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3.器

 いつ撮られたのか分からない、俺の顔写真があらゆる所に映し出される。

 一気に有名人だ。


 小さい頃テレビが好きでよく観ていた。

 その影響もあって小さい頃は漠然と有名になりたいと思っていた時期が俺にもあったっけ。

 でも人生はそう思い通りにはいかないものだ。

 こんな形で有名にはなりたくなっかた。最悪だ。

 もっと他の形で有名になりたっかたよ。

 

 総帥の一言で俺を探し始めるオープナーがそこら中に居た。

 俺は身を隠しながら移動する。


 「おい、見つけたか?」

 「いや、まだだ」


 少しでも気を抜いたら見つかってしまう。

 広い視野で周りを見渡しながら、気を張り、出来るだけ慎重に。

 音を立てずに移動する。


 しかし、ここは見れば見れるほど不思議な世界だ。

 右を見ても

 左を見ても

 上を見ても

 本当に至る所に扉があった。

 それぞれ色や形は違う。

 御崎が言うにはこの無数にある扉はそれぞれ別の世界への入り口になっているらしい。

 つまり、御崎と神折に出会った場所。

 そこに戻れば元の世界に繋がる扉があるはずだ。

 そこを目指す。


 城を脱出して30分。

 身を隠しながら目的地を目指していたが迷子になった。

 そりゃそうだ。

 この世界の地理なんて頭に入っている訳がない。勘と直感で歩いてきてしまった結果ちゃんと迷子になった。


 少し疲れた。

 このまま勘と直感に任せて歩いていてもしょうがない。

 

 俺は少しの休息と脱走計画を組み直すために近くの建物に入ることにした。

 入った建物は大きな倉庫のような場所だ。

 何のために作られた建物かは分からないが、

 人気が全くなく、一回落ち着きたかった俺には丁度良かった。


 建物に入り、入り口から少し離れた地面に腰を下ろす。

 そして大きく深呼吸をした。


 「何なんだよ、本当に…」


 とんでもない事になった。

 関わったら面倒くさいことになるとは思っていた。

 しかし、まさかこんな事にまでになるとは想像していなかった。完全に想定外だ。


 この世界は誰にも知られてはならない?

 殺すか、記憶を消すか?冗談じゃない。

 別に知りたくなかったし、最悪の二択だ。


 仕舞っていた短剣を出す。


 「コイツがなかったらヤバかったな」

 

 何故、突然短剣から光が放たれたのか。

 そもそも短剣が自ら光りを放つなんてことがあるのか。

 なんて疑問は浮かばなかった。

 16年間も生きていれば拾った短剣が光を放つことだって一度や二度あったっていいだろう。

 それにそれと同等かそれ以上の事を今日は経験しすぎた。


 とにかく、この短剣がなければ

 今頃俺は命を落としているか、記憶を消されていた。


 この短剣は俺の命の恩人だ。

 剣に恩人は可笑しいだろうか。

 まぁ何でもいい。

 この短剣は一生大事にしよう。

 そう誓い、俺は短剣に熱いキスをする。


 その瞬間、体の奥底から

 ぶわっと、熱い何か。

 エネルギーのような物が湧き上がった。


 「な、何だ?」


 湧き上がる何かに戸惑う。

 そんな時、誰かがこの倉庫に入って来た。

 俺は急いで物陰に隠れる。

 幸いこの倉庫に多くの物が置かれていて隠れられる場所が多かった。


 倉庫に入って来たのは二人組の男。

 一人はスキンヘッド、一人は金髪のチャラ男。

 恐らく俺を探すオープナーだ。


 「本当にこんな所に居るのかい?」

 「あぁ、俺様の勘がそう言ってる」

 「君の勘は当たった事ないけどね」


 二人の男はこの場所に俺が居るって事はまだ確信してなさそうだ。

 これなら見つからずにやり過ごせる可能性が高い。

 息を潜めて、二人組の様子を観察する。


 「ん?」

 「どうしたんだい?」

 「誰かに見られてるな」

 「え?」

 「おい!誰か居るんだろ!出て来い!」


 スキンヘッドの方が大声で叫ぶ。

 

 バレた?!心臓がきゅっとなる。

 俺と二人組との距離は50mはある。

 物音を立てた訳でもない、物陰から様子を伺っていただけ。バレる要素なんて一個もないぞ。

 いや、流石にバレていないだろ。きっと適当言って俺をあぶり出そうって作戦だ。


 俺はそのまま物陰に隠れて二人組の観察を続ける。


 「突然何だよ。誰も居ないじゃないかい」

 「いや、居る。おい!出てこないってなら…」


 そう言い、スキンヘッドの男は思いっ切り地面に拳を叩き下ろす。

 地面には蜘蛛の巣のような割れ目がつく。

 とてつもない威力だ。あんなの一発でも受けたら…想像しただけでも吐きそうだ。


 「力づくだぁぁぁぁ!!」


 スキンヘッドの男は倉庫内に置いてある物を破壊し始める。

 人が隠れそうな場所を潰しているのだ。

 これでは見つかるのも時間の問題。

 

