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ひ弱な辺境伯令嬢は龍騎士になりたい  ~だから精霊巫女にはなりません~  作者: のもも
第2章 ちょっと丈夫になった辺境伯令嬢のやりたい事とやるべき事

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75、夏のメニュ作り

 夏のメニュのコピー作業は順調に進み、なんと1日で終えることができたの。

 護衛たちの連携がすごくて驚いたよ。

 シャル兄様の横には護衛のアムールが付き、アンの横にはジュスタンが付いた。

 シャル兄様とアンがコピーをすると、それぞれの隣にいるアムールとジュスタンが、コピーをした紙を横に寄せて新しい紙を置いてくれる。新たに置かれた紙にまたコピーをする。

 休むことなく繰り返していったら、午前中でコピー作業は終わってしまった。

 横に置かれた紙は、マクサンスが同じ絵の枚数を確認して、別の長机に置く。今度はユーゴが色むらや色抜けがないか確認をする。

 昼食をはさみ、午後からは6人で確認作業を始める。

 長テーブルにはコピーされた、夏のメニュと定番のメニュが順番に並べて置かれている。それを上から1枚ずつ取って重ねて束にして、別の長机に置いていく。

 同じ紙が重なったり、逆に抜けたりしていないか裏返しや、逆さまになっていないかも確認していく。

 1冊の本のように綴じる作業は、バスチアンが製本職人に委託してくれると言っていた。

 夏のメニュが完成したら、龍の宅急便で王都に送ってもらう。


「そろそろ休憩をされては如何でしょう?よろしければ隣の部屋にお茶の用意を致します」


 全ての作業が終わってホッとしたところで、ソフィが声をかけてくれた。


「丁度終わったところなの、すぐ行くね」


 護衛たちも嬉しそうに頷いている。ユーゴは目元を少し赤くして、凄く嬉しそうに頷いているのは、早くおやつが食べたいからなの?


 ソフィはアンの返事を聞いて、すぐ隣の部屋に戻っていった。

 みんなで隣の部屋に行くと、ほんのりとバターの香りが漂ってきた。

 秋にお店で出そうと思っているパンケーキなの。でもピューレはフレーズの春のメニュだけどね。

 まだペーシュのピューレを用意していないから、春のメニュと夏のメニュが混ざっているけど、屋敷限定の特別メニュということにして、みんなで食べられるように頼んでいたの。


「いい匂いがする・・・バターだな」


「さすがシャル兄様、パンケーキだよ。バターをたっぷりと載せてと頼んでいたの」


「最近食べていなかったから、楽しみだ」


 フォセットがワゴンで運んできていたパンケーキを、みんなの前に置いていく。

 アンは1枚で十分だけど、シャル兄様と護衛たちは大きいのが3枚もお皿に乗っていた。

 ソフィはシャル兄様とアンの前にアイスペーシュミルクティー置き、護衛たちには「アイスペーシュティーです」と言って置いていく。

 アムールは「アイスですか?」とグラスを見ていた。

 ユーゴはグラスとソフィを交互に見ているけど、夏のメニュを試食した時に、飲んだよね?忘れたのかな?


 ゆっくりとアイスティーを飲んで、ペーシュの香りと味を楽しむ。

 パンケーキはフレーズのピューレと少し酸味のあるミルティーユの実、それに生クリームも添えてある。

 春と夏の材料が混じっているけど・・・うん、これはこれで美味しい。


 みんなも美味しそうに食べているけど、食べるのが早いよ・・・パンケーキはまだ焼いてあるのかな?

 でも、おやつの代わりだから、足りなかったらクッキーをつまんでね。

 あっ、シャル兄様が追加を頼んでいる。

 なんと、予備はあったよ・・・護衛たちまで追加をしていた。

 パンケーキをお腹いっぱい食べるらしい。


「久しぶりに魔力をたくさん使ったね」


「これくらいなら畑で毎日のように使っている。紙を揃えるのは面倒だが、コピーは面白いからいつでも手伝うぞ」


「うん、また秋のメニュもあるからお願いね。もう魔力はかなり上がっているでしょう?まだ増やさなければいけないの?」


「まだまだだ・・・精霊の声も聞こえていないからな」


「そっか・・・」


 精霊の声はなぜ聞こえないのかな?ベル兄様は魔力量が増えるとすぐに聞こえるようになったと聞いたけど・・・。

 シャル兄様は細かい作業は苦手だと言っていたから、何かが足りないのかもしれない・・・精霊をもっと気にかけたらいいのにね。


「お腹いっぱいになったら、少し眠くなったな。部屋で休む・・・アムール、部屋に戻るぞ」


「はっ」


 毎日のように畑で作業しては、魔力量を増やす訓練をしているようだけど、その度についていくアムールも大変だと思う。

 そういえばシャル兄様は「精霊の声も」と言ったけど、精霊以外にも聞きたい声があるのかな?

