表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/5

1.動き出す運命

 過去を捨て

 己を捨て

 大切なモノまでも捨てた


 男は求める

 力だけを求める

 

 何かの穴を埋めるかのように

 

 ただ力を欲した


 力に魅了され

 力だけを求めて

 力という暗く寂しい深海へと溺れた


 己の終焉に何を見る


******************************** 


 深夜の学校。

 深夜の学校はまるで異界だ。

 闇に包まれた校舎。

 毎日通っている場所のはずなのに、全く違う、知らない場所に見えてしまう。

 昼間とは何か違う。

 何とも言えない、言葉じゃ表現出来ない。独特で、不気味な雰囲気が漂う。


 そんな深夜の学校に忍び込む

 クラスの友人3人、俺含めて4人で肝試しに来ていた。


 「ねぇ、本当にやるの?」


 俺達4人の中で一番の怖がりの青柳あおやぎ 綾香あやかが言う。

 黒く綺麗な長い髪がチャームポイント。

 可愛らしい顔立ちをしており、本人は気づいていないが意外と男子からの人気が高い。

  

 「どうした綾香。まさかビビってんのか?」


 今回の肝試しを計画した村田むらた ゆう

 明るめの髪色、クラスのムードメーカー。

 調子に乗りやすく授業中、授業外でも先生によく怒られている。


 「ちょっと友。あんまり綾香をからかわないでよね」

 

 綾香の親友であり、俺の幼馴染の潮崎しおざき 夕花ゆうか

 茶髪のショート。

 運動神経抜群でバスケ部の1年生エース。

 こちらも男子からの人気が高い

 毎日のように告白されては男子を泣かせている。


 「何でもいいからさっさと終わらせようぜ」


 そして俺、鳴瀬 コヨミ。

 中学まではバスケ部、高校は帰宅部。

 何処にでもいる平凡な高校生。

 今日の肝試しには無理矢理連れて来られている。

 

 時刻は深夜2時。

 時間はあまりない。

 明日も朝から普通に学校だ。

 それに明日は一限から数学のテストがある。寝坊で遅刻なんてことは出来る限り避けたい。


 俺達は裏口から校内へと侵入を試みる。

 監視カメラもなく

 あっさりと校内への侵入は成功した。

 あまりにあっさり侵入に成功してしまい、うちの学校のセキュリティーが心配になる。


 校内に入ると不気味な雰囲気が一段、いや二段階レベルアップする。

 少し肌寒い気もする。

 嫌な感じだ。

 

 「グットパーで2グループに別れて探索しようぜ」

 「嫌だよ、このまま皆で回ろうよ」


 四人から更にグループを分けて2・2で回ろうと村田が提案する。

 その提案に怖がりな青柳が猛反対する。


 「私も反対。普通に怖いし」

 「じゃ俺も反対」


 夕花も反対意見。

 正直どっちでもいい。だがこういう場合は多数派に流されてたいた方が良いと判断。俺も青柳と夕花の方に便乗しておく。


 「ちぇ。いい提案だと思ったのになぁ」

 

 村田は少し不満そうな顔。

 皆反対なら仕方ないと渋々提案をとり下げる。

 村田は心霊現象や宇宙人といったオカルト系の話が大好き。

 友達を連れて今回の様に肝試しや心霊スポットによく行くと言っていた。調子が良いと月10回は心霊スポットに訪れるらしい。


 その村田を先頭に

 俺達四人はまず理科室へ向かうことにする。 

 何故理科室なのか。特に理由はない。

 なんとなく深夜の学校、肝試しと言えば理科室だと思ったからだ。


 「うぅ…何か誰かに見られてる感じしない?」


 理科室へ向かっている途中、青柳が綾香の背中に隠れながら言った。

 恐怖のあまり立ち止まる青柳。

 そんな青柳に村田は気のせい気のせいと声を掛ける。


 「でも、確かに何か…」

 「嫌な感じがするな」


 しかし、誰かに見られている感じ。

 嫌な感じを感じ取っていたのは青柳だけではない。

 俺も、夕花も何か感じているようだ。


 「私達以外居ないはずだよね…」


 時刻は深夜2時過ぎ。

 俺達の他に誰かが居るとは考えづらい。

 夕花が周りを見渡す。


 「おいおい、何で俺だけ何も感じられないんだよ!」


 自分だけ何も感じない、オカルト大好き村田が悔しがる。

 村田は霊感とかそういう物を全く持っていない。


 「やっぱ今日は帰った方がよくない?」

 「えーまだ理科室にも行ってないぜ?」

 「今日は嫌な感じがするし、それに綾香がこれ以上は本当に無理そう」

 

 ぶるぶると体を震わせる青柳を見て肝試しを続行したい村田も納得するしかなっかた。


 滞在時間約15分程。

 せっかく深夜に集まったが危険を感じた俺達は校舎を出る事にした。

 今度は俺を先頭に校舎の出入口へと向かう。

 懐中電灯で前を照らす。

 すぐ後ろからは三人の話し声が聞こえてくる。 


 そして校舎の出入口付近でそれは起こった。

 それは何の前触れもなく起こる。

 後ろから聞こえて来ていた三人の話し声が聞こえなくなり、懐中電灯の明かりが消えた。


 「あれ?」


 俺は急いでスマホを取り出し、懐中電灯からスマホのライトに切り替える。

 スマホのライトで後ろを照らすと三人の姿が消えていた。


 三人で俺を脅かそうとしてるのか?


