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神獣飼いの獣人少女 ~TSして猫耳生えた、猫としか会話出来ない。詰んでね?~  作者: くろぬか
1章

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第11話 お風呂回


 「えぇと……本当に良いのか? 後で払えと言われても、私にはこんな宿の代金払えないぞ」


 今までとは違い、オドオドした様子を向ける狼娘。

 せっかくスーの初めてのお泊りなのだ。

 今夜の宿としてそれなりに豪華な場所を選んでみたのだが、当然の如く狼娘の手を引いているスー。

 結果として追い返す訳にもいかず、彼女の分も部屋を取った訳だ。


 「気にすることは無いさ、森暮らしでは金も使わないからな。こんな年寄りだが、蓄えはそれなりにある」


 なんて恰好を付けてみたが、実際スーがこの子に懐いていなければこの様な事はしない。

 逆にギルドで受けた印象からすれば悪印象と言って良いだろう。

 現にリリシアは未だ彼女には冷たい態度を取っているくらいだしな。

 だが。


 「シャーム! シャーム!」


 「あ、あぁ……今行く。けどあまり走るな、スー」


 狼の獣人である彼女は、“シャーム”。

 獣人同士だからなのかは分からないが、スーは彼女の事をいたく気に入った様子でずっと手を繋いでいる。

 今ではスーが選んだ赤いコートを身に纏い、まるで妹の面倒を見る姉の様に見えなくもない。

 猫人で髪の毛も瞳も黒いスーと、狼人で灰色の髪の毛を揺らし赤い瞳のシャーム。

 なんとも、対照的な二人が揃ったものだ。

 とか何とか、言っていられれば良かったのだが。


 「やはりあの狼娘は捨ててこよう、そうしよう。私たちにも牙を向いた訳だし、何よりギルドの雰囲気を見るに他でも問題を起こしていると見た」


 「リリシア……拗ねるな」


 「拗ねてなどいない。ただスーがシャームばかり構っているのが気に入らないだけだ」


 「それを拗ねると言うんだよ……」


 不機嫌な彼女を宥めながら、借りた部屋の扉を開いてみれば。

 ウチのリビングの三倍あるんじゃないかという程の広い空間。

 全員で寝ても余裕がありそうな大きなベッドに、綺麗なガラス張りのテーブル。

 絨毯やカーテンも高価な物を取り扱っている様で、ブーツのまま足を乗せるのが勿体ないと思える程だ。

 などと考えていれば。


 「スー、何をしている?」


 シャームの声に視線を向けてみれば、何故か玄関で靴を脱ぎ素足のまま絨毯に上がるスーの姿が。

 やけに期待した様な眼差しで一歩を踏み出していたが、数歩進んだ辺りでスンッと静かになってしまった。

 もしかして、高級そうな絨毯だからフワフワするとでも想像したのだろうか?