 凄く必死になっているようにみえるけど、無理をしないでほしいと思う。


 今回複数人で手際よく作業ができたのは、ベル兄様のおかげなの。

 ベル兄様は南の領地に旅立つ前に、手順書と書かれた用紙をお父様に渡していたらしい。

 その用紙を、お父様から預かったバスチアンが持って来てくれたの。


「アレクサンドル様が『無理をしないか見ていてくれ』と、用紙を渡された後に、3度もおっしゃっていました。アンジェル様の事をとても心配されておりましたよ」


 バスチアンは笑いながら教えてくれた。

 お父様は出発前にもバスチアンに何度も確認していたけど、にこやかに答えていた・・・とても出来た人だ。


 コピー作業は1日で終わったから、予定より1日多く休める。

 ・・・凄くホッとした。

 この作業の流れを知らないでいたら、とても大変だったと思う・・・勉強になったよ。


 春のメニュはベル兄様が一人でコピーしていた。大変な作業だったと思うと同時に、すごく優秀なのだと改めて思った。

 しかも王都の分とノール本店分の両方を作って、更に車いすの『トリセツ』もたくさん作ったと聞いている。

 ベル兄様は精霊の声が聞こえるほど、魔力量が増えたのがよくわかった。


 メニュはすべて夏のメニュに入れ替えるけど、定番のメニュも改めてコピーをして1冊の新しいメニュにする。

 春のメニュの見本はお父様の執務室とアンの部屋、それと王都の屋敷と各お店にも保管してあるの。

 夏のメニュも同様に予備を作って保管する予定。ノール本店分の予備はパトリック伯父様たちに作ってもらうけどね。

 各お店の予備は、万が一のための予備だとお父様がおっしゃった。

 メニュ作りは魔力も使い、とても手間が掛かっている・・・誤って汚してしまった場合は仕方ないとしても、破いたり盗んだりする人がいるのかな?

