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神獣飼いの獣人少女 ~TSして猫耳生えた、猫としか会話出来ない。詰んでね?~  作者: くろぬか
3章

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第52話 遠征依頼


 「随分と良くなったみたいだな、アグニ王子」


 「あぁ、お陰様でな」


 皆揃っていつもの執務室へと足を運び、改めて向かい合った我々。

 最初この場所で会った時の彼が嘘の様に、今では表情も明るくなっている。

 彼の隣に座るグリフォンも王子に懐いているのか、今ではクルクルとおかしな声を上げながら彼の脚に頭を乗っけて、気持ちよさそうに頭を撫でられていた。


 「王子の脚が順調に回復しているのも喜ばしいが……何というか、そっちも随分と大きくなったのだな。ウチに居るのはまだまだ小さいというのに」


 やはりリリシアも気になるのか、王子の元に居るグリフォンとウチのチビグリを見比べている。

 この短期間にあれ程大きくなったんだ、何か特別な事をしたのだろうか?

 一匹になってしまい兎にくっ付いてばかりのちびっ子は、巨大化した兄弟にビビっているのか今はスーの後ろに隠れていた。


 「これと言って特別な事をしたつもりはないんだが……姉さんが甘やかしてオヤツばかりあげるからもしれん。菓子の類を買って来たりすると、門番より先にコイツが気付く程だ。全く、食い意地の張ったペットが居たものだな」


 そんな事を言いながら彼も随分と気に入っているのか、膝に乗っかったままのグリフォンの頭を弄り回している。

 ウチのにあんな触り方をしたら間違いなく噛みつかれるだろうと思える程、ワッシャワッシャと撫で繰り回しても機嫌良さそうに目を細めているではないか。

 凄いな、最初に懐かれた王女ならまだしも……王子ですらこの調子なのか。

 いやまぁ、あのサイズになってまで噛み癖が残っていたら色々不味い事になるが。


 「まぁ良い、来て早々で悪いが仕事の話をしよう。重要な話をしないまま休めと言われても、気が休まらないだろうからな。姉さん、すまないがスーを連れて先に休憩させてやってくれ。言葉が分からない状態であまり長話を聞かせても、疲れてしまうだろう。ホラ、起きろ“リーガル”。お前も皆と一緒行って菓子でも食ってこい」


