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「……ハッ!」
重い瞼を開けると、暗闇の中だった。
身体を動かそうとするも、私を阻む四方の壁と、仄かに感じる欅の香り――
「ここは……物置の木箱の中か……!」
私は狭い木箱の中で、膝を曲げて尻を付いていた。
そうかあの時、木箱に落ちて……気を失ったのか、再び気付いた時には、木蓋は閉まっていたのだった。しばらくは意識を保ち、必死に押し上げようとしていたが……
記憶をたどっていると、木箱の底を滑らせた手指の背に、冷たい金属が触れた。
暗がりで周りの見えぬ中、指を重ねてその形を探る。
これは木箱の鍵……ポケットに仕舞ったつもりだったが……
!! ゔ、おえ!
その時、急激に嗅覚が冴え渡り、強烈な悪臭が鼻の奥から流れ込んだ。
暗闇に慣れた目に、壁に寄り掛かったまま動かぬ自分の死体らしき影が浮かび、私は悲鳴を上げた。
ああ、そうだ! 私はそのうちに空腹になり、暴れるも木箱はびくともせず、誰かが来るのを待ち侘びたまま、ついぞ誰も現れることなく、情けなくも漏らした糞尿にまみれながら力尽きたのだった……!
苦しい、臭い、惨めだ……! ああ誰か、助けてくれ!
ゲェゲェと胃液を吐きながら木箱の中でのたうち回るも、木蓋は開くどころか物音一つ立ちはしない。
そうしてひとしきり苦しんだ後、
――ガチャ。
不意に外で金具の音が鳴り、私は息を止めた。
荒ぶる呼吸を何とか抑え、木箱の中から外の様子に耳を集中させる――
いつの間にか嗅覚は引いていた。
ガチャリ、ガチャガチャ……カタカタカタ……ミシリ、ミシリ……
物置の戸が開き、誰かが床を軋ませながら近付いてくる。
誰だ。助けか。それとも――
……ぞわぞわ、ぷつつ!
途端に全身の体毛がゾワと逆毛立ち、こめかみにぷつぷつと血管が浮かび上がる。
――何だこの身体の反応は?!
いや待て、これと全く同じ感覚に、覚えがある様な……
……もしや、これは。
私が死んだ後の記憶か。私がようやく発見、された時の――