 万が一ってそういうこともあるってことだよね。

「万が一」がないことを願いつつ、次の秋のメニュはもう少し早く作るようにしようと、ちょっとだけ反省した。




 今日はノール本店へ行って、パトリック伯父様たちにコピーの操作方法を伝えるの。

 ユーゴとマクサンスとジュスタンの他に屋敷の護衛が3人も同行するらしい。

 キリーに乗っていくからネージュも一緒。


 飛行服はシャーベットオレンジの生地に緑色の小さな葉っぱが刺繍で縁どられている前開きの服なの。

 やや左寄り前に、服と同じ生地で包まれているくるみボタンと言うのが、3つ付いている。

 そのボタンに緑色の糸で編まれた紐をかけて止めるようになっているの。

 立襟もあるから、茉白の世界のチャイナ服に似ている。

 ソフィは小さな葉っぱの近くに大きな白いお花をいくつか刺繡しくれた・・・今回は生き物ではなかったね。

 ネージュとキリーの帽子も同じ生地で同じ刺繍がされているチャイナ帽だよ。

 帽子の後ろには、白い紐で編んだ20センチくらいの長さの三つ編みを垂らしている。

 右側には白い大きな花が刺繍されているけど・・・後ろに白い三つ編があるから、お花の位置で右か左かと悩まなくていい。


「今日も護衛の人数が多いね」


「アレクサンドル様からきつく言われております。護衛の人数を増やすことは可能ですが、減らすことは不可能です」


 ユーゴにキッパリと言われしまった。

 特に減らしたとは思ってはいなかったよ・・・多いなって思っただけだからね。


 朝早くに屋敷を出ているから、お店はまだ開いていないはずなのに、すごくいい匂いが漂っている。

 料理人が今日販売するケーキやパンを焼いているようだ。


 お店につくとキリーとネージュは裏庭に向かって飛んで行ってしまった。

 相変わらず自由でいいけど、裏にはフレーズと姫ポムしかないよ。


 今日は秋のメニュになるものを持ってきたの。

 みんなで食べようと思って、料理人に頼んで焼いてもらったの。もちろん護衛の分もあるよ。

 パトリック伯父様たちは夏のメニュは試食していると思うから、秋のメニュを出すと驚くかも。


「パトリック伯父様、こんにちは」


「こんにちは、アンジェル様。今回もお世話になります」


「こちらこそ、お忙しい中お時間を取って頂きありがとうございます」


「新しい魔法操作と伺っていますから、楽しみにしていました」


「アンジェル様、こんにちは。今日はよろしくお願いします」


「フレデリク様、こんにちは。操作は簡単ですが魔力をたくさん使いますから、終わった後はおいしいものを食べて栄養を取ってください」


「美味しいものはお店に売るほどありますから、ご安心して下さい」


「フフフ、そうでした。でも今日は秋のメニュを持参しました。後で召し上がってください」


「もう秋のメニュですか?それは、楽しみです。張り切ってお仕事をさせていただきます」


 フレデリク様は頑張って作業をしてくれるらしい。横にいるパトリック伯父様はちょっとだけ眉が上がったように見えた。

『目に見える成果は明日の活力になるよ』とベル兄様は前に言っていたけど、美味しいものは、明日ではなく『本日、速攻の活力になる』ようだ。


「パトリック伯父様、説明が終わったら姫ポムの木の奥の空き地にペーシュとカミーユを植えます。夏のメニュに使うから、一気に育てますね」


「手紙で伺っていましたが・・・しかし一気に?・・・育てる?・・・ソ、ソウデスカ・・・」


「ノール本店で使うペーシュとミルティーユは姫ポムと同じく、裏庭から収穫して使って下さい。それとミルティーユは低木なので、孤児院の子ども達に収穫をお願いできないのでしょう?」


「・・・そ、それは助かります。フレーズの収穫が終わると仕事がなくなるので、他に仕事があれば声をかけてほしいと院長から頼まれていましたから」


 パトリック叔父様はハッとして我に返ったかのように返事をしていた。一気に育てたところを見たことがなかったかな?そのうち慣れてね。


「良かったです」


「で、では早速ですが、2階の部屋で操作を教えていただけますか?」



 屋敷の護衛は2階の部屋の扉の外で待機してもらい、マクサンスとジュスタンは扉の内側で待機してもらった。ユーゴはアンと一緒に部屋の奥の机に向かう。

 部屋にはパトリック伯父様とフレデリク様だけが入ってきたから、信用できる人があと4人いると作業が楽になると伝えたら、パトリック伯父様とフレデリク様の護衛と侍従を部屋に入れていた。


 エタンの絵をユーゴがテーブルに置くと、パトリック伯父様とフレデリク様はジッと絵を見ていた。


「メニュはテーブルの席の人数分と予備を作りたいと思います」


「わかりました。夏のメニュは既に試食をしていましたが、メニュを改めて見るとまた食べたくなりますね。カサンドラがペーシュと紅茶のマリネがすっかり気に入ってしまって、夏が待ち遠しいと言っていました」


「お母様と一緒ですね。お口に合って良かったです・・・では始めますね」


 テーブルにエタンの絵が置かれている。

 そのテーブルの横に用意された沢山の白い紙から、ユーゴが1枚取ったのを見て、早速始める。

 掌を上に向けて右手に光魔法、左手に風魔法を出す。その魔法をエタンの絵の上に乗せる。

 白と黄色の魔力がクルクルと渦を巻くように混ざり合い、縞模様が浮かび上がり光り出した。

 光っているエタンの絵を白い紙の上に置くと光りはすぐに消え、白い紙に絵がコピーされた。


「こ、これがコピーというものですか?アレクサンドル様から聞いていましたが・・・目の当たりにすると驚きます」


「黒一色なら土の属性が一番相性はいいですが、絵の場合は2つの属性を組み合わせます。どの属性を使うかは、属性の強さによって異なりますから、強い属性同士で試してみて下さい。最初は黒い文字のみで練習して、綺麗にコピーができるようなったら2つの属性で色付きのコピーの練習をしてください」


 パトリック伯父様とフレデリク様は頷いて、すぐに侍従を横に置いて練習を始めた。

 コピーをしては4人で紙を確認して、またコピーをしている、二人とも魔力量が増えたと聞いているから、午後も続けて練習しても大丈夫だよね。

 何度も練習していると、文字が鮮明になってきた。

 よく見るとコピーしているのは注文書だったよ。この紙は無駄なく使われるらしい。

 もったいない精神は大事だからね。


「パトリック伯父様、フレデリク様、そろそろ色付きで練習しても大丈夫そうですよ」


「アンジェル様のお許しがでましたね。父上」


「そうですね、思ったより早く許可が出てよかったです」


「お二人とも楽しそうですね」


「新しい魔法を覚える機会はそうそうありませんから、フレデリクと楽しみにしていたのです」


「負担になっていなくてよかったです。一度休憩をはさんだ方がいいと思いますが、休憩の前にメニュ作りの手順書を読んでもらえますか?ベル兄様が用意していた用紙をコピーしてきました」


 パトリック伯父様とフレデリク様に手順書を渡してから、護衛を含めた全員分のお茶の手配を厨房に伝えるように、ユーゴに頼んだ。

 パトリック伯父様とフレデリク様は手順書を読んで、「なるほど・・・」「これはいいですね」と呟いていた。

 アンも時々声に出して呟いていると言われたことがあったけど、呟き癖はペレトリー家からの遺伝かも知れない。


「流れ作業のようになっていますね。私たちは集中してコピーだけすればいいので、集中力が途切れずに済みそうです。コピーの薄れや紙の入れ間違いがないかの確認をして製本職人に委託すれば、製本作業も早く終わるかもしれませんね」


「休憩が終わったら色付きコピーの練習をして、問題がなければメニュのコピーをお願いします」


「数回の練習ですぐに出来るものなのですか?」


 フレデリク様が目を大きく開いて、驚いている。


「伯父様たちのコピーを見ていましたが、早くて綺麗でした。色付きも問題ないと思います。大変なのは最初だけです。2つの属性を同時に出せるか、そして同じ魔力量になるように制御できるか、だけです」


「「えっ・・・」」


 にっこり笑って簡単だよっていう感じで説明したけど、二人に驚かれてしまったよ。

 ・・・何か変だったのかな?ユーゴはすぐできたよね?

