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神獣飼いの獣人少女 ~TSして猫耳生えた、猫としか会話出来ない。詰んでね?~  作者: くろぬか
2章

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第35話 その暗殺者、NINJA


 「警護の依頼などと言っておいて、こんな事までさせてしまってすまない。リリシア殿」


 「呼び捨てで構わないよ、王子。私としては懐かしいが……貴方にとってはあまり良い記憶ではない様だね」


 「……すまない。貴女方を責めるのは間違っていると理解はしているのだが」


 「仕方ないさ、子供の頃のトラウマと言うのは中々消えるモノじゃない。ましてや私達が残っていれば変わったかもしれないと期待していたのなら、それがそのまま恨みに変わっても不思議じゃない」


 雑談と言って良いのか分からない話題を話しながら、二人は書類を片づけていた。

 リリシアが見てしまって大丈夫なのか? とは思ったが、当人の事を知っているアグニ王子はあっさり仕事を任せた。

 まぁ昔も王族に関わっていたのは事実なので、今更なのかもしれないが。


 「師匠……我々は何かしなくて良いのか?」


 物凄く居心地が悪そうに、ソワソワしたシャームが俺の服の袖を引っ張って来る。

 生憎とシャームにあぁいった書類仕事を任せる訳にはいかないのだ。

 言い方が悪くなってしまうが、国からの“信用”が圧倒的に足りていない。

 では俺はどうなのかと言われれば……単純に書類仕事が苦手だ。


 「シャーム、よく覚えておけ。護衛とはこういう状況でも静かに傍で待機し、常に周囲に気を配っておくものだ」


 「りょ、了解!」


 とか何とか言ってみれば、シャームはピンッと狼の耳を立てて周囲を警戒し始めた。

 ココは王宮のかなり奥まった位置にある為、早々外敵が来るとは思えないが。

 それでも油断は命取りだ。

 なんて、自分にも言い訳してみる訳だが。


 「こんな所まで敵が攻め込んで来たとしたら相当な手練れか、もしくは周囲を守っている兵士が皆昼寝でもしていたのか、どちらかだね」


 クスクスと笑うリリシア。

 言うな、頼むから。

 仕事を受けたのにただ突っ立っているだけでは外聞が悪いのだ。


 「もしくは身内に裏切り者が居た場合だな。過去にこの国はソレで手痛い失敗を経験している、そっちは警戒しておいてくれ」


 アグニ王子まで苦笑いを溢しながら、冗談とも取れない話を振って来る始末。

 とはいえシャームには余程効いた様で、今まで以上にギラギラとした鋭い視線を周囲に投げながら警戒し始めてしまった。


 「そんな調子では何日も保たないぞ、それに敵意と殺気が漏れ過ぎだ。相手が居た場合、真っ先に警戒される」


 「す、すまない……」


 注意してみればしょんぼりと項垂れるシャーム。

 本人からすれば「ではどうすれば良いのか」と言われてしまいそうだが。

 こういうのは、ある程度気を張りながらも暇に耐えるのも仕事の内なのだ。

 言葉にすると怒られてしまいそうだが、実際そういう状況の方が多い。

 貴族のご令嬢の護衛依頼なんて受けてみろ、こんなものではない。

 買い物にでも付き添えばそこら中を連れ回わされ、退屈ではないにしろただただ疲れる。

 終いには、護衛を荷物持ちにしてくるご令嬢だって居るくらいだ。

 それでどう守れというのか、なんて考えた事が度々起こったのを記憶している。


 「スーは、大丈夫だろうか?」


 少しだけ冷静さを取り戻したらしく、ボソっと呟く声が隣から聞こえて来た。