 「金田も手伝え!」

 「嫌だよ、そんなスマートじゃないやり方」


 徐々に俺との距離が詰まっていく。

 心臓の鼓動が早くなっていくのが分かる。

 上手く酸素を吸えない。

 呼吸が荒くなる。


 震える手で短剣を握り絞める。

 やるしかない。

 短剣なんか今までの人生で使ったことなどない。

 包丁ですら家庭科の調理実習の時ぐらいにしか使ったことがないくらいだ。

 でも、やるしかない。

 やらなければ


 「おいおい!何処に隠れてるんだぁ!」


 やられる。

 覚悟を決めろ。


 距離が徐々に縮まり、遂に1つの物を挟んで目の前の距離に来る。


 「そこだな?」


 その瞬間俺は勢い良く物陰から飛び出し短剣を男へと伸ばした。

 完璧な不意打ち攻撃。

 だが男は俺の完璧な不意打ち攻撃を躱し、俺の腕を掴んだ。


 「見~つけた」

 「クソ!」


 俺の腹に男の拳が飛んでくる。


 あ、ヤバい。


 あまりの威力に意識を失いかける。

 口の中には鉄の味が広がった。


 「本当に居ましたね」


 金田と呼ばれる金髪の男は驚いた顔をする。


 「だから言ったろ。俺の勘は当たるんだ」


 やばい。

 きっと気を緩めたら意識が飛ぶ。

 今、目を閉じたら一生閉じたままになるぞ。


 自分を鼓舞して何とか意地で意識を保つ。


 「お前が鳴瀬コヨミか」

 「写真で見るよりイケメンじゃないか。僕程じゃないけど」


 視界がぼやける。

 何を喋ってるのか上手く聞き取れない。


 「見つけたはいいが、どうすればいいんだ?」

 「総帥はこの世界から出すなと言っていました」

 「だからどーすんだよ」

 「さぁ?総帥の所に連れて行くか。

  この場で殺すかのどちらかでしょう」

 「総帥の所まではちっと遠いな。ここでやっちまうか」

 

 今何て言った?殺す?ここで?

 俺、今ここで殺さるのか?

 今度こそ逃げられない。もし、また短剣が光ったとしても走って逃げる気力がない。


 そうか。

 俺はここで死ぬのか。


 そう覚悟した時、俺の頭に声が響いた。


*******************************


 「器は死なせない」


 女の声だ。


 誰。

 聞き覚えない。

 聞いたことのない声が頭に響いている。 

 

 「私の名前はウィン」


 ウィン?

 聞いたことない名前だ。

 どっかで会ったことあったっけ?


 「今君が持っている短剣が私よ」


 光ったと思ったら今度は喋るのかよ。


 「君は私の器となりえる人間」


 器?突然なんの話だ。


 「死にたくないでしょ?」

 

 そんなん当たり前だ。


 「私も君にはここで死んで欲しくない」


 嘘でもそう思ってくれる人がいてくれて嬉しいよ。


 「だから、力を授ける」


 力?


 「私の力よ。

  でも、力を授けるにはあなたの同意も必要。私の意思だけでは授けられないわ」


 その力を使えばこの状況から脱することが出来るのか?

 俺は元の世界に帰れるのか?


 「物事に置いて100%はない。

  でも、高い確率で君は生きて元の世界に戻ることが出来るわ」 

 

 そうか。

 なら、俺の答えは決まってる。



**********************************



 「恨みはないが総帥の命令だ。

  じゃあな、鳴瀬コヨミ」


 スキンヘッドがそう言い、拳を振り上げたその時

 俺は最後の力を振り絞って叫ぶ。


 「力を貸せ…、ウィン…!」


 俺の言葉に、

 想いに応えるかのように短剣が強く光輝いた。


 総帥の部屋で見せた光よりも強い光。

 

 「何だ?!」


 スキンヘッドの男は危険を察知。俺を掴んでいた手を離し、十分な距離を取った。


 短剣の光は俺を包み込んだ。

 光の中は温かく。

 傷が癒えていくのが分かった。

 夢の中に居る感覚だ。

 体がほわほわして、今なら何でも出来る気がする。

 何でも俺の思い通りに出来る気がする。 


 右手で光を振り払う。

 

 「どーいうトリックだ?」


 スキンヘッドの男の目に映っているのは間違えなく鳴瀬コヨミだ。

 しかし、ほんの数秒前の鳴瀬コヨミではない。

 容姿は中性的になっており、雰囲気も何処か違う。

 そしてなにより


 「何で人間のお前から魂力を感じる」

 

 人間にはない。

 人間である鳴瀬コヨミが持っているはずがない魂力。

 その魂力を今、目の前にいる鳴瀬コヨミから強く感じた。


 【魂力】

 オープナーだけが持つ特別な力。

 破壊者を倒すために使用される。

 

 「まぁ理由はどうでもいい!」

 

 スキンヘッドの男は不気味に笑う。


 「金田ぁぁ!!」

 「そんなに大きな声出さなくても聞こえるよ」

 「お前は手ぇ出すな」

 「何で?二人でやった方が…」

 「いいから黙ってろ見てろ!!コイツは俺のおもちゃだ!!」 

 「はぁ…。じゃあ、ガルの好きにすれば」

 

 金田は適当な場所に腰掛け、ガルを見守ることにする。


 「まさか人間とやり合えるなんてなぁ…。

  楽しませろよ、鳴瀬ぇぇぇ!!」

 「俺は元の世界に戻りたいだけだ。邪魔するなよ」

 

 鳴瀬コヨミ対ガル

 人生初の戦いが始まる。


 

 

 ::::::::::::::::::::::::::::::


 キャラ紹介


 鳴瀬 コヨミ(人間)

 No.56の世界の住人

 ・座学の成績普通

 ・運動神経抜群

 ・最近一個下の妹が反抗期

 ・犬派


 神折 碕 (オープナー)

 No.50~100の世界 担当。

 ・指図されたくない

 ・身勝手

 ・甘い物が好き

 ・犬派


 御崎 夢 (オープナー)

 No.50~100の世界 担当。

 ・早くバディ解消したい

 ・可愛いが大好き

 ・イケメン好き

 ・彼氏欲しい



 



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