 いくら高い物を使っていても、ここは宿屋。

 お客が来るたびに絨毯を変えている訳でもない為、当然今まで宿泊した者達が靴のまま上がった筈だ。

 掃除はしているだろうが、取り切れなかった汚れやごわごわした感触が今彼女の足裏に伝わっているのだろう。

 とても残念そうな顔をこちらに向けて来るスーに対して、皆揃って呆れた笑みを浮かべたが。

 この宿を選んだ理由は別にあるのだ。

 小さな笑みを溢しながら彼女を呼びつけ、外へと繋がる扉を開いてみれば。


 「どうだ? この値段で泊れる宿には、普通こんな風呂はないぞ?」


 そこには、ココの名物露天風呂。

 俺達冒険者にとって、外で身を清める……つまりは水浴びだが。

 そう言う感覚もあって、外で肌を晒すという行為にあまり大きな抵抗は無い。

 これは女性陣であっても近い感覚であると思われる。

 とはいえ、ココは風呂なのだ。

 湯が溜まっており、周囲は覗き防止の高い壁はあるが。

 それでも開放感がある見た目だと言えよう。

 こんなところでゆっくりと湯に浸かりながら、酒の一杯でも楽しめればそれはもう気持ちが良さそうだ。

 なんて、こんなのは年寄りの感覚なのかもしれないと途中で不安になって来てしまったが。


 「グラベル! ――!」


 非常に興奮した様子で、スーが満面の笑みを浮かべていた。

 良かった、喜んでくれた様だ。

 ホッと安堵の息を溢していると。


 「リリシア! シャーム!」


 俺の元から離れ、二人の手を引っ張りながら再び風呂に向かって来る彼女。

 皆にも見せてやりたいのか、それとも一緒に入ろうと言っているのかは分からないが。


 「皆でゆっくり入ると良い、俺はその間に買い物を済ませて来るよ」


 もう既に服を脱ごうとしているスーから視線を逸らし、二人にそう言い放つと。


 「待てグラベル。私にこの狼娘と一緒の湯に入れというのか? 我が物顔でスーが洗われて、その後私の所に寄って来てくれなくなったら流石に泣くぞ?」


 そこは頑張れリリシア、多分大丈夫だと思うが。


 「いや、私は隣の部屋を取ってもらった訳だし……こっちにお邪魔する訳には。それにホラ、私の様な獣人の女と湯に浸かるなど――」


 「時代を理解してその言葉を“遠慮”のつもりで吐いているのだろうが、俺達にとっては侮辱だぞ。これからも関わるつもりなら、以降気を付けろシャーム」


 「っ! すまない。こんな立派な宿に泊まった事など無いから、気が動転していた」


 シュンッと耳を折るシャームだったが、今の言葉はスーにも当て嵌ってしまうのだ。

 だからこそ、“そういう”遠慮はこちらの不満を買うだけだ。


 「しかし……この様子を見るに、隣の部屋はキャンセルしてしまって良いかもしれないな。スーがシャームを放さなそうだ」


 「そうなるとグラベルもうら若き女とベッドを共にすることになるが? ん? それが狙いか?」


 「リリシア、茶化すな。俺はソファーで構わないさ」


 「い、いや。流石に宿代を出してもらっている相手に対して、そんな事はさせられない。私は床で良いから、むしろ今から別の宿を探すのでも構わない、隣の部屋の分は返金してもらってくれ」


