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神獣飼いの獣人少女 ~TSして猫耳生えた、猫としか会話出来ない。詰んでね?~  作者: くろぬか
2章

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第41話 誓いを破り、テーブルの上へ


 人生とは驚きの連続である。

 事実は小説よりも奇なり、などなど。

 色々と言葉に出来る文字列は多いだろう。

 しかしながら、だ。

 こういうドッキリは、好きじゃないなぁ。


 「なんか、居る」


 『何か居るなぁ……』


 「えっと、多分お客さんかな? それじゃ俺は今日こそ隅の方で大人しく――」


 秒で逃げようとする成人男性《次郎さん》を捕獲しながら、食堂に広がる光景を死んだ目で見ていた。

 ほんじつのおしごと、またおひめさまのまっさーじ! そのあとは、きのうみたいなおいしいごはん!

 だった筈なのだが、ちょっと待って欲しい。

 何故か妹が居るが?

 アイツ余所行きマックスな微笑みを浮かべながら、グラベルと話しているんだが?

 いやおかしいだろ、なんでお前ココにいるんだよ。

 あれか? 主人公補正か?

 異世界に来て仲間を集めて、冒険者的な活動を始めたらもう既に王宮に呼ばれる程の偉業を残したってか?

 あーあぁー! チート貰えた主人公様いいなぁー! 俺も何か欲しいなぁ神様ぁぁぁ!

 心の中で念じてみるが、やはり冬眠中の神様からのリプライは無し。

 控えめに言って「今すぐ神様なんて辞めてしまえ、辞表を出しなさい」と伝えてやりたい。

 何てことを思いながら次郎さんを逃げないようにしていると、妹も此方に気付いたのか顔を顰めた。

 遠くだったから聞えなかったが、アイツ今絶対舌打ちした。

 これだよ、俺の顔見ればしかめっ面。

 喋ればすぐさま舌打ちで返す。

 あぁ嫌だ嫌だ、これだから反抗期まっさかりの小娘は。

 周りに居る大人なお姉さん達を、少しくらいは見習ってほしいものだ。


 『なんでも良いから飯食おうぜ、腹減った』


 「だな、そうしようビル。アイツは無視して、ご飯食べよう。アイツを救ってやろうとか考えてた俺が馬鹿だったわ、アイツ異世界主人公順調に楽しんでるわ」


 何て事を言いながら、次郎さんを引きつれて席に着けば。

 いち早く集まって来たメイドさん達が小動物達の机と椅子を用意してくれた。

 あっ、今日もご苦労様です。

 などと思いながら頭を下げていると。


 「――!? ――――!」


 急に叫び声を上げた妹が、何故かこっちに走って来た。

 何だ何だ、今度は何だ。

 こっちの行動に気に入らない事があって、急に引っ叩いてきたりするのか?