 「だるいって。お前ら出て来いよ」


 返事がない。

 何度も繰り返し大きな声で呼んでも三人からの返事が返って来ない。

 冷や汗が俺の額を湿らせる。


 落ち着け。

 冷静になって考えよう。

 ここは廊下だ、人三人が隠れられるような場所はない。

 懐中電灯が壊れる直前

 三人は確かに俺のすぐ後ろにいた。

 それは見ていた。これは確実だ。

 懐中電灯が壊れた瞬間あいつらの声は聞こえなくなり、すぐに俺はスマホのライトに切り替えて後ろを照らすも、既に三人の姿は消えていた。 

 懐中電灯が壊れて俺が後ろを確認するまで約6秒程。

 

 「オカルト系の話は信じない派だったんだけどな…」

 

 スマホの明かりを頼りに俺は歩いて来た道を戻る。

 

 「おーい。いるなら返事してくれー」


 やはり返事はない。

 月明りが窓から差し込み

 静寂の中、俺の足音だけが響く。

 そして、俺はある部屋の前に着いた。


 「開かずの部屋…」


 うちの学校にも他校と同様に学校の七不思議というものがある。

 三階の女子トイレで深夜女の子が出るとか

 実験室にある人体模型が突然動き出すとかそういう感じのものだ。

 その中の1つに開かずの部屋というものがある。


 開かずの部屋は常に鍵が掛かっている。

 生徒は勿論、教師も立ち入り禁止になっている。

 あの部屋は呪われているとか

 とんでもない幽霊がいるとか

 昔殺人があったとか、皆それぞれの想像を含まらませて、この部屋に関しては様々噂が出回っている。


 気付くと俺は開かずの部屋の扉に手をかけていた。

 開かないはずななのに。

 この中にあいつらは絶対居ないのに。

 何故か強く魅かれた。


 「開いてる」


 開いていた。

 いつも閉まっているはずなのに開いていた。


 ギィー。と嫌な音を鳴らしながら扉が開く。


 その瞬間、世界が変わる。

 俺はまだそれに気づかない。


 部屋の中は色々な物が置かれているだけだった。

 ただの物置部屋だ。


 「何だよ。ただの物置か」


 呪いやら幽霊やらを期待していた訳ではない。

 しかし開かずの部屋がまさかただの物置とは、何か少し裏切られた気分だ。

 長らく人が出入りしていなかった

 部屋に置かれている物は大量の埃をかぶり、少し動いただけでも埃が舞う。


 そんな埃まみれの物の中で俺は気になる物を見つける。


 「短剣…?」


 短剣だ。

 錆びついた短剣。


 「何で学校の物置部屋にこんな物が…」


 その短剣を手にした時、背後に気配を感じた。

 急いで振り向くが誰もいない。

 しかし、今確かに何者かが俺の後ろにいた。

 姿を見たわけではないが確実に何者かがいた。

 そして、その何者かはまだ近くにいる。

 気配は消えていない。

 不気味な圧を強く感じた。


 「誰か居るのか?」

 

 返事はない。

 俺は錆びた短剣を構える。

 すると、天井からぽたりと水滴が落ちて来た。

 恐る恐る俺が上を向くとそいつは居た。


 「おいおい…」


 俺の何倍もの大きさ。

 闇に溶け込みやすい真っ黒い色。

 ムカデのような姿をした化け物だ。


 「夢か…?これ」


 ありえないサイズ。

 ムカデの化け物はまるでご馳走を見つけたかのような目で俺を見る。


 「はは…。逃げろ!!」


 俺は全力疾走でその場から逃げる。

 

 おいおい。

 何だあの化け物。

 もしかしてアイツに三人はやられた?

 考えても分からない。今は逃げることだけ考えろ。


 ムカデは物凄いスピードで後ろから追って来ている。


 「クソ!」


 やばいやばい。

 追いつかれる。

 このままじゃ数秒後にはあいつの腹の中だ。


 必死で足を動かす。

 しかし俺とムカデとの距離は徐々に詰まっていく。

 その距離20m、15m、10m、5m…


 死ぬのか…?俺。


 手を伸ばせば届く距離。

 

 死を覚悟したその瞬間。

 一人の男が俺とムカデの間に現れ、ムカデの化け物を真っ二つに切り裂く。


 「え、?」


 それは刹那。

 あまりに唐突で突然の出来事。

 目の前で起こった出来事に頭が追いつかない。


 「おいおい、何で人間がここに居るんだ?」

 

 男は言う。


 「あんたは…」

 「あ?名前か?

  俺の名前は神折かみおりだ」


 この日、この男

 神折かみおりとの出会いが俺の運命を大きく動きださせた。



 これは俺が世界を救うまでの物語。


 


 

 


面白ければ、評価、ブックマークお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