 などと、皆が皆言葉を紡いでいれば。


 「リリシア、シャーム?」


 既にすっぽんぽんになったスーが、グイグイと二人を風呂に導こうとしていた。

 気が早いな、というか風呂が好きだなこの子は。


 「まぁ何はともあれ、隣はキャンセルしてくるよ。今後の事はその都度話し合おう。三人で風呂に行っておいで……いや、三人と二匹か?」


 風呂となると一目散に逃げて行くはずのビルが、今日に限ってはスーの足元をウロウロし、ムムに関しては相変わらずスーの頭に乗っかっている。

 これはまた、随分と忙しい入浴になりそうだ。


 「なに、ここのベッドは広い。皆で眠れば良いさ、スーの隣は私だがな」


 「しかし……いや、この調子で私が出ていったら、この子が騒ぐのか……」


 開き直ったリリシアと、諦めた様子のシャーム。

 ま、何とかなるだろう。

 うら若き女性とはいえ、一緒の部屋に居るのはジジィの俺とビルがオスというくらいで、身の危険を感じる程ではないだろう。

 もちろんやましい事をするつもりは無いが。

 そしてムムの性別は未だに分からない、モモンガはどうやって判断すればよいのか。

 そんな事を考えながら、ヒラヒラと手を振って再び入口へと向かった。

 帰りの旅支度と、森に帰ってから必要な物を仕入れておかなければ。

 そして……この国の今の状況をもう少し把握しておきたい。

 俺達に何が出来ると言う訳ではないが、それでも。

 グッと口元に力を入れ、ドアノブに手を掛けてみれば。


 「グラベル、――――」


 裸の状態で、急いで此方に駆け付けたのか。

 シャームから赤いコートを被せられたスーが、何かを言いながら此方を見上げて来ていた。


 「あぁ、行って来ます。二人の言う事を良く聞くんだぞ?」


 そう言って彼女の頭を撫でた後、改めて扉を開いた。

 色々と思う所があるこの国ではあるが、もう随分と後悔を引きずって来たのだ。

 今更何を思おうと、この国の現状は変らない。

 開き直る訳ではないが、受け入れる努力はしよう。

 なんたって、俺達には今守るべき存在が居るのだから。

 受け入れて、理解して。

 何か力になれそうな事があるのなら、この老骨の力を貸そう。

 それが正しい行いだとすれば、だが。

 それくらいの方が、気が楽になるというものだ。

 俺達が全ての責任を取る必要が無いのは分かっていても、間違いなく俺達がきっかけで“こうなって”しまったのだから。

 だからこそ。


 「夕食までには戻る、ゆっくりと休みなさい」


 黒猫の耳を揺らす彼女にそんな言葉を残し、俺は一人で部屋を後にする。

 さぁ、ここからは忙しくなるぞ。

 買い物をするのは本当だが、それ以外の用事も済ませなければ。


 「必要な物を買ったら……まずは国王にご挨拶と言った所か」


 チッと舌打ちを溢しながら、俺はそのまま宿屋を後にした。

 あっ、シャームの部屋を解約するのを忘れた。

 まぁ、帰った時で良いか。


 ――――


 「ふぇぇい、極楽極楽」


 『よくもまぁ、そんなに水に浸かっていられるもんだ。猫の癖に』


 ビルからは非常に呆れた声が返って来るが、そうじゃないのだ。


 「――――!」


 「――、――!」


 なにやら一緒にお風呂に入った二人が言い争っている雰囲気はあるが、それでも極楽という他あるまい。

 綺麗なエルフお姉さんと、ご立派なケモ耳お姉さんに挟まれて露天風呂に浸かっているのだから。

 相も変わらず綺麗なリリシアは説明するまでも無く、日焼けケモお姉さんのシャームも非常に凄い。

 思わず「ご馳走様です」と言いたくなる程各所引き締まったお体に、くっきりと残る日焼け跡。

 コイツは新しい何かに目覚めてしまいそうだ。

 下らない事を思いながら表情も体もお湯の熱さに溶かしていると。


 「ムム~どうだぁ? 気持ち良いかぁ?」


 桶にお湯を溜め、その中にモモンガのムムを洗ってから放り込んだ結果。

 プクプクと特徴的な声を上げ、お湯に身体を漬けながらずっと水面を漂っている。

 俺達が動くせいで微妙な波が起こり、ソレに合わせてムムの入った桶が行ったり来たり。

 こいつも小動物なのだ、今は良いがお湯から上がったら手早く乾かしてあげないと風邪を引くかもしれない。

 その辺りはリリシアの魔法で温風を掛けてもらうとして、問題はビルだ。

 野生動物だったから仕方ないかもしれないが、洗ってやればムムだって結構な汚れが出たのだ。

 森の中を練り歩くビルだって、多分同じ状況な筈。


 「ビルー、風呂入らないと臭いぞー」


 『ふんっ、毛づくろいなら毎日してる』


 「でも臭いぞー? 他の猫に嫌われるぞー?」


 『今も臭いのか?』


 「ケモ臭いというか、なんというか」


 そう言ってみれば、ビルは自らの匂いを確かめる様に全身をクンクンと嗅ぎ始める。

 まぁ猫だからね、ある程度は仕方ないとは思っているけど。

 やっぱり森の中でウロウロしていれば匂いも付くし、排泄物関係もある訳だから、家猫よりもやっぱり獣臭い訳で。


 『本当に臭いか?』


 「疑り深いなぁ……後でちゃんと乾かしてあげるから、一回洗えば良いじゃん。街に居る間くらいは綺麗にしようよ」


 『……なるべく手早く済ませろよ? 俺は水が嫌いだ』


 そんな事を言いながら、ビルが風呂の近くまで歩いて来た。

 周りの猫に嫌われると言ったのが効いたのか、今では大人しく此方に背中を向けている。

 ならば、洗ってやろうでは無いか。

 先程まで俺も非常にお世話になった石鹸を泡立てて、ニヤニヤしながら風呂から上がりその背中に迫る。


 『おい、分かっているとは思うが。本当に嫌いなんだからな? あまり変な事をするなよ? あと、変に匂いの強い石鹸を使うと匂いが抜けるまで鼻が利かなくなる――』


 「うおりゃぁぁぁ!」


 『お前はぁぁ! 鼻が利かなくなるって言ってんだろうがぁ!』


 現在俺達が使った石鹸は、何かの花の匂いがする奴。

 ラベンダー? いや、それほど強い匂いじゃないから、何だろうコレ?

 などと思いながらも、ブサ猫を泡だらけにしていく。


 『知らんからな! お前がいなくなっても匂いで追えないからな!?』


 「こんな街中だし、大丈夫大丈夫」


 『帰り道に攫われそうになった奴が言う台詞か馬鹿が!』


 ギャンギャン吠える煩い猫をもしゃもしゃと泡立てながら、脚やら尻尾まで揉み洗いしていく。

 うぉぉ、凄いなコレは。

 ビックリするくらいに汚れが出て来るし、多分ノミとかの小さい生物も取れているのだろう。

 最初は泡が立たないくらいに汚れていたのに、今ではしろいモコモコに包まれながら汚れを排出していく。

 これでお前もゴワゴワ猫からモコモコ猫に変わるぜ。

 何てことを思いながら、ビルの体をゴシゴシしていれば。


 『あぁ? なんだムム。お前はもう洗って貰っただろ』


 モモンガのムムが、泡だらけのビルに突っ込んで行った。

 仲間外れにされているとでも思ったのか、ヒシッとビルの頭付近にしがみ付いている。


 「二匹とも流すよぉ? ビルはもう一回石鹸な」


 『まだやるのか……本当に鼻が馬鹿になりそうだ』


 「匂いなんかすぐ抜けるって」


 なんて会話をしながら、二匹にぬるま湯を掛けていく。

 ビルはえらく不満げな顔で、ムムはご満悦な様子で目を閉じている。

 その光景をみて、思わず笑ってしまった。


 「ビルほっそ! いつものデブ猫はどこ行ったんだよ。ムムはやっぱネズミみたいになってるし」


 『うるせぇやい、早く済ませろ』


 「あいあい~っと。もっかい洗うぞ?」


 そんな訳で、二匹をもう一度洗い始める。

 ペットを洗うって初めての経験だけど、こんなにも大人しいと洗いやすいモノだ。

 猫や犬を洗うのが大変だとSNSで呟く皆様は、まずはコイツ等の言語を理解する所から始めるべきだな。

 などと、人語も出来ない俺は偉そうな感想を残すのであった。


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