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『異世界で炊きたてご飯が最強すぎた件 ~炊飯器スキルで農業革命はじめました~』  作者: 七生(なお)。


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第10話 男の娘

「それにしても、今日のおにぎりは変わってんな」

「焼きおにぎりって言うらしいぜ。たまにはこういうのもいいな」

「同感だ……おっ、味噌を塗って焼いてあるぞ」

「こっちのはしょう油か。この焦げたところいいよな」

「ああ。もちっした味噌もいいが、しょう油のカリッと香ばしい食感も捨てがたい」


 倉庫の窓から外を覗くと、いつかの衛兵二人が拳サイズの焼きおにぎりを頬張っている。

 味噌が出来て間もなくしょう油も完成し、王宮では料理のレパートリーが飛躍的に広がったのだ。

 そして俺は、せっかくのニーズに応えるためにも、倉庫に籠って味噌としょう油を大量生産中。それぞれ壺や樽に入れるのだが、運ぶのがひと苦労である。


「勇者様、出来た物からどんどん運んでください」

「うーっ、重い。ちょっと休ませてくれよ」

「きゅ~っ」


 固有スキルの秘密保持のため、作業は俺とマリンのみ。

 弱音を吐く俺を、ハム太がつぶらな瞳を潤ませて見上げている。


「ありがとうハム太。俺を心配してくれてるんだな。そろそろ休憩しないと体が持たないな」

「勇者様ともあろうお人がだらしないですね。私だってこんな重い物を運んでいますのに」

「お前は、力なんて要らないだろうが」


 マリンはひと抱えもある味噌樽を運んでいるが、こいつは風の妖精の力を借りている。なんでも炊き立ての黄金米をお供えしたところ、精霊たちが急に言うことを聞くようになったらしい。キラキラした光の粒子が樽を包むように揺れている。


「私の働きは精霊込みですから。それより式典まであと少しですよ。もうひと働きしましょう」

「分かってるって」


 アルベルト国王の即位記念式典には近隣諸国の要人が招かれる。そこで近隣諸国立会いの下、商人たちと新たな貿易協定を結ぶ予定なのだ。

 麦にかわり、黄金米を新たな輸出の柱としたい俺たちにとって、味噌としょう油はご飯のお供として不可欠。少しでも多く造りたいところである。


「ふう~。あと少しだな。よいしょっと……アガッ!」

「キュピーッ!」

「勇者さま?」


 しょう油の入った樽を持ち上げようとした瞬間、“ピキッ”という音がした気がして、気付けば俺は床にはいつくばってしまった。


「痛てててて……」

「キューッ!」


 ハム太の声に顔を上げると、ハム太が眩しい光に包まれている。


「え? こ、これは一体?!」


 やがて光の繭は旋回しながら大きくなっていった。


「ハム太!」

「勇者様、これはハムちゃんが固有スキルを使っているのではないでしょうか」

「固有スキルって巨大化だろ? こんな狭い倉庫の中で大きくなっても身動きが取れないんじゃないか」

「いえ、なんだか様子がおかしいような……」


 光の繭は、やがて俺の肩の高さくらいになると、糸がほどけるようにほろりと崩れていった。


「こ、これは?!」

「きゃーっ!」


 俺とマリンの視線の先には、パールホワイトの毛皮を一枚羽織っただけの小柄な男の子が、生まれたままの姿でうずくまっていたのだった。



 ◆



「こ、コホン。そうか、そうか、つまり君はハム太なんだな」

「はい、そうっす! ……あっ、スイ様、ご無理なさらず。横になっていて欲しいっす」


 ベッドから身を起そうとする俺を、色白の美少年がそっと支えてくれた。

 色白の肌に大きな黒目。髪の毛は鮮やかな栗色でどこかハーフっぽい顔立ち。半ズボンの執事服が良く似合っている。鑑定するとレベルが3になっていた。


「そういや、ハム太はどこまでの記憶があるんだ?」

「こっちの世界のことは全部覚えてるっす。元の世界のことでしたら、スイ様にキャベツをもらって食べたことが一番古い記憶っす」

「ということは、ハム太がうちに来て少し経った頃だな。確か理科の吉竹先生からひまわりの種は控えた方がいいって言われておやつは野菜にしたからな」

「自分スイ様に大切に育ててもらって感謝してるっす。いつか恩返ししたいって思ってて……。それがこうして従者になれて夢のようっす!」


 ハム太はそう言うと、小さな鼻を人差し指で軽くこすった。

 この子がハム太だなんて信じられないが、両手のぷにぷに肉球に加え、鑑定してみると確かに【固有スキル(巨大化レベル2)】とある。レベルが上がって人型(ショタ方面)に進化したようだ。


「それはそうと、ハム太はいつから人間の姿になれるようになったんだ?」

「それが、さっき倉庫でごスイ様が倒れられたときっす。自分が代わりに働こうと思ったら、いつの間にかこんな姿になってたっす」

「ハム太。お前はなんていい子なんだ……」


「コホン」


 俺が涙ぐんでいると、わざとらしくマリンが咳をして割り込んできた。


「とにかく、ハムちゃんはあくまで従者なんですから、夜は元の姿に成ってケージで寝てください。くれぐれも分をわきまえること」

「マリンが言うことじゃないだろう」

「いいえ。言わせてもらいます。今、メイドたちの間では、勇者様のスキャンダルで持ちきりなんですよ」

「アホか! ハム太は男の子だぞ」

「全裸の男の子と足腰が立たなくなった勇者様が、立ち入り禁止の倉庫から出てきたのですから当然です」


「な、なんて想像してんだよ!」

「自分のせいみたいで申し訳ないっす」

「ハムちゃんは勇者様のペットなんですから、はやく人化をといて元の姿に戻ってください」

「ちょっと待て。ハム太は俺の従者で命の恩人なんだぞ」

「でも……」

「ハム太は今のままでもいいぞ。もちろん元の姿の方が楽ならハムスターでもいいし、好きにして構わないから」

「スイ様。それが自分、元の姿に戻れないみたいっす」


「「え……?」」


「多分、何かのきっかけで元に戻るとは思うんすけど、自分ではうまくコントロールできなくて……」

「そうか。じゃあ、ハム太は当分その姿のままでいいよ。俺のベッドを使うといい。俺はソファーに移るから……よいしょっと」

「そんな、スイ様、とんでもないっす~」

「ぐぬぬ……。な、なんだか扱いが私と違いすぎるのですが……」

「あっ。自分が床に寝るんでマリン様はソファーを使って欲しいっす」

「まあ。ハムちゃんったら、なんて優しい子なの~♪」


 マリンはハム太に抱き着くと、ハム太の両手を掴んで掌の肉球をぷにぷにし出した。


「ハム太、あまりマリンを甘やかすなよ。俺たちはこいつらのせいでこの世界に無理やり呼ばれてんだからな」

「はい……」

「しかも、こいつらは、ハム太のこと畑を荒らす害獣と決めつけて酷いことをしたんだぞ」

「勇者様、今更そんな……せっかくみんな忘れてることを思い出させないでください~!」


「……じゃあ、やっぱマリン様は床っすね」

「なんでそうなるのよ!」


 結局、この後マリンが泣いて駄々をこねたせいで、俺の部屋にベッドが三台置かれることになったのだった。



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― 新着の感想 ―
確かに、床が妥当だなぁ。 それはそうと。 ついに獣人に変身か。 肉球、どんな感じなんだろ。 ニキュニキュの実みたいな感じなのか????
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