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神獣飼いの獣人少女 ~TSして猫耳生えた、猫としか会話出来ない。詰んでね?~  作者: くろぬか
2章

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第28話 狂暴なスー?


 「ぷはぁ……食べたぁぁ」


 重くなったお腹を擦りながら、ふぅぅと息を溢していればリリシアが微笑みながらお茶を差し出してくれた。

 ありがたく頂戴してホッと一息。

 いや、本当に大満足のご飯だった。

 和食っぽい料理もあるって事が判明したし、何よりどれも美味しかった。

 特に魚と海老が良かった、アレはまた食べたい。

 ビルとムムも気に入ったみたいだし、どうにかあの料理の名前を聞き出してまたおねだりしてみようか。

 何てことを考えながら、再びお茶を一口。


 「ふへぇ、落ち着く……」


 『お前そういうの好きだよな、リリシアが作る薬草の茶もゴクゴク飲むし』


 「うん、リリシアのお茶も好きー」


 などとビルと会話していれば、名前を呼ばれた事に気が付いたのかリリシアが小首を傾げながら長い耳をちょっとだけ揺らした。

 シャームもだけど、リリシアも何か聞こうとしている時に結構耳が動くのだ。

 あの動作好き、見てて和む。


 「そう言えば俺の耳は動くのかな」


 『そりゃ動くだろ、というか結構動いてるぞ?』


 「え、そうなの? 視界に入らないから全然分かんなかった」


 なんかもう馴染み過ぎて軽く存在を忘れる事があるが、俺にもケモ耳が生えているのだ。

 結構触り心地が良くて最初の頃はセルフモフモフしていたが、今では常にビルとムムが近くに居るのでモフモフには困っていない。

 ケモ耳が触りたいのならシャームが普通に触らせてくれるので、そちらの欲求はほぼ解消されている。

 という事で、やはり俺のケモ耳はいらないのではないかと思うのだが。


 「ほんとこれ、何で付いてるんだろう」


 『俺は耳が付いている事に疑問を持った奴を初めて見たぞ』


 再び呆れ顔でビルには見つめられてしまったが、そうじゃないって。

 ケモ耳は好きだけど自分にはいらんというだけであって、耳その物に疑念を抱いた訳じゃないよ。

 そんな事を思いながら自分の頭の上に生えている物体Xを弄り回していれば。


 「スー、――?」


 シャームが何か言いながら自分の耳を指さしていた。

 ん? なんだろう?

 もしかしてケモ耳が触りたいならそっちを触れって事だろうか?

 では遠慮なく。


 『耳が痒いのかってよ、掃除してやろうかって言ってるぞ』


 おっと、ビルの通訳が間に合わずシャームのケモ耳をモフッてしまった。

 最初の頃は結構固めな毛質だったけど、最近モコモコして来たよね。

 薬草を混ぜたお風呂に入っているお陰か、それとも冬毛か。

 どっちにしろモフモフが気持ち良い。


 「ん!? いや待って今何て言った!?」


 『だから痒いのかって……』


 「その後!」


 『耳、掃除してやろうかって言ってるって』


 これまたビルからは疲れた表情を向けられてしまったが、それどころじゃない。

 つまりこれは、シャームが耳かきをしてくれるという事でよろしいか?

 お風呂イベントは既に済ませているが、これはまた別のロマン。

 是非お願いします、膝枕もセットでお願いします。

 壊れた人形の様にブンブンと首を上下に振って返事をしてみれば、シャームは笑いながら俺の頭に手を置いた。

 何か言っているが、多分部屋に戻ってからとか言われているんだろう。

 おぉぉ、凄いぞ今回の遠征は。

 ラーメン食べて、シュークリーム食べて。

 皆とお風呂に入ってから和食食べて、その後に美女の耳かきと来た。

 一生分の幸せを今日一日で使い切った気分だ。

 食ってばっかりいる気がするけど。


 「耳かきしてもらうの久しぶりだぁ……ちびっこい時に両親とか婆ちゃんにしてもらった記憶しかない」


 『今でもちびっ子だろうが。ま、良かったな』


 なんか別の意味に勘違いされたのか、ビルからも微笑ましい笑みを向けられてしまう。

 これでも中学卒業間近だったんだぞ? とか言いそうになったが、そういえばビルにも過去の事って話した事無かった気がする。

 別にビルだったら話しても良いと思うが、今の状態って傍から見ると気持ち悪がられるのかな?

 元男でした、しかも異世界人ですなんて言ったら。

 いや、なんかそもそも信じてくれない気がする。

 う~むと考えながら難しい顔を浮かべていれば。


 「スー、――――?」


 ニコニコしたグラベルが何か言って来たが、所々でしか単語を拾えなかった。

 多分「美味しい」って言葉は入っていた気がしたのだが。

 もしかして美味しかった? とか聞いてるのかな。


 「しゅぅちゅらすとぅらぁー」


 『何言ってんだお前』


 「この流れ昼間もやった!」


 こっちの世界の言葉で「美味しい」と伝えたつもりだったのだが、相手の言葉を聞いているとちょっと言葉を間違っている気がする。

 というかやっぱり発音が難しい、ちゃんと伝わっているのか不安になって来るんだが。


 「グラベル、――。――――」


 何やらグラベルとリリシアが会話したかと思えば、何故かグラベルだけカウンターの方へ歩いて行ってしまった。

 ありゃ? 美味しかったかって聞かれた訳じゃなかったのかな?

