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神獣飼いの獣人少女 ~TSして猫耳生えた、猫としか会話出来ない。詰んでね?~  作者: くろぬか
1章

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18/22

第18話 幻獣


 「なんか貰った訳だけど、どう使うのコレ」


 『お前にゃ無理、以上』


 「うわぁ、猫にコバーン……」


 翌日。

 本日狩りは御休みらしく、家周辺の森の中を散歩していた。

 いつも通りビルを連れ、頭の上にムムを乗せ。

 更には後ろにシャームを連れて。

 最後の狼っ子だけは護衛についてくれたみたいだが、今の所近かず離れずの距離で一緒に歩いている。

 コレで森の中も安全安心に歩き回れるって訳だ。

 なんて事を思いながら、昨日頂いた腕輪を弄り回していた。

 ビルの言う事には魔力の放出が出来ないと使用できないものらしく、今の俺には完全に無用の長物になっているらしい。

 詰まる話なんだ、俺は魔法が使えないって事か。

 なるほどなるほど。

 異世界に来たのに魔法も使えない上に、こんな女児になってしまい身体能力も低下中。

 更には人と言葉が交わす事も出来ず、どこまで行ってもごく潰しという訳だ。

 俺、この世界に来た意味ある?

 別に“向こう側”に絶望していたり、家庭環境が悪かったわけでもない。

 妹とは仲が悪かったが。

 学校は普通に行っていたし、友達だって居る。

 両親とも仲は良好だったし、今の俺の歳では将来だってそこまで心配している訳ではなかった。

 こういうのって、もっと色々人間として味がある人が転生するから物語になるんじゃないの?

 俺、マジで何も無いぞ。


 「あぁ~……皆今頃何してんだろうなぁ」


 『古巣の奴らか? それとも親か?』


 「どっちもかな? 急にこっちに来ちゃったからさ」


 『そういやお前の昔は聞いた事が無かったな、話してみろよ』


 「えー……絶対ビル信じないよ? 間違いなく鼻で笑う」


 『話してみねぇと分かんねぇだろ? 俺だって長く生きてんだ、チビの話を聞き流すくらい出来るさ』


 「聞き流しちゃうかー」


 そんな会話を繰り返しながら、プラプラと森の中を歩いていく。

 度々ムムがそこら辺に飛び立って、帰って来たかと思えば木の実を頭の上で食っていたりするが。

 めっちゃ自由だなぁモモンガ、ボロボロ何か零れて来るし。


 「でもさぁ、俺云々の前に。この小動物だけ寄って来る体質は一体何が原因――」


 なんて、言葉を洩らした時だった。

 シャームが何かを叫び、武器を引き抜いた音が響いたかと思えば……ふと、身体が浮いた。


 「はい?」


 『スー! 俺を掴め!』


 「お、おう!」


 飛びついて来たビルを掴み取った瞬間、どんどんと上昇していく身体。

 お? お? おぉ?

