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「何が入っているかな?」
隣でわくわくと待つ孫に語り掛けながら、重い木蓋をギ、と少しばかり持ち上げる。
中の空気がもわ、と漏れ、湿り気を帯びた欅の匂いが、物置の埃と混ざって鼻の奥にまとわりついた。
――だが、変な臭いはしていない――
ギ、ギ……
「楽しみだねー」
「ふふ」
孫に微笑み掛けながらも、額に丸い粒が浮かんでいく。
私は少しずつ持ち上がっていく木蓋の隙間を、恐る恐る覗いた。
***
「……」
木箱の中には、男の子が収まっていた。
6つほどの幼い男の子が、あの時と変わらぬ姿で、そのおぼつかない小さな手を膝に乗せる様にしてうずくまって――
気が付けば、私はポロポロと涙をこぼしていた。
自分に似た顔をした男の子の、その小さな手の、そのふっくらとした頬の、遠き日に触れた愛おしさが蘇り、胸が締め付けられていた。
「何が入っているの? ねえ、おじいちゃん?」
もはや孫の声は耳に入らず、私は木箱の前でただただ泣いた。
ああこの子は、私の子だ!
何故入れ替えてしまったのか――だがもうどうにもならない。残酷なほどの時が流れてしまったのだ……!
「おじいちゃん……?」
――その時。
木箱の中で、我が子の頭が、カクン、と垂れた。
ハッとして目を凝らすと、子は微かに胸を収縮させ、すうすうと寝息を立てているではないか……!
「ま、まさか――」
生きて…………
いたのか――……
私は木箱の中の男の子と、横にいる男の子とを、交互に見た。
私に似て凡庸な顔をした、かわいらしい、……
利発そうで、端正な顔をした、美しい、……
……
……
私の顔に黒い影が落ちていく。
私は木箱の中から我が子を抱き上げると、そっと床に寝かせた。
「? おじいちゃん、何してるの……?」
「……ちょっと……こっちへおいで……」
不思議そうにこちらを見る孫の手首を掴み、引き寄せる。
私の背中で、口を大きく開けた木箱が鈍く光っていた。