 ありがたい提案ではあるのだが、次の行動に思わずギョッとした。

 ボスボスと、結構強めにグリフォンの頭を叩き始めた王子。

 それこそ大型のペット退かすかの様な勢いで。

 アレだけ大きくなった動物なら、傷みを感じる程ではないだろうが……相手は魔獣なのだ、しかも神経質と言って良い類のグリフォン。

 だというのに。


 「起きたか? 姉さん達と温室にでも行ってこい」


 眠そうに瞼を開けたかと思えば、大きな欠伸を洩らしながらノソノソと動き始める魔獣。

 野生というモノを何処かに置き忘れて来たかの様子で、ゆっくりユラユラと王子から離れていきアレクシア王女にポスッと額をくっ付けた。


 「相変わらずお寝坊さんですね、リーガル。スーちゃん達と一緒にお茶にしますよ? ほら、起きなさい?」


 王女も王女で、未だ眠そうなグリフォンに「起きろ」とばかりにペシペシ。

 そこでまた少し目が覚めたのか、王女とスーに対してひたすら頭をこすりつけ始めた。

 な、懐きすぎじゃないか? アレは流石に。


 「……リーガルと名付けたんだな」


 「あぁ、悪くない名前だろ? 性格が穏やか過ぎるのか、少々名前負けしているがな」


 王子はハハッと呆れた笑みを溢しているが、普通こうはならないだろう。

 テイマーが飼っている魔獣なんかも見た事があるが、ここまで懐いている個体は初めて見たぞ。

 スーを除いて、にはなるが。


 「何というか……あそこまで懐いている所を見ると羨ましくなるな。何故私達にはあまり懐かないのだろうか?」


 「いや、シャームには結構懐いて来たんじゃないか? ウチにいるチビッ子も」


 少しだけ羨ましそうにリーガルを眺める狼娘は、我が家のグリフォンに悩ましい視線を送っている。

 まだお前は良いじゃないか、俺なんか未だに触れようとすると齧られるんだぞ。


 「とにかく、話を始めようか。適当に座ってくれ、すぐに茶でも用意させよう」


 緩い雰囲気の室内だった訳だが、王子の一言によって俺達は表情を引き締めるのであった。


 ――――


 「仕事の話が始まるみたいだから、俺達は温室にでも行こうか」


 「ういさー、皆行くよー?」


 次郎さんに声を掛けられた為、小動物達を集めて部屋を出ようとすれば。

 何故かお姫様と、でっかくなったグリフォンまで付いて来た。


 「いいのかな?」


 「多分大丈夫じゃないかな? いつもならリーガルはこっちに残りそうだけど」


 「リーガル?」


 「スーがお姫様にあげたグリフォン。王様がダイエット始めて、部屋にある御菓子の類をこの子にあげてたら妙に懐かれちゃったみたい」


 なるほど、コイツが妙にデカくなったのはファットマンから貰った高級御菓子か。

 ウチのにも、もう少し甘い物とかあげるか?

 なんて事を思いながら、次郎さんとお姫様に頭をグリグリしているグリフォンを見つめてみる訳だが……。


 「森の甘味って言うと……なんだろう」


 『蜂蜜とかか?』


 「熊かな?」


 抱っこしたビルからごもっともな意見を貰ってしまった。

 でもまぁ、確かにそれくらいなのかな?

 木の実とかも有るけど、今の時期少ないしなぁ。

 思えば普通に肉やら野菜やら、とても健康的な物ばかりあげていた気がする。

 だからまだ小さいのか、ウチの食用鳥は。


 「でもリーガルだってよリーガル。ウチのにも何か名前つけようぜ」


 『食用に考えてんのに名前なんぞ付けてどうすんだよ、情が湧いて食えなくなるぞ?』


 「あ~そういうのもあるのか」


 ボヤキながらお城の廊下を歩いてく。

 次郎さんとリーガルが先導、お姫様は俺の隣でニコニコ。

 そして俺の後ろに兎とチビグリフォン。

 なんだろうな、お城メンバーは皆キャラが濃いのにこっちは飼育員にでもなった気分だ。

 まぁ、今更だけど。


 「照り焼きとか、唐揚げとか名付ければ良いんじゃないかな」


 『あとは焼き鳥、とかか?』


 「焼き鳥……焼き鳥かぁ……」


 なんかこう、無いかな?

 良い感じの名前、焼き鳥の種類で……。


 「あっ! “ぼんじり”って名前にしよう!」


 『なんて?』


 「ぼんじり!」


 『……そっちの女で試してみろよ、俺には同じように聞えるからわっかんねぇけど』


 あ、そっか。

 呆れた様子のビルに言われて気が付いたけど、俺の言葉って“こっち側”と随分発音が違うから単純な名前にしないと言い辛いかも。

 という訳で、姫様の袖を引っ張ってから。


 「お姫様、“ぼんじり”って言って? ぼーんーじーりー」


 「――? ヴォーいージー?」


 「あ、駄目だコレ」


 ぼんじり、早速却下。

 では本当にどうしよう、他に何が良いかな?

