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ヒロインは聖女ですわ!……誰が聖女ですの???



 そしていよいよ、入学式の日になった。

 コレハとサマーは、ヤルコット侯爵夫妻や弟、エマとも当面の別れを済ませ、学園の寮へと入っている。

 一応、コレハとサマーの二人部屋である。


「ところでお嬢様。前々から思ってたのですが、ヒロインさんという方はどういう人なのでしょうか?」

「……そういえばサマーに教えていませんでしたわね」


 ゲーム『かお☆みて』については、コレハの頭の中にある話。その話をするためには前世について話さなければならない。

 それはとてもハードルが高く、よほど信頼した相手でなければ話せない――


「実は私前世の記憶があるんですわよ。で、そこでかくかくしかじか、というわけ」

「へぇー。じゃあお嬢様のライバルってことですね! わかりました!」


 ――勿論サマーは幼い時から育てた腹心である。全幅の信頼を置いていたのでアッサリ話した。


「もし『頭がおかしいのでは』とか言われたらしばり首にしてたところですが、アッサリ信じましたわね」

「え? お嬢様が私に嘘をつくはずがありません。あと薬草で『いべんと』とやらも潰してるじゃないですか。実績もあるのに信じない理由がありませんよ?」

「……そうね?」


 かくしてコレハは頼もしい味方を得たのである。


「ヒロインさんの名前は『ヒロイン』ではなかったんですね。なんていう名前なんですか?」

「うーん。それがデフォルトネームはあったはずなんだけれど、名前を変えられるタイプだったから覚えてないのよ」

「でしたら、特徴で絞り込みましょう! なにかありませんか?」


 ふむ、と顎に手を当てて考えるコレハ。


「たしか、聖女とか呼ばれていたわ」

「おお、それは強力な手がかりですね。……該当する方がこの国に一人います!」

「そうなの? 誰かしら」

「お嬢様です!」


 コレハはサマーの頭をチョップした。ぽすん。あまり痛くはなかったが、サマーは大げさに「あいだっ!」と痛がってみせた。(その方がお嬢様が喜ぶので)


「私のどこが聖女なのかしら?」

「『薬の聖女』って呼ばれてるじゃないですかぁー」

「それは単に面白がって呼ばれているだけでしょう?……あ、でもそうね。確かに作中、ゲームの序盤で教会からそう認定されてたから、実際はまだ呼ばれてないのかしら」

「それであれば今だとどうなんでしょうかね? 他に特徴は?」


 ふむ。と再び顎に手を当てて考えるコレハ。


「……たしか、元平民だったはずね? どこかの貴族の養子になって学園に入るの」

「ではお嬢様じゃないですね」

「ただ見た目はとても綺麗なはずよ。この国一番の美少女とか言われてたかも」

「ん? それだとお嬢様以外に該当する女などいませんよ? もしや、お嬢様がお忍びされていた時の話では?」


 はて、と首をかしげるサマー。

 コレハは再びチョップした。ぽすん。


「ひょぐっ! んもー、お嬢様痛いじゃないですかぁ」

「私じゃないって言ってるじゃないの! もう、真面目に考えなさい」

「真面目ですよ! お嬢様を差しおいて国一番の美少女とかありえませんし!」


 そう褒められて悪い気はしないが、今はそう言う話じゃないのだ。


「たしか金色に輝く髪だったはずよ」

「ではお嬢様じゃないですね」

「さっきからそう言ってるじゃない。ああ、でもゲーム中では名言されてなかったかも。VRで一人称視点だったから、手くらいしか見えなかったのよね」

「ならもしかしてやっぱりお嬢様が。ほら、お嬢様って光り輝いてますから! オーラが金色なんですよ!」


 間違いない! と確信するサマー。

 コレハは三度チョップした。ぽすん。


「ぐふぅ!」

「だから私じゃないと言ってるでしょうが。サマー、あなた私に叩かれたくてわざとやってませんこと?」

「だ、だってお嬢様を差しおいてこの国の王妃になろうなんて、そんな不敬な輩がいるわけないじゃないですかぁー! お嬢様がこの国で一番なのは確定した事実なんですぅ!」

「今はそういう話じゃないって何度言わせれば気が済むの?」


 流石にやりすぎたか、とサマーは「こほん」と咳払いをして仕切りなおす。


「金色で、平民出で……そうだ! それなら聖女と認定されるようになった理由があるのでは?」

「んん。そうですわね、確かに。……ああ。これは大事なヒントになると思うのですが、確か100年に一人の聖属性の持ち主ですわ」

「へぇー。私と同じ属性なんですね。珍しいって侯爵様から聞いたんですが。でもそれなら新入生の属性を片っ端から調べれば見つけられますね!」

「ですわね。……ん?」


 今、聞き捨てならない発言があったような。とコレハは首をかしげる。


「あの、サマー? あなた今なんて?」

「え? 新入生の属性を片っ端から調べれば」

「その前ですわよ! あなた、聖属性でしたの!?」

「あ、はい。とりあえず光属性と誤魔化しておくように言われてますが、お嬢様はご存じですよね? 私も希少属性だからギリギリ侍女になれたんですし」


 知らなかった。てっきり光属性だとばかり思っていた。


「……んんんー?」


 と、ここでサマーのスペックを見直す。


 ・金髪(洗ったら綺麗になった)

 ・元孤児(つまり平民)

 ・美少女(美男美女ばかりの乙女ゲー世界だと思っていた)

 ・聖属性 ← New!!


「……サマー? あなた、ヒロインだったりするんじゃありませんの?」

「え? そんなー。私が……え?」


 条件は間違いなく揃っていた。



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― 新着の感想 ―
ヒロインがサマーならこの物語はどうなるんだ? 新たなヒロインが登場するの? てか、攫われた時もサマーが一緒に居たのでそれが原因で起きた可能性も!
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