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神獣飼いの獣人少女 ~TSして猫耳生えた、猫としか会話出来ない。詰んでね?~  作者: くろぬか
3章

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第53話 移動ばっかり


 また一晩お城でお世話になった俺達は、翌朝には出発する事になってしまった。

 早いなぁ、今回は。

 結局何しに来たんだろうってレベルで、早くも帰り道を馬が歩いていく。

 グラベル達は何か色々と難しそうな話をしていたみたいだが、俺は温室に行ってお姫様とお茶しただけ。

 その後皆と合流した後は豪華なご飯を頂いて、でっかいお風呂に入って。

 やけにくっ付いて来る姫様に連行されて、着せ替え人形になっただけ。

 本当にただ遊びに来ただけみたいになってしまった。


 「結局なんだったんだろうね」


 『さぁな、俺も詳しい話聞いてねぇから知らん』


 腕の中のブサ猫は、コレと言って興味無さそうな声を返して来る訳だが。

 まぁ確かめようが無いから仕方ないね、諦めよ。

 そんな訳で、大人しく後ろに座るリリシアに体重を預けていれば。


 「スー、――――」


 「うん?」


 彼女は少しだけ心配そうな顔で、何やら長文を呟いた。

 なんだろう、帰るんだよね?


 『何とかっていう他の国に行くんだと』


 「え、近くに他の国あんの?」


 『しらん、がそう言っている』


 「ほえー」


 それじゃ森には寄らないのかな?

 また長い事家を空ける様なら、出来れば畑に水やって、可能な限り収穫してから行きたいんだけど。

 どうしたものかとソワソワしていると。


 『一回帰ってからみたいだぞ』


 「マジで? 良かったぁ……せっかくの野菜を駄目にしちゃうの勿体ないし」


 『ムムの植えた奴もあるしな』


 「あーピスタチオ、アレにも水やってかないとね」


 なんて会話をしていれば、頭に乗っかったムムが機嫌良さそうに声を上げている。

 世話してんの俺なんだから、小動物達も野菜掘り手伝ってくれよ? 多分無理だろうけど。

 小動物をモフりつつ、俺達は再び森の中へと帰って行くのであった。


 ――――


 「収穫完了~ビルもお疲れぇい」


 『ん。まぁ周りに見られてねぇならこっちの方が早いわな』


 流石はウチの化け猫。

 畑に着いた瞬間に周囲に目をやり、時間があまり無いからという理由で魔法を使ってくれた。

 なんでも土を動かす事が出来るらしく、生えていた野菜が引っこ抜く前からにょきにょきと地中から顔を出しポテッと地面に転がった。

 俺はそれを端から籠に回収しただけ。

 攻撃魔法極振り猫かと思っていたが、随分と器用な事も出来るんじゃないか。


 「にしても、離れてた数日だけで随分でっかくなったね……ピスタチオ。出かける時には本当に芽が出てたくらいなのに」


 『そうなぁ、今じゃ俺よりデケェ』


 畑の隅に植えられたピスタチオ。

 流石に育たないだろうと予想していた訳だが、芽が出て来た時は普通に喜んだものだ。

 お前、食用にされてんのに未だ芽を出す元気があるのかと感心した。

 だというのに、何だコイツ。

 生命力有りすぎだろ。

 今ではビルよりもでっかい上に、モサモサと葉っぱまで生えてやがる。

 ちっちゃい木だよこんなの、成長すんの早すぎだろ。

 このままデカくなって、畑を侵食し始めなければ良いんだけど……いやその前に、畑の栄養も取られてしまうのだろうか?

 だとしたら……今の内に引っこ抜いておく?

