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神獣飼いの獣人少女 ~TSして猫耳生えた、猫としか会話出来ない。詰んでね?~  作者: くろぬか
2章

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第39話 お城のご飯は特盛山盛りてんこ盛り


 王族のご飯ってどんな感じなんだろう。

 きっと豪華! ていうイメージはあっても、やはりちゃんと想像は出来ない。

 ぱっと思いついたのはローストビーフとかがでっかいまま出て来たり、あの段々になってる鳥籠みたいなヤツに乗っかっているケーキ各種。

 何故ローストビーフが思いついたのかは謎だが、多分ケーキはある。

 いや、あれはお茶の時か? じゃぁご飯は何が出るんだ?

 そんな事を考えながら、ウキウキした気分でデッカイ扉を開け放ってみれば。


 「スー、――」


 既に部屋にお呼ばれしていたらしいグラベルとリリシアは、笑顔で俺たちを迎えてくれた。

 そして車椅子のファットマンと全身もち肌美人のお姫様がこちらに向かって来て、笑みを浮かべながら俺の手を取ってくれる。

 なんだか色々喋っているが、何を言っているのかはさっぱり。

 まぁこれからご飯だよー的な事を言っているのだろうと勝手に納得し、部屋に設置されたやけにデカいテーブルの前に連れて来られれば。


 「な、なんだこれ……すっげぇ!」


 テーブルの上には、ありとあらゆる料理があると言っても過言ではない程、所狭しと豪華な料理の数々が並んでいた。

 ちょっと人数に対して料理が多すぎる気がしないでもないけど、それでもとにかくテンションが上がる。

 料理名は良く分からないが、とにかくいっぱい。

 “向こう側”で言う所のパーティーチキンみたいなのがデンッとど真ん中に置いてあるが、俺の記憶にあるソイツの四~五倍はデカイ。

 インパクトならソレが優勝だったが、周りにある調理だって凄い。

 まさに焼き立て! と言わんばかりのパイだったり、バスケットに入ったクロワッサン的なパンだったり。

 他にも色々並んでいる訳だが、もはやこの時点で目移りしてしまう程。

 もうパーティーだコレ、普通の夕食じゃないって。


 「次郎さん毎日こんなの食べてるの!?」


 思わず振り返ってみたが、そこに彼の姿は無かった。

 ありゃ? さっきまで俺とシャームと一緒に歩いていたと思ったんだけど。

 何て事を思いながらキョロキョロと視線を室内に向けていると。


 『あそこだ、部屋の隅』


 「ほほぉ、例の何とかっていうスキルですか」


 ニヤニヤしながらビルに教えてもらった場所まで歩き、ていっ! とタッチしてみれば。

 ポスッという音と共に掌は何かに触れ、次第に次郎さんが姿を現した。


 「次郎さん一緒に食べよ! 滅茶苦茶いっぱいある!」


 「いや、でも俺は……その、立場的に」


 とか何とか困った様子で、お姫様へと視線を向ける次郎さん。

 それにつられて俺も視線を追ってみた訳だが。

 何やらとても満足そうな表情で頷きながら、こちらに手招きしている。

 これはつまり、そう言う事なのだろう。


 「ホラッ! お姫様も食べて良いって言ってるし! 多分!」


 「えぇと……良いのかな」


 「俺だけじゃ手当たり次第に食べてみるしか出来ないのに、満腹になって美味しいの食べ逃しちゃったら勿体ないじゃん! だから次郎さんも! ね!?」


 もはや鬼気迫る勢いで詰め寄ってみれば、彼はやがて降参とばかりに両手を上げて見せるのであった。

 よっしゃ、言葉の通じる食アドバイザーもゲットした。

 という訳で彼の手を引っ張りながら、改めてテーブルへと戻ってくれば。


 「スー」


 俺の名を呼んだファットマンが、何やら使用人を呼びつけたかと思えばカートが運ばれてくる。

 今までにもお城の中でチラチラと見かけはしたが、リアルメイドさん。

 ゲームやテレビに出て来るメイドさんと違って、なんというかこう……凄く仕事人です! っていう雰囲気があるが。

 空気がパリッとしているというか、表情は柔らかいが動作が凄く綺麗。

 しゅんげぇ~とか思いながらポカンと相手の事を眺めていれば、微笑みながら何かを呟き、小っちゃいテーブルと椅子が幾つか用意された。

 ありゃ? 俺はこっちの子供席で食べろって事なのだろうか?