 ちょうど戻ってきたユーゴの顔を思わず見たら「なんでしょうか?」と言って首をかしげていた。


「2つの属性を使ったコピーは、すぐできたよね?」


「えっ・・・すぐ?・・・凄く練習しましたが・・・」


「あれ?そうだった?」


「アン様だけですよ。すぐに2つの属性を操作したのは」


「あっ・・・思い出した。アンは毎朝、庭で使っていたからだね」


「決してすぐに出来るものではありません。マクサンスとジュスタンもかなり練習をしました」


「えっと・・・パトリック伯父様、今日は練習のつもりでメニュのコピーをして頂いて大丈夫です」


「そう言って頂けると、精神的に楽です」


 伯父様とフレデリク様は凄くホッとしていたよ。


 扉をノックする音が聞こえ、護衛が扉を開けていた。


「失礼致します。お茶を運んでまいりました」


「ご苦労様」


 パトリック伯父様が従業員に声を掛けて、テーブルの横に来たワゴンを見ている。

 お店の従業員も気になるのか、お茶を出した後もスコーンをチラっと見ていた。


「夏のメニュもまだ始まっていなのですが、秋に出す予定のスコーンです。今日はプレーン、レザン、チーズとアマンド、ラムレーズン入りの4種類を持ってきました。スコーンは紅茶葉入り、姫ポムとノワィエ入り、あとはチョコ入りも出す予定です。秋に出すスコーンは全部で7種類になります。以前食べていただいたのは、プレーンと紅茶葉いり、ナッツ入りでしたから、プレーン以外は違う味を持ってきました」


「ありがとうございます。それにしても種類が多いのですね」


「スコーンは果物や木の実など何でも入れられるから、作ろうと思えば色々できます。でもあまり種類が多いと、作る方も食べる方も大変だと思います・・・あっ、冷めないうちに召し上がってください。チーズとアマンドのスコーンは何もつけずに食べる人もいますが、お好みでメープルやはちみつをかけても美味しいです」


 以前お父様とユーゴはそのまま食べていたけど、アンはメープルをかけるのが好き。

 ユーゴたち護衛も交代で食べるようで、扉の横にある部屋へ向かっていった。


「秋のメニュのスコーンを早々に頂けるとは、嬉しいです。休憩が終わったら張り切ってコピーをしなければなりませんね」


「ええ、父上。新しいメニュもどんどん増えていきますから、今後の為にも頑張りましょう」


「驚くことも多いですが新しい魔法まで教えて頂き、私たちが考えもしなかった事がまだまだあるのだと思うと、期待でいっぱいです。アンジェル様、私たちはこれから先ももっと楽しまなければいけませんね」


「そう思ってもらえると、うれしいです。パトリック伯父様にはノール本店をお任せして、生ハム作りも頼んでいます。フレデリク様にもベル兄様の分まで負担をかけています。お仕事がどんどん増えていますから・・・もし負担になっていたら遠慮なく言ってくださいね」


「正直、忙しいですが負担とは感じていません。フレデリクも商会の仕事を含めて楽しんでいます。ブラノワという遊戯、砂糖に代わるノールシュクレや白いフワフワのパン、車いすに保冷庫、そしてコピー・・・考えもしなかった事ばかりです。そしてこれからは多くの人たちが、精霊とともに暮らしているのだと、視覚で捉える事が出来るのです」


「パトリック伯父様・・・あの・・・ありがとうございます」


「アンジェル様、私は貴女を誇りに思います。どうぞこれからも思ったことを形にして、思うままに行動をして下さい


「パトリック伯父様!・・・ありがとうございます」


 目の奥が熱くなって泣きそうになった・・・家族以外で、こんなにも認められていたなんて。

 思いついたことを自由に形にしていいって。

 思いついたまま行動してもいいって。


「どういたしまして・・・でもアレクサンドル様とステファニーへの報告は忘れないで下さいね。自由とは規律を知り、学んだ基本が出来てこそ成り立つのです。規律と基本のない自由などありませんからね。何もないのは自由ではなく、ハチャメチャと言うのですよ」


 にっこり笑って言っていたけど、ちょっと圧も感じたような気がする。

 報連相をしていればあとは自由でいいということだよね。

 思わずキリーに乗って自由にどこまでも飛んでいきそうに気分だったのに・・・ちょっとだけ残念に思ってしまった・・・泣かなくてよかったよ。

 それに・・・ハチャメチャって何かな?


