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神獣飼いの獣人少女 ~TSして猫耳生えた、猫としか会話出来ない。詰んでね?~  作者: くろぬか
2章

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第43話 お前馬鹿マジで止めろ


 『ほぉ……コイツ等か』


 使われた毒の匂いを追って、厨房まで辿り着いた訳だが。

 そこでは二人の男が言い争っていた。


 「どうするんだコレ! こんな状況じゃ、冒険者に疑いの目が向かなくなるぞ!」


 「もうここまで来たらやるしかないんだよ! このままだといずれバレるのは目に見えてるだろ!」


 一人は料理人の小太りの男と、もう一人は兵士っぽい恰好。

 まぁ見事に、城の中に害獣が紛れ込んでいる様だ。

 もう少し泳がせるか? いや、しかしな。

 スーの馬鹿が何をやるか分かったもんじゃない。

 危険分子はさっさと処理しちまった方が良いだろう。

 そんな訳で、首輪……というか腕輪に魔力を込め始めた頃。


 「アイツはどうした!? まさか一人で逃げたのか!?」


 「馬鹿言うな、アイツはもう動き始めてるよ。流石は“こう言う事”に詳しい薬師だ、冒険者の女共に薬を盛るんだと。そっちに眼が行っている間に、とかなんとか。上手く行けば、俺等がとんずらする時間も出来るってもんだ」


 そんな話を聞いた瞬間、思わず彼らの前に姿を見せた。

 厨房のテーブルの上に乗っかっただけだが、二人からは驚愕の視線を向けられる。

 ここにスーが居なくて良かった。

 いつもだったらテーブルに乗っかった瞬間、俺であろうと関係なく叩き落とされる事だろう。


 『その話、ちょっと詳しく聞こうじゃねぇか』


 腕輪に魔力を通し、徐々に“昔”の姿に戻って行く。

 力は漲り、身体は大きくなっていく中。

 二人は震えながら俺の事を見上げていた。


 『言え、害獣共。もう一人は誰だ? 今からとっ捕まえて頭から齧ってやる』


 そんな言葉を紡ぎながら、巨大化した姿で威圧して見せるのであった。


 ――――


 コンコンッと扉をノックする音が響いた。

 こんな時間に? とは思うが、ココは王城。

 しかも先程の毒殺未遂があったからこそ余所者の私達に対して、誰かしら事情聴取にでも来たのだろうという気持ちで扉を開けてみれば。


 「お嬢様方、お茶をお持ちしました」


 何か、イケメン風の執事さんが頭を下げていた。

 誰コイツ。

 というか妙に甘ったるい匂いがするんだけど、なんだろう?

 紅茶? 香水?


 「えっと、頼んでませんけど……」


 「ミー、王様達が気を使ってくれたんじゃないの? 変な事言わない」


 「ただでさえお前は行動が目立つんだ、今は大人しくしておけ」


 仲間の二人から注意を受けてしまい、とりあえず彼を室内に迎え入れた。

 王族というのは、夜にもお茶を準備させて飲むのだろうか?

 まぁ確かに、安眠効果のあるカモミールティーなどであれば、あり得ない話では無いのかもしれないが。

 とか思いながらも、大人しく席に座り全員分のお茶が用意されるのを待っていた訳だが。


 「つい先ほど毒を盛られた事態にも関わらず、我々の部屋にお茶を出すだろうか? しかも本来なら一番疑われるのは私達だ。だというのに……こんなにも無警戒に執事を向かわせる?」


 私達のパーティリーダーが、鋭い視線を執事に向ける。

 確かに。

 誰が犯人かも分からない今の状況で、飲食物を気軽に提供するか?

 思わずカップに伸ばしてしまった手を引っ込め、私も彼の事を睨みつけてみたが。


 「気付くのが遅いんだよ」


 そんな一言と共に、視線が揺らぐ。

 なんだコレ……まるで甘酒をがぶ飲みして気分が悪くなった時みたい。


 「残念だったな、冒険者諸君。お前達には反逆者になってもらうぜ?」


 ニッと嫌らしく笑う彼を視界に映しながら、徐々に体の力が抜けていくのが分かった。

 その男は笑いながら押して来たカートの布を捲り、お茶が乗っていたテーブルの下に設置された何かを自信ありげに見せつけた。

 これは……お香、だろうか?

 変な壺みたいなモノから、煙は無くとも甘い匂いが漏れている。


 「ホラ、どうだ? 気持ち良くなって来ただろう? 俺の指示に従えば、もっと良くなる。王姉殿下を殺せ、先ずはそこからだ。それがちゃんと出来れば、お前達の望み叶えてやる」


 私の、望み?

