表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【怪談・短編】箱  作者: Dostoicski
<3>
6/10

<3>(2)

(2)


「おじいちゃん?」

「……」


 なおも不思議そうに私を見上げ続ける孫。

 その子を抱き上げてしまおうとした、その時――


「ただいまぁ」

 玄関の方から息子夫婦の声が聞こえてきた。


「パパだ!」

「ああっ!」


 孫は私の手を振りほどくと、嬉々として物置を飛び出していった。

「な、何故、息子達がこんな時間に……?!」



 ――〈ぱぱ、何をしようとしたの?〉



「――ハッ!」

 不意に背後から呼び掛けられ、私は身を硬直させた。

 振り返ると、中にいた男の子が木箱の前に立ち私を睨んでいた。



「おっ、お前……!」


〈今までずっと、ずうっと、ぼくのこと箱の中に仕舞ってたくせに〉



 淀んだ空気の溜まる物置に、怨嗟(えんさ)に満ちた幼子の細声が響いた。

 気付けば薄暗かった部屋の灯りはほとんど落ち、子の後ろでぱかと口を開ける木箱の周りに、蒼白い(もや)のようなものが漂っていた。


 冷たい汗が脇下を伝い、震える足先をじり、と下げる。

 身を(ひるがえ)し出口に駆け込もうとするも、子はふわと身体を浮かべて眼前に回り込み、その小さな手で私の両頬を包んだ。この世の物とは思えぬひんやりとした感触に、背筋が粟立ち凍り付く。


 子は震える私の両頬を捕らえたまま、私の一つも逃すまい、とその細い目で私を射る。



  〈本当に勝手な人だね……

     ぱぱが開けたのは箱じゃなくて『ぱぱ自身』だよ。


     本当はわかっているんでしょう?

       『箱に入るべきは誰なのか』って――〉



 彼はそう責め立てながら、幼子とは思えぬ力で私を背後へと押しやった。

 私は抗いながらも、少しずつ、少しずつ、口を開けて待つ木箱の方へと、誘われていく――



 ああそうだ。私自身、わかっていたのだ。

 木箱に入って矯正されるべきは――私だ。



 私は木箱へと落ちた。




お読みくださりありがとうございます。

もし気に入っていただけましたら、フォロー・ブクマ等して頂けると大変励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