 なんか腰をがっしり掴まれている感触はあるんですが、今度はどこの誰が抱きしめてくれたのか。


 「スー!」


 下から、シャームの声が聞えて来る。

 という事で後ろに居るのはシャームじゃない。

 そりゃそうだ、彼女には翼が生えている訳ではないのだから。

 もっというなら、こう……ガシッと掴まれているその手には、えらくデカイ爪の様な物が見える。

 恐る恐る振り返った視線の先には。


 「なんじゃコイツはぁぁ!?」


 ドデカイ鷹みたいな顔がくっ付いた四足獣が、俺の事を掴みながら翼を広げていた。

 なになになに、怖いんだけど。

 今になってガチファンタジーな生き物が出て来ちゃったんだけど。


 『グリフォンだ! 絶対に俺を離すんじゃねぇぞ!? ムム、行け!』


 ビルの言葉と共に、頭の上に乗ったムムが何処かへ向かって飛んで行った。

 お前は何処へ行くんだ。

 主人が攫われてんのに、自分だけ逃げるんじゃねぇよ。


 「ビルー! これどうすれば良いー!?」


 『大人しくしておけ! あんまり暴れると落とされるぞ!』


 「ひぃぃ!」


 異世界やっぱりおかしいって、森林浴をしていたらこんな化け物に攫われるんだから。

 容易に外に出られないって。


 「シャームゥゥ! グラベルゥゥ! リリシアァァ! ヘールプ!」


 情けない声を上げながら、俺はそのままグリフォンとやらにお空からお持ち帰りされるのであった。


 ――――


 本日は俺とリリシアで保存食の大量生産。

 寒くなる前にこういったモノを多く作っておかないと、山暮らしで冬を越す事は出来ない。

 街と違って、買い物が出来る訳ではないのだから当たり前だ。

 今年は人数が増えたからな、いつも以上に多く作っておかなければ。

 という事で黙々と手を動かしていると、コンコンッとノックの音が響き渡った。

 はて、スーやシャームならわざわざノックなどしないだろうし、こんな山奥まで訪ねて来る程物好きな友人は居なかった筈なのだが。

 なんて事を思いながら扉を開けてみると。


 「急な訪問申し訳ありません。冒険者ギルドより、貴方達に是非お願いしたい依頼がございまして、本日は御邪魔致しました」


 そこにはギルドの制服を着た男と、冒険者と思わしき連中が家の前に集まっていた。

 これは一体……思わず眉を顰めながら彼等を見つめていれば、男は静かに口を開き事情を説明し始めるのであった。

 何でも、ここ最近この森に珍しい魔獣が発生しているのだとか。

 以前俺とリリシアが討伐した神獣程ではないが、普通の冒険者なら苦戦する相手だと言う。

 更に言えば、水面下で国同士の小競り合いが未だ繰り広げられており、その影響で神獣が居たこの森にも徐々に魔獣が逃げ込んできているんだそうだ。


 「なぜこの場所が?」


 「少し前に、ギルドにいらっしゃいましたでしょう? その時に現在お住いの場所を再確認いたしましたので。まさかこんな長い間この地に住んでいたとは、流石に驚きました」


 思わずため息を溢してしまった。

 まさか老骨に鞭打つ様な真似はするまいと思って、警戒せず身分証を出してしまったが。

 冒険者ギルドとしては、俺達はまだまだ戦力扱いだったらしい。

 だからこそ、わざわざ山奥まで足を運んで顔を見せた訳だ。


 「すまないが、俺達は依頼を断る。ご覧の通り、もう歳なんでね。それに王族に“関わるな”と警告されているからな。申し訳ないが、手は貸せないよ」


 「それは国から追放、もしくは国全ての事例と関わるなと警告された……という事ですか?」


 「いや、流石にそこまでじゃないが……個人的に、王族と今後関わらないでくれと頼まれただけだよ。だからあまり目立つ真似をしたくないんだ」


 一応簡単に事情を説明してみれば、彼はふむ……と呟きながら難しい顔をしている。

 これだけの人数を引きつれてこの地までやって来たのだ、討伐対象もそれなりの魔獣なのだろう。

 だとすると余計に、俺達が関わってしまうとややこしくなりそうだ。

 街で再び神獣狩りがどうのこうのと噂でも流れてみろ、間違いなく王族の耳にも入る事になるだろう。

 出来ればソレは避けておきたい上、何より今は平穏に暮らしているのだ。

 魔獣が襲って来たのならば相手になるが、自ら魔獣の縄張りに突っ込んで行く程の理由が、今の俺達にはない。


 「そうですか……是非神獣狩りのお二人にご助力頂ければと思ったのですが、事情があるのであれば致し方ありませんね。緊急のもの以外、依頼を受ける受けないは個人の判断になりますから。大変失礼いたしました」


