表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神獣飼いの獣人少女 ~TSして猫耳生えた、猫としか会話出来ない。詰んでね?~  作者: くろぬか
1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/21

第17話 頑張った御褒美


 「俺は今日、とても成長した気がする……」


 『ま、そうかもな。鹿の解体も手伝ったし、今回は食えそうな獲物が二匹。ちっこいけど』


 隣を歩くビルと共に、そんな会話をしながら家に向かって歩いていた。

 その両脇に、随分と大人しい兎を抱えて。

 何でもコイツ等は、生かしたまま連れて帰り非常食にするみたいだ。

 グラベルが何か色々言っていたので、思わず首を傾げながらビルに視線を向けると。


 『連れて帰るんだとよ』


 「非常食?」


 『そんな所じゃねぇの?』


 適当な返事を返すビルによると、コイツ等はそういう運命らしい。

 以前捕獲したムムは、食べる所が無さそうなのでペット扱いになってしまったが。

 コイツ等は別だ。

 兎の肉と言えば、どんな物語を読んでも食ってたしな。

 きっと旨いはずだ。

 とは言え、死んでいる鹿にナイフを入れただけでも吐いたのだ。

 解体、マジでキツイ。

 グロイし、匂いも凄いし、何より体力が滅茶苦茶必要だ。

 今のちっこいこの体では、とてもでは無いが一人で鹿や猪なんぞ捌く事は不可能だろう。

 もっと筋力をつけなければ……筋肉は全てを解決する。

 などと言ってもこの小動物にナイフをブスッとか、想像するだけでビビり散らしそうだが。

 もしも食べる時が来たら、シャームかグラベルにやってもらおう。

 またはコイツ等がもっと太って食い時になる頃までに、狩りと解体の技術を身に着けよう。

 そうじゃないと、俺はいつもまで経っても“狩り”は出来そうにない。

 こっちが小動物を集めている時に、シャームはデカイ鹿を狩ったのだ。

 新顔に実績で、しかも圧倒的な差をつけられてしまったのである。

 いや、勝てるとは思ってないけども。


 「俺も鹿とか熊とか狩れる様になるかなぁ」


 『無理じゃねぇかな』


 ポツリと呟いてみれば、ビルは一刀両断とばかりに否定してくれた。

 こいつ、付いて来るだけでの癖に。

 もう少し励ましの言葉の一つでも考えなさいよ。

 なんて言いたくなってしまったが、ビルの言う通り今のままでは無理だ。

 だって矢が真っすぐ飛ばないし、そもそも玩具かな? という飛距離しか出ない。

 もっと言うなら前回の狩りで、俺が放った矢を熊は回避してみせたのだ。

 この森にいる獣たちは、非常に頭が良い様に見受けられる。

 お爺ちゃんの矢が横から飛んで来なかったら、今頃俺は奴の腹の中だったかもしれない。

 超ド級の威力の矢、アレはグラベル砲と名付けよう。

 いつかあぁいった攻撃が出来る様にならなければ。

 とかなんとか、下らない事を考えながらビルと一緒に歩いていれば。


 「スー」


 今までは後ろを歩いていた筈のシャームが、何やら微笑みながら此方に問いかけて来る。

 なんだろう。疲れた? とか聞いているのだろうか。


 『手が塞がってると危ねぇから、ソイツ等預かろうかってよ』


 おぉ、それは有難い。

 脇に収まっているコイツ等、大人しいけどずっと抱っこしていると暑いのだ。

