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神獣飼いの獣人少女 ~TSして猫耳生えた、猫としか会話出来ない。詰んでね?~  作者: くろぬか
2章

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第46話 いつもの生活


 寝て起きたら、全部終わってました。

 以上!

 だったら良かったのだが。


 『お前さ、世界から呪われてんじゃねぇの? なんだよ、俺が離れた少しの間にまたトラブルって』


 「俺も良く分かんないけど、とにかくムムが喋った」


 『寝ぼけてんのか?』


 ビルからは非常に冷たい視線を向けられてしまったが、本当だもん。

 喋ったんだもん! ウチのモモンガ!

 とか何とか訴えてみたが、相も変わらず人の頭の上で餌を食うモモンガさんは、今まで通り知性ゼロの御様子。

 いくら喋りかけても、全く反応を示してくれないただの野生動物に返り咲いた。

 そして次、犯人。

 皆捕まったらしい、こっちはそれで本当に以上。

 というか三分の二はビルがボコして来たらしい。

 やっぱりビルすげぇ、俺等が一人に苦戦している間に倍の成果を収めて来やがった。

 しかも。


 『面倒だから剥いて厨房に置いて来た』


 とかなんとか恐ろしい事言っていたが、どうやら素っ裸にしてまな板の上に固定して来たらしい。

 鱗を剥がれた魚の気持ちでも味わえと、訳の分からないキャットジョークも言っていたが。

 とりあえず人知れず悪を退治したのに、自慢げに語ったりはしないのだ。

 ビル、お前本当に渋いオスだな、格好良いよマジで。

 という訳で眠そうなビルをモフりながら、昨日何があったのかを確かめようとお城の中をウロウロしていれば。

 まず妹達、全員無事。

 顔を見に行ったら、朝から元気にグリフォンに齧られてた。

 俺を見た瞬間何か言ってきたが、当然言葉は分らず。


 「ビル、おなしゃす」


 『本当にグリフォン貰っても良いのかってよ』


 「ういうい、良いよ。持ってけ、だからもう暴れんじゃねぇぞチート主人公」


 何でもあれだけの事をやったのに、この子達にお咎めは無しだったようで。

 普通にお城の兵士さんとかと話していた。

 いやはや良かったね、ほんと。

 異世界に来て一発目に見る人死にが、妹の斬首刑とかだったら心を病む自信があるわ。

 何て事を思いながら、怒れるチビグリフォンを生贄に捧げ、俺たちは妹メンバーズの部屋を後にした。

 後はやはり、気になって仕方ないのがお姫様だ。

 周囲の雰囲気からして、ちゃんとムムが助けてくれたみたいではあるが。

 しっかりと顔を見るまでは安心出来ないのが人間という物で。


 「お姫様ー? 平気~?」


 ノックをしてから、呑気な声を上げてお部屋にお邪魔してみると。

 急に正面から柔らかいタックルを頂いた。


 「ぶわっ!」


 『ぐえっ!』


 思わずビルと一緒に変な悲鳴を洩らしてしまったが、顔を上げてみれば満面の笑みのお姫様が。

 良かった、ちゃんと良くなったみたいだ。

 という訳で、ニカッと微笑みを返していると。


 『スー、スー……今すぐコイツに離れろと伝えろ……』


 お姫様の柔らかな御山に完全に埋もれたビルが、窒息しそうになっていた。

 羨ましい奴め、と言いたい所だが俺も似たような状況な上、今ここでビルを殺される訳にはいかない。

 昨日思い知ったが、ビルが居ないとマジで俺何も出来ないし。


 「じ、次郎さーん! お姫様離して! ビルが死んじゃうー!」


 必死でヘルプコールを出せば、部屋の隅からやって来た次郎さんがお姫様の肩をポンポン。

 それに気が付いたお姫様は熱い包容を解除してくれて、ウチのブサ猫は無事呼吸出来る状態を取り戻した。

 お姫様の無事も確認できたし、次行くかーなんて思って踵を返した俺だったが。

 何故か再びお姫様に拘束されてしまう。

 なんだろう、まだ何かあるのかな?