 なんて事を思いながら、まだ細い木の幹を掴んでみれば。


 「いだだだっ! ムム噛むな!」


 ピスタチオを埋めた張本人のモモンガが、怒った様子で俺の猫耳に齧りついて来た。

 怪我をする程に力は入っていない様だが、結構痛いのだ。

 ケモ耳は割と敏感。

 触ればくすぐったいし、ちょっと齧られても普通に痛い。


 「ったくもぉ……畑が悪くなるようなら、容赦なく引っこ抜くからな?」


 齧りついて来たモモンガをグワシッと掴みながら、ジトッとした眼差しを向けてみれば。

 当のモモンガは、知るかとばかりにプクプクと変な声を上げるばかり。


 『コイツだけは本当に自由だなぁ』


 ビルも疲れた顔を浮かべる程、ウチのモモンガは自由なのだ。

 ファットマンから貰った豪華な箱をたまに寝床代わりにしているし、お出かけの時にはピスタチオを俺のポケットに勝手に忍ばせたりする。

 どれだけ気に入ってんだあの木の実。

 でも数が減ってない所を見るに、植えてからは食べたりして無いのだろう。

 妙な所で我慢が出来る小動物。

 勝手にポケットに突っ込んで来るので、偉いのか鬱陶しいのかよく分からないが。


 「ま、何でも良いや。寒いから早く帰ろ、モモ~うさぎ~? 帰るよー?」


 畑の中を走り回っていた小動物二匹が、一声かけると此方に戻って来た。

 うんうん、言う事がちゃんと聞けるペットは可愛いね。

 でも洗うのも俺の仕事だから、出来れば程々にして頂きたいけど。

 あとお前等ペットというより食用だけど。


 「こうも寒いと、鍋とか食べたいなぁ……」


 『今回は城に行っただけだからな、買い物すらしてこなかったから普段通りだろ』


 「普段通りでもリリシアのご飯は美味しいけどね」


 『海老、喰いたかったなぁ……』


 「ほんと海老にハマっちゃったね、ビル」


 そんな会話をしながら野菜の入った籠を抱え、我が家への玄関を潜ってみれば。

 温かい空気と共に、フワッと柔らかい匂いが鼻をくすぐった。

 そして、テーブルのど真ん中に置かれたソレは。


 「鍋だぁ!」


 『良かったじゃねぇか。匂いからして……熊肉か? スー、俺も食いたい』


 「おう、フーフーしてやんよ」


 という訳で収穫物を玄関の脇にひとまず放置して、急いで手を洗いに向かうのであった。

 ビルに任せるとあんまり土が残らず収穫できる様で、とても楽だ。

 今度から度々お願いする事にしよう。


 ――――


 翌日、これまた俺達は旅立った。

 いや本当に早いよ。

 一晩寝る為に帰って来ただけだよ。

 今回も結構長いかもしれないとビルに言われた為、自分の荷物を準備した後食糧庫に駆け込んだ。

 野菜も肉も、結構保管してある。

 凍らせてあったり、冷蔵庫かって程の温度に保たれているので早々腐ったりはしないだろうが……長期間家を空けるとなると、不安しかない。

 そう言う意味では畑もそうなのだが、向こうはどうしようもないので諦めた。

 ピスタチオ、生き残ってると良いな。

 とか何とか思いながらため息を溢していれば。


 「スー、――――」


 何やら呟いたグラベルが、でっかいリュックに凍った肉やら野菜などを詰め込み始めたでは無いか。

 ひとしきり詰め終われば、表で繋がれていた馬に固定し更にもう一つリュック。

 もしかして、可能な限り持って行こうとしているのか。

 それくらい長い旅になるのか、それとも引っ越しでもするのか。

 どちらかは分からないが、食料詰め込み作業を手伝い、最後にピスタチオの木に水をやってから、俺達はまた旅立った……までは良かったのだが。


 「なんだろう、あんまり道が整備されてないね」


 『だなぁ』


 ウチの馬達、割と年寄りな感じはあったけど未だ元気。

 だった筈なのだが、道が悪いとやはり歩きづらいのか。

 いつも以上に疲れたような吐息を溢していた。

 食料もたんまり積んでいるから、普段より重いってのもあるかもしれないけど。


 「休憩ちょっと早めにした方が良くない?」


 『そうな。コイツ等も結構歳だし、慣れない道で疲れてるっぽいぞ』


 「んじゃどうにか……つっても、俺の言葉じゃ伝わらないし……」


 『アレだ、腹減ったって言えば何とかなるんじゃねぇの?』


 「それだ! ナイスビル! グラベルー、しゅぅちゅらすとぅらぁー!」


 『相変わらず間抜けだな』


 「うっせ! マジでうるせぇ!」


 自分から提案しておいてとんでもない事を言い放つブサ猫と喧嘩しながら、俺は必死でグラベルに身振り手振りで“お腹空いた”と伝えた。

 この行動が功を成したのか、街道を外れ木陰に移動する馬達。

 そんでもって、皆が食事の準備を始めてくれている間に。


 「馬達~大丈夫かぁ? 水とご飯持って来たぞぉ?」


 桶とお野菜各種を取り出してみれば、皆がっつく勢いで飲み食いし始めた。

 やっぱり疲れてたのね、それともそろそろ限界になるお年寄りなのか。

 馬の声は聞えないので、俺には分からないが。


 「馬、昨日採ったばっかりの人参があるよ。食べな食べな」


 グラベルのリュックを漁り、昨日収穫したばかりの人参を差し出してみれば。

 三頭の馬はすぐさま集まって来て、モグモグバリバリもっしゃもっしゃと凄い勢いで食べていく。

 最初はデカさと勢いで怖かったが、もはや慣れた。

 次から次へと野菜を取り出し、三頭に餌付けしていれば。