 「確かに……アグニ王子、スーと王女の近くにはどれくらいの兵を置いているのですか?」


 事前にもっと確認しておくべきだったのだが、アレクシア王女が意気揚々とスーを連れて行ってしまったので聞く暇がなかったのだ。

 今では寝室で揉み解されている最中だとは思うが、果たして。


 「あぁ~こう言うと心配になってしまうかも知れないが、付けているのは一人だけだ。それから、兵はつけていない」


 「一人……兵ではないと言うと、使用人ですか?」


 「いや、姉は堅苦しく警護されるのが嫌いでな。城の中ではとにかく自由に動き回る人なんだ」


 なんとも不安になる言葉が返って来てしまった。

 城の警備が厳重だからこその処置かもしれないが、スーの今までのトラブル遭遇率を考えるととてもじゃないが安心出来ない。

 だからこそ、シャームだけでも向こうに付かせてもらおうと思ったのだが。


 「なに、気にするな。付けているのは元“暗殺者”だ」


 「んなぁっ!?」


 王子の一言にシャームがとんでもない反応を示すが、此方だって似たようなモノだ。

 まさかの言葉にポカンと口を開いてしまったが、俺よりも先にリリシアが動いた。


 「それはどういう事だ!? 護衛に暗殺者など聞いた事が無いぞ! あの手の連中は確かに厄介だが、防衛には向いていない! 今すぐ兵を回すか私達もあちらに付けろ!」


 「そうは言ってもな……本人の希望もあって――」


 「暗殺者を雇ってソイツの希望を聞いてやっていると!? 奴らは高い報酬の依頼さえあれば平気で裏切る連中だぞ!? アレは人では無く武器として見られている、だからこそ使い潰すのが普通だ。本人達もソレが分かっているからこそ、無茶な依頼でも受ける。ソレが分からぬお人好しではあるまい!? 」


 王子の……というか現在の王様の胸倉を掴むリリシアという図は、中々肝が冷えるが。

 それでも王子はやれやれと言った様子を見せながら、困った顔で微笑んだ。


 「それが分からぬお人好しの物好きが契約を結んでしまったんだ。しかも、宝物庫から持ち出した高位の魔術契約書を勝手に使ってな」


 「「……は?」」


 思わずリリシアと共に、間抜け声を上げてしまう。

 魔術契約。

 それは互いの希望と報酬を記載し、正しく守られなかった時には呪術的な罰則が与えられると言うもの。

 しかも宝物庫から持ち出す程高位の物となれば、結構な品物だろう。

 それこそ、平然と命を差し出してしまえるような。


 「彼の名前は“ジロー”。スーと同じく異国の民らしく、言葉は通じないが実力は折り紙付きだ。そして何より……姉の護衛として、両者とも命を差し出した契約を交わしている」


 「「……はぁぁ?」」


 こればかりは、何と反応するのが正解なのか分からなかった。


 ――――


 『ん?』


 「どした? ビル」


 隣に座っていたブサ猫が、急に警戒した様子で立ち上がった。

 え、何々。

 お前がそう言う反応すると結構怖いんだけど。

 なんて事を思いながら、ビルの視線を追って目を向けてみれば……コレと言って何もいない。

 マジでどしたの。


 『“悪い虫”だ、なんか居るぞ』


 全身の毛を逆立てたビルが唸りながら、視線を移動していく。

 それを追って視界を動かすが……やっぱり何も居ない。

 もしかしてアレですかね、害虫が見えない所で移動しているとか?

 ちょっと勘弁してくれよ、俺Gとかマジで無理なんだけど。

 未だベッドに横たわる女神みたいな女体からも思わず飛び退き警戒体勢を取った。


 「なんだ、何が居る?」


 『分からん、ここまで気配が薄い奴は見た事が無い』


 つまりビルでも警戒する程のステルス性能に長けた害虫って事か?