 ネギ間とか? いや、何か同じような結果になる気がする。

 そうするとやはり。


 「モモ……」


 『お前さ、もう少しこう……な?』


 「ち、ちげぇし。今回は単純に名前つけたとかでは無く。鶏もも肉の“モモ”だし」


 「――、スー――。モモ?」


 「ホラ! 姫様もすぐ発音できてる!」


 『へーへー、勝手にしろ』


 という訳で、ウチのグリフォンの名前は“モモ”に決定。

 やっぱり覚えやすい名前の方が良いよね! とか言い訳をしてみる訳だが。

 モモンガのムムに、グリフォンのモモ。

 コレだけ聞くと、ネーミングセンス皆無にしか聞こえないよね。


 「という訳で、今日からお前はモモになりました。分かったか? モモ、モモだぞー」


 なんて事を言いながら、片腕でグリフォンを抱き上げてみれば。

 本人、というか鳥自身は良く分かっていないらしく、クルル? と変な鳴き声を上げておられる。


 「スー、グリフォンに名前つけたの?」


 先頭を歩いていた次郎さんが、穏やかな笑みを浮かべ振り返って来たので。

 此方も満面の笑みを浮かべながら答えた。


 「うん。デカくなったら食べる予定だから、焼き鳥のもも肉って事で“モモ”!」


 「そ、そっかー……可愛い名前なのかと思ったら、美味しそうな名前だったんだね……」


 何故か彼の笑顔が引き攣った気がしたが、王族にとってはペットとして飼われているのだ。

 だからこそ、食用ですと公言するのはあまり良く無かっただろうか?

 ちょっとだけ反省しながら、ウチの食用グリフォンに視線を落としてみれば。


 「クアァァ」


 抱っこしてやった途端、欠伸なんぞをかましておられる。

 この野郎、羽毛がフサフサじゃねぇか。

 もはや野生の欠片も感じられない。


 「お前はモモだぞー? 立派に美味しくなってくれー?」


 『しーらね、絶対食えなくなるぞお前』


 再びブサ猫から呆れた視線を向けられてしまったが、いつもの事なので気にしない。

 そんな訳で、俺達は温室に向かって足を運ぶのであった。


 ――――


 「さっさと話を済ませて、皆で食事にしよう」


 なんて事を言いながら始まった話し合い。

 事前に配られた資料に目を通しながら王子の話に耳を傾けていれば。


 「まずは端的に。今回の依頼内容は、過去此方の国に戦争を吹っかけて来た忌まわしき……なんて言葉を使うのは問題だな。所謂“獣人の国”なんて呼ばれる程、獣人が主流の国。そこの内部調査だ」


 ここから一番近く、俺達が住んでいる森の反対側に存在する王国。

 獣人の国、“ガルバリンデ”。

 過去には此方の“アーラム”と戦争を繰り広げ、敗退。

 その後色々と条約を結んだという話だが、水面下ではまだ動きがある様で。


 「以前姉さんに毒を盛ろうとしたのも、ガルバリンデの者からの依頼だと判明した」


 続く説明が行われる中、スッとリリシアが軽く手を上げ。


 「それはガルバリンデ国の誰か、であって国からの命令で動いていたという訳ではない……そう捉えて良いのか? これによってかなり認識が変わって来るのだが」


 確かに彼女の言う通りだ。

 国そのモノが動き、此方に仕掛けて来ているというのなら俺達の仕事はその証拠集め。

 逆にガルバリンデの“誰か”が動いているというだけなら、国全体を巻き込むような事態には至らないだろう。

 その場合はひとつの組織、または団体だけを潰せば全て綺麗に収まる形になるのだから。


 「はっきり言ってしまえば、そこもお前達に調査してもらいたい内容に含まれる。情けない事を言っているのは重々承知しているが、前回の三人からはそこまで多くの情報が引き出せなかった。何かしらの組織から金を受け取っている事は分かったが、国そのものと関与しているかと聞かれれば、わからないと答える他ない」


 「では何故調査隊に専門の人間を使わなかった? 何でも現地に送った者がこの手の仕事が得意ではないから、我々を増援として送るのだろう? その理由が聞きたい」


 「リリシア殿の言う事はもっともだ。現地で紛れやすいという事で冒険者を使った事までは理解してもらえるだろうが、問題はその後だ。もしも全面戦闘になってしまった場合、少数精鋭でないと逃げ帰れる確率がガクッと下がってしまう。敵国になり得る可能性がある場所に放り込む形になるからな、多くを向かわせて捕虜にでもされたら不味い」