 ニヤニヤと笑う彼の顔を見ながら、そんな事を考えてしまった。

 私の望みは、お兄ちゃんを見つけて連れ帰る事。

 だからこそ、こんな異世界にまで足を運んだ訳だが。


 「もっともっと気持ち良くなる薬をくれてやる。だからほら、働け。俺の為に」


 ぼんやりとする頭でも、「そうじゃねぇよ!」と叫びたくなったが。

 彼が鈴の様な物を取り出し、チリンチリンと小さな音が響く度に頭の中に霧が掛かって行く。

 魔道具の類だろうか? 

 ダルいと感じる身体は、私の意思に反して動き始める。


 「いけ、命令に従え。そうすればデカい金が動く、俺の為にしっかり働いてくれよ? 才能ある冒険者さんよ」


 やけに不穏な事を言い放つ彼の言葉を聞きながら、私達は武器を手にする。

 そこまでは、記憶があったのだ。

 だというのに。


 「おにい、ちゃん……」


 一言呟いてから、完全に私の意識は暗闇に閉ざされてしまった。


 ――――


 「それで、スーが選んだアレはなんだったんだ?」


 未だにスーを抱えて、今ではベッドに座っているアクレシア王女。

 彼女に抱えられるスーは非常に気まずそうな雰囲気を放っており、猫の耳を畳みながらジッと箱を睨んでいる。

 それもその筈。

 王子が集めている物品だというのに、急に宝物庫から一つ選べと言われても反応に困るだろう。

 それを理解しているのかいないのか、スーは難しい顔をしたまま動かなくなってしまったのだ。

 何やらムムがやらかしたらしく、箱についてしまった傷を何度も指でなぞっている。


 「正直、その……ハズレというか、私達も騙されて購入した代物だと思います。あはは……」


 少しだけ困った様な顔をしながら、王女はそんな事を言ってのける訳だが。

 傍から見れば宝石が散りばめられた高価そうな箱。

 生憎と鉱石の類には詳しくないので、本物かどうかは分からないが。

 とはいえ我々にとっては、御値段的にあまり心臓に良くなさそうな雰囲気を放っている。


 「スーちゃんが選んだのは“世界樹の種”と呼ばれている物です。箱はオマケみたいなモノなので気にしないで下さい」


 ほぉ、あの高そうな箱がオマケと来た。

 だとすれば中身は相当高価な代物が入っている気がするんだが。


 「でも、多分偽物ですね。私もこの種を何度か植えてみましたが、世界樹どころか芽さえ出ない状況でして。未だ庭に埋めてありますが、これと言って何も……弟も“やられた”なんて言って、部屋の隅に放り込んでいた物品です」


 中身は見ていないが、植物の種だというのなら正しく育てれば何かしらの変化は訪れる筈だ。

 しかも植物に詳しいという王女なら、育て方を間違えるという事も無さそうだが。

 だが“世界樹”と言われると……何とも言えない。

 もっと時間が必要なのか、他の何かが必要なのか。

 正確な答えは分からないが、とにかくスーが選んだのはそう言う物という訳だ。

 箱があまりにも豪華だから、ただの悪戯や詐欺の類とも考えにくいのだが……こればかりは、宝石に詳しい人間からしたら鼻で笑われるのかもしれない。

 私の見立てが甘かった場合、全ての根底が崩れるのだから。


 「しかしソレが“本物”であった場合、どうだ? 世界樹とは不死になり得るリンゴを生やしたり、葉の一枚でも万病に効くと言われている」


 「とはいえ箱の中には結構な数の種が入っていますので、とても本物とは……でも、もしも本当に世界樹が生えた場合は凄いですね、流石スーちゃんですって褒めます」


 「もう少し真面目に……」


 思わず突っ込んでしまった。

 それくらいに、気の抜けた答えが返って来たのだから。

 しかしながら王女は幸せそうにスーを抱き、スーの方は未だにフルフルしながら箱を眺めている。

 多分とんでもなく高価そうな代物を貰ってしまった事に怯えているんだろうが、普段ビルの首にスポスポ嵌めて遊んでいる腕輪もその類だからな?