 せっかくなら皆と一緒にでっかいテーブルで豪快に食べたかったが、専用席が用意されてしまっては座るしかあるまい。

 渋々ながら、その席へと腰を下ろしてみれば。


 『スー、そこは俺らの席だとよ。お前はあっち』


 はい? とか良く分からない声を洩らしながら再び席を立つと、小動物達が集まって来て席の上に登り始める。

 机の上にまで登ろうとしたグリフォンを叱りつけている内に、小っちゃいテーブルにも次々と小皿に盛られた料理が並んでいく。

 これはまさか……王族はペットにまでこんな豪華でリッチな食事を与えるのが普通という事だろうか?

 何て言うか、ビルたちが食べてる料理も普通に旨そうなんですけど。


 「えっと、俺たちのご飯はこっちだよ」


 次郎さんからちょっと苦笑いを向けられつつ、再び大きなテーブルへと体を向けてみると。

 既に俺の前に置かれた皿には、いくつもの料理が取り分けられていた。

 そんでもって、俺の隣に並んで来るメイドさんが静かに頭を下げる。


 「これは……どういう状態なんだろう?」


 「テーブルが広いからね、メイドさんが取ってくれるんだよ。そうしないと食事中に何度も席を立つ事になるでしょう?」


 「VIP待遇!」


 「あはは……そうだね、俺もこう言う事してもらうのに慣れてないから、落ち着かないや」


 なんて会話をしながら俺達は並んで席に着いた。

 周りの皆も席に腰を下ろし、さぁ食べよう的な声がファットマンから上がった瞬間。

 とりあえずお皿に盛られたでっかいお肉に齧りついてみた。

 すると。


 「う、うっま!? というかめっちゃ柔らかい! なにこれ!?」


 「最初食べた時はビックリするよね、俺もそうだった。魔獣のお肉みたいだよ? ちょっと名前は分からないけど、鶏みたいなヤツ」


 「魔獣! 旨い!」


 もしかしたらグリフォンもこれくらい柔らかくて美味しくなるのだろうか?

