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ヒロインをいじめるのですわ!(茶番)(前)


「お嬢様。次の『いべんと』はどういうのでしたっけ?」

「えーっと。……んん確か、合同魔法実習で、殿下に近づいているヒロインに私が突っかかるやつですわね。丁度次の授業ですわ!」

「殿下のクラスと合同でしたか。じゃあ変身しとかないとですね。では失礼します」

「ええ」


 サマーはコレハを体操服に着替えさせたのち、少し離れてささっと化粧を施しヒィロになった。

 まさに『変身』というのが相応しい早化粧だ。魔法でないというのが逆に不思議なほどに。


 そして、変身後のヒィロには声をかけないコレハ。

 最近ではサマーの友人もヒィロになっている時は声をかけないらしい。



「あの従者の変貌っぷり、惚れ惚れしますわね……!」

「化粧をしたら特別な存在。そういうブランディングですか……流石ですわ」

「ナイアトホテプ領の化粧品、薬草成分配合でお肌にもいいらしいですわよ! 化粧の度にほんの少し苦みを感じるらしいですけど」

「あれほど化粧をしたり落としたりを繰り返して、むしろ肌艶が良くなるってとんでもない事よ……! 苦みなんて些細過ぎる代償よね」


 最近気が付いたのだが、ヒィロ(サマー)は化粧品の広告塔になっているらしい。

 売り上げが伸びて、影響して原材料の薬草も売れ、サマーに支給する化粧品代を十分ペイして有り余る謝礼まで得ている。

 これで安心してヒロインを続けてもらえるというものだ。


「(まぁ王子にさえバレなければ問題ないですわ。……バレないでしょ、うん。今もバレてないし)」


 そしてサマーがヒィロになってしまったので、ボッチになったコレハは合同魔法実習へと一人で向かった。



  * * *


 そして合同魔法実習が始まる。

 早速コレハの下に、ハークスがずんずんと勢いをつけてやってきた。


「コレハ! 今日は合同授業だから楽しみにしてたんだ」

「あーら殿下、御機嫌麗しゅう。そして御機嫌よう」

「おい!? 挨拶してすぐ離れるんじゃない、婚約者だろう!?」


 と、回り込んでコレハを止めるハークス。


「あら。そんなに婚約者との仲の良さをアピールしておきたいのですか?」

「当然ではないか。皆に見せつけてやろうと思っている」

「まぁまぁ。殿下ともあろうお方が、婚約者と仲が悪いなんて醜聞ですものねぇ」

「そうだな。だからちゃんと仲良くしてくれ」


 なるほど、ヒィロはいるものの、婚約者の手前そちらを優先せざるを得ないということだろう。

 やれやれ、ここは何か理由をつけて離れなければ、ヒロインとイチャイチャさせてやることもできないですわね。とコレハは試案にふける。


 その時、教師の声が響いた。


「はーい、それでは授業を始めます。まずは二人組を作ってくださーい」

「ッ!?」


 『二人組を作れ』――それは、ぼっちのコレハにとって突然の処刑に等しい。

 もしこれが合同でなく、コレハ達のクラスだけであったのなら、サマーと組むこともできた。しかし! 今、サマーはヒィロ・インなのである!

 悪役令嬢とヒロインは……組めない!!


「ぐ、わ、私、体調が――」

「コレハ。俺と組んでくれるか?」


 そこに差し出された王子の手。

 正しくそれは地獄に垂らされた蜘蛛の糸。コレハは掴むかどうか、瞬間悩み、掴んだ。


「――くっ、仕方ありませんわね。今日の所は組んで差し上げますわ」

「ああ。ありがとう。愛しの婚約者様」


 フフッと心底嬉しそうに微笑むハークス。

 その整った顔が綻ぶさまに、コレハは思わず見とれそうになる。


「(そ、そういう顔はヒロインに見せるべきでは?!……ん?)」


 と思ったところで、それが周りへの婚約者アピールであることに気が付いた。

 どうやら、王子らしい演技の教育をしっかり受けているようだ。コレハが気の迷いを起こす程に。


「ああ。ケンホ、お前はヒィロ嬢と組んでやってくれ」

「んぉ? 分かった。組もうぜ」

「あ、ハイ。よろしくお願いします」


 そしてさりげなく側近のケンホに指示を出してヒロインを確保しておくあたり、そつがない。他の男にとられたくない独占欲が透けて見えるというもの。

 ……ともあれ、コレハは二人組の即死罠を回避することができたので、そこはハークスに感謝しておくことにする。言わないけれど。







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