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神獣飼いの獣人少女 ~TSして猫耳生えた、猫としか会話出来ない。詰んでね?~  作者: くろぬか
1章

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第19話 もふもふ大戦争


 「スー! 絶対に助けてやるからな! 大丈夫だからな!」


 上空で羽ばたき、徐々に遠くなっていく影に向かって叫びながら全力で森の中を走った。

 地を蹴り、谷を飛び越え、木々さえも足場に変えて。

 今日は本当に散歩程度の認識だったからこそ、私にお目付け役が任された。

 だとしても、皆が大事にしているスーの護衛だ。

 もちろん気が抜ける訳もなく、全身にナイフを仕込む勢いで出かけて来たと言うのに。

 度々目印代わりにナイフを木々に突き立てて来たが……もう、これが最後だ。

 あとは主装備として使っているマチェットが二本残っているだけ。

 こればかりは、失う訳にはいかない。

 あのグリフォンに追いついた所で、戦う術が無くなってしまうのだから。


 「くそがぁぁ!」


 激情に任せて最後の一本を近くの木に投げつけ、更に走った。

 もっと速く、もっともっと速く。

 魔力も使って全力で走っているのに、徐々に離されていく。

 グリフォンは速い上に、羽音が小さいのだ。

 だからスーに迫っている事に気が付くのが遅れた。

 いや、こんなの言い訳だ。

 私は獣人で、狼人族だ。

 耳も鼻も良い筈なのに、気が付けなかった。

 彼女が捕獲され、飛び立つまで。

 こんなに情けない事があるだろうか?

 相手がグリフォンだから、強い魔獣だったからなんて言い訳にしかならない。

 私は、師匠からあの子を任されたのだ。

 だったら、守れなくてどうする。

 そしてスーは、この世界そのものを穿った見方をしている可能性がある。

 あんなに小さくて、まだ楽しい事も美味しい料理も全然経験していないだろうに。

 あの年でグリフォンの餌になるなど、あってはならない。


 「スー! 許せ!」


 マチェットを抜き放ち、自らのコートを切り裂いた。

 そして、目印代わりに木々に引っ掛けていく。

 スーが選んでくれた、真っ赤なコート。

 ちょっと派手じゃないか? なんて思っていたが、目印としてはこの上ない色合いだったと言えよう。

 それを切り刻みながら、とにかく走った。


 「返せ、返せよ! 食うなら私を食えば良い! その子はまだまだ世界を見る権利がある筈だ! もっともっと、色々なモノを見るべき子供なんだ! だから、返せ!」


 叫び、私はグリフォンを追いながら崖を飛び降りるのであった。


 ――――


 長い長いお空の散歩が終わったかと思えば、何か柔らかい所に落っことされた。

 思わずぶへっ! と情けない悲鳴を洩らしてから鼻を擦って顔を上げると、そこには。


 「あら可愛い」


 四つ足のモコモコした仔猫サイズの鳥が居た。

 何この子達、ヒヨコより可愛いかもしれない。

 一匹貰って帰って良いですかね?


 『馬鹿野郎! グリフォンの子供だ! 逃げろ! お前はコイツ等の餌として連れてこられたんだよ! 雛でも相当力が強いぞ!』


 ビルが叫び声を上げた瞬間、考えるよりも先に身体が動いた。

 すぐさま四つん這いでカサカサカサ! と音がする勢いで後退してみれば、再びボフッと背面に当たる柔らかい感触。

 振り返ってみれば、そこには木の枝を組み合わせたかのような背の高い壁があった。


 「こ、これ。思いっきり“巣”に放り込まれてね?」


 『あぁくそ、まじぃな。逃げ出そうにも、“親”も見てる』


 ビルが舌打ちをする勢いで言葉を放つので、猫の視線を追ってみれば。


 「うぉぉぉ……こえぇぇ」


 そこには、先程見た鷹頭の化け物がこっちを見ていた。

 頭は……わし? たか? 体はダチョウより少し大きいくらい? 雛は随分小っちゃいけど。

 まさに不思議生物、そんな感じの強そうな鳥類。


 「翼生えてんのに四足獣なんだけどぉ……」


 『グリフォンだからな』


 ビルから非常に冷静な突っ込みを頂いてしまったが、事態は好転しない。

 めっちゃ怖いのがこっちを睨んでるし、足元にはアイツの子供と思われるモフモフが迫って来ているのだ。

 マジで? 俺このちっこいのに食われるの?

