179話 赤銅聖羅④ 42年の時を越えて、京極からの血染めのクリスマスプレゼント
12月24日午後10時、総理官邸。
赤銅聖羅(55歳)は疲れた表情で自室に入り、ベッドに横になる。
「中国と抗戦か……」
天井を見つめ、
「中国に服従か……」
トントン
「何だ?」
ドアを開けると、手に30センチ四方の包装された箱を持った若い男の秘書官が、
「アメリカのクリスチーヌ様から、総理にクリスマスプレゼントが送られてきました」
「クリスチーヌから?」
赤銅は受け取った。
「では確かにお渡ししましたので」
秘書官は去る。
部屋に入った赤銅は机の上に包装された箱を置き……
「クリスチーヌからプレゼントなんて初めてだ」
ビリビリと包装を破ると……
42年前のクリスマスに、京極から渡される事の無かった……
血染めのクリスマスプレゼントがあった。
「お、おい……」
血染めのクリスマスプレゼントに触れる両手は震えている。
「校長が隠していたのか?」
血染めのクリスマスプレゼントと、同送されていた薄型CDプレーヤーにテープで貼られていた便箋を、ピッと外し、手に取り読んだ。
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拝啓 赤銅聖羅様
40年前にワタクシは京極から、同送しているクリスマスプレゼントを預かっていました。
覚えているでしょうか? 当年の7月2日の慰問プロレスで、京極がリングで試合をする前に、ワタクシが京極の頬に平手打ちをした事を?
あの時に京極に言われた言葉がありました。
『赤銅が総理大臣になったら渡してやってくれ』
京極との約束があり、今日まで赤銅様に京極からのクリスマスプレゼントをお送りできませんでした。
ワタクシは、あなたが総理大臣になり京極との約束を果たせるとは正直、思っておりませんでした。
あなたは本当に死に物狂いで頑張りました。
あなたは、ワタクシの創設した聖クリスチーヌ女子学園の誇りです。
クリスマスプレゼントの中身はワタクシは知りません。
しかし、プレゼントに付いた血は、当時の京極が赤銅聖羅という愛する女を守るために戦った証です。
同送したCDプレイヤーには生前の京極が、あなたのために歌った『紅蓮華』の録音がありますので、ぜひ聴いてください。
赤銅様、麻布十番に割烹料理屋『京極』という店が近々オープンいたします。 オーナーは赤銅様もご存じであろう横山直美です。
1週間後の大晦日の夕方6時から、割烹料理『京極』のプレオープンを兼ねた『最初で最後の京極茜同窓会』をワタクシの主催で開催いたします。
京極茜と縁のある懐かしいヤンキー達が集う予定です。
そして、ワタクシが確保していた本物の京極の『卍』のスカジャンもあります。
ぜひ、赤銅様のご参加をお願いしたいのです。
最後に、中国の強行に悩むあなたに、一言だけ、
『京極茜のヤンキーレディーストーリーはまだ終わってない』
あなたこそ、京極のヤンキーレディーストーリーの続きです。
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CDプレイヤーのPLAYを押す。
ピ
≪おい校長? ちゃんと録音しろよ? 時間ねえから、歌は一発勝負だからな?≫
≪分かってるわよ(; ・`д・´) てかもう録音されてるわよ(; ・`д・´)」
≪赤銅? この曲はアタシがネンショ―の中で知った曲だ。 アタシにもし何かあっても、歌詞にあるように「僕を連れて進め」。 ずっと一緒だ。 さあ校長、カラオケスタートたのむ≫
京極の痺れる歌を聴く最中、血が黒い染みになっているクリスマスプレゼントに入った箱を開ける。
パンダの小さなぬいぐるみ……
「ははは、42年経ってワタシに届いた、京極からのクリスマスプレゼントが二頭身の安っぽいパンダ…… そういえば京極はパンダが大好きだった……」
京極からのクリスマスプレゼントのパンダのぬいぐるみを抱きベッドに横になり、再びCDを再生する。
「同窓会に行こう…… 40年ぶりの『卍』のスカジャンと、京極を死なせた横山直美がいるなら」