 とかなんとか思っている内に昨日も行ったお宝部屋に連れ込まれ、今度は二本指を立てられてしまった。

 いや、あの、待ってください。

 昨日の高そうな箱だってムムが傷付けちゃった上に、中身のピスタチオ一個食っちゃったんですけど。

 もはや王様とやらに全力でごめんなさいする他ない事態だと言うのに、更に二つパクれと言われても背筋が冷えると言うものだ。

 思わずガクガクと震えていれば、腕の中のブサ猫が声を上げた。


 『二つ選べって言ってるぞ、何でも良いからくれるってよ』


 「本当に? 絶対? 間違いなくそう言ってる?」


 『……昨日なんかあったのか?』


 呆れ顔を向けられてしまったが、とりあえずビルの言葉を信じてソロリソロリと室内に踏み込めば、お姫様からは満面の笑み。

 これは、本当に二つ選ばないと終わらなそうだ。

 計三つもネコババした事がバレて、後でギロチンとかされないと良いけど……。

 などと思いながら周囲に視線をやれば、そこにはやっぱり良く分からない道具の数々。

 不思議な事に、こう言う物を見ていると何故かテンションが上がる。

 俺も男の子って訳だ。


 「あ、見て見てビル。何かこれ銃っぽくね?」


 『ジュウって何だ?』


 手に取ったのは、子供のおもちゃかな? という感じの銃っぽい代物。

 これなら持って帰っても大丈夫じゃない? 絶対大したモノじゃないし、王様もきっと珍しいから買っただけだって。


 「もう一個何にしようか?」


 『食いもんか身を守る物にしておけよ、お前弱いし』


 「んじゃ盾とかかなぁ? でもどれも重そうなんだけど……」


 ブサ猫と会話をしている内に、ちょっと時間を頂きすぎたのか、次郎さんが俺達の元へやって来てくれた。


 「防具を探してるのかな? えっと、それならこれなんかどう? 籠手の形をしてるけど、しっかりと盾なんだよ? 一度使わせて貰ったんだけど、その物も頑丈だし、何より魔力を通せば魔力防壁が展開されて――」


 「次郎さん、俺魔力使えない」


 「……うん、そっか。他のにしよっか」


 「うーん、でもそれにしようかな。どうせ何選んでも変わらなそうだし、何より次郎さんが選んでくれたなら、それが良いかな」


 そう言って彼の差し出して来た黒い籠手を受け取ってみれば、コイツもコイツで何か高そうだ。

 黒っぽく見えてたけど……なんだろう、深い紫色?

 良く分からないけど、凄く魔法の道具っぽく見える。


 「本当に良いの?」


 「うん、頑丈なら使い所はあるだろうし。あ、でもサイズが合わないか……」


 見るからに大人サイズのソレ、だとすると誰かにプレゼントする他ない。

 どうしたものかと悩んでいれば、次郎さんはおもむろに俺の手に籠手を嵌め、上から掌を当てて来た。

 すると。


 「お、おぉ!? 籠手が小っちゃくなった!」


 「こ、これで使えるかな?」


 次郎さんが魔力とやらを通してくれたのか、黒っぽい籠手は俺の両手のサイズにピタリと収まった。

 スゲェ、魔法スゲェ!

 何か超強いガントレットでも装備したみたいな感じで、超格好良い。


 「ビル! 見て見て! 俺用の装備になった!」


 『んー良かったなぁ~』


 相も変わらず興味無さげな視線な上、欠伸までかますブサ猫。

 この野郎、とか何とか思ったがとりあえず籠手を着けたままビルを抱っこ。


 「痛くない?」


 『うーん、硬ぇ。けどまぁ、ずっと付けてる訳じゃねぇなら良いよ』


 「それじゃコレにする」


 という訳で、二つの頂き物は決定した。

 玩具の銃と、黒っぽい籠手。

 どちらも俺からしたらコスプレグッズと変わらない代物なのだ、だったら難しく考える必要など無いのだろう。

 とかなんとか色々あって、俺は新しい装備を手に入れてお宝部屋を後にするのであった。


 ――――


 その後、お姫様と一緒にプラプラ歩いて行けば。

 辿り着いたのはやけに立派なお部屋。

 何ココ、居るだけで緊張しそうなんだけど。

 などと思いながら促されるまま歩いて行けば、でっかい椅子に座ったファットマンの隣に並ばされた。

 その姿はまさに王様。

 高そうなマント来てるし、ちゃんと王冠も被ってる。

 しかしながら、こちらに溢す微笑みはいつも通りだが。


 「ファットマンが、王様だった……?」


 『え? 今更?』


 ここに来て、驚愕の事実が。

 マジかよ、俺ファットマンに超失礼な態度ばっかり取ってた気がするけど。

 しかも計三点もファットマンのお宝くすねてるけど。

 思わずビクビクしながら隣に並んで正面に視界を向けてみれば、そこには。


 「ありゃ? 皆居る」


 グラベルにリリシア、そしてシャームが膝を折りながら頭を下げていた。

 何やら皆の会話が始まってしまったが、やはりこちらの言葉は分からない訳で。

 でもなんだろう、いつもと違ってピリピリしてるというか。

 ファットマンもいつもより声低いし、みんなも一言一句はっきりと喋っている様な雰囲気。

 なんか、この空気は嫌だな……とか思いながらビルを強く胸に抱いた瞬間。

 グラベルが此方に顔を向けて、緩く微笑んだ。

 あ、これは。


 「話終わったのかな、お爺ちゃん達も無事で何より。見て見てー、また何か貰ったー」


 笑みを浮かべながら、今日の戦利品をグラベルに見せていれば。


 『……スー、どっちか選べってよ』


 「え?」


 ビルが、急にそんな事を言い始めた。

 どっちか選べって、え? どう言う事?