 両手が塞がっている不安も確かにあるし、そんじゃお願いしますって感じで片方差し出し、彼女に兎の片割れを渡した瞬間。


 「シャーム!」


 お爺ちゃんが急に声を上げたかと思えば、シャームの腕の中で急に暴れはじめる兎。

 前回リリシア達に渡した時と同様の現象。

 お前らさっきまであんなに大人しかったじゃねぇかよ! と言いたくなる事がまた起きてしまった。

 コレには流石に驚いたのか、彼女の腕の中から飛び出した小動物が森に向かって逃げて行こうとしたのだが。


 「っ!」


 シャームは咄嗟にナイフを投げつけ、草木に隠れる前に兎を仕留めて見せたでは無いか。

 おぉ、すげぇ! と思わず声を上げそうになったが。


 「……シャーム」


 グラベルが何やら険しい顔でシャームと話している。

 いや、うん。

 確かにまだ小さい獲物だったから、食いでは無いかも知れないが。

 いいじゃない、逃げられるより。

 どうせ狩りで捕まえた獲物なのだ。

 食う時期がちょっと早まったからと言っても、そこまで怒る事無いじゃない。

 何てことを思いながら、仕留めた兎へと走っていきヒョイッと持ち上げてみるが。


 「うーむ、まだあったかい。なんか凄く変な感じだ、ひえぇ」


 ナイフの突き刺さった兎を再び脇に抱えて戻ってみれば、二人からは非常に驚いた顔を向けられてしまった。


 『お前はアレだな、言葉の前に空気を読むって事を覚えるべきだな』


 「ん、なんか今それは俺も思ったわ」


 グラベルとシャームは、何やら呟きながらソッと仕留めた兎を布に包むのであった。

 血抜きとか、やらなくて良いんですかね。


 ――――


 「正直、驚いている。スーは何というか……強いんだな」


 「お前には強く見えるか?」


 「……いや、無理矢理にでも“慣れさせられた”。という雰囲気に近いな……あぁいう子供も、今までに見た事がある。目の前で人が死んでも笑っている、とか……」


 グラベルの質問に答えながら、ポツリポツリと言葉を溢す。

 弟子にして欲しいなんていいながら、師匠の意図をまるで汲み取れなかった。

 スーに渡された子ウサギ、私はあのまま逃がすべきだったのだ。

 獲物に逃げられると思って本能的に反応してしまい、咄嗟に投げナイフを投擲してしまったが。

 今考えれば愚行以外何者でもないだろう。

 あんな幼い子供の目の前で殺す必要は無かった。

 しかも、彼女に懐いてくれた動物を。


 「最初から“あんな風”だったのか?」


 「あぁ、俺と一緒に狩りに出た時もあんな調子だった」


 あの子は、森の動物にやけに好かれる様だ。

 もしくは森その物に好かれていると言って良いのかもしれない。

 スーを先頭に、まさに散歩でもするかのように歩かせてみれば。

 獲物どころか、薬草や山菜などの類まで驚く程見つかる。

 きっと前に居た所では、この能力を使って生きて来たのだろう。

 これが普通の家庭で育ったのであれば問題は無いが、彼女は随分と大人の顔色を窺っている様に思える。

 これをやっても良いか、こっちに行っても良いか。

 森の中でそれを、スーは身振り手振りで逐一伝えて来るのだ。


 「懐いてくれた子兎を目の前で狩られても、今までと同じ様子のまま。そしてまるで猫と本当に話しているかの様に感じる程声を掛けている。それ以外に声を掛ける相手が居なかったのか、それともまた特別な何かか。本当に、スーは何者なんだろう」


