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聖女の覚醒ですわー……?


 その日、お嬢様は思い出した。

 そういえば、『かお☆みて』には魔王が居ることを。あとエンディングまでにどうにかしないとなんやかんやバッドエンドになることを。


 丁度部屋でゴロゴロしていた時だったので、そのままサマーに声をかける。


「あ、サマー。そろそろ聖女として覚醒しときます?」

「え!? 聖女として覚醒ってそんな今日の晩御飯みたいなノリで覚醒しちゃえるんですか!?」

「聖魔法自体はもう使えてるじゃないの。本来のヒロインは覚醒するまで魔法使えなくて、聖魔法を光魔法に偽装して使うなんてできないんですわよ?」

「え、そうだったんですか……」


 というか、本来の本来であれば聖魔法だって教会の奥に保管されていた巻物に書かれていた呪文を聞いて、初めて使えるようになるというものなのだ。


「まったく、なんで使えてるのやら……」

「昔お嬢様が初めて魔法を使おうとした時の呪文ってのをエマさんから聞きまして、それ私も唱えてみたら使えたんですよねー」

「……あぁー。あの時の」


 当時はお嬢様に何かされるんじゃないかと気が気でなく、一挙手一投足を事細かく記憶していたとか。さすが侯爵家に雇われるレベルの有能メイドである。


「今思えば、それってげぇむの知識だったんですね」

「ですわよー。その頃に前世の記憶が湧いたんですの」

「他にはどういう呪文があるんですか?」

「ええ、例えば『ホーリーシールド』とか『ホーリージャベリン』、あと魔王を再封印する『パーフェクト・シーリング』とかですわね」


 特に『パーフェクト・シーリング』は絶対に覚えておいてほしい。バッドエンドになったら、コレハがざまぁして生き延びても、世界ごと滅んでしまう。


 というわけで聖魔法の具体的な呪文も教えておく。本来は教会のサポートのもと祠を巡って石板を解読しないと覚えられないのだが、コレハは既に知っている。これぞゲーム知識無双というヤツだ。

 まぁどうせコレハ自身には使えない魔法である。侍女のサマーに教えたところでなんの損もない。


「ああそうそう。他はともかく『パーフェクト・シーリング』は使用条件があるんですわ。愛のパワーがどうのとかで、手っ取り早く言えば攻略対象との好感度が必要なの。ヒロインの溢れる愛によって封印を強化する感じですわね」

「ふむふむ」

「ただ、発動すれば一発で魔王を再封印できるので、発動できるだけの愛を高めているかどうか――ここが終盤の山場なんですわよ!」


 そして、もし好感度を最大まで高めておけば、覚えた時点で唱えた魔法が光となり魔王の封印に向かって封印強化で勝利確定という魔王攻略RTAなルートもある。


「愛する人――攻略対象の顔をじっと見つめながらこう唱えるのですわ。『聖なる力よ、我が愛をもって悪しき者を封じ、我が愛をもって祝福せよ――ラブ・パーフェクト・シーリング・ラブ』」

「ラブって2回言った!」

「自分と相手の愛で挟み込んで超強化って感じらしいですわ」


 そして顔を見ながらというのは、『かお☆みて』のメインコンテンツである。

 メインコンテンツのオマケでしかない呪文がダサいのはご愛敬である。


「呪文と魔法名が地味に違うのが特殊な感じ、だとか? ま、ヒィロの今の攻略具合ならそのうち使えるでしょう」

「え゛……あ。えーっと。じゃあとりあえず一回練習させてくださいお嬢様」

「いいですわよ」


 と、一回コレハで練習しておくことにした。練習は大事である。練習でやっていないことをぶっつけ本番でできる奴はごく少数の天才だけなのだから。

 コレハだってゲームの時は音声入力を何度もミスったものだ。だってダサ……恥ずかしくて。カンペする字幕があってそうだったのだから、現実となっている今ではより難易度が高いのだ。


「ところでお嬢様は私の事嫌いか好きかで言えば、どうですか?」

「え? 好きよ? 忠実な従者、むしろもう手足だもの。嫌いなわけないでしょう、私が育て上げた自慢の手足ですわよ? 自分の手を嫌う道理はありませんわ」

「その言葉が聞きたかった。じゃあやりましょう!」


 と、サマーは嬉々とした顔でコレハの手を取った。

 ……しかし悪役令嬢相手に愛の呪文を練習する聖女とかどうなんだろう、とか思いつつ、コレハとサマーは見つめ合う。コレハは「(こいつ(サマー)ってばやっぱ顔がいいですわね)」と思った。


「聖なる力よ、我が愛をもって悪しき者を封じ、我が愛をもって祝福せよ――ラブ・パーフェクト・シーリング・ラブ……!!」

「ん!?」


 その瞬間、二人を包むようにして光の柱がばしゅんっと立ち上った。

 その光は寮の天井を突き抜け上空で玉となり、どこかへ飛んで行った。



 魔王の封印は強化された。これで向こう500年は大丈夫だろう。



「あっ、できた! やりましたよお嬢様、手ごたえアリです!」

「!? な、なにしてますのサマー!? あなた、王子はどうしたのよ!?」

「やだなぁお嬢様。それはヒィロの話でしょう? 私はサマーでお嬢様の忠実な侍女なんですから、お嬢様に愛があって当然じゃありませんか!」

「お、おう? そういえば今は化粧してませんものね……」

「まぁ本番でもしっかりやりますから! ね!」


 今、成功しちゃったのに本番……? と思いつつも、魔王の心配がなくなったのでまぁよしとして、一旦忘れて寝ることにした。

 それとコレハ達の部屋の上は空き部屋と倉庫だけだったので、眩しくて目が潰れる生徒はいなかった模様。





(※一応、聖女の力は親愛や友愛や家族愛、なんなら自己愛でも発揮されます)


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