 だとしたら本当に育て甲斐のある奴らだ。

 俺、これまた食べたい。

 もはや無我夢中にお肉を口に押し込んでいれば、此方に皆の視線が集まっている。

 皆ニコニコしているから大丈夫だと思うんだけど……もしかして、テーブルマナーとかあったのかな。

 不味い、初っ端からやらかしたかもしれない。


 「次郎さん、もしかしてなんだけど……食べ方とか、食べる順番とかあったりする?」


 「俺もその辺が分からなくて、こういう席に着くのが怖いんだよね……」


 おぉっと、食アドバイザーも俺と同じ悩みを持っているが故に、参考にならない意見が飛び出してしまった。

 どうしたものかとお肉を皿に戻し、周囲を観察していると。


 「スー、――」


 グラベルが何かを説明してくれている様だが、全く分からない。

 ど、どうしよう……全自動モフモフ通訳機のビルも、今はご飯に夢中になってるし。

 キョロキョロと視線を動かしていれば、クスクスと笑うお姫様とファットマンが何かを言って来た後。


 「お? おぉ?」


 ファットマンが骨付き肉を手で掴み、豪快にガブッと食らい付いて見せたでは無いか。

 つまりは、好きに食べて良いって事なのだろう。

 その証明とばかりに、彼はニカッと笑いながら再び豪快に肉を喰らう。

 良いじゃないか、そういうので良いんだよそう言うので。

 此方もニヤッと微笑みを返してから、お皿に乗っかっていた鶏肉に再び齧り付く。

 やっぱり旨い、鳥皮とかパリパリだし表面にも何か塗られているのか、噛みしめればじんわりと深い味が広がっている。

 ただし、高い物を食べ慣れていない俺にはソレが何なのか分からなかったが。


 「んまいっ!」


 「豪快に行ったねぇ、それじゃ俺も……」


 そんな会話をしながら俺達はひたすらに目の前の料理を口に運んでいくのであった。


 「次郎さん! アレ見て! 追加でピザが出て来た!」


 「おぉ……やっぱり何度見ても、こっちのピザはでっかいねぇ」


 「宅配ピザの二倍以上デカイよ! ジャンボジャンボサイズだ!」


 その後も色々と言葉を交わしながら料理を口に運んでいれば。


 『スー、そっちもちょっとくれ』


 足もとには、小動物達が集まっていた。

 これは、あげても良いんだろうか?

 テーブルマナーはあまり拘っていないみたいだが、お城で出された料理をペットにあげても良いもの?

 なんて事を思いながら皆様方に視線を向けてみれば、優しい微笑みで頷いてくれた。


 「ビル、食べて良いって。こっちおいで」


 『ういよ。お、海老もあるじゃねぇか。くれ』


 膝に乗って来た瞬間声を上げるビルだったが、それ以外も膝の上によじ登って来る始末。

 多い、流石に多いって。


 「ちょっとちょっと! 膝の上が大渋滞してるって! これじゃ俺が食えない! あ、こらグリフォン! テーブルに登ろうとするな!」


 などとワチャワチャしていれば、メイドさんが先程の小さいテーブルやら椅子やらを用意してくれて、俺の膝から回収した小動物達に餌やりを始めたでは無いか。

 凄い、我が家にも一人メイドさんが欲しい。


 「――、――」


 何やら言葉を発するメイドさんが、柔らかい微笑みを洩らしながら俺の口元を拭ってくれる。

 あぁ、なんだろうこの満足感。

 凄い、やっぱりお城って凄い。


 「俺もメイドさん欲しい……」


 「雇うなら、頑張っていっぱいお金稼がないとね」


 そうか、この世界でならお金があれば普通に雇えるのか。

 次郎さんから苦笑いを貰いながらも、周りのメイドさん達は次から次へと美味しそうなモノを取ってくれる。

 俺全然動いてないのに、どんどん料理が運ばれてくるのだ。

 そんでもって何故か、俺の周りに小動物の世話係も含め五人くらいメイドさんが居るんだけど。

 なんで? 皆の周りには一人ずつ付いてるだけなのに。

 俺だけ異様にチヤホヤされてる。

 ま、良いか。


 「次アレが欲しいです! パイ食べたい!」


 「何か、凄い事になってるねぇ……あ、すみません。ありがとうございます」


 メイドさんから何かしてもらう度に頭を下げている次郎さんと、もはや好き勝手美味しそうな物を強請る俺。


 『スー、コレ旨いぞ。食ってみろよ、骨付いてるやつ』


 更には喋るブサ猫が、他の動物達に囲まれながら必死にモグモグ。

 なんだろう、他人様のお家というか、お城でこんなに自由に楽しんでしまって良いのだろうか?

 色々と思う所が無い訳では無いが、兎にも角にもお喋り出来る面子と一緒に、お城ご飯を存分に満喫するのであった。


 ――――


 「グラベル、どう思う?」


 用意された寝間着姿のリリシアが、そんな事を言いながらベッドに歩み寄って来た。

 彼女の寿命は非常に長く、出会った頃からほとんど姿が変わっていない。

 だからこそ、質の良い寝間着に身を包む彼女は非常に魅力的だと思えた。

 まぁ、今聞かれているのはそういう感想では無いのだろうが。


 「あの食事と言い、王族の態度と言い、何とも妙だ」


 「あぁ、必死になってスーに気に入ってもらおうとしているかの様だ。まるで他国の使者を迎えた時のお祭り騒ぎじゃないか。あの子が可愛いのは認めるが、何故そこまで拘る必要がある? 可愛いからか?」