 それだけ言って、彼は引き下がってくれた。

 本当に緊急性のあるものだった場合、こんな理由で断れば冒険者登録の剥奪なんて言われてしまったかもしないが。

 どうにもこの様子を見るに、件の魔獣とやらも若い者達だけで何とかなりそうだ。

 俺達が手を貸していれば、仕事がより楽に終わるという程度だったのだろう。


 「申し訳ないね、無事を祈っているよ」


 こちらも彼等を見送りに外へと出てみれば、周りの冒険者は少しばかり残念そうな瞳を向けて来る。

 こんな老骨に若い冒険者達が期待してくたのは正直嬉しくない訳じゃないが、それでも。


 「すまないね、皆。俺達はもう引退した様な状態の年寄りだから」


 「い、いえ……こっちこそ、大人数ですみませんでした」


 パーティのリーダーだろうか?

 ガタイの良い男性が静かに頭を下げて来た。

 そして。


 「あの、シャームの奴は今……居ないんですかね? 此方に弟子入りしたと聞いて」


 急にそんな事を言いだした。

 はて、彼女はギルドでも“獣人だから”という理由で嫌われていた様に思えたのだが。

 思わず首を傾げてしまいそうになりながら、今は出かけていると伝えてみれば。


 「でしたら、“豪鉄ごうてつ”のパーティリーダーが頭を下げていたと伝えてもらって良いですか? 前にギルドでアイツに絡んだらしい馬鹿は、ウチの下っ端なもんで……」


 そう言って、彼は更に深々と頭を下げ始めたではないか。


 「えぇと、獣人を嫌っていると聞いたが……シャームの事を悪く思っている訳じゃないのかい?」


 「まさか。街の連中や新入りはどうしてもそんな感じですけどね、俺等冒険者にとっちゃ実績が全てだ。何度かアイツに助っ人を頼んだり、パーティに誘った事もあるんですよ? 人族なんて、とか言って断られちまいましたけどね」


