160話 屋上 vs過去からの転生者
屋上のエレベーターの扉が開く……
京極は、屋上のダンテのメンバーを見渡す、右側にグテっとしたズタボロのローブを纏ったクリスチーヌを跨ぐようにチェーンソーを持った、ヤンキースの黒パーカーの鬼頭妹……
左側には、白のYシャツ、縦のハーフスキンヘッドの側頭部に虎武流のタトゥーの虎武流…… 京極茜をニヤニヤと見ている。
消火器を引きずってエレベーターから出た京極茜はタバコを吸いながら……
ブ―――――ン!! ガチン!!!
京極の水平に投げた消火器の側面が、虎武流の顔面にめり込んでいた。
虎武流は後ろに倒れた。
京極は、顔に消火器がめり込んで両手を広げ倒れる虎武流を見て、
「オメエは、後で後藤朝子と美園礼子が落とし前をつける」
前を向き直した京極は……
正面の屋上の手すりの上に髪をなびかせ黒のワンピースの背中を向けて立つ……
ブラックチェリーにガンを飛ばしながら、
「来てやったぞ、ブラックチェリー」
ブラックチェリーは振り向き、無表情で、
『お久しぶりですね? ブラックチェリーさん?』
「アタシがブラックチェリー? てかよ……前から気になってたんだけどよ……ブラックチェリーてなんなんだ?」
ブラックチェリーは手すりから下りて、京極に近づきながら、
『そこで気絶してるシスター・ララの末裔のクリスチーヌの団体が信仰してる自由の女神の事です…… そして、あなたが間違いなく、その自由の女神ブラックチェリーなんです……』
「なんでアタシがブラックチェリーと言い切れるんだ?」
ブラックチェリーは足を止めて、
『私は、ブラックチェリーに殺されたリンファだから……』
「リンファ…… ≪◌≫≪◌≫」
キ――――――――――――――――――――――ン
京極の脳裏に1857年にリンファが死ぬ直前の眼差し≪■≫ ≪■≫が甦る。
ブラックチェリーはフッと横に倒れた。
気絶したクリスチーヌに跨る鬼頭妹は、
鬼頭妹「ヨコタマ!? 大丈夫か!?」
ブラックチェリーは倒れたまま、
『鬼頭? あなたがなぜ、この子(横山直美)に対して友情ゴッコしてるか知れば、なおさらこの子が可哀そうじゃないですか? この子も薄々は気づいてたでしょうけどね?』
鬼頭妹「……オメエ? 本当にヨコタマなのか?」
立ち上がったブラックチェリーは髪で隠れた顔を京極に向け、
『バッファローの神の肝を食べた者は甦る…… その血を継ぐ者のタマシイが消えるか弱る時に…… ブラックチェリーさんが転生したのは自我の無い赤子だったからスムーズに心と体が転生が出来たのです。 でも早すぎて前世の記憶など無かったでしょうね? ワタシの方は…… 子供の頃に、小遣い稼ぎの当たり屋に失敗して頭を打ったツクシに転生しかけましたが、自我の強いツクシには完全に転生しきれませんでした……』
京極はセッタを吸いながら、顔を髪で隠すブラックチェリーにガンを飛ばし、
「ならなんでアタシの姉の横山直美に転生できた?」
『ブラックチェリーさん? この子はとても可哀そうな子でしてね~ ツクシから生まれた時からエイズ、いつ殺されてもおかしくない虐待を受け育ち、シャーロットには……ププッ……』
笑いをこらえきれない様に、腹を抱え、
『《《絶っ対に~~なれもしない自由の女神》》に~なりなさいって~~バッカじゃない~~ しかも~~本物の自由の女神のあなたに負けてシャーロットに即戦力外にされてんの~~~ まあ、あなたと秋葉原で戦った時ワタシ~~ チカラ貸さなかったけどねぇぇ……プッククク』
髪で隠れた顔を上げて、アイコスをポイっと捨てて、
