王妃教育で忙しくしますわ……あれ?
いつもの寮での話し合い。
「そういえば、王妃教育で忙しくするのも定番なんですわよ!」
「定番、ですか?」
「ですわ。私が居ないのにもかかわらず、間抜けなヒロインがいじめを捏造! そして『あら、私その時間王城で王妃教育を受けていたのに……どうやってあなたをイジメたのかしら?』と確固たるアリバイで論破するのですわ!」
「なるほど……じゃあ私はお嬢様が居ないときにイジメられたと捏造して殿下に告げ口すればいいんですね?」
相変わらず話が早くて助かるヒロインだ。
「でも殿下がちょっと調べたらすぐバレちゃうんじゃないですかね。そういうのって」
「恋は盲目って言いますのよ。頭がお花畑になってる殿下はおバカさんなので気付かないのですわ!」
「あー。盲目。確かに……確かにそうですね!」
「ハークス殿下はヒロインに夢中……うん、夢中ですし? ヒロインのいう事なら裏取りもせず信じますわよ。ええ」
「ソーデスネ!!」
そう言って、しかしコレハはほんのりと胸がモヤモヤするのを感じた。
「んん……? なんか体調わるい、のかしらねぇ?」
「え、大丈夫ですか!? すぐ温かくして横になってください! ロボロフスキー先生呼びますか!?」
「ああいや、多分お昼ご飯が胃もたれしてるだけですわ。そんな大事にしなくて大丈夫よ」
「ならいいですが……お嬢様、体調が悪いなら隠さず言ってくださいよ? みんなお嬢様が身体を壊したら悲しみますし。ポーションも用意してますから」
「キヤスポーションでしょそれ。私のはナオリ草で作った苦くないヤツにして頂戴ね」
キヤスのおかげでポーションは手に入りやすくなった分、ナオリ草のさほど苦くない従来のポーションは高級品扱いになっている。
「キヤスの生産者がそれ言っちゃいますか」
「というかキヤスって元々私の魔力で強化したでしょう? そのせいか私とは馴染み過ぎて効果が下がるんですわよねぇ。2割くらいですけど」
そのくせ苦味はそのままという、創造主にも牙をむく薬草である。
まぁコレハのらしいといえばらしい薬草であった。
「へぇ、だからロボロフスキー先生に持たせてもらったポーション、ナオリ草のもあったんですね」
「そうなのよ。と、話がそれましたわね。そんなわけで、王妃教育でも受けて来ようかと思いますのよ」
強引に話を戻すコレハ。
「……あれ? でもお嬢様って王妃教育とかそういうの受けてませんでした? 王城から家庭教師が派遣されてましたよね?」
「あれは王子妃教育ですわ。そこからさらに王太子妃教育、そして王妃教育とグレードアップするんですのよ!」
「なるほど。……それ、急に王城に行って受けられるんですか? ハークス殿下ってまだ王太子ではないですよね?」
「……あ。そういえば王太子妃教育は学園を卒業してからって言われてましたわねぇ……」
それと思いだしたが、王太子妃教育や王妃教育は『立場によって知って良い・知らなければいけない知識』が増えるための教育である。
今教えられることは全て教えた、とも家庭教師が言っていた気がする。
コレハはざまぁを敢行するにあたり自分に非があってはいけない、と、既に現在受けられる最大限の教育を完璧に終えていたのである。
「……当面、復習くらいしかすることなさそうですわねぇ」
「諦めますか。そこのあたりは」
「ま、待つのですわ! まだ王妃様とお茶会とかそういうのもありますわよ! そういうイベントで不在の時を狙ってヒロインがやらかすんですわ!」
「なるほど! では早速お茶会の準備をしないとですね――」
と、ここまで言ってサマーは気が付いた。
「あの。私、お嬢様の侍女なんだからサマーとしてお嬢様の側にいないとですよね? 逆に言えば、お嬢様がお出かけするならヒィロも不在になります……」
「ああ!? 確かに!?」
そう。サマーがコレハに仕えている以上、そういうことになってしまうのである。そしてコレハのざまぁ計画はヤルコット侯爵に秘密なので、代わりの侍女を手配してもらうこともできない。
「……サマー、あなたガチで2人になれません?」
「さすがに分裂はちょっと無理です。人間なんで」
そういうわけで、この計画については諦めることにした。




