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王子はヒロインに夢中ですわ!



 いつもの反省会。今日は特に良い感じに出来たということで帰りにケーキを購入。

 コレハは上機嫌でサマーとぶどうジュースで乾杯していた。

 (今は化粧を落としているのでヒィロではなくサマーだ)


「オーッホッホッホ! これでざまぁ展開に一歩近づきましたわ!」

「……ですね!!」


 何故か顔を合わせようとしないサマーだが、今日のイジメモドキは本当にキマっていた。男性には通じない宣伝という、言い訳しようのある内容だった。

 現にケンホなどはコレハをぐっと睨んでいたものだ。


 まぁハークスについては……なぜかコレハを見つめていたかもしれない。いや、あれはそう、きっとコレハと分かれてサマーと付き合う一歩になったと勘違いして、将来を思ってうっとりしていた感じに違いあるまい。


 なぜか目を合わせようとしないサマーも、あの後ヒィロとして王子達に連れられ、校舎裏で囲まれるようにして慰められていたのをコレハは確認している。



 アレはVRゲームでやったやつ。通称イケメンプリズン。

 右を見ても左を見てもイケメンというご褒美シーンである。……まぁ攻略対象3人なのでスカッスカだが。後ろは壁という手抜きだし。せめて4人居たら全方位イケメンだったのだが。


 つまり、攻略も順調ということである!



「さてサマー。次は王子の他の攻略対象とイチャイチャするイベントがありましてよ?」

「……うげぇ」


 一応イケメンたちとイチャイチャできるのだから喜んでいいんじゃないか、と思いつつも、その嫌そうな顔にコレハは思わずホッコリしたのでスルーした。


「一応ケンホ様とはイチャイチャ? かは分からないですが、魔法実習でペアになってましたが」

「あら、ケンホルート行きますの? そっちだと……うん、たしか私が斬殺されるエンドとかありますわね。上半身下半身が真っ二つだとか」

「絶対行きません!!」


 サマーは力強く拒否した。なんかやっと目を合わせてくれた気もする。


「あらあら。いいのに、既に正当防衛ざまぁの準備は着々と進んでいて、そうならないように動いてるんだから」

「……それはそれで、絶対に行きたくないですよね?」


 言われてみれば、落ちぶれると分かっている相手とくっ付くのもなぁ……ということだとコレハは気付いた。賢いので。


「となると、攻略対象の中でサマーが一緒になりたい人とかいないのかしら?」

「うーん、全員色々な意味でお断りです。というか生涯お嬢様にお仕えしたいです」

「あらあら、良い忠誠心だこと」

「お嬢様となら、例え裸一貫で放り出されても毒魔法で何でも出せますし、生き残れますもん。安心感でいえば最上ですよ」

「あなた、私の事何だと思ってるの? 打ち出の小槌じゃありませんのよ私は」

「ウチデノコヅチ……?」

「なんでも生み出せる魔法のハンマーですわ」

「なるほど、だいたいお嬢様ですね」


 どうしてそうなるのよ? と首をかしげるコレハ。


「お嬢様、食べ物以外ならなんでも出せるじゃないですか。むしろ食べ物も出せるじゃないですか。あ、そういえば報こ……手紙を書くためのインクが切れそうだったんですけど補充してもらえたりしますか?」

「まったくもう。ちゃんと買っておきなさいよそういうのは」


 勿論インクなんて飲んだら絶対身体に悪い。つまり毒だ。いける。いけた。


「あざーっす、お手数おかけしました、このインクは家宝にします!」

「ちゃんと用途通り使いなさいよ!? 私を騙したんですの!? サマーの分際で許しませんわよ!?」

「あはは、ちゃんと使いますってぇー」


 のんきに笑うサマー。


「にしても、そんなに手紙を書いてますの? 誰に?」

「ええっと……王子と文通を少々」

「!!」


 ティーンと来た。これはやはり前世のVRゲームで見たやつ。

 文字だけのシナリオでゲームのボリュームを水増しした攻略対象とのお手紙交換システム!


「ちょ、ちょっとどういう手紙貰っているのか見せなさい?」

「ああはい。少々お待ちください。こんなやつです」


 サマーから渡された手紙をささっと奪い取るように受け取り、開封して中を確認する。

 そこには、『愛する君へ』だの『可憐なスミレのよう』だの『抱きしめて離したくないが、この気持ちは口に出して言えない。この手紙は君に届くだろうか……』だの、そんなこっぱずかしい事が書かれていた。


 ……届いたらもなにも、本人に直渡ししたのでは? とツッコミを入れるのは野暮だろう。だってゲームではシステムでポンと1日の終わりに届く代物なのだ。

 多分そういう魔法でも使ってるんじゃないかと思う。

 ん? 自分でそういう魔法使うのが初めてだったとか? だから届くかどうかちょっと自信なかったのかもしれない。


「しかしこんな……フフフ、これはざまぁに対する重要な証拠ですわね……!」

「ソデスネ!!」

「この手紙、私が預かっても良いかしら?」

「はい! どうぞお持ちください!!」


 こうしてコレハは攻略対象の王子が順調にヒロインに嵌っていることを確認しつつ、強力な証拠(ぶき)となる手紙を手に入れた。


 尚、途中からサマーは再び目をそらしていた。

 首でも寝違えてたのかしら?




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