 「リリシア……真面目な話をしているのか、それとも雑談がしたいのか分からないから、そういうのは止めてくれ……」


 思い切り溜息を溢しながら、自らの髭を撫でた。

 確かにリリシアの言う通り、今日の王子と王女は変だった。

 子供が好きだから、単純にスーを気に入ったから。

 そんな理由だったら安心出来るのだが……何だろうな、何かを隠している気がする。

 しかし相手はスーだ。

 “愛猫”のスキルに何かあるのか? いやまさか。

 アレは動物に、もしくは自然に好かれる類の能力だと思われる。

 以前王子が言っていた様に、本当に治癒能力に目覚めたとか?

 あり得ない、そう言えれば良かったのだが。


 「実際に、王女の体は治っていた。完治とはいかないのかもしれないが、それでもだ。正直私には完治の時期が偶然にも一致した、としか思えないんだが……グラベルはどう思う?」


 「そうだな、俺も同意見だ。スーに治癒魔法が使えるとはどうしても思えない。なんたって魔力放出すら出来ないんだぞ? その状態で治癒が出来るなんて……それは魔法では無く奇跡の類だ。だからこそ、王族に眼を付けられた?」


 「間違いなく勘違いだというのに、な。そしてその勘違いを抱えたままスーを懐に入れられてしまえば、後が怖い。他人の期待とは、裏切られた時には恨みに変わるのだからな」


 そう言いながら、リリシアは酒の入ったグラスを此方に差し出して来た。

 それを受け取り、酒で喉を潤してから。


 「やはり、わからん。偶然傷が治る時期が重なっただけだったとしても、あの二人がそこまでの勘違いをするだろうか? 今は興奮し、そうとしか思えなくなっている、程度なら良いのだが……」


 「特に王子の方が問題だな。昼間も仕事ぶりを見せてもらったが、あれだけの頭を持っていて、そう易々と起こる勘違いとは思えない。姉の体の事だからこそ、盲目とも呼べるほどスーの能力を過信してしまっているのかもしれないが……はたして、どうかな。今の彼が正常だった場合、彼を納得させるだけの何かをスーが見せたのかもしれない。事実、両者の体に変化があったタイミングに、スーは立ち会ってしまっている」


 そんな事が、本当にあるのだろうか?

 スーに俺達の知らない能力があった、王族でさえ認める程の才能が芽生えた。

 事実がそうであるなら、俺たちは誇るべきだ。

 彼女の明るい未来へと繋がるのだから。

 でも、そうじゃない気がするのだ。

 こう言っては何だが……やはりスーはちょっと抜けている。

 危機感も薄い上に、すぐ人に懐く。

 しかしあの人懐っこさが、彼女の周りの人間全てを味方に変えていると言っても過言では無いのだろう。

 だが。


 「もしも王子たちの勘違いで終わるのなら、それで良し。しかし本当にスーに何かしらを見出したのであれば……」


 「彼女を、ココに預けるかい?」


 「それも、考えなければいけないだろうな。なんたって王城だ、しかもスーと言葉が交わせる者が居る……これ以上の条件は無いだろう」


 それだけ言って、天井を見上げた。

 考えていなかった訳ではない。

 スーはここの料理を大層気に入っていた様だし、王子たちも彼女の事を気に入ったのか、テーブルマナーなんて度外視してあの子に美味しい物を食べさせようとしてくれた。

 その結果は満腹になったスーが目を擦り始め、最後にはうつらうつらと舟をこぐほどだ。

 余程満足したのだろう、久しぶりに話が出来る相手が見つかってさぞ楽しかったのだろう。

 そんな事を思えば、彼女はここに置いておくべきなのかもしれない。


 「……」


 「グラベル、だから気が早い。もう一杯飲もう」


 鼻の奥からツーンとして来て、グッと眉間に皺を寄せていればリリシアがスッとグラスを奪って行った。

 あぁ、そうか。

 分かってはいたが、俺は既にあの子の居ない生活が考えられなくなっているのか。


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