 パトリック伯父様とフレデリク様は休憩が終わるとすぐに、色付きのコピーの練習を始めていた。

 ユーゴが驚いていたけど、2つの属性の操作は苦労することなくすぐに使えているようだった。あと1、2回練習をしたらメニュもコピー出来そうだね。


 以前お母様が白いブーツを履いて畑に来たことがあった。

 なぜか靴のことだけを鮮明に覚えていたけど・・・魔力増加訓練に来たのだと思い出したよ。

 その時に両手を使って操作していたよね。

 畑から離れた場所で、風魔法を使って種を飛ばし1粒1粒を等間隔に蒔いく。

 そして種まきが終わると、右手の風魔法で土を巻き上げて、種が飛ばないようにそっと土をかけて、すぐに左手で水魔法を操作して土の上に水を撒いていた。

 そうだった、余りの手際の良さに、みんなで見入って作業が止まってしまったよね。

 パトリック伯父様とフレデリク様ならお母様よりもっと畑で仕事をしていそうだから、操作も簡単にできるのかもしれない。


「とても綺麗にコピーができていますね。そろそろメニュをコピーしてもいいかと思います」


「では、やってみます。少し緊張しますね」


 フレデリク様も真剣な目でメニュを見ている。

 パトリック伯父様の侍従が横に立って補佐をするようだ。

 侍従がそれぞれ二人の横に立ち、準備が整うと伯父様たちは右手から風魔法、左手からは水魔法を出した。

 その魔法をエタンの絵の上に乗せると、黄色と緑の魔力がクルクルと渦を巻くように混ざり合い、縞模様が浮かび上がり光り出した。

 光っているエタンの絵を白い紙の上に置くと光りはすぐに消えた。

 下の白い紙には絵が綺麗にコピーされていた。


「フレデリク様も操作は慣れているのですね。早くて驚きました」


「アンジェル様ほど、慣れていませんが、思っていた以上にうまくいったと思います」


「ホッとしました・・・しかしこれからが本番ですね」


 メニュのコピーがうまくできて喜んでいるフレデリク様と、これから大変な作業が続くのだとわかっているパトリック伯父様。


 ・・・二人とも頑張ってね。


「コピーの作業は問題なさそうですね。アンは裏庭にペーシュとミルティーユを育ててきます」


「えっ・・・?あっ・・・そ、そうでした・・・・育てる・・・」


「・・・」


 育てると呟くパトリック伯父様と無言のフレデリク様を残して、部屋を後にした。



 ユーゴとマクサンスとジュスタン、そして屋敷の護衛で裏庭にやってきた。


「ピー」

「グー」


 同時にアンと呼ぶ声が聞こえた。

 姫ポムの木の陰から走ってきたキリーとその横でパタパタと飛ぶネージュ・・・何をしていたのかな?

 アンの横にやってきて、ユーゴたちをジッと見ている。


 姫ポムの木の奥の空いた土地をユーゴ達に耕してもらっている。

 北側にペーシュ、南側にミルティーユを植えたら、朝日と西日のどちらもきちんと行き渡るだろうか?

 ミルティーユは低木だから、南側の方がいいかな?


「マクサンス、ペーシュの種を北側の畑にまいてね。姫ポムの木のように間隔を広くとってほしいの」


「はっ」


 ペーシュの種は大きいから、ユーゴでなくても大丈夫なはず。


「ユーゴとジュスタンはミルティーユの種を南側の畑に撒いてね。姫ポムの木の間隔より狭くても大丈夫だから」


「「はっ」」


 ミルティーユの種は小さいけど、フレーズよりはちょっとだけ大きい。二人で撒けば大丈夫かな?


「グー」


「ピー」


 3人の作業が終わるまで待っていたら、アンとまた呼ばれてしまった。



「待たせたままでごめんね。今、ペーシュとミルティーユの種を植えてもらっているの。ペーシュとミルティーユの実がなったら少しだけ食べようね」


「ピッ」

「グワァ」


 同時に返事をしていた。ネージュとキリーはペーシュとミルティーユは食べられるらしい。

 龍達も食べるかな?・・・少し多めに育てておこう。


「アン様、終わりました」


「ありがとう、ユーゴ。今度はアンの番だね。今、食べる分は屋敷の護衛たちと一緒に収穫してね。多めに収穫できるようにするけど、龍達はペーシュとミルティーユを食べられる?」


「ペーシュは食べますが、ミルティーユは小さいので与えたことはないです」


「龍たちにはペーシュだけね・・・先ずはミルティーユから始めようかな」


 南側の畑で成長魔法をかけると、芽が出て葉が出てきた。茎が伸びて、枝葉が広がっていく。

 アンの背より少し高くなったら、横に枝が広がり葉も青々と茂っていく。白いスズランのような小さい花が沢山咲いたと思ったら、あっという間に花が落ちて実がなっていく。

 青みの強い紫色の実が鈴なりになっていた。

 ネージュが不思議そうにミルティーユの木を見ている。


「ネージュ、食べたいの?後で収穫するから、待っていてね」


「ピィ?」


 不思議そうに返事をしたけど、食べたかったわけじゃないのかな?