 やがて満足したのか、その場で座り込みピトッと此方に頭を押し付けて来る。

 どういう感情の表現ですかコレは、よくわからないんですけど。


 「お疲れい。まだしばらく出ないだろうから、ゆっくりしてて。馬」


 『やっぱお前は動物に名前つけた方が良いかもな……傍から見てると、労わってんのかコキ使ってんのか分かんねぇ』


 「実際は両方なんだけどねぇ」


 なははっと笑いながら、押し付けられる馬の頭をワッシャワッシャと撫でていると。


 「スー!」


 少しだけ離れた所から、シャームが手を振りながら俺の事を呼んでいる。

 もしかしてご飯が出来たんだろうか。

 やっべ、向こうの手伝い全然してなかった。


 『旨いもんだと良いな』


 「アレだけいっぱいお肉持って来たんだから、食べるでしょ多分。行くぞ小動物達、次は俺等のご飯だ」


 そんな事を言いながら、休憩中の馬達を残し。

 俺は細かいのをゾロゾロと連れて皆の下へと歩いて行くのであった。


 ――――


 やはり“こちら側”は道が悪い。

 覚悟はしていたが、ここまで違うとは。

 やれやれとため息を溢しそうになってしまったが、急にスーが食事を求め始めたのは驚いた。

 昼飯の時間には少々早いが、休憩にするか。

 何てことを思いながら、木陰を探して馬を降りてみれば。

 お腹が空いたと騒ぎ始めた筈のスーが、いち早く馬達を労わり始めたではないか。

 道が悪かった為、普段以上に疲れていたのだろう。

 もしかしたら、馬達を休ませる為に休憩を求めたのかもしれない。

 やはり彼女は動物に好かれると同時に、彼らの事を一番理解しているのだろう。


 「ふふっ、少し豪華にしてあげようか。なんたって馬達の為に、自ら腹ペコのフリまでして休憩を急がせたんだから」


 クスクスと笑うリリシアが、焚火の周りに串肉を刺していく。

 度々遠征が続いたからな、いくら凍らせてあるからとは言え早く食べてしまわなければ。


 「網焼きもしようか、あまり後に後にと考えていると肉が余ってしまう」


 「ではグラベル、そっちは頼むよ? 野菜は……」


 「今朝採って来た新鮮な奴がある、それをサラダにしてしまおう」


 シャームも加わって野菜を千切り始め、リリシアが作ったドレッシングをあえていく。

 なんとも、この子も慣れたものだ。

 最初は野菜各種よりも、肉肉肉という様子だったのに。

 今では食事の際に、率先してサラダやスープを作ろうとする。

 それこそ、スーが野菜嫌いだったなら叱りつける事さえしそうな程。

 しかしながらウチの子は好き嫌いが無い。

 むしろモリモリ野菜を食べるので、シャームはもしかしたらスーに影響されたのかもしれない。


 「スーの方は……大丈夫そうだな」


 視線を向けてみれば、随分と穏やかな光景が広がっていた。

 三頭の馬が休憩し始め、眠そうな顔でスーに額を押し付けているではないか。

 アイツ等も馴染んだ、というか“愛猫”の影響なのか。

 とにかくスーには懐くのだ。


 「随分と年老いて来たから、馬もそろそろ買い替えようかと思っていたが」


 「あの様子では、最期までウチで面倒を見る事になりそうだね」


 非常にのんびりとした空気を放ちながら、スーに触れられるたびに目を細める馬達。

 もはやそのまま昼寝でも始めてしまいそうな程気が緩んでいる様だが……そこまで休まれてしまうと、此方が困るのだ。

 そこら辺はシャームも理解していたらしく。


 「スー! こっちにおいで! そのままじゃ馬が寝てしまうぞ」


 彼女が大声を上げながら手を振って見せれば、スーは休憩中の馬に微笑みかけてから小動物だけを連れて此方に歩いて来た。

 もはや見慣れてしまったが、コレもこれで異常な光景と言えるのだろう。

 見てくれだけで言えば、非常に可愛らしいが。


 「スー、今日は肉の美味しい所を贅沢に使ったからね。いっぱいお食べ」


 そう言って串肉を差し出したリリシアから、満面の笑みを浮かべてスーが受け取ってみれば。


 「いぁ――す」


 彼女が食事前にする挨拶。

 いつも通りの言葉を紡いでから、ガブッと串肉に齧り付き。


 「うまい!」


 「スー。美味しい、だ」


 「おーしー」


 「そうだ」


 リリシアから言葉を教えてもらっているが、今の所あまり順調ではない様で。

 彼女は相変らず喋れる数少ない言葉を紡ぎながら、モッモッと勢いよく串肉を口に運んでいく。

 時たま串から肉を外し、肉を細かく千切ってからフーフーと息を吹きかけ。


 「ビルー、ムムー。モモ――」


 言葉を紡ぎながら、ペット達にも食事を与えていく。

 ビルとムムはいつも通りの様子だが、モモ?

 はて、と首を傾げながら見ていれば。


 「なるほど、ウチのグリフォンは“モモ”という名前になったのか」


 笑うリリシアが緩い視線を向ける中、小さなグリフォンが彼女から渡された肉に必死に噛みついていた。


 「王族に渡したグリフォンに名前が付けられていたからな、ウチのにも名付けたくなったんだろう」


 「かもしれないな、師匠。だが兎に未だ名前が付けられないのは何故だ……」


 などと話しながら、俺達は少し早めの昼食を食べ始めるのであった。


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