表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

無くしたキーホルダーの行方

作者: 桜橋あかね

「あ、あれー?」


私……こと、狭川千波(さがわちなみ)

実のところ、ちょっとしたトラブルに陥っていた。


「……たく、どうしたんだ?千波」


前を歩いていた、彼の(しゅん)が立ち止まって聞いた。


「あ、あのね。カバンに付けていたカエルのキーホルダー……何処かに落としちゃったみたいで」


『カエルのキーホルダー』。

私が友達に貰ったキーホルダー。

ちょっと気に入っていたのに、デート中に落としてしまったみたいだ。


「さっき行った雑貨屋に落ちていないか、見てみようか」

洵の言う通りに、数分前に立ち寄った雑貨屋に戻った。


▪▪▪


再び、店内に入って探す。


「……あの、どうかなさいました?」

店員さんが話しかけてきた。


「彼女が、カエルのキーホルダーを落としたと言っているんです。もしかしたら、ここで落としたかもしれなくて」

洵がそう言う。


「落とし物が無いか、確認してきますね」

そう店員さんが返すと、事務所の部屋へ入っていった。


数分後、店員さんが戻ってきた。

「落とし物の申し出はなかったですね」


「そうですか……」


これ以上は無理だと悟り、雑貨屋を出た。


「どうする?千波」


「べ……別に大丈夫だよ。小さなキーホルダーだったし、遠い昔に貰ったものだから……」


洵は、私の方をまじまじと見る。


「……そうか。なら、デート再開っつー話で」


そう洵が言うと、手を繋いできた。

その手を繋ぎ、歩き始めた。


▪▪▪ 


夕食を食べ、一人住まいのアパートへ帰ってきた。


「……はあ」

カバンを机に起き、私はベットに横たわった。


(疲れたわね……)


そう思ったとき、枕に違和感(かんしょく)を覚える。


(……!?)

私は飛び起きて枕を手に持った。



そこには、()()()()()()()()()()()()があったのだ。



私は、背中に冷や汗をかいているのを感じた。

探しても無かったし、半ば諦めていたのに………


「さて、どうしたものだろう」

枕元……と言うか、枕の下にあったキーホルダーを見ながら呟く。


ふと、スマホを取って調べてみた。


『キーホルダー 落としたとき 手元に戻る』

『無くしたもの 手元に戻る』


などなど……調べてみたけど、パッとしない。


(でも、戻ってきたからいっか)

そう思い、再びカバンに付け直した。


▪▪▪


翌日。

いつもの通りに、アパートを出て職場に行こうとしたときだ。


(……あれぇ?)

いつもの時間に来たはずなのに、定刻のバスが来ない。


「何かあったのかなぁ」


調べてみると、数キロ手前でバスと車の事故があったみたいだ。

それが、例のいつも乗るバスだ。


「通りで来ない訳ね……仕方がない、タクシー拾って行くしかない」


待っていてもしょうがない。

5分歩いた先の、大通りに出てタクシーを拾った。


職場を運転手に伝えて、車が発進したときにバックに目が行った。


(……!)

またカエルのキーホルダーが無いことに気がついた。

タクシーの足元を見ても無いことから、歩いたときに落としたのだろう。


(探す時間は無いわね……仕方がない)


ただえさえ時間が無い。

ここはキーホルダーの事を置いといて、職場へ行かなきゃ。


▪▪▪


職場に着いた。

いつもの通りに、タイムカードを押すが……妙に社内が慌ただしい。


「どうかしたんです?」

私は近くに居た、後輩の千野宮(ちのみや)に声をかける。


「……あ、先輩!遅かったじゃないですか!」

私を待っていたかのように、千野宮が言う。


「え、遅かった?」


『就業時間はまだ間に合う』、そう言いたかった時。


「狭川、ちょっといいか」

上司の、仁山(にやま)課長が声をかけた。


「は、はい……」


そのまま、会議室へ向かった。


仁山課長が、座るように促す。

私は応じるがまま、向かいの席に座る。


「君が担当していた事業、あったよな」


大手流通会社の子会社と、業務提携を行うものだ。


「はい、それが一体?」

そう聞き返すと、彼は一瞬曇った表情を見せた。


「取引しようとしたその会社、実は今日倒産手続きを行ったらしいのだ」


「……えっ、えぇぇっ!?」


私の表情を見た仁山課長は、ため息をついた。

「そう反応するわな」


「どうしてまた倒産なんて」


「別の子会社が()()()()()みたいで、取引していた会社も巻き添えにあったとのことだ」

そう、仁山課長が言う。


「折角良いところまでいってたのに、白紙ですね」


「社会ってそう言うところもあるからな……とりあえず、取引相手をまた探すところから、頼む」

その言葉に、私は頷いた。


▪▪▪


それからは何事も無く、私はアパートに帰った。


(今日は散々だったわね)

そう思いながら、部屋へ入っていく。


「夕飯は、簡単な物にしよ……」


そう呟いた時、リビングの机に目が行った。


(……!!)


今朝無くした、あのカエルのキーホルダーが置いてあった。


「……なんで、ここに、あるのよ……」


震える手で、キーホルダーを持った。

まじまじ見ると、顔の下が少し欠けている。


(……これ、お(はら)いした方がいいかも……?)


散々な今日だったのは、キーホルダーのせい……そう思ったのだ。

仕事用のスーツから私服に着替え、キーホルダーとカバンを持ってアパートを出た。


▫▫▫


(……確か、近くに神社あったわよね)

そう考えつつ、歩いていく。


ふと、手に持っていた筈のキーホルダーの感触が無いことに気がつく。


(どこ、どこ?)


辺りを見渡す。

数メートル先に、アレが道路に落ちていたのが見えた。


「拾わなきゃ」


駆け寄った瞬間、車のライトが横から―――











今日も、主を待ち続けている欠けたキーホルダーがあるみたいです。

ちなみに、なぜ『カエル』のキーホルダーなのか。


黄泉へ帰る、黄泉へカエル。


ちょっと難しかったかな。


ほんじゃ。

どろん。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] ずっと昔にもらったキーボードが何故突然に祟りだすのか? その辺の語りがないと、単なる偶然にしか思えない気もするのです (ごく個人的な感覚ですが)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