表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【怪談・短編】箱  作者: Dostoicski
<3>
9/10

<5>(1)

(1)


「……ハッ!」


 重い(まぶた)を開けると、暗闇の中だった。

 身体を動かそうとするも、私を阻む四方の壁と、仄かに感じる(けやき)の香り――


「ここは……物置の木箱の中か……!」


 私は狭い木箱の中で、(ひざ)を曲げて尻を付いていた。


 そうかあの時、木箱に落ちて……気を失ったのか、再び気付いた時には、木蓋(きぶた)は閉まっていたのだった。しばらくは意識を保ち、必死に押し上げようとしていたが……


 記憶をたどっていると、木箱の底を滑らせた手指の背に、冷たい金属が触れた。

 暗がりで周りの見えぬ中、指を重ねてその形を探る。


 これは木箱の鍵……ポケットに仕舞ったつもりだったが……

 

 !! ゔ、おえ!


 その時、急激に嗅覚が冴え渡り、強烈な悪臭が鼻の奥から流れ込んだ。

 暗闇に慣れた目に、壁に寄り掛かったまま動かぬ自分の死体らしき影が浮かび、私は悲鳴を上げた。


 ああ、そうだ! 私はそのうちに空腹になり、暴れるも木箱はびくともせず、誰かが来るのを待ち侘びたまま、ついぞ誰も現れることなく、情けなくも漏らした糞尿にまみれながら力尽きたのだった……!

 苦しい、臭い、惨めだ……! ああ誰か、助けてくれ!


 ゲェゲェと胃液を吐きながら木箱の中でのたうち回るも、木蓋は開くどころか物音一つ立ちはしない。

 そうしてひとしきり苦しんだ後、


 ――ガチャ。


 不意に外で金具の音が鳴り、私は息を止めた。

 荒ぶる呼吸を何とか抑え、木箱の中から外の様子に耳を集中させる――

 いつの間にか嗅覚は引いていた。


 ガチャリ、ガチャガチャ……カタカタカタ……ミシリ、ミシリ……


 物置の戸が開き、誰かが床を(きし)ませながら近付いてくる。

 誰だ。助けか。それとも――


 ……ぞわぞわ、ぷつつ!

 

 途端に全身の体毛がゾワと逆毛立ち、こめかみにぷつぷつと血管が浮かび上がる。


 ――何だこの身体の反応は?!

 いや待て、これと全く同じ感覚に、覚えがある様な……


 ……もしや、これは。

 私が死んだ後の記憶か。私がようやく発見、された時の――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