 踏みつぶしたりとかしたら……駄目だよね? 速攻上に居るデカイのが襲い掛かって来そうな眼光してるもんね。

 思わず漏らしそうになりながらガクガクと震えていると。


 『ピューイ!』


 という、良く分からない鳴き声が足元から聞こえて来た。

 何その可愛い声。

 そんな声上げながら、お前ら俺の事食うの?

 ひぇっ、なんて情けない声を洩らしながら足元に目を向けてみれば。


 「……なぁ、ビル。懐いてねぇ?」


 『んん……あぁ、うん。懐いてるっぽいなぁ……』


 抱っこしたビルからも呆れた声が返って来る程、足元に居るチビグリフォン達はグリグリと頭をブーツに擦りつけていた。

 しかも、機嫌良さそうな声を上げながら。

 これはどう言う事なんだろう?

 あれか? 森の中で小動物に懐かれた延長線上的な?

 でっかいのは駄目だけど、小さい奴は懐いてくれるのか?

 混乱しながら足元に集まるちっこいのを眺めていれば、ビルは呆れた様な声で。


 『多分、アレだ。スキルだ。お前には変なスキルがあるってグラベル達が言ってたからな、その影響だ。そんでもって、そのスキルが効かねぇ奴らは親グリフォンみたいに襲い掛かって来るんだよ』


 ほ、ほう? そうなのか?

 だとしたら、今この巣の中は絶対安全モフモフ領域に変わった訳だが。

 しかし、コイツ等の餌として連れて来た親はどう思うか。

 もはや火を見るより明らかである。


 「なぁビル、気のせいかな? 親グリフォン、滅茶苦茶こっちを睨んでるんだけど」


 『ありゃ……間違いなくこっちを“狩る”つもりだな。覚えておけよ? コレが“敵意”ってやつだ』


 ビルが呟いた瞬間、親グリフォンが巣の中に落ちて来た。

 ズトンッと音が立つ勢いで、敵意剥き出しで。

 そんでもって爪でカツカツと音を立てながら、苛立った様子で此方へと近付いて来る。

 あ、これ……親が俺を肉に変えてから子供に与えるパターンですかね。

 思わずヒッと悲鳴が漏れる程の敵意を全身に感じながら、身を小さくしていれば。


 『スー! 腕輪をこっちに寄越せ! 首でも足でも良い、俺にその魔道具を嵌めろ!』


 「お、おう!? 良く分からんけど分かった!」


 慌てて首に下げていた腕輪をむしり取り、ビルに嵌めようとするが。


 「グリフォォォン! チビ! 邪魔!」


 『遊んでる場合か! さっさと寄越せ!』


 恐怖のあまり縮こまっていた影響か、チビグリが体の周りをウロチョロしているのだ。

 当然腕に抱いたビルの周りにもモサモサと集まっており、非常に邪魔。

 焦って適当に嵌めれば、グリフォンのチビに腕輪をくっ付けてしまいそうな勢いで集まっている。

 グリフォンって光り物好きなんですね!? めっちゃ腕輪に興味深々じゃん!

 なんて事を思いながらモフモフをかき分けていれば、親の方は全然待ってくれない御様子で。

 もはやすぐそこまで迫っており、脚の爪を振り上げ俺の事を見下ろしていた。


 「あ、あっ……やべぇ」


 『スー! 早くしろ馬鹿!』


 ビルの声を聞きながらも、グリフォンの爪が振り下ろされるのが分かった。

 あぁ、もう駄目だ。

 あんなでっかい爪で引っ掻かれたら、生きている方がおかしいい。

 何にも無いまま転生し、何にも成れないまま異世界を生きた数日間。

 早くもスタッフロールが流れるのかと思ったその瞬間だった。


 「あぁぁぁぁぁぁ! スー!」


 特大の叫び声を上げたシャームが、巣の中に落ちて来た。

 落ちて来たのだ、ズドンッて勢いで。

 そしてそのままマチェットを振り回し、グリフォンを遠ざけていく。

 その際爪を引っ掛けられたらしく、薄着の彼女からは鮮血が舞う。

 あれ? コートは?

 防御力高そうな、あの真っ赤なゴツイコートは何処へ行ったのだろうか?