 「その理屈は理解出来るが、もしも本当に国全体が相手になってしまった場合は? この可能性が残っているのに、既に現地に送り込んだとなると捨て駒と思われても仕方あるまい? 更に我々にも赴けと言われると……ハッキリ言おう、我々も捨て駒か、ソイツ等の尻拭いをしろと言われている気分でしかないぞ?」


 鋭い視線を向けるリリシアが、呆れた様子で資料をテーブルの上に投げ出してみれば。

 アグニ王子は参ったとばかりに両手を上げて、手元のベルを鳴らした。

 すると扉が開いて、メイド達が全員分の酒を用意し始めたではないか。

 おいおいおい、今は仕事の話をしているというのに。

 何て事を思ってみたりもするが。


 「あーそうだな、今の俺は酒を飲んでいる。ポロっと本音が漏れてしまっても仕方ないだろう。出来ればお前達も飲みながら聞き流してくれると助かるんだが」


 どうやらアグニ王子にも色々と事情がある様で、メイド達が用意してくれた酒をグイッと一気に飲み干してみれば。


 「ハッキリ言おう。一応調査が出来るメンツと見込んで送り込んだ……が、トラブルメーカーが約一名混じっている。だが実力は折り紙付きだ、多分戦闘になっても逃げ帰って来る事くらいは可能だろう。しかし我が国の冒険者、しかも俺の命令で動いてくれているとなると色々と心配でな。もっと正直に言うなら、今回の依頼で一番期待しているのは……シャーム、君だ」


 「わ、私なのか!?」


 急に名前が挙がった事に驚いたのか、シャームはピンと耳を立てながら大声を上げて立ち上がってしまった。

 が、周囲を見回してから大人しくソファーに腰を下ろす。

 何だか小動物感が増して来たな、この子も。

 最初のピリピリしていた狼娘は何処に行ってしまったのか。


 「君の資料は読ませてもらった、斥候としての実力は十分という他ない。しかも君は獣人であり……こう言っては何だが、人族への恨みを抱いていた存在だ。つまり、そういう組織の人間に取り入る際に有利になる。違うか?」


 「えっと……確かにそうかもしれないが、今は、その……」


 「分かっている。しかしそういう記憶を持つ過去があるかどうかで、相手からの信用を勝ち取りやすくなるんだ」


 「はぁ、そういうものなのか……」


 やけにペタンと狼耳を下げるシャームが、気まずそうに王様の話を聞いている訳だが。


 「つまり、私とグラベルはいざという時の追加戦力。シャームには調査を頼みたいという事で良いんだな? あまりシャームをイジメてくれるな」


 意外な事に、リリシアが二人の話し合いに割って入った。

 彼女もまた、シャームの事を弟子と認め可愛がっているという現れなのだろう。

 何となく嬉しくなって、うんうんと頷いていれば。


 「リリシア殿の言う通りだ。全てを駒の様に使うなら、スーにも現地入りしてもらいたい所だが……彼女の事を考えるなら皆が仕事をしている間は此方で預かった方が良いだろう。だから彼女は俺達に任せ、皆は全力で依頼を――」


 「アグニ王子、後半は少々同意しかねる。ただスーを構い倒したいだけだろ」


 確かに戦地になるかもしれない場所に彼女を連れて行くのは気が引けるが、どう聞いても欲望丸出しなのだ。

 アグニ王子もそうだが、アクレシア王女もまた。

 特にスーに関わる事になると、必死に手元に置こうとする。

 やらないからな?


 「駄目か?」


 「駄目だ、そもそも初めから戦闘するつもり潜入する訳じゃない」


 そう言う訳で、俺達は皆揃って獣人の国へ向かう事が決定したのであった。

 まぁ、戦闘になると決まった訳ではないしな。


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