「ネージュ、次はペーシュを育てるから、もう少し待っていてね・・・ユーゴ、護衛数人にミルティーユの実を収穫するように伝えて。籠はお店から借りてあるから」


「わかりました」


 ユーゴはジュスタンと屋敷の護衛に指示を出してから、アンと一緒に北側の畑に向かった。

 ネージュも気になるのか、ユーゴの横をパタパタ飛んでいる。

 キリーは何も言わず、アンの横に並んでペタペタと歩いてついてきた。


「じゃあ、始めるね」


 ミルティーユより大きい木になるから、多めに魔法をかけないとね。

 手を伸ばして魔力を出そうと思ったら、アンの後ろから白い光が降り注いだ。


「えっ!」

「はぁ?」

「グワッ?」


 アンとユーゴとキリーの声が被った。

 驚いて振り向くとネージュが翼を目一杯広げて、ペーシュの種があるところに光魔法をかけていた。

 ペーシュは芽が出たと思ったら、あっという間にアンの背よりも高く伸びていった。


「ネージュ!だめ!無理しないで、魔力を一気に使っちゃだめ」


「ピィ?」


「大丈夫?フラフラしない?」


「ピピピッ」


 よかった・・・大丈夫らしい。


「もう!すごく驚いたよ・・・・無理しちゃだめだからね。あとはアンがするから、ネージュはここで待っていて。今は魔法を使わないで・・・」


「ピッ」


「グワワァグ」


 キリーも大丈夫かと訊いているのかな?

 ネージュはキリーの横で待つ事にしたらしいけど、ユーゴは目が点になって固まったままだよ。

 ネージュは風、水、火の3つの属性があると知ったけど、光の属性も持っていたらしい。

 ・・・さすがに土属性はないよね・・・いや、なんだかありそうな気がしてきた。

 さっきユーゴ達が土魔法で畑を耕している所をじっと見ていたもの。

 学習したのかも・・・たぶん使えると思う、でも今は聞かないでおいたほうがいいかな?


 お父様、報告案件が増えましたよ。

 もう何個目の報告案件かわからなくなっていますが、とにかくたくさんあります。


 取りあえず今は気を取り直して、ペーシュを育てないと。

 ミルティーユより2倍以上高くなる木だから魔力を多く使う。

 ネージュは平気そうにしていたけど、あの小さな体にどれだけの魔力があるのかな?

 時々アンの魔力を持っていくけど、それほど多くはないよね?

 脱皮前のキリーの方が魔力を沢山持っていたような気がする。ネージュも毛が抜ける頃には、魔力を沢山必要とするのかな?


 そんな不安を頭から追い出して、操作を始める。

 どんどん大きく育て、沢山実らせる。

 実が熟してくると、甘い香りが漂ってきた。

 ミルティーユの木とペーシュの木から、精霊さんたちが現れて、アンとネージュのところにやってきた。

 ミルティーユの木から現れたのは、白いスズランのような花を頭の上で揺らしている精霊さんたち。

 ペーシュの木からきた精霊も頭に花を乗せている。花びらの根元が濃い桃色で、縁の方と羽が薄い桃色になっている。


「木がいっぱいー」「実がいっぱいー」「仲間いっぱいー」

「魔力、いっぱいー」

「ありがとー」「仲間いっぱいー」


「精霊さんたち、こんにちは。みんなで種を植えて木を育てたよ。実もいっぱいなっているからね」


「ピィー」


「グワグゥ」


 ネージュやキリー、ユーゴ達の頭の上に座ったり、マクサンスの髪をつかんだりして遊んでいる。

 ジュスタンの耳たぶにもぶら下がっていた。なぜ耳たぶに?・・・大きい耳たぶではないけど、つかまりやすいの?

 ジュスタンが、顔を赤らめて困った顔している。

 あっ・・・ちょっとプルプルして来たよ・・・くすぐったいのを我慢しているのかな?いやだと言ってもいいのに。

 目を潤ませてこちらを見ているから、助けた方がいいかな。


「ペーシュの精霊さん、ジュスタンは耳に触られるのが苦手みたいだよ」


「やわらかーい」「フワフワー」「いやなのー?」


「くすぐったいので耳はちょっと・・・」


 ジュスタンがぼそぼそと精霊さんに話しかけていた。


「わかったー」「フワフワだめー」


 精霊さんの耳飾りみたいで可愛らしかったよね。

 ジュスタンの耳は柔らかくてフワフワと言っていたけど、どうしてジュスタンの耳がフワフワだってわかったのかな?・・・今度触らせてくれないかな?