 などと思っている内に、シャームとグリフォンの闘争は進んでいった。

 巣の中を駆け巡る様にして攻撃を繰り返すシャームに、忌々しいと言わんばかりに翼を広げて威嚇するグリフォン。

 一見シャームならすぐに狩り取ってしまいそうな雰囲気があったのだが。


 「――がっ!」


 苦しそうな声を上げて、すぐ隣にシャームが吹っ飛んで来た。

 何が起きた? 彼女の方が優勢だったはず。

 地に降りた状態でのスピードは圧倒的にシャームに分があり、攻撃だって彼女の方が速かった筈だ。

 だというのに今彼女は苦しそうに胸を抑えながら立ち上がり、再び二本のマチェットを構えている。


 『魔法だ! このままじゃ狼娘が負けるぞ! そっちの能力じゃ相手が格上過ぎる!』


 マジかよ。

 ビルの声に、驚愕とも呼べる感情を浮かべてしまった。

 この世界において、魔法と言うのはそれくらいに大きな存在なのだろう。

 動きも、速さも、そして経験もシャームの方が強そうなのに。

 相手にシャームが使える以上の魔法がある。

 たったそれだけで、覆されてしまうのか。

 しかも、悪い事とは続くモノで。


 「なっ!?」


 『おいおいおい、こりゃ本当に不味いぜ』


 クエェ! みたいな鳴き声が頭上から聞こえて来たかと思えば。

 視線の先には、眼の前の強敵と同じ姿の連中が多数飛び交っているのだ。

 しかも、何羽とかじゃない。

 馬鹿みたいな数がこちらを伺う様に飛び交っている。

 この全てが、眼の前のコイツと同じ能力を持っていたとしたら?

 コイツみたいに、俺達を捕食しようと近付いて来たら?

 絶体絶命も良い所だ。

 助かる術は、まずない。


 『スー、もう一度言うぞ? 俺にその腕輪を嵌めろ。そしたら、必ず助けてやる』


 えらく格好良い台詞を吐くブサ猫は、ジッとこちらの顔を見上げて来た。

 お前にコレ嵌めてどうなるんだよと言いたくなるが、ビルは今までに見た事無い程真剣な顔をしている気がした。

 正直、猫の表情なんか良く分からないが。


 「良いけどさ……どうにか出来んの? ビル」


 『どうにかすんのが、オスってもんだろ。それから……無理な頼みかも知れないが、出来れば嫌わないでくれ』


 そう言って、ビルが笑った気がした。

 なんか、ちょっとだけ悲しそうな顔で。


 「ハッ! こっちはお前の通訳なしじゃ生きていけねぇんだ! ビルがどんな化け物に変わろうと“愛してるぜこの野郎”って言ってやらぁ!」


 叫んでから、ビルの首に腕輪を嵌めた。

 魔力の放出とやらが起きたのか、すぐさまビルの首のサイズに変化する腕輪。

 その瞬間ビルの瞳が紅く変わり、ゾワリとする程の雰囲気が腕に抱いた猫から放たれるのであった。


 『あぁ……久しぶりだ。もう味わう事はねぇと思っていたが、こんな感じだったな。長い事ちいせぇ身体で満足してたってのに。お前らのせいだぞ? お前らのせいで、俺は戻って来ちまったんだ』


