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ヒロインがいなければ作ればいいのですわ!



「……なんということ……!」


 コレハはよろけて頭を抱えた。

 コレハがざまぁを敢行するべき主人公(ヒロイン)。それが腹心のメイドだったのである……!


「『ざまぁモノ』であるなら、ヒロインは攻略対象に媚びを売りまくる下種女であると相場が決まっているはずなのに……!」

「なめないで頂きたい! 私が媚びを売るのはお嬢様くらいのものですよ!」


 堂々と胸を張るサマー。媚びを売り続けて10年の大ベテラン。

 コレハの足なら喜んで舐めようというものだ。むしろご褒美である。


「幼少期イベントはどうなった幼少期イベントは……! あ、そういえば誘拐事件はサマーも一緒でしたわね……」

「あの時はお嬢様と一緒で楽しかったですねぇ!」


 そして攻略対象とも面識がある。コレハにずっと仕えていたので当然だ。

 なんなら王子以外と顔合わせしたときも一緒だったし。




「大体、こういうときのパターンってのは、『ヒロインも転生者』『ヒロインは非転生者』『どちらともいえない』の3つ! サマー、あなたはどれですの!」

「『はい』『いいえ』『それ以外』って全部網羅しますねお嬢様。それだと世の中の全てがその3つに分類できますよ?」

「うるせぇ、世界は意外とシンプルですのよ! 全てはシンプルの組み合わせですわ!」


 バシバシと部屋備え付けのテーブルを叩き癇癪を表すコレハ。


「私はお嬢様と違って前世の記憶とかありませんね」

「……いや! まだですわ、入学式のイベントで記憶が蘇るパターンも!」

「『それ以外』の幅広すぎません? まぁ、そうなったとしても私がお嬢様を裏切るなんてありえませんが!」

「世の中、絶対なんてありませんわ! あるのは『絶対というのは絶対ない』、だけでしてよ!」


 ここまで『ざまぁ』のために頑張ってきたのだ、今更『そんなのないですよ』と言われてもコレハは納得できない。


「……! そうだ、サマー。あなた、私を裏切りなさい」

「え? な、何言ってるんですお嬢様!?」

「そう、そうよ! サマー、あなた、記憶が戻ろうが戻るまいが、ハークス殿下に取り入って私から寝取りなさい! そうすれば私はハークス様を『ざまぁ』できますわ!!」

「……ッ、そ、そんな……」


 サマーは葛藤する。お嬢様の願いを叶えてあげたい。けれど、お嬢様を裏切りたくはない。二律背反。

 というか普通に王族の婚約を妨害したら不敬罪で処刑もあり得るのでは? 処刑されたらお嬢様にお仕えできないじゃない、やだぁー!!


 特に「お嬢様を裏切るだなんて……!」と悩むサマー。

 その漏れた言葉に対し、コレハは解を提示する。


「あら。私の命令で裏切るんだから、正確には裏切った事にはなりませんわ!」

「ほへ?」

「だから『ざまぁ』が済んだ後、私の下に戻ってきたらいいじゃないの」

「……なるほど!」


 そこでサマーはピンときた。


 これは王子に対するお嬢様からの試練である。もしここでサマーに(なび)いてしまうようであれば、この婚約は破棄する。そういうことだ。

 ……そう。お嬢様が幸せな結婚をできるかどうかの試金石。それが「ひろいん」、サマーの役目である――と!


 お嬢様のためなら不敬罪で処刑されても悔いはない!! サマーはそういう覚悟があった。でも可能なら処刑から逃げてこっそり戻る! これでいこう! サマーはそう決めた。


「分かりました。このサマー、不肖ながら『ひろいん』を勤めさせていただきます!」

「ええ! サマー、私あなたと王子を気持ちよく『ざまぁ』してあげますわ!」


 微妙にズレているような気がしなくもないが、とりあえず、そういうことになった。


「さて、そうと決まったら私が覚えている限りのイベントを教えますから、きちんとやってくださいましね、サマー」

「はい! 頑張ります!」

「私とは無関係というテイでやるんですわよ! いいですわね! まず攻略対象ですが……」

「へぇ、側近候補、ケンホ様と従兄妹のクルシュ様もですか。これはちょっと特別手当が欲しいですね…………あの、そういえば私皆さんと顔合わせたことあるんですけど大丈夫ですかね?」

「化粧で誤魔化せば行けるんじゃありませんこと? 普段すっぴんでしょうサマーは。ほんと素材がいい……なるほど、国一番の美少女……」


 こうしてコレハのざまぁヒロイン教育は、入学式の直前まで続けられた。









「ちなみに最終的にはメイドが私に毒を盛るルートもあるんですわ」

「え、お嬢様毒効かないのにげぇむでは毒くらっちゃったんですか!?」

「信頼しているメイド相手に油断してたんじゃないかしら?」

「げぇむのお嬢様も私達を信頼してくれてた……! しゅき!」

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