 ・・・精霊さんは面白くて、そして自由だね。


 あっ、そうだ、収穫をしてもらわないと。


「ユーゴ、手分けしてペーシュの収穫をしてね。奥の方のペーシュはすぐに収穫が出来るよ。龍達とみんなで食べる分を残して、あとはお店の厨房に運んでほしいの。ジャムやピューレにしてもらうの」


「わかりました」


 これで材料は大丈夫かな?夏の月になるとまだ熟していない実も収穫できるようになるから、毎日新鮮なペーシュとミルティーユが食べられるよ。


 収穫がある程度進むと、マクサンスとまだ顔が赤いジュスタンにはペーシュを入れた大きな籠と少しだけ袋に入れたミルティーユを、龍のいるところまで運んでもらった。

 ネージュもパタパタと飛んで、大きな籠についていく・・・あっキリーも行くんだね。

 一緒に食べるのかな?


「コメート、採れたてだぞ。食べるか?」


 ユーゴが自分の龍にペーシュを差し出すと、ペーシュの匂いをかいでから食べ始めた。


 ガリッボリッボリッ


 えっ、音を立てて食べている・・・もしかして種も噛み砕いているの?・・・お腹が痛くなったりしないのだろうか?

 心配になって思わずユーゴの顔を見てしまった。


「龍たちは気に入って食べているようですから、問題はないでしょう」


「・・・歯とお腹が丈夫でいいね」


「何でも食べるわけではないですよ。ミルティーユは食べませんでしたから」


「ミルティーユも美味しいのにね」


「小さすぎて食べづらいのかもしれません」


「お口が大きいし、歯の間に挟まっちゃうかもね。ペーシュを食べ終えたら、お店に戻ろうね」


 他の龍たちにもペーシュを配り、ゆっくり食べてもらうことにした。

 ユーゴはペーシュの皮を剝いて小さく切ってくれたけど、今回は飾り切りをしないらしい。

 皮を残さず剝いたのは、皮に産毛のようなものがあるから、食べない方がいいと言っていた。

 普通に切ったペーシュを次々とネージュの口とキリーの嘴の中に放り込んでくれた


「ピッピッィ」


「ググワァー」


 美味しいと喜んでいるらしい・・・よかった。

 フレーズが採れなくなっても、ペーシュで問題はないようだ。

 でもまるかじりはできないよ。今はまだ皮と種を取り除かないとね。


 アンもユーゴが切ってくれたペーシュを一口食べてみた。

 美味しい・・・ジュワーッと口の中にペーシュの甘い果汁と香り広がっていった。これも癖になりそう。

 パトリック伯父様とフレデリク様にも後で食べてもらおう。


「ユーゴ、そろそろ戻ろう。パトリック伯父様たちにもペーシュを持っていきたいの。まだ残っている?」


「ペレトリー伯爵様の分は別の籠に10個入れてあります」


「それだけあればご家族分もあるね・・・ネージュとキリーはここでまだ遊んでいて。裏庭から出ないようにして待っていてね」


「ピッ」

「グッワァ」


 パトリック伯父様たちの作業は進んでいるかな?

 昼食の時間が過ぎて、もうすぐ午後のお茶の時間になろうとしていた。二人にも声をかけて昼食を取るように伝えないとね。

 午前の休憩でお茶とスコーンを食べたからお腹はすいていなかったけど、魔力を使ったせいか身体が少し疲れているような気がする。

 食事はきちんと食べておこう。


 お店の2階に行くと、パトリック伯父様とフレデリク様はまだ作業をしていた。

 紙が重なった束が長テーブルにいくつも置かれていて、作業が順調に進んでいるのがわかる。

 3分の1くらいのコピーが終わっているのかな。


「遅くなりましたが、昼食にしませんか?」


「もうそんな時間ですか?夢中でコピーをしていました。フレデリク、いったん休憩にしましょう」


「時間の経つのが早いですね」


「お二人ともお疲れ様です」


「アンジェル様もお疲れ様です。ペーシュとミルティーユを育てる作業はもう終わられたのですか?」


「お終わりました。第一弾の収穫も終わり、厨房に運んでもらいました。龍たちにも食べてもらったのです。龍もペーシュが好きだったみたいで、喜んで食べてくれました。種もガリッボリッと音を立てて食べていましたけど・・・」


「種も、そ、そうですか・・・。第一弾・・・の収穫ができるほど、育っていたのですね・・・スゴイ・・・デスネ・・・」


 龍達が種も食べたから驚いているのかな?