『この子~、ワタシが力を貸さないと~ くっっそ虚弱体質だから~煙も吸えないから、こんなまっずいの吸って虚勢張って~~~哀れす~~~~』
マジックなのか、どこからか黄金のキセルが右手に現れ、髪で顔を隠しながらキセルを吸い、
『ぷっは~~~、まだまだあるよ~~この子~~~ 奇跡的に唯一、本来の自分を好きでいてくれた~~黒河内とかいう猫以下のアホを~~捨ててんの~~ この子、けっこう性格も悪いのよね……自由の女神になりたがったクセに……』
ブラックチェリーはプハ――――――――と深くキセルの煙を吐いた後に、
『そうそう…… この子が一番、辛かったのはね? 赤銅聖羅に無視されてた事なのよね…… あなたも赤銅聖羅も忘れてるんでしょ? 8年前、小学校の入学式で、あなたと赤銅聖羅がケンカした後を』
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≪名前は?≫
『グス……赤銅聖羅……だれ? おねえちゃん』
≪横山直美、なんで泣いてるの?≫
『ケンカに負けて悔しいんだ…… 急にケンカを売られたんだ』
≪だれにされたの?≫
『京極茜…… 金髪の外人』
≪その京極茜を、私が懲らしめてあげる……≫
『なんでそこまでしてくれるの?』
≪《《私は自由の女神》》だから♪ その京極茜はどっちに行った?≫
『あっち』
1分後……
【いっでえええ! 頭にタンコブが出来たぞ! 離せよ! クソアマ!】
≪私はおねえちゃんだよ。 さあこっちに来て≫
横山直美は京極茜と赤銅聖羅を対面に立たせた。
横山直美は、顔を合わせずソッポを向いている二人に、
≪さあ、仲直りの握手して友達になりなさい≫
京極茜は横山直美の顔を見上げ、
【はああ? ありえねえ! 仲直りなんて! コイツがアタシのシューズ見て貧乏ってバカにしたんだぞ!】
横山直美は赤銅聖羅の顔を見下ろして、
≪貧乏をバカにしたの? 赤銅聖羅?≫
『うっ…うん…した…… ちょっと悪いと思ってる……』
横山直美は二人の体を両手で寄せて、
≪京極茜も、赤銅聖羅は悪いと思ってるんだから仲直りしなさい≫
【ちっ…… コイツが悪いと思ってるんなら……】
京極と赤銅は友達の握手をした。
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『しかし……この子(横山直美)はアホよの~~ この時、余計なおせっかい焼きで~~二人を仲直りさせなければ良かったのに~~ しかも今になって赤銅聖羅を好きになって京極茜に嫉妬するし~~ 嫌っていた母と同じ悪趣味な刺青を彫るし…… この子の自暴自棄は凄まじくて引くわ……』
ブラックチェリーは無表情で黄金のキセルを、
『ス~~~~ブッハ~~~~』
大きく吸って吹かす。
『まあ…… 哀れで弱いこの子のおかげで、ワタシは転生に至ったんですけどね~ ワタシこれから完全にこの子の心を支配して、惨めなこの子の替わりに楽しい人生を送りますね? 子供たくさ~ん産んで、次ワタシが転生する候補もたくさん産まなきゃね。 ファッキンファッキン♪(´▽`)』
京極はセッタを捨てて右手に持った鉄警棒を伸ばし、
「オメエ、ぶっ殺してやる…… ≪●≫≪●≫」
ブラックチェリーは黄金のキセルを捨てて、顔を隠していた髪をバッと上げて、顔を見せた。 その瞳はリンファの狂悪の瞳……
右手の持った7G鉄警棒を伸ばし、
『ブラックチェリーにワタシを殺せるのですか? これからワタシが、『傘』をも利用して日本を蹂躙してあげます ≪■≫ ≪■≫』