178話 赤銅聖羅③ 20XX年春 与党、新総裁
20ⅩⅩ年の春。
≪決選投票の結果、赤銅聖羅104票。石丸流斗98票。 よって新総裁は赤銅聖羅に決議いたしました≫
55歳の長い黒髪の薄いメイク、黒のスーツ姿の赤銅聖羅は椅子から立ち上がり三方向に頭を下げる。
国会の会議場の議員は立ち上がり、拍手を送る。
テレビは総裁選速報番組のスタジオに切り替わる。
女性キャスター「ごらんのとおり、新総裁には初の女性、赤銅聖羅氏に決定いたしました。 解説の黒田さん、これから始まる赤銅政権についての見解をお願いします」
解説黒田「はい。 接戦の末、新総裁になられた赤銅総裁ですが、これから先の赤銅政権には問題が山積みです」
女性キャスター「問題とは?」
解説黒田「先ずは総裁選に敗れた石丸氏を指示していた木下派が、赤銅議員に石丸氏が敗れた場合は離党をほのめかす発言をしています。 赤銅総裁とすれば党内の分裂を避けるには組閣で木下派からポストをある程度、用意する必要があります。 ライバル的存在である石丸氏に党の最高幹部の三役を与えるかもしれません」
女性キャスター「つまり赤銅政権の出だしは一枚岩とはいかないと?」
解説黒田「はい」
女性キャスター「まだ問題点はありますか?」
解説黒田「中国との外交問題にあります。 中国は10年前にロシアを従属国として以降はモンゴル・ラオス・ベトナム・タイ・ミャンマー・韓国。 先日はマレーシアも従属国としました。 昨年、日本は沖縄の米軍基地の増設及び、鹿児島・長崎への米軍基地創設が決定しましたが、更なる自国の防衛策も急務といえます。 赤銅新総裁は核保有の意識が高い方なのでその意向が更なる自国防衛策に大きな影響を及ぼすかもしれません。 中国との対経済では、中国の国営の電子通貨『中ペイ』はヨーロッパ、アフリカ、南アメリカの通貨を独占しており今や『中ペイ』が使われて無い国は『日本』『アメリカ』『オーストラリア』『カナダ』のみです。 日本は、アメリカと足並みを揃えての『中ペイ』への対抗策も急務です」
女性キャスター「他には?」
解説黒田「総裁選中にネットニュースに出された記事の高校時代の無免許運転の疑惑に対しての説明も必要になります」
女性キャスター「詳しく記事の内容について説明していただけますか?」
解説黒田「記事には40年前の画像が掲載されています。 画像はヘルメットを付けずにバイクを二人乗りしている女性二人が映っています。 そのバイクを運転している赤い髪の鼻から下を迷彩のバンダナで隠した女性が当時15歳の赤銅議員では無いか? という記事です」
女性キャスター「もし本人であっても過去は過去ですが?」
解説黒田「赤銅議員も元ヤンキーからT大に入学し首席という面で人気が出た事実もあり、そう思う支持者もいるでしょうが、いずれにしてもこの無免許運転の記事に対する説明は事実の有無含めての必要かと思われます」
翌日には新聞には新総裁のプロフィールが、漫画絵の奇麗な女性の姿と共に掲載された。
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赤銅聖羅 55歳 165センチ 50キロ 血液型AB型 喫煙家
出身校 T大法学部(首席)
実家 東京都青山
派閥 無派閥
党内前役職 官房長官
当選回数 7回(衆院東京1区)
家族 子供一人
好物 お酒全般 マクドナルドのフィッシュバーガー ココ壱番の納豆カレー
特技 英会話 弁護士資格所得
短所 おせっかい焼き 涙もろい
趣味 ボランティア活動 バイクツーリング カラオケ 絵画採集 ジョギング
著書 『政治家の目指すもの』『日本は地方が大事』『政教分離への道』
好きな偉人 エイブラハム・リンカーン
好きな歌 スーパーフライのタマシイレボリューション
座右の銘 どれだけ生きたかではなく、どう生きたかが重要だ(リンカーンの言葉)
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その日……
総理官邸の一室では、60代の総理補佐官がモニターを赤銅に見せる。
「この40年前4月7日に総理が運転する二人乗りの画像は偽物なんですね?」
赤銅はタバコ(セッタ)を吸いながら、
「偽物で間違いない」
「根拠は?」
「ワタシの着ている特攻服の左腕に狂極愛羅武勇の文字が書かれてないんだ」
「この画像は偽物であっても。 後ろに乗っている『卍』のスカジャンの女性と交友があったんですか?」
タバコを深く吸って吐いた赤銅からの返答は、
「あったよ」
「金髪の女性は殺人歴のあった京極茜。 15歳で死に、死んだ後すぐに墓から遺体も盗まれた」
赤銅はタバコを深く吸った後に、バイクの後ろに乗る京極を見る。
「京極はまだ死んでない」
「どういう事ですか?」
「なんでもない。 中国と抗戦する意思があるワタシに対し、中国がこの写真を作ったんだろうね。 今日のスピーチで写真は捏造だけど、聖クリ時代に京極と関係があったと伝える」
「はい」
「中国がどんな手を用いて来ようが、ワタシは中国に屈しない」