発射したミサイルを起爆する。戦闘放棄を示せ。あと二分』

秒読みが開始された。

鷹野はすかさず『待ってくれ。こちらS901。うちから飛び立った飛行隊が、

敵編隊に向かってるんだ。これは自衛戦闘だ。』

飛行隊からは『間に合わないですよ』と聞こえた。

暴走部隊と飛行隊の距離は縮まり、

鎮圧軍のミサイル群は、飛行隊と暴走部隊の間へ向けて飛んでいた。

双方に被害が及ぶことは確実だった。

DR-519からは『そちらの飛行隊を戻せないのか。もう時間がないぞ』ときたが、

どう考えてもすぐには戻せそうにない。最高速度で敵に向かっている。

『ブースター切り離せ。主機点火五秒前』

『日本機に合わせ増速。編隊を組む。一緒に行くぞ』飛行隊の通信が入ってくる。

彼らはもう戻ってこない。鷹野も、トウも、決心した。

「こちらS901。飛行隊に...よろしくねがいます。」

彼らは応えることなく、ただ暴走部隊へと突き進んでいく。

聞こえてくるのは突入手順の確認と命令だけだ。

『電子及び光学妨害開始、囮発射せよ』

『ミサイル確認。囮作動』

『こちらも電子戦闘。日本機を守れ。』

西側の迎撃部隊から『一体なんなのか、どちらの味方なのか』と問い合わせがあったが、

彼らは無視している。鷹野は『君たちが戦闘をやめないからだ』と暴走部隊に言う。

彼らは憤激と共に『どう言うことなんだ』と叫んだ。

S901から飛び立った日中の飛行隊は、

ただ自分たちを邪魔するあらゆる存在を排除しながら、

暴走部隊に全速で接近していく。

DR-519からは『もう40秒だ』ときた。

飛行隊と暴走部隊の間はもうないに等しい。

どちらも譲らない。戦闘が行われている。

暴走部隊は西側も東側も要領を得ない混乱した言葉ばかり並べ立ててくる。

ミサイルも接近している。戦闘は続いている。

飛行隊は、西側と東側全ての機体を撃破するつもりだった。

暴走部隊の編隊が乱れ、爆発する機体が画面に映されていた。

逃げる者には追い縋っている。

飛行隊から『全通信遮断せよ。ありがとうございました』と最後の通信があり、

哨戒噴進機スクリーム5やレーダー、センサー、光学望遠鏡の情報をもとに映される

司令部の画面に表示される表示も、さらに不鮮明になってきた。

それ以降は傍受した暴走部隊の混乱し切った声と、潰れる声、悲鳴、

DR-519からのミサイル起爆の秒読みが聞こえるだけだった。

秒読みは止まることなく、0まで近づいていく。

鷹野とトウ、基地の人員たち、

哨戒噴進機スクリーム5の搭乗員たちがただそれを聞いている。

DR-519からの秒読みが『1』と言ったあと、

裂けるような雑音と警報音と共に、『たすけてくれ』と叫ぶ声が聞こえた。


哨戒噴進機スクリーム5からは、

『複数の大爆発を確認…残存する飛行物体なし。破片が見えます。

脱出者…今の所見えません。反応もなし。捜索を続けます。』

鷹野やトウたちも、画面で確認していた。

敵味方やミサイルを示す表示が、スクリーム5を除き消滅している。

鷹野は「スクリーム5、生存者の捜索を続けよ。基地からも捜索隊を出す。以上。」

そして「鎮圧軍DR-519、こちらS901基地司令官鷹野一等空佐。

こちらの日中の飛行隊とあなた方のミサイルにより、暴走部隊は消滅しました。

ただいまより脱出者の捜索を行いますのでよろしくお願いします。

我々はあなた方の指示を受けます。どうぞ」

DR-519からは了解の応答と、

『こちらも脅威の消滅を確認した。S901の戦闘放棄を認め、

鎮圧軍指揮系統への組み込みを命ずる。感謝する。』という声が聞こえて一旦途切れた。



鷹野はトウの方を見た。

トウは室外へ出ていく。

鷹野は追った。直感で彼は自殺するとわかったからだ。

トウは、暗い廊下に跪いて、

震えた声で「…自分は、」と独り言を繰り返し言っている。

ホルスターから拳銃を抜き取った彼は自らの体に突き立てた。

鷹野はすかさずトウを掴んで、自分の方を向かせ言い聞かせた。

「死んではいかん。トウ大尉、気持ちはわかる。自分もあなたも、

大切な人々を亡くしてしまった。だが後を追ってはならない。

自分を殺してはならない。我々には、救わねばならない人々がいる。

できるのは、我々だけだ。まだやるべきことがたくさんある。

挫けてはならない。死ぬまで…死ぬまでな」そう言って肩を撫でた。

トウはただ、「そうでした…ありがとうございます」といい、

ホルスターから抜いた拳銃を置いた。

皆沈痛の思いでいた。もう終わりにしてほしい。

そういう気持ちが皆の中にあった。

だが、まだ何も終わっていない。


その後も鎮圧者であるDR-519からの問い合わせがあり、

鎮圧部隊の上陸があることと、

まだ別の部隊同士の暴走が終わっていないため、

情報提供や鎮圧支援命令などを受けた。

多くの国々が、未だに戦争をしていた。

日本もまだ、鎮圧軍の命令の従っていないという。

また、恐ろしい噂も聞いた。

対処が全く難しい状態の兵器が多数あると言う。

鎮圧軍や、同じく指揮下に入った部隊から新たな人員や機体も加わり、

残っていたS901の戦力や、残されたトウ大尉の機体も修復された。

任務が与えられ、忙しさが甦ってきた。

第四次世界大戦は終わっていなかった。

壊滅した都市、爆撃で吹き飛ばされた地殻、

崩壊した建造物の下敷きになり助けを求める人々に発射される火焔、

焼かれる人々、次々に撃たれる人々、暴行を受ける人々、

次の攻撃に向け動き回る部隊、避難先で攻撃を受ける人々、

捨て去られていく人々、虐待される人々、虐待する人々、

充満していく化学兵器、核攻撃による破滅の恐怖….


全てはまだ序盤でしかなかった。

まだ何も終わりはしない。

だれも救われはしない。

そして、全てが始まったわけではない。

だが、挫けてはならない。

この作品は、他で投稿していた過去の作品を修正、リメイクしたものです。


最後に書いた文は、

希望ではない。

希望なんかではない。

これからさらに恐ろしいことが起きる。

でも、挫けていては、さらに酷いことになる。

自分も悪い自分に負け、

誰かを傷つけるかもしれない。

だから、挫けてはならない。

そう思っています。


ただ、自分が本当に挫けずにいられるか、

わからないです。

挫けたくはない。挫けてはいけない。

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