「お腹は痛そうにしていなかったから、大丈夫だと思います。伯父様たちの分も籠に入れてありますから、持ち帰ってご家族と一緒に召し上がってください」


「あ、ありがとうございます。北の領地では貴重なペーシュですから・・・あ、ありがたいです」


「カサンドラ伯母様たちによろしくお伝えください・・・アンたちは昼食を終えたら、帰りますが、気になることはありませんか?」


「もう?屋敷に戻られるのですか?」


「あっ、食事が終わりましたら、コレットさんの魔法の作業についてお伝えしますね」


「魔法の作業ですか?・・・」


 パトリック叔父様達は何かに戸惑っているようだけど、とりあえずお昼にしよう。

 昼食も秋のメニュだよ。

 個室に移動して席に着くと、ワゴンで運ばれてきたのはハンバーグとサラダ、それにマシロパン、クルミパン、レーズンパン。

 飲み物はフレーズティーで、デザートはアンだけもうすぐ販売終了になるフレーズパフェにしてもらったの。

 パトリック伯父様たちや護衛達の飲み物とデザートはお好みで選んでもらえばいいよね。


「お父様とシャル兄様も気に入ってくれた秋のメニュの一つです。もう陛下たちも食べられたと思いますから、ここでも試食を兼ねてコンスタンに作ってもらいました」


 二人とも最初にサラダを食べて、次にクルミパンをちぎって食べ始めた。

 そして今日の主役のハンバーグにナイフを入れて、肉汁が溢れ出ている肉をフォークで食べる。


「柔らかくて美味しいですね。ハンバーグは夏のメニュのハンバーガーのお肉、パテと言いましたか、その肉を厚くして柔らかくした感じですね。肉から溢れ出る肉汁を見ると一層食欲が増します。ソースも甘さの中に酸味もあって美味しいです」


「ハンバーガーも美味しかったですが、ハンバーグもいいですね」


 美味しいお肉をいつも食べているフレデリク様が、目をつぶって味わっているね。

 パトリック伯父様たちにも好評でよかった。


 食事が終わり、最後のデザートはアンの頼んだフレーズパフェが運ばれてきた。一緒に運ばれてきたのは、大人味のラムレーズン入りのアイスが2つ。

 二人はラムレーズン入りアイスがお気に入りらしい。お店から買って屋敷でも食べていると言っていた。


 ゆっくりとフレーズパフェを堪能して、一息ついた・・・美味しかった。

 あと何回食べられるかな?

 ・・・間もなく販売終了になってしまう、夏からはペーシュパフェを楽しみにしよう。


 満足したからそろそろ帰ろうと腰を上げかけたら、視線を感じた。

 パトリック伯父様とフレデリク様がにこやかにアンを見ている。

 あっ・・・思い出した・・・コレットさんの魔法の作業も話をすると伝えたのにすっかり忘れて帰るところだったよ。


「パトリック伯父様お待たせしました。コレットさんの魔法の作業のお話をしますね」


「はい、お伺いします」


「コレットさんが魔力増加訓練を兼ねて、屋敷の西側にある湖の周りの草を風魔法で刈りとり、更に丸めて固めて牧草ロールを作りました。荷馬車に積み込む作業や、馬舎や牛舎に運ぶのも楽になると思うのです。丸めて固めているので、牧草を保存する倉庫・・・えっとシロに積み重ねておけます」


「牧草ロールですか?」


「実物を持ってきています。これから裏庭の龍舎まで行ってみませんか?」


「是非とも拝見したいですね」


 パトリック伯父様が笑みを深めた。


 コレットさんが倉庫の事をシロと言うのだと教えてくれたけど、茉白の世界にあったサイロというのに似ているのかも。

 コレットさんが作った牧草ロールは小さくて扱いやすいから、パトリック伯父様たちの役に立ったらいいな。


 龍舎に行くと、先に部屋を出ていたマクサンスが大きな木箱の前で待っていた。

 木箱は2つ。中には牧草ロールが4つずつ入っているの。

 何事も目で確かめてもらったら、理解できるよね・・・これも『百聞は一見に()かず』だよ。


「アンジェル様、この木箱の中にあるのが牧草ロールですか?」


「あっ・・・は、はい。そうです」


 ちょっと余計なことを思い出していたから、ボーっとして見えたかな?


「このように丸く固めると便利ですね」


「コレットさんが作った牧草ロールは、木箱ごと差し上げます。今日と明日はコピーの作業でお忙しいと思いますから、お時間のできた時にゆっくり見てください。風刃牧草ロールです」


「フウジン?」


「風魔法を刃物のように使って草を刈ったから、コレットさん達がそう呼んでいました」


「なるほど・・・確かに風刃牧草ロールですね」


 ちょっとふざけて言ってみただけなのに、真顔で答えられてしまったよ。

 今は忙しいからなのか、遊び心はないようだ。

 今日は新しいことを沢山覚えたから、疲れているのかもしれないね。

 それでも屋敷に戻られたら、風刃牧草ロールと言いながら絶対試すと思う。


 頑張って、パトリック伯父様とフレデリク様。

 次回の更新は1月16日「76、アンの報告とお父様のお話」の予定です。

どうぞよろしくお願いいたします。



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