 ハハッと軽く笑って見せる彼は、嘘を言っている様には見えなかった。

 なんだ、認められていたんじゃないか。

 シャーム自身が周りを拒否していただけで、しっかりと見てくれている人は居たのだ。

 口で説明した所で分かるモノではないと理解していても、何とも勿体ない事をしていた様だ。

 もう少しだけ周りを信じてみれば、彼らの様な仲間達に囲まれていた未来もあっただろうに。

 いや、今からでも遅くはない。

 なんたって彼女はまだまだ若いのだから。

 俺達の様に、こんな森の中に引きこもる必要なんかない。

 それもまた、彼女自身が決める事だが。


 「あぁ、必ず伝えよう。もしも彼女が街に戻る選択をした場合は、お願いしても良いかな?」


 「えぇ、もちろんです。今度は逃げられない様に、三日三晩張り付く勢いで口説いて見せますとも」


 ニカッと豪快に笑う彼は、多分とても面倒見が良い男なのだろう。

 周りに集まっているメンバー達も、彼同様に優しい笑みを浮かべていた。

 なんというか、捨てたもんじゃないと思えて来る。

 いつの時代も辛い事はあるし、悲しい出来事もある。

 しかしながら、いつだってこう言う連中は居るのだ。

 底抜けにお人好しで、周りを放っておかない面倒見の良い者が。


 「まるで昔のお前の様じゃないか、グラベル」


 「うるさいな、リリシア。俺は彼ほど仲間想いの男じゃないよ」


 いつの間に近寄って来ていたらしいリリシアから茶化され、思わず視線を向けてみれば彼女は昔みたいに微笑むのであった。

 俺にも昔は仲間が居た、今でこそバラバラになってしまったが。

 それでも、結構仲の良いパーティで皆と各地を旅したものだ。

 今頃何をしているのやら。

 誰も彼も良い歳になっているはずだから、もう会う事は無いのかもしれないが。

 などと感傷に浸っていると。


 「ん?」


 「おや?」


 視界の端から、高速で何かが接近して来た。

 思わず掴み取ってみればソイツは、ンビィィィ! と良く分からない威嚇している様な声を上げ始める。


 「どうした、ムム。お前がスーから離れるのは珍しいな? 何かあったのか?」


 声を掛けてみればムムはこちらの掌を結構強めに噛み始め、すぐさま地面へと降りる。

 そして少し森の方へと駆けてから、再び威嚇する声を上げた。


 「グラベルさん、そちらは……?」


 「あぁ、話の途中で済まない。ウチで飼っている子なんだが……どうにも様子がおかしくて」


 一言断わりを入れてから、ムムを追って少しだけ森の中へと足を運んでみれば。

 すぐに異変に気が付いた。

 普段の森だったら絶対に匂って来ない香りが嗅覚を刺激する。

 “煙玉”だ。

 何か緊急時には迷う事無く投げろと、シャームとスーに渡した物だったはずだが……まさか、二人に何かあったのか?


 「リリシア! 緊急事態だ! 戦闘準備!」


 慌てて家の中へと駆け込み、二人して装備を急いで整えた。

 気持ばかり焦ってしまうが、ココで慌てても事態は好転しない。

 落ち着け落ち着けと自分に言い聞かせながら、今までにない速度で戦闘準備を整え外に飛び出してみれば。


 「グラベルさん! 俺等にも同行させてください! 何かあったんでしょう!?」


 先程の豪鉄のリーダーが、再び頭を下げて来た。


 「すまない、先を急いでいるんだ。君達と歩調を合わせている暇は――」


 「今この森に住み付いているのはグリフォンの群れだ! もしもソイツ絡みだった場合、アンタ達なら戦闘って意味なら問題ないかも知れないが、数によっちゃ手が足りなくなる! しかも今森に身を隠すって事は、間違いなく子供が居る筈だ!」


 その情報を聞いて、思わず舌打ちを溢してしまった。

 グリフォン、幻獣とも呼ばれる程の魔獣。

 普段は争いを好まず、人にだって懐く様な変わった個体だ。

 しかし子供が居る時期は全くの別物。

 縄張りに少し入っただけでも攻撃してくるし、アイツ等は魔法だって使う。

 更に群れともなれば、相当な相手だ。

 今回持ち込まれた依頼は、まさかグリフォンの群れの討伐?

 だとしたら、規模によってはなかなか厄介な仕事。

 俺達のアテにした訳ではなく、本当に保険が欲しかった仕事だった様だ。


 「すまない……依頼を断った身の上だが、協力してもらっても良いだろうか? むしろこちらから依頼を出そう、報酬は――」


 「んなもん全部終わってから決めりゃ良い! アンタ等の雰囲気からするに、誰か襲われてるか攫われたんだろ!? だったらそっちが先だ! おめぇら、仕事だ!」


 「「「うぉぉぉ!」」」


 集まっていたメンバーが全員拳を振り上げ、雄叫びを上げた。

 なんとも、清々しいまでに気持ちの良い連中だ。

 それこそ物語の主人公達の様に、世の中に“毒されていない”集団だと言えるだろう。


 「すまない、まだ事情が全て把握出来ている訳ではないが……協力してくれるか? “豪鉄”」


 スッと頭を下げてみれば、彼等はハッ! と笑い飛ばす勢いで整列した。


 「冒険者パーティ“豪鉄”は、伝説の“神獣狩り”のグラベルとリリシアから依頼を受ける! お前ら、文句ねぇな! いくぞ、グリフォン狩りだぁ!」


 まるで蛮族かと言いたくなる程、誰もが武器を頭上に掲げて声を上げた。

 まだグリフォンと決まった訳ではないが、頼もしい限りだ。

 思わずリリシアと共に微笑みを浮かべてから、改めて森を睨んだ。


 「ムム、案内しろ。皆行くぞ! この子が現場まで案内してくれる!」


 俺の声に答えるかの様にムムは勢いよく駆け出し、時に空を飛びながら森の中を進んで行った。

 待っていろ、二人共。

 すぐに助けに行ってやるからな。

 そんな事を思いながら、俺達は久しぶりに森の中を全力疾走するのであった。


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