 「わからん。わからんが、あのまま放っておくには危うすぎる」


 師匠の言う通りなのであろう。

 あの子が今何を思っているのかまでは分からない、がしかし。

 とても不安定で、未熟な存在に思えた。

 あの年の子供なら、もっと我儘を言う筈なのだ。

 目の前で先程の様なトラブルが起これば、泣き叫ぶ子の方が多い筈だ。

 例え狩りに慣れる環境にあったとしても、自らが好き、好かれた動物を目の前で殺されれば。

 無理矢理「そいつらは食料だ」と頭ごなしに教えられる様な環境で育ったとしても、心の何処かで抵抗するはずなのだ。

 だというのに、彼女にはそれが無い。

 そう刷り込まれてしまったのか、“慣れ過ぎて”しまったのか。

 スーは、先程と変わらない笑みを浮かべながら森の中をズンズンと進んでいくのだ。

 残った兎を、両腕で抱きながら。


 「先程の兎……墓を作ってやった方が良いだろうか」


 「かも、しれんな。残った兎をアレだけ大事そうに抱えているんだ。表には出さなくとも、もう誰にも渡さないという感情の表れなのだろう」


 なんて言葉を交わしながら、私たちは彼女の後ろを歩いていく。

 最初はスーに狩りの何たるかを教えてやる、などと思っていた筈なのに。

 今では彼女から命の尊さを学んだ気分だ。

 例え小さな命でも、狩り取れば泣く者が居る。

 しかしソレを食べなければ、我々は生きていけない。

 そんな当たり前の事を、今更思いだした。


 「スーは、やっぱり強い子だ」


 「かも、しれんな……」


 私の言葉に、グラベルは静かに同意してくれるのであった。


 ――――


 その後狩りを終え家に戻ってくれば、食事の準備を始めていたリリシアに迎えられ夕食を取り始めた俺達。

 昼間の事をポツリポツリと話していれば、シャームは悲しそうに顔を伏せ、リリシアは眉を顰める結果になってしまったが。

 しかしながら、スーはいつも通り食事を頬張っている。

 あまり、気にし過ぎるのもいけないのかもしれない。

 そんな風に、楽観的に考えられれば良かったのかもしれないが。


 「スー、ちょっとこっちにおいで」


 呼びかけてみれば彼女は少しだけ遅れてから反応を示し、テッテッテと足音を鳴らしながら此方に近付いて来た。

 はて、と首を傾げるスーに向かって顔を緩め。


 「これは、凄く偉い人に貰った貴重な品だ。お礼だと言って頂いたんだが……俺やリリシアでは使うにも気が引けてね。だからスー、君が使ってみないか? 自らの力を伸ばし、更に隠された能力を呼び覚ます程の魔道具なんだ。ホラ、腕を出してご覧」


 王女……今ではアレクシア殿下と言った方が良いのか。彼女から頂いた魔道具。

 それこそ国宝と言っても良いだろう品なのだが、俺達には必要のない代物だ。

 今更強くなろうという意思も無いし、こんな歳では隠された才能などたかが知れている。

 という訳で、リリシアと話し合った結果スーに渡す事になった“ギフト”と言う名の魔道具。

 高価すぎるソレを彼女の腕に嵌めてから。


 「少しで良いんだ、魔力を通してご覧? そうすれば、スーの腕のサイズに合わせてくれるはずだ」


 なんて言葉を溢してみたが、やはり通じてはいないらしく。

 非常に不思議そうな顔で腕輪を弄り回すスー。


 「こう、ぐーっと。体の中から魔力を放つんだ。ホラ、ぐー……」


 「んー!」


 俺の真似をしてスーはその場で力んで見せるが、相変わらず腕輪の大きさはそのままだ。

 これは、しばらく無理かな?

 なんて事を思って笑いながら、彼女の腕から腕輪を外して紐をくくり付ける。


 「もしも困った時、危ない時、助けを求める時。そういう事態に陥ったら、この腕輪をつけて願うんだ。そうすれば、きっと力を貸してくれるはずだから」


 そう言ってから紐で首飾りの様にした腕輪を、彼女の首に掛け服の中に隠した。

 こんな事を言っても、理解してくれないのかもしれない。

 でも、本当に危ない目に遭った時に。

 この腕輪が、“ギフト”が彼女に力を貸してくれます様に。

 事実は分からずとも、ほぼ間違いなく悲しい想いばかりしてきたであろう彼女に、せめて新たなる希望を与えてくれる物であってくれる事を祈って。


 「いいかい? 危ない目に会ったら、んー! って力を入れるんだよ?」


 「んー!」


 再び俺の真似をして力むスーを見て、思わず頬を緩めながら頭を撫でた。

 この先どうかスーに、幸あらん事を。

 神様なんて信じてはいないが、思わずそんな言葉を思い浮かべてしまった。


 「国宝級の魔道具を首から下げる幼子とは、これはまた不思議な光景だね。“愛猫”のスキルは野生動物だけでなく、私たちにも効いているのかもしれないな。可愛くて仕方がないよ」


 クスクスと笑いながらスーのおかわりを盛りつけるリリシアが、そんな事を言い放った。

 確かに、その通りなのかもしれない。

 スキル“愛猫”。

 聞いた事が無いスキルだったが、もしかしたら誰からも可愛がられるとか、その類なのかもしれないな。


 「いや、流石にそれは……お二人が子供に甘いだけでは?」


 シャームだけは、少しだけ呆れた瞳を向けて来るのであった。

 まぁ、何でも良いさ。

 これからはまた森暮らしが続くんだ。

 だったら、まだまだ時間はある。

 ゆっくりと、長い時間を掛けてこの子を育てていこう。

 生きていく術を教え、言葉を教え。

 本人が望んでいるから、狩りの仕方も教えた方が良いのだろう。

 なんて思いながらも、未だ力んでいるスーに微笑みかける。


 「スー、焦らなくて良い。ゆっくりで良いんだ、今度リリシアに魔法を教えてもらおうな? そしたら魔道具も使える様になるさ」


 そう言ってみれば、彼女はニヘッと気の抜けたような笑みを返して来る。

 少しは俺達も信用してもらえたという事なのだろうか?

 そうだったら、嬉しい限りだ。

 そんな事を思いながら、俺達は夕食を再開するのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