 『今後のお前に関わる事だ、よく考えて答えを出せ』


 「いや、でも、え? だって……」


 ひたすらに狼狽した。

 だって、急にそんな事を言われても。


 『安心しろ、どっちを選んでも俺はお前に着いて行ってやるよ。なんたってお前、俺が居ねぇと周りが言ってる事すら分からねぇからな』


 「……うん、ありがとう。ビル」


 ブサ猫の一言で、俺の心は決まった。

 急に選べと言われて焦ったが、こんなの悩む方が間違っている。

 最初から答えなんて決まっていたんだ。

 だって、俺には。


 「えっと、こっちの銃っぽいの返しますね。多分俺には使えないんで、すいません。こっちの籠手を選ばせてもらいます、こっちなら多分ガードだけは出来ると思うんで」


 ファットマンこと王様に駆け寄ってから、変な形の拳銃をお返しした。

 この選択で、間違いないはずだ。

 だってビルが近くに居てくれるって言っているのだ、攻撃手段は間に合っている。

 だったら俺は自分の身を守る事を考えて、“盾”を選ぶべきだ。

 まさに完璧な選択。

 自信満々にそう考えて、お爺ちゃんの元へと戻ってみれば。


 『ぶわぁぁか! ちげぇよ! そっちじゃねぇよ!』


 「え? じゃぁ何?」


 『お前は本当に空気を読むって事をしらねぇのか!?』


 なんか、ブサ猫から超怒られた。

 但し周囲からは笑みが零れ、グラベルとリリシアからはギュッとされてしまったが。

 いや、マジでどうなってんの?

 混乱したままポカンと突っ立っていれば、何やら愉快そうに笑う王様。

 その彼が、ゆっくりと立ち上がろうとしているでは無いか。


 「ちょっとまった! 補助器具無しで急に立っちゃ不味いって!」


 思わずビルさえも取り落とす勢いで走り始め、立ち上がった王様を支えてみれば。


 「――、――――。スー」


 彼は満面の笑みを浮かべながら、先程返却した銃の玩具差し出して来るのであった。


 「ありゃ? 結局両方くれるの?」


 『あぁもう、面倒クセェ。貰っとけ貰っとけ』


 そんな訳で、お宝は二つとも俺の手に戻って来た。

 ヤ、ヤッタゼ?

 良く分からないが、とにかく俺の選択間違ってはいなかったらしい。

 結局両方貰えたし。


 『お前は見てて飽きねぇな』


 「その言い方は酷くない? ていうかビル、お前離れてるとマジで言葉分かんなく怖いんだって。今後は昨日みたいな行動控えてくれよ?」


 『ったく、手のかかるチビも居たもんだ』


 やけに呆れたビルの御言葉を頂きながら、俺はグラベル達と手を繋いで城を後にした。

 あれ? もう仕事終わったの?

 とか何とか、気になる事は多いが。

 それでもとりあえず、森に帰るっぽい雰囲気。

 色々あったけど、前の暮らしが戻って来るって事でよろしいか?

 なら、万々歳である。

 お城で美味しい物食べて、もち肌マッサージして。

 お宝三つも貰えた上に、また異世界のワクワク山暮らし。

 いやぁ、俺も慣れてきましたなぁ。

 そんな訳で、少なくなったペットと一緒に街中を軽い足取りで進んで行った。


 ――――


 『何やってんだ?』


 「あ、ビル! 見て見て! この籠手、やっぱ良いわ! この時期でも全然指先冷たくならずに野菜が掘れる!」


 その後、森の家に帰って来た俺達。

 グラベルとシャームは日々森に赴き、たまに俺も一緒に連れて行ってもらう。

 狩りに行かない日はリリシアと一緒に家の中で仕事したり、畑仕事をしたりと色々だ。

 そんでもって、いよいよ寒くなって来たこの季節に活躍したのが……王族から頂戴した黒い籠手。

 これ、保温性も兼ね備えているのか全然指先が冷えないのだ。

 という訳で、籠手を付けながら畑仕事。


 『アイツ等が見たら泣くな、間違いなく』


 「なんで?」


 『知らん、勝手にしろ』


 結局玩具の銃は使い方が分からず、部屋の隅に転がっている。

 ムムが選んだ豪華なピスタチオは、特別なオヤツという認識があるのか。

 あれ以降無駄に齧ったりはしていない様だが……アイツ、畑に一個植えやがった。

 冬の間に木の実をそこら辺に隠すアレなのか、それともピスタチオの木を生やそうとしているのかは知らないが、相変わらずマイペースなモモンガだ。

 あとは変化があった事と言えば、最終的に一匹になってしまったグリフォンがやけに寂しそうしており、常に兎とくっ付いて行動している事くらいだろうか?

 お前の兄弟は王族とチート主人公に献上してしまったからな、スマン。

 でもお前もデカくなったら食べるつもりなんだ、重ね重ね……スマン。

 という訳で、本日も元気に畑仕事。

 収穫した野菜を籠に突っ込んで、寒そうにしているビルを連れて家の中に飛びこんでみれば。


 「スー、――」


 温かい空気と、優し気な微笑みを洩らすリリシアが迎えてくれる。

 彼女の笑みに、思わず顔を綻ばせながら。


 「ただいま、リリシア。いっぱい採れたよー」


 本日の成果を、彼女に向かって掲げて見せるのであった。

 なんというか、こういうまったりした生活も良いなぁ。

 そんな風に思えるくらいに、この森生活は俺にとって落ち着く環境になっていたのは間違いないのであろう。


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