 そんな事を思いながら警戒していると、近寄って来た妹はおもむろにグリフォンの一匹を抱き上げた。


 「――!」


 喋っている内容が、分からん。

 とにかく表情を見るに、妹はグリフォンの子供が気に入ったみたいだ。

 ものっすごく緩んだ顔をしながら頬ずりしているが、そんな事してると……。


 「あっ」


 『馬鹿かコイツ。あんな魔力を持ちながら近づかれれば、警戒しねぇ魔獣はいねぇよ』


 思いっ切り、妹の頬に噛みついているグリフォン。

 めっちゃ痛そう、アイツ等の嘴ギザギザしてるし。

 などと思いながら、妹の事を見つめていれば。


 『気のせいか? コイツ喜んでるぞ? 痛覚をどっかに忘れて来たのか?』


 「すぅぅぅ……おうふ、身内の恥」


 忘れていた、コイツ動物に嫌われる癖に動物大好きなんだ。

 実家でも婆ちゃん家でも、バリバリ猫に引っかかれているのに突撃していくアホなのだ。

 ついでに言えば、俺の方に逃げて来る猫を見て不機嫌になったりもしていたが。

 詰まる話、なんだ。

 小動物に対してだけは、痛覚馬鹿になるのだ。


 「もうさ、一匹やるから離れてくんねぇかなぁ……周りの目を気にするとお腹痛くなりそうなんだけど」


 『大丈夫か? 厠に行くなら着いて行ってやるぞ?』


 「随分渋い言い方するねぇ、ビル」


 そんな事を言っている内にも、蹴られ齧られ、引っ掻かれていく妹。

 だと言うのに、本人はニコニコしながらグリフォンをモフッている。

 病気だぜ、コイツは……。


 「あの、さ。一匹やるから、席戻れ。な? もうお前待ちみたいになってっから」


 身振り手振りで表現してみれば、相手からはキッ! と強い眼差しを頂いたが……どうぞどうぞとやってみれば、一応貰った事を理解してくれたらしい。

 その手に超狂暴反抗期真っ盛りグリフォンを抱きながら自分の席へと戻っていった。

 あぁもう、疲れる。

 「俺は、兄貴だから」なんて恰好つけて言ってみたものの、もう心配しなくて良いじゃないかな。

 これだけ実力を示している妹だ。

 後は勝手に英雄譚の一つや二つ残してくれるだろう。

 という訳で、コイツを助けようとするのは止めよう。

 多分俺の身が持たない。

 俺ツエェを存分に味わいながら、異世界を満喫すれば良いさ。

 何て事を思いながら、ナイフとフォークを手に持ったその瞬間。


 『スー、待った。何か変な匂いがする』


 「ほぇ? どんな匂い?」


 皆が食事を始める中、俺とビルだけは食べ物に口を付けず周囲を見渡してしまった。

 コレと言って問題はない、昨日と大して変わらない光景。

 一部違和感があるとすれば妹とその仲間達が加わった事くらいで、別に変な感じはしないが。

 はて? と首を傾げてみたところで。


 『っ!? あのお姫様の近くのスープ! 飲ませるな! 臭いが薄くて気が付くのが遅れた!』


 「え? え? なに、どうしたの?」


 『良いからアイツのスープをひっくり返せ! 人間に取っちゃ猛毒だぞ!』


 全身の毛を逆立てたビルが叫んだ瞬間、ゾッと背筋が冷えた気がした。

 ブサ猫の言葉を信じるなら……いや、ビルの言葉を今更疑う余地など無い。

 すぐさま行動を起こそうと、王女様の元へ向かう為に席を下りた。

 しかしながら、タイミングの悪い事に。


 「あぁくそ、最悪っ!」


 『スー! 最短距離で行け! 飯なんぞまた獲ってくれば良いだけだ!』


 ビルの一言に、テーブルの上へと乗り上げた。

 お姫様が、スープをスプーンで掬って口に運び始めてしまったのだ。

 本来テーブルの上にはペットでさえ上るものでは無い、そう思っていたのに俺が登っちまった。

 そして他の料理を蹴り飛ばすかの勢いで走り、お姫様に向かってスライディング。

 そのままスプーンを蹴り飛ばした。


 「姫様それ食べちゃ駄目! 毒!」


 必死に訴えてみるが、相手は放心状態。

 そりゃそうだろう。

 対面席の相手が急にテーブルの上を走り出して、飲もうと思っていたスープを掬ったスプーンを蹴り飛ばしたのだから。

 正直、周りの目が痛い。

 というか、すぐにでも斬首刑のなりそうな勢いで場の空気が冷たい。


 「えっと、あっと……そのスープを飲むと、こう。あぁ……っ! ってなって、ぐはぁっ! ってなって――」


 テーブルの上に乗っかりながら、必死でジェスチャー勝負を仕掛けた訳だが。


 『うわっ、超滑稽』


 「うっせぇよブサ猫! お前何で逆通訳は出来ねぇんだよ!」


 結局、ビルに怒鳴り散らす形で幕を下ろした。


 ――――