 うわぁマジで止めて、怖い怖い怖い。

 ビルさえ反応出来ずにカサカサ寄って来られたら本気で泣くけど。

 思わずビルの首に腕輪をぶっこんでから、ベッドの隅まで逃げてしまったくらいだ。


 「スー? ――?」


 半裸の女神様が上体を起こして来る訳だが、今はそれどころじゃない。


 「ちょ、ちょっとこっちに! ビル! ビルお願い! 俺害虫とか無理だから!」


 起き上がった女性の腕を掴んで近くに寄せてから、涙目で叫んだ。

 ゴキ、ムカデ、クモなどなど。

 アイツ等マジで無理。

 速いし脚多いしキモイし。

 奴らの恐怖を知ってからカブトムシでさえ触るのが嫌になったくらいだ。

 というか虫全般が嫌いだ。

 森にもいっぱい居るけど、そっちはビルとムムが追い払ってくれるし。


 『ほぉ、こりゃ害虫も害虫。相当大物だぞ』


 「でっかい虫!? マジで無理だから退治して!」


 『いいのか? 他の奴も見てる前だぞ?』


 「いいの! そう言うのどうでも良いから退治! デッカイの怖い!」


 『なら、仕方ねぇなぁ』


 見る見るうちにビルが巨大化し始め、いつか見た化け猫に変わる。

 やっぱり超デケェ! 広い部屋だってのに窮屈そうだぜ!

 って、ちょっと待て。

 そのデカさで虫の相手が出来るのか?


 「ビル! 本当に大丈夫なんだろうな!?」


 『おう、任せとけ』


 えらく格好良い台詞を吐いているが、物凄く“伏せ”の状態で室内に収まっているのだが。

 本当に大丈夫か? 害虫駆除してくれるのは良いけど、周りの物壊すなよ?

 なんて事を思っていれば、半裸女神様が悲鳴を上げた。

 あ、やば。

 この世界でも猫が巨大化するのはやっぱり異常だったのか。

 今近くに居るグリフォンだって育てばアレくらいデカくなるんだから良いじゃん! とは思ってしまうが、超特急進化は流石にインパクトが凄かったらしい。


 「えーっと、あーっと! 大丈夫! あれ、ビル! 猫! ビル! 平気!」


 とにかく化け猫を指さして叫びまくり、どうにか落ち着かせようとしたのだが。


 『来るぞ!』


 「ちょっとぉ! 少しはクールタイムって要るじゃん!?」


 どうやら戦闘は始まってしまったらしく、ビルは虚空に向かってネコパンチを放った。

 あの先に、黒い何かが居るのかもしれないと思うとゾッとするが……ひぃ。

 などと思いながら視線を向けていれば。

 おかしいな、ビルの一撃が弾かれたぞ?

 しかもガキンッ! って凄い音がした。

 うそ、この世界のGは鋼鉄製?


 『ハハッ、中々やるじゃねぇか。小僧』


 小僧? オスの害虫さんなんですか?

 色々と疑問符が飛び交う言葉を放ちながら、ビルは魔法攻撃を開始する。

 以前グリフォンの巣で見た暴風の魔法……だと思う。

 室内に突風が吹き荒れ、部屋の隅で何やら火花が散っているのが見える。

 そして何やら、薄っすらと見えて来る人影。


 「うん? 待って、何か変じゃねぇ?」


 『俺でも最初気付かなかったくらいだ、相当手練れだぞ』


 「うんと、人? 害虫じゃなくて?」


 『俺の鼻は誤魔化せねぇ、コイツは結構な同族殺しだ。害虫以外の何者でも無いだろそんなもん』


 はいちょっと待ったー! と叫びたくなったが、同族殺しって言ったか今。

 人の同族って言ったら、そりゃ人だろう。

 つまり何か、この部屋に暗殺者的な何かが潜んでいるって事なのだろうか?


 「ちょっとぉ!? やべぇじゃん! ゴキ〇ェットでどうにかなるレベルじゃないじゃん!」


 『安心しろ、この程度何でもない』


 「ビル先輩流石です! 君に決めた! いけビル! 電流百万ボルトだ!」


 『雷の魔法は使い勝手が悪いぞ?』


 未だ魔法攻撃を続けるビルに、ソレを必死に防いでいる様子のボヤけた人影。

 何だアレ、ゲームに出て来るステルス迷彩でも使ってんのか?