 もしくはお会計を済ませに行っただけかも。

 とりあえず彼の背中を見送ってから、やってしまったものは仕方ないとばかりにお茶で一服していれば。


 「スー!? ――!」


 「ひえっ!?」


 急に大きな声を出したシャームが、隣で立ち上がった。

 え、何!? 俺なんかやった?

 もしかしてさっきグラベルは物凄く大事な事を言っていて、適当に答えてしまった事に怒っているのだろうか?

 なんて事を思いながら彼女の事を見上げてみたが。


 「シャーム? 何処見てるの?」


 何故か彼女は、食堂入り口の方へ視線を向けながら慌てた様子を見せていた。

 そんでもって声を掛ければ、これまた驚いた様子でこちらに振り返って。


 「スー?」


 「あ、はい。スーです」


 いや、本当に何?

 状況が理解出来ず、はてと首を傾げながら先程彼女が見ていた先へと視線を送ってみれば。


 「は?」


 そこには、俺が居た。

 但し猫耳は生えていなかったが。


 ――――


 「は? 急に何ですか?」


 私がスーと見間違え、思わず叫んでしまった相手が怪訝な眼差しを此方に向けて来た。

 思わず「スー! 待て、部屋に行くなら私も一緒に行く!」なんて大声で叫んでしまったのだ。

 急にそんな事を言われれば、誰だって何だコイツと思ってしまうだろう。

 しかしながら、これは……。


 「いや、すまない。知り合いにそっくりだったもので、その子が勝手に飛び出したのかと勘違いしてしまったんだ」


 事情を説明しながら頭を下げてみるものの、やはり似ている。

 というか、瓜二つと言っても良いだろう。

 但し、獣人では無い様だが。

 そこに立っているのは人族のスー、と言った見た目の少女。

 他人の空似だとしても、こんなに似ている事なんてあるのか?

 まるで双子か何かの様にしか見えない。

 まさかとは思うが、獣人と人族の間で生まれた双子で種族が分かれてしまったとか……いや、あり得るのか?

 そんな事例聞いた事が無い、そもそも他種族では子供が作れない筈だし……。


 「謝っている割に、何だかジロジロと……もしかして同性愛者の方ですか? だとすればお断りですよ、ナンパなら他所でやって下さい」


 「あぁいや、そういう訳では……」


 もはや完全に警戒されているらしく、相手からは非常に鋭い視線が向けられてしまった。

 どうしたものかとばかりにリリシアに視線を向けてみれば、こっちはこっちで目を見開いて固まっている。

 そりゃそうだ、だってスーと同じ顔の女の子が登場したのだから。

 但し、こっちの少女の方が少しだけ年齢は高そうだが。


 「ミー、どうしたの? 知り合い?」


 彼女の仲間達だろうか?