 「今すぐそのスープを調べろ!」


 王族の居るこの場では不躾な発言だったが、思わず席を立ちながら叫んでしまった。

 何たってスーが異常な行動までしながら、王女の飲もうとしていたスープを蹴り飛ばしたのだ。

 ペットが机に登ろうとしても物凄く怒っていたあの子が、テーブルの上を駆け抜けてまで王女の飲食を封じようとした。

 そして何やらペット達と叫び合っている。

 間違いなく、何かあるのだろう。

 正直、根拠としては薄い。

 しかしながら、直感的な物で感じてしまった。

 スーは何かに気付き行動を起こした。

 そして今回もまた、厄介事に巻き込まれたのだろうと。


 「待て、城の者に調べさせるのは後で良い。証拠を隠されては困る、まずは私が見よう」


 リリシアがすぐさま行動に移してくれて、シャームは既に王族二人の警護に入っている。

 ジローと呼ばれた彼も、短剣を抜き放ち周囲に視線を向けているくらいだ。

 そして。


 「驚いたな……私は鑑定術師という訳では無いから、正確な事までは分からないが。間違いなく猛毒だ。コレを見てくれ」


 リリシアが掲げるのは、妙に青い色の分厚い用紙。

 植物性の毒素に反応して、色を変えるという道具だったと思ったのだが。

 幾つかの道具を使ってスープを調べていた様だが、彼女が持ち上げたソレは紛れもなく桃色に変色していた。


 「つまり、そのスープを飲んだ場合……」


 「体内から毒に侵され死んでいただろうね。しかもコレは、私の予想が正しければ珍しくはあるが近くで採れる植物の毒だ。無味無臭と謳われる猛毒、随分と凝った物が使用されたみたいだな」


 そんな台詞を吐きながら、彼女は桃色に染まった紙を投げ捨て周囲に鋭い視線を向ける。


 「“お客様”が居るこのタイミングだ、暗殺者の類としてもたまたま日程が被ったとは考えにくい……他所の珍しい魔獣や虫の毒ではなく、植物性の毒というのがまた」


 「それ以上は良い、リリシア」


 これ以上語ってしまえば、この場に相手が居れば無駄に悟られる可能性がある。

 いやむしろ既に手遅れかも知れないが、それでも。


 「また、内部に敵が潜んで居る。という事で良いんだな?」


 俺たちが敢えて口にしなかった事を、王子は言葉にしながらフルフルと拳を震わせていた。

 紛れもない怒りと憤りをその身に、憎しみの籠った瞳を此方に向けて来る。


 「全兵隊に……いや、それでは意味が無いか。炙り出せない……」


 チッと大きく舌打ちを溢す彼は、車椅子の肘置きを強く叩いた。

 それくらいに、内部からの反逆者にはトラウマがあるのだろう。

 見ただけで分かる程、今まで以上に彼は怒りを覚えている様だった。


 「お前達を全力で頼っても良いか? すまない、偉そうな事ばかり言っておきながら。だがどうか、協力してくれないだろうか? 神獣狩りの英雄達と、その弟子よ」


 未だ怒りが収まらぬ様子で、アグニ王子は俺たちに声を掛けて来た。

 今この状況で、しかもこの相手からの依頼を断れる奴が居れば見てみたい。

 それくらいに状況は揃っているんだ。

 王家に仇なす連中が間違いなく存在し、しかもこの瞬間を狙ったという事は……恐らく冒険者である彼女達を犯人に仕立て上げる手筈だったのだろう。

 詰まる話、相手はまだまだこの城に潜伏するつもりの様だ。

 そして今回狙ったのは王女。

 つまり、王子を残して何かしらの交渉をするつもりで居ると考えて良いと思う。


 「俺達を頼れ、アグニ。例え“神獣狩り”には頼らないと決めたとしても、俺たちは国では無く“お前達”に手を貸そう。だから、俺たちを使え」


 「感謝する、神獣狩りの英雄達」


 これから忙しくなるぞ。

 身近に迫った脅威、使用人達から出された飲食物だって警戒しなければいけなくなる。

 そうなってしまえば、私生活だってろくな物ではなくなって――


 「あー」


 「えっと、こっちは大丈夫って事ですかね? あーん」


 皆が険しい表情を浮かべ、武器さえも構えている中。

 スーはテーブルから王女の隣に降りて、食事を与えていた。

 えっと、うん。

 出来れば、俺等が確かめる時間も欲しかった。

 そんな事を考えている内に、スーから差し出された食事を口に運んでいく王女。

 あ、あぁ……普通に食べてしまっている。

 スーは鑑定能力など無い筈なので、もっと色々調べてからじゃないと不味いのだが。


 「うん、美味しいですね。スーも食べますか?」


 「うまぁい! ん!」


 緩い会話をしながら、お互いに食べさせ合っている二人。

 今の所害は無い様なので、問題ないのか?