 なんて教えた日には、どんな反応を示すのだろう。

 怯えているスーは可愛そうだが、ちょっと反応が見てみたい。

 とかなんとか思っていた、その時。

 ズンッと腹に響く様な衝撃が、この部屋に伝わって来た。


 「殿下、こちらに。スーを連れて私の後ろへ」


 「今のはいったい……?」


 「とにかく全員で集まった方が良さそうだな。グラベルの事だ、きっと同じ事を考えて――」


 「無事か!?」


 「姉さん!」


 「ほら、揃った」


 会話している間に、車椅子を押したグラベルが部屋に入って来た。

 何処かにジローという護衛も居る筈だから、全員がこの部屋に揃った事になる。

 であれば。


 「今の所情報は無し、全員警戒で良いだろう。これより部屋に侵入して来る者は全て敵と考えるべきだ」


 そんな事を呟きながら、静かに杖を構えるのであった。

 ここで守るべきは王子と王女、そしてスーの三人。

 だとすれば。


 「正面は私とグラベルで守る。シャーム、お前は皆の近くで窓の外を警戒」


 「了解した」


 短い会話を終えてみれば、彼女は後方に下がりながらナイフを抜いた。

 そして窓の外へと鋭い視線を向ける。

 きっと狼獣族のシャームの瞳なら、我々に捕らえられない変化だって見逃さないだろう。

 そんな信頼を置きながら、再び正面に杖を構える訳だが。


 「妙だな」


 「どうした、リリシア」


 エルフとは、魔法や精霊術が人族より長けている。

 が、しかし。

 大きな耳を持っている影響なのか、耳も良いのだ。


 「何処かの四人組が、此方へ向かって来る音が聞こえる」


 「緊急事態なら、まぁ不思議ではないが」


 私の言っている事を理解したらしいグラベルが、剣を構えながら言葉を紡ぐが……何だろう、嫌な予感がする。

 その予感を体現するかの如く、目の前にあった扉は蹴破られた。

 吹っ飛んで来る最中、グラベルがキャッチしたから良いものを。

 あのまま吹っ飛んでいたら後衛組に直撃するだろうという勢いで。


 「随分御挨拶だな、王城ではもう少し大人しく出来ないモノか?」


 グラベルが言葉を投げかけるが、返事は無し。

 無くなった扉の向こうに見えるのは、本日訪れた冒険者が四人。

 しかも、虚ろな目をして。

 つまりはまぁ、“そう言う事”なのだろう。

 何か魔術を使われたか、薬でも盛られたのか。

 とにかく今の彼女達は正気ではない様だ。

 そして何より、今回の敵はどうしても彼女達に罪を被せたいという事だけは分かった。


 「いくぞ、グラベル。ただし……殺すなよ?」


 「分かっているさ、それにいくら有能な若手だったとしても……まだ遅れを取るつもりは無い」


 少々年寄り臭い台詞を吐きながら、彼は長剣を片手に駆け出した。

 やはり、冒険者の後輩にスキル数で負けている事に思う所があったのだろうか?

 何て事を思ってしまう程、グラベルは先頭に立っている彼女に突っ込んで行った。


 「リリシア、すまないが他を頼む! 油断出来る相手ではないぞ!」


 「了解だ、グラベル。存分に暴れたまえ」


 呆れた声を上げながらも、私は周囲の者達を拘束する為の術式を行使するのであった。


 ――――


 ヤバイ、これは本当に不味い。

 ウチの妹、ついに暴走した。


 「この馬鹿ぁぁぁ! 今すぐ止めろ! 実家じゃねぇんだぞ、他人様のお家で暴れてんじゃねぇ!」


 そんな事を叫んでみる訳だが、お姫様に引っ張られて非戦闘員組は部屋の隅にまとめられた。

 妹の相手をグラベルが、他三人をリリシアが。

 シャームは武器を抜きながら、俺たちを守る位置に立っている。

 いやいやいや、妹もそうだけどお友達も何してくれちゃってるの?

 悪友と一緒にやんちゃしたいお年頃? 是非とも時と場所を選んでほしいが。

 皆物凄く攻撃してますけど、ふっつうにガンガン武器をぶつけ合っていらっしゃいますけども。

 グラベルとリリシアは危なげなく戦闘してるが、見ているだけでもヒヤヒヤする。

 まさかとは思うけど、この場で人死に見る様な事態にならないよね?

 というか今は取り押えられるだけだったとしても、後で絶対不味い事になるよね?

 マジで? コレ、俺の妹処刑とかされちゃわない?

 色々と不味い予想が脳内に渦巻く中、皆の戦闘を見守っていれば。


 「ぬわぁっ! 何か投げた!」


 妹の仲間の一人が、此方に向けて何か丸い物を投げ放ってきた。

 何あれ、爆発したりする?

 思わず頭を押さえて蹲ろうとしたその時。

 リリシアが此方に掌を向けると、投げつけられた球体は空中で停止した。

 流石はエルフ美女、何をやっているかは全然分かんないけど魔法ってすげぇ!

 などと思っていれば、相手の内の一人が自身の足元に何かを投げつけ。


 「今度は煙幕かい!」


 モクモクと白い煙が上がり、室内を包んでいく。

 もはや本格的な戦闘になってしまい、慌てふためくしか出来なかった訳だが。

 後ろからゲホゲホと咳き込む音が聞える。

 振り返ってみれば、煙を吸い込んでしまったお姫様とファットマンが苦しそうに咳き込んでおられた。

 ハ、ハンカチか何か! なんて思って慌ててポケットをまさぐっていれば。


 「――! ――――!」


 煙の中から現れた燕尾服の男性が、何かを叫びながら二人にハンカチを差し出した。

 ……うん、誰?

 さっきから急展開ばかりで些か着いて行けなくなって来た所に、これまた新キャラが登場してしまった。

 見た感じは執事の人っぽいけど、ご飯の時とか居たのかな?

 不思議に思いながらも、渡しそびれたハンカチでとりあえず自分の口を塞ぐのであった。


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