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とりまきが欲しいのですわ……!



 寮の部屋にて。


「っていうかサマー! 私教室で浮いてませんこと!?」

「えっ。まぁ、その……ええまあ」

「ええまあ!? 認めちゃうんですの!? そこ認めちゃうんですの!?」

「否定しても事実は変わりませんし?」


 コレハは自分が教室でぼっちなのを、あろうことかヒロインのサマーに相談していた。

 一方のサマーはなんだかんだそのコミュ力を駆使してクラス内外に友達を作っているようである。


「私の友人は平民枠の生徒ですよ。そもそもの横のつながりが強いんです」

「……私も混ぜてもらうわけには」

「侯爵令嬢とか、皆萎縮しますって」

「ですわよねぇ」


 貴族と平民、それはどうしても上下関係の発生する身分差だ。

 現に、この部屋の掃除等はサマーが全て担当している。


「お嬢様はお嬢様で貴族のご学友を御作りになられたら良いのでは?」

「……誰も話しかけてくれないんですの」

「あー、お嬢様って貴族の中でも格が違いますからね。皆遠慮してるんですよ」


 そう言って慰めてくれるサマー。

 実際、コレハは平民からは『薬の聖女』と憧れの眼差しで見られている。

 貴族側から見ても評判も悪くない。なにせ第一王子ハークスの婚約者だ。本人から生徒会に勧誘されてもいるし、仲は良好だと思われている。

 真っ当に格が違って、皆手が出せずに浮いているのである。


 しいていえば、従者であるサマーの扱いについてか。

 サマーを着飾らせてヒィロ・インを名乗らせ、そのくせ微妙な距離を保ち触れず近づけず、そう思えばたまに見つめてニヤニヤしたりとしているため、『変わった趣味を持ってる』という認識だった。

 まぁ着飾ったサマーことヒィロ・インはとても可愛いので、これも「なんとなく分からなくもない」「生きた美術品とは……芸術家なのだなぁ」「あの平民ホント可愛いんだけど、口説いたらアウトだよね……」「所有物として扱われるとしてもあれなら本望」という評価だ。


 だが、コレハが孤高の存在である一番の原因はそれよりもなによりも……


「(……教室の面々をハークス殿下が威嚇してるのは言ったほうがいいんですかね?)」


 別クラスのはずのハークスがちょくちょく教室の後ろから顔を出し、笑顔で威嚇し、近寄ろうとする男はもちろん、下心満載なとりまき希望もシャットアウトしていた。


 そんな結果、コレハはぼっちになった。


「もういっそハークス殿下と一緒に学園生活満喫されてはいかがです?」

「何言ってるのサマー! 私は殿下にざまぁするためにここまでやってきたんですわよ!? 殿下と仲良くするのはヒロインの仕事ですわ、職務放棄は許しませんことよ!?」

「言って諦めるお嬢様じゃあないですよね。分かってました」


 そして、コレハはざまぁを諦めないくせにとりまきを作ることはどこか諦めているフシがある。それはゲームのコレハが取り巻きを引き連れていないことを思い出してしまったからだ。

 多分3Dモデルのコストの都合なのだろうが、コレハはゲーム内では常に一人で登場している。せめて2Dのカキワリ看板のようなのでも取り巻きが居たら、話は別だったのだが……


「私にはとりまきが出来ない運命なのですわ……」

「お嬢様。何を言ってるんですか。私がお嬢様のとりまきですよ!」

「でもサマーはヒロインですわ!」

「なら、私が2人分動けばいいんですよ」


 ……? と首をかしげるコレハ。


「ほら、化粧してるときはヒィロ・インですが、化粧を落としたらサマーですよ!」

「……!! その手がありましたわ!!」


 さらに言えばサマーの化粧術は速度も凄い。1分もあれば変身完了するのだ。

 まぁ、サマーは元が良いし、メイクも最小限で済むからというのもあるが。


「まぁ化粧品の値段考えると背筋凍るので頻繁な切り替えはやりたくないですが……お嬢様の為なら喜んで!!」

「もちろん経費として支給しますわ! 私、現金ならあるのですわよ!」

「流石お嬢様、金満貴族! ナイアトホテプ栄光の化身!」


 こうしてコレハは取り巻きを得ることに成功した……が、とりまきがヒロインなので、ヒロイン相手に取り巻きを連れて参上することは不可能。

 結局はゲーム通り、ヒロインの前では一人行動のコレハとなってしまう。


 だがそれが逆に運命(ゲーム)からの抜け道であると、コレハは納得した。

 こうしてコレハは真のボッチからは解放され、心は穏やかに過ごせるようになった。





「あ! 良いコト思いつきましたわ! ざまぁの時、殿下が私に断罪を突きつけた直後、ヒロインのあなたが化粧を落として私につく、なんて楽しそうですわ!! 愛しているヒロインに裏切られた殿下の顔、想像するだけでもプークスクスでしてよ!」

「そ、それは……お嬢様好みの展開ですね!」

「そしてサマーは王子に言ってやるのです、『楽しかったですよぉ、殿下(おまえ)との恋人ゴッコぉお!』って! 今から台詞の練習ですわーー!」

「(すみませんお嬢様、もう全部バレてますーーー! マジでゴッコ以上に成りえないですーーーー!!)」




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