 いや、問題あるだろ。


 「グラベル様、微力ながら協力させて頂きます……というかこれって、私達に罪を擦り付けようとしたって事ですよね?」


 ミヤビと名乗った少女を初めとする冒険者達も、皆険しい顔を浮かべている。


 「そうなるな。君達は冒険者だ、例え若いパーティでも植物性の毒なら、近くの森で手に入れられない事も無い。だからこそ当て馬にされたんだろう」


 「ハッ! 反吐が出ますね……まだお兄ちゃんの情報の欠片も集まっていないのに、こんな所で犯罪者になる訳に行かないので」


 それだけ言って、彼女は周囲を鋭い視線で見回した。

 しかしながら、この場に居るのは使用人と我々だけ。

 誰もが怯えた表情をしながら、遠目に此方を眺めている。

 断言は出来ないが……多分“違う”のだろう。

 協力者の一人くらいは、いるかもしれないが。


 「それだけスキルを持っていながら、こういう状況には慣れていないのか?」


 「言わないで下さい。私は頭を使う状況に慣れていないので……そういうのは、兄の得意分野でしたから」


 悔しそうに呟く彼女は、剣の柄から手を放して此方を見上げて来る。

 本当に、スーとそっくりだ。


 「お兄さんを随分と信頼しているんだね。どんな人だったんだい?」


 「見た目は完全に女の子です、下手したら今の成長した私より背が低いかも。でもいつだってちゃんと私の事を見てくれて、しっかりと怒ってくれる人でした。あと、グラベル様みたいな渋い男性になりたいと日々努力する様なしっかり者です」


 「うん、うん? そうか……とりあえず優しいお兄さんだという事は分かった」


 良く分からない情報を得て、曖昧に頷いて見せたが……見た目は完全に女の子で、俺の様な爺に憧れる存在?

 そんな男の子、居るのだろうか?

 思わず首を傾げてしまうが、正確な情報が分からないのでこれまた真相は闇の中。

 彼女の言う通り、“ニホン”というのが異世界だった場合。

 もしかしたら俺達の常識とはちょっと異なっているのかもしれない。

 “こちら側”の子供だった場合、爺に憧れたりはしないだろう。

 男の子なら、いつだってキラキラと輝く様な格好良い鎧に身を包んだ、騎士などを目標にする筈。


 「あの、それで……あっちは良いんですか? アイツ、何か好き勝手やってますけど」


 彼女の言葉に視線を向けてみれば、スーが残った料理を王女と小動物とで分け合い、次から次へと楽しそうに口に運んでいるではないか。


 「スー! 待ちなさい! まだ他にも毒が入っているかもしれない!」


 叫びながら彼女を止めてみたが、結局その後それらしい証拠は見つからなかった。

 問題があったのは王女のスープただ一品。

 何を考えているのか、相手が誰なのか。

 一切分からぬまま夜を迎えてしまう形になったのだが……。


 「お客様方、護衛は必要か?」


 「……いらないです。むしろ知らない人が居たら夜眠れなくなりそう」


 冒険者の彼女達は護衛を断り。


 「スーちゃん、今日は一緒に寝ましょう? ね? 貴女が居れば私も安心して眠れるわ」


 王女はスーを掻っ攫って行った。

 これはまた、どうしたものか。


 「グラベル、すまない。この状況だ、今日は俺の部屋で寝て貰って良いだろうか? 姉さんの方にはリリシアとシャームを頼む」


 「あ、あぁ……そうしよう」


 俺は王子の部屋に泊まる事になり、シャームとリリシアが王女と同じ部屋に放り込まれた。

 なんというかもう、コレ……大丈夫か?

 そんな風に思ってしまうくらい、人を分ける結果になってしまったのであった。


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