 むくむくと大きくなっていくモフモフを抱えきれず、思わず手を放してしまったが。

 目の前には、グリフォンより巨大なモフモフが出現した。

 そんでもって、長い尻尾が俺に緩く巻き付いている。


 「……ビル? ビルなの?」


 思わず声を掛けてみれば、眼前の毛玉は少しだけ身体をずらし此方に顔を見せてくれた。


 『おう、俺だ。怖いか? スー』


 二本の尻尾を揺らす巨大猫が、更に言うならイケメン顔したキリッとしたでっかい猫が、悲しそうな瞳をこちらに向けて来ているではないか。

 こんなの……こんな事って。

 思わずグッと言葉を呑み込み、全力で胸毛に突っ込んだ。


 「うっはぁぁぁ! 何だお前! ビル! お前イケメンだった上にこんなに胸毛モフモフだったのか! でっかい猫最高じゃねぇか!」


 全力で、愛でた。

 だって自分よりデカいモフ猫なのだ。

 今までも確かにモコモコしたブサ猫だった訳だが。

 今ではキリッとした顔の、毛並みが馬鹿みたいに良い超特大猫が出現したのだ。

 自慢じゃないが、俺は猫が好きだ。

 猫の腹に顔を埋めながら呼吸するくらいに、モフモフ好きなのだ。

 こんなの最高かよ、全身でモフれるじゃないか。

 何てことを思いながら、徐々にビルの体に沈んで行けば。


 『スー! 後で構ってやるから今はグリフォンだ! シャームがやべぇぞ!』


 「はっ!? そうだった! いけ、ビル! 君に決めた! シャームの救出とグリフォンを全滅させろ! 全部晩飯に変えてやれ!」


 『……ホント。良い性格してるよ、お前』


 呆れた様に呟いたビルが、野太い声で雄叫びを上げてみれば……天変地異が起きた。

 地面は揺らぎ、さっきまで晴れていた筈の空からは雷が落ち、そこら中を飛び回っていたグリフォンが丸コゲになって落ちて来るではありませんか。

 何か香ばしい匂いはするが……グリフォン、本当に食えそうじゃね?

 などと思っている間に雷は迸り、集まって来た獣共を撃ち落としていく。

 そして。


 『よぉ、森の新参者。俺が相手になるぜ』


 俺を攫ったグリフォンに対して、ビルがゆっくりと近づいて行く。

 相手は怯んだ様子でガクガクと震えているが、足元にはシャームが血だらけで転がっていた。


 「ビル! シャームがヤバイ! 早くソイツなんとかして!」


 『だ、そうだ。悪いな、お前みたいな小物どうでも良いが……手を出した相手が悪かったな? テメェは俺を怒らせた』


 デカモフ状態のビルが偉く低い声を上げた瞬間、俺達の周りを突風が吹き抜けた。

 すると……何という事でしょう、と思わず言いたくなってしまう。


 「お、おぉぉ?」


 今まで強敵というか、完全に捕食者にしか見えなかった相手が輪切りになって地面に落ちた。

 もちろんエグイ光景だったし、血なんかビチャッ! って感じに撒き散らされた訳だが。

 一発かい、どれだけ強いんだよビル。

 そもそもなんだお前、喋るだけのブサ猫じゃなかったのか。

 こいつはすげぇ。

 そんな大猫様にビビり散らしたのか、周りに集まっていたグリフォンのチビ共は怯えた様子で、何故か俺の足元に集まって来た。

 あ、えっとですね。

 ビルに「やっちゃって!」的な指示出したの俺なんですけど。

 それでも必死で助けを求めるかのように、俺の元に集まって来るチビグリフォン達。

 もはや上って来ようとしている奴らも居るくらいだ。

 これ、倫理観とかそういう視点では絶対駄目な行為だと分かっているのだが……。


 「おーよしよし、もう大丈夫だよぉ?」


 モフッてしまった、チビ共を。

 君達の親狩り取ったの俺の仲間だけど。


 『おい、スー』


 やはりビルには苦い顔をされてしまったが、モフチビに助けを求められたら……ねぇ?

 そんな訳で、腕に余る程のチビグリフォンを抱き上げてしまうのであった。


 「チビグリフォン、ゲットだぜ」


 『食うのか?』


 「旨いの?」


 『まぁ、旨いと聞いた事はある』


 「ゲットだぜ!」


 『なら、まぁ良いか』


 という事で、やけにでっかくなったビルからもOKが貰えた。

 詰まる話、前回の兎と同様非常食を大量に手に入れた訳だ。

 そして、ビルも進化した。

 後、残っている事と言えば。


 「ビル、急いで帰るぞ! シャームが怪我してる!」


 『俺のこの姿を見て、反応が変わんねぇのも凄いなお前』


 「あぁ!? 後で全力でモフッてやるから覚悟しておけ!」


 ピーピー煩いチビグリフォン達をバッグへと誘導し、傷付いたシャームを腕に抱えてみれば。

 あ、無理。この体本当に役に立たねぇ。

 俺より体の大きいシャームを当然持ち上げられる訳もなく、その場にベシャッと倒れ伏していると。


 『魔法で運んでやるから、シャームから手を放すなよ?』


 ビルの声と共に、再び体が宙に浮くのであった。

 今度は何かに掴まれている訳ではないが。


 「これはまた……というかやっぱり飛ぶのに慣れない……」


 『慣れなくて良い、どうせ俺等には翼は生えねぇからな』


 その一言と共に、俺達はグリフォンの巣を後にする。

 さっきまで鷲の化け物と一緒に空を飛んでいた筈なのに、今度は二本の尻尾が生えた巨大猫と一緒に空飛んでる。

 異世界って、やっぱりすげぇ。

 何て事を思いながら、我が家目指して猫と一緒に飛行するのであった。

 ウチの猫、飛びます!


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