 同じような年齢層の少女達が数名程集まって来た。


 「その呼び方止めて、私は雅だって何度も言ったでしょ。須賀すが みやび


 「だって何か発音し辛いんだもーん。何で名前の時だけ変な発音なの? いつもは普通に喋ってるのに」


 「うっさいわね、この雑な通訳機能つけた神様に文句言ってよ」


 「あーはいはい、またその妄想かー」


 「妄想じゃないって言ってんでしょ!?」


 何だか良く分からないが、姦しい会話が始まってしまった。

 彼女を含め、四人のパーティ。

 恰好はどう見ても冒険者、更には手練れと見た。

 これだけ騒いでいても、周囲を警戒している様子が伺える。

 特にスーと見間違えたこの子、改めて観察するととんでもないな……。

 今は敵意を向けられているという訳でもないのに、ビリビリと肌で感じる強者の気配。

 しかもかなりの魔力持ちだろう、予想でしかないが……もしかしたら私が呆気なく敗北したグリフォンよりも凄いかも知れない。

 先程まで呆気に取られていたリリシアさえ、彼女の事をジッと観察しているくらいだ。

 恐らく、この辺りは間違いない筈。


 「それで、結局人違いだったって事で良いんですよね?」


 仲間達との会話が終わったのか、再びこちらに警戒した眼差しを向けて来る彼女。

 その瞳に、思わずドキリとしてしまう。

 なんたってどこからどう見ても成長した姿のスーなのだ。

 スーだったらこんな敵意丸出しの瞳を向けて来る事はないだろうとは思うが、非常に似ている為どうしたって心苦しい。


 「あぁ、すまない……あ、いや。一つだけ聞いて良いか?」


 「何ですか」


 「君に、姉妹は居るか? 特に妹、獣人の」


 これだけは聞いておかなければ、そう思って口にした瞬間。

 彼女の気配が激変した。


 「何ですか一体。普通初対面の人間にそう言う事聞きますかね? 私にとってソレ、結構タブーな質問なんですけど」


 ゾワリと、背筋が冷えた。

 コレが戦場だった場合、間違いなく私は狩られる側に回る事だろう。

 そう簡単に予想出来てしまう程、相手からは圧倒的な圧力が降り注いでいた。


 「あーえっと、獣人のお姉さん? 出来ればソレは聞かないで頂けると……この子、大好きなお兄ちゃんを探しにこの国に来たみたいで……見つからなくてイライラしてるんです」


 「うるっさいわね! 誰も大好きなんて言って無いでしょ!? という事で私に姉妹はいません、居るのはお兄ちゃんだけです。私と似た雰囲気の、男なのにヒョロッとしたやせ型で。何故か髪質とか私より良いし、どっからどう見ても女顔の頼りなさそうな男に見覚えがあったら教えなさい!」


 良く分からない事を叫びながら、彼女は私達に牙を向いた。

 本当に、ガルルッと唸りそうな程獣の様に。

 スーは、こうならないで欲しいなぁ……などと考えながらちょっとだけ彼女の勢いに引いていると。


 「――、――?」


 私の背後から、スーがひょこっと顔を出しながら何かを呟いていた。

 大丈夫だよ、なんて言って頭を撫でようとしたその時。


 「は? 何ソイツ……え?」


 目の前の少女が、驚愕の表情を浮かべながらスーの事を指さした。

 周りの仲間達も興味深そうにスーの事を覗き込み、あーだこーだと言葉を紡いでいる。


 「え? 嘘、ミーがもう一人居る」


 「凄いな、ここまで似た顔ってあるものなのか?」


 「でも、獣人。姉妹なのはあり得ない」


 皆が皆驚いた眼差しを向けながら、今度はスーに注目が集まってしまった。

 今の状況に怯えているのか、スーはサッと私の後ろに隠れてしまったが。


 「何? なんなのアンタ。もしかして私のコピーか何か? そういうイベントまで用意してくれた訳? あの神様。ほんっと……頭に来る」


 ギリッと奥歯を噛みしめた少女は、前面に魔力を放出しながらスーに近寄って来た。

 思わず全身の毛が逆立つ思いだったが、スーを後ろに隠しながら一旦距離を取る。

 不味い、この気配は間違いなく戦闘が始まる程の敵意だ。

 部屋に武器を置いて来てしまった事を悔やみながら、どうにかスーを隠して睨み合っていれば。


 「随分とウチの子を怯えさせてくれるね、小娘。こちらが迷惑を掛けてしまった事は詫びよう。しかし先程から訳の分からない事ばかり言っていたかと思えば、次はこの威嚇だ。我々と敵対する意思があると見て間違いないな? 君の言動は些か常軌を逸している」


 そんな事を呟きながら、無手でも戦えるリリシアが立ち上がった。

 まるで互いの魔力をぶつけ合っているかのように、室内が異常な空気に包まれていく。

 訓練の際、リリシアの魔力放出を前面から受けた事がある。

 何も攻撃されていないと言うのに、腰が引けた。

 それくらいにとんでもない魔力量なのだ、このエルフも。

 だというのに、睨み合う彼女は。


 「何、そっちの人が私の相手になる訳? 何でも良いけど、その薄気味悪い獣人を相手にしてからでも良いかしら? 同じ顔の人間が目の前に居るとか、普通に気持ち悪いから」


 「ほぉ、貴様は完全に私達に喧嘩を売った様だな」


 両者ともギリッと牙を見せつけながら、掌を構えた。

 このまま戦闘が始まってしまうのか?

 なんて事を思って胸にスーを抱いた瞬間。


 「リリシア、止めるんだ。何度も繰り返すな。それからお嬢ちゃん、すまないが荒っぽいのは勘弁してもらえると助かるんだがな。ココは宿屋だ、戦う場所じゃない」


 部屋で食べられる軽食を買いに行った師匠が、このタイミングで帰って来た。

 掌をリリシアに向ける彼女の手首を掴み上げ、静かに冷たい瞳を向けている。


 「なっ! 新手っ!? 上等じゃない、一緒に相手になってや――」


 驚いた様子の彼女は、振り返って師匠を見た瞬間にパクパクと口を動かして言葉が止んだ。

 そして師匠の方も彼女の顔を見て驚いた様子を見せている。

 師匠の方は分かるが、相手はどうしたと言うのか。

 思わず訝し気な視線を向けながらジッとしていれば。


 「あの、御名前を教えて頂いてもよろしいでしょうか?」


 「……ん? あぁ、えぇと。俺はグラベルだ」


 「グラベル……様」


 何か、事態がおかしな方に進み始めた気がする。

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