 そんな風に思ってしまう程、歪な感じに一部だけ空間が歪んでいた。

 でも大丈夫、こっちには自称前世神様の御猫様が付いているのだから。

 ちょっとその名乗りは痛々しいから、今後もう少し大人しい物を一緒に考えてやろうと心に決めながらビルの事を応援していれば。


 「――! ――――!」


 俺のすぐ近くに居た半裸女神様が、何故か両手を広げて両者の間に飛び出したでは無いか。


 「ちょいちょいちょい! ビル攻撃中止!」


 『わぁってるよ……しかし、どうすんだこれ』


 すぐさま彼女の下へと駆け付け、戦場から引っ張りだそうとしてみたが……何故か抵抗してくる。

 ヤバいって、この二者の間に立つのは自殺行為だって。

 何てことを思いながら必死に引っ張ってみた訳だが、相手からも何かを訴えかけられてしまった。


 「ビルー! 通訳! 何言ってるか全然分かんねぇ!」


 もはや泣きそうな思いで引っ張っている訳だが、依頼主の半裸女神は動いてくれず。

 代わりにモヤモヤした背後の影は迫って来る。

 怖い怖い怖い、ステルスしてるけどステルスしてないってソレ!

 ひー! と叫び声を上げながら柔らかいお手てを引っ張っていれば。


 「ひ、姫様は……多分、戦いを止めろって言っている」


 「え? そうなの?」


 戦闘終了なら俺としては嬉しい状況なのだけど。

 でもモヤモヤ迷彩の相手は怖いし、この女の人に傷の一つでも付けられたら俺後で何言われるか分かったもんじゃないんだけど。

 大失敗して今度こそ売られたらどうしてくれるんだ。

 何て事を思いながら視線を向けてみれば、そこには。


 「ん? あれ? 今普通に言葉通じた? さっき喋ったのってビルじゃないよね?」


 目の前には、モヤモヤが立っていた。


 「す、すまない……今、その、スキルを解く。君の使い魔にも、攻撃を止めてくれと、言ってくれないか? 俺は、その……敵じゃない」


 やけにどもった感じで喋りながら、彼の言う通りスキルとやらを解除したのだろう。

 透明なモヤモヤは空気に溶けていき、代わりにやけにくせっ毛なロン毛さんが登場した。

 その姿、まさにNINJA。

 ふざけて言っている訳では無く、ゲームなんかで登場しそうなアーマーを着た感じのNINJA。

 真っ黒い鎧を装備しながら、背中には刀らしきものを背負い、更には長い黒髪を後頭部で適当に結んでいる感じ。


 「オウッ! ジャパニーズニンジャー!」


 「えっと、ニンニン。で、通じるって事は……その、“転生者”だよね?」


 「しかも日本語!」


 「う、うん、そう。俺もずっと言葉が通じなくて困ってたんだ……身振り手振りでどうにかやって来たけど、姫様が拾ってくれなかったらどうなっていたか」


 「初めてビル以外と普通に会話出来た!」


 「えっと、ビルさん? も転生者なのかな?」


 「あっちの猫!」


 もはや思考回路真っ白状態で興奮しながら脊髄反射で言葉を紡ぎ、先程まで彼が戦っていたデカ猫を指さしてみれば。


 「え、えぇ……ビルさん、転生者なんですか? 初めまして、俺も一緒……ではないですけど、猫にはなってませんから。こ、これで通じてるのかな?」


 『おいスー、コイツさっきから何言ってんだ?』


 んん? なんか両者の会話が噛み合ってないぞ?

 コレはどう言う事だ?


 「もしかして、ビルの言葉がこっちの人には通じてない?」


 「えぇと、うん。俺にはビルさんが野太い声でニャーと言っている様にしか……」


 『俺には一応普通に聞こえるけどな、もしかしてお前の言語と同じだからか? 聞いてる感じじゃ、お前等同士でも言葉通じてるんだろ?』


 どうやら、また訳の分からない事態に放